チャート・マニア・ラボ

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Hot 100・Billboard 200まとめ 3月号 【Lil Uzi Vert・Bad Buny・Lil Baby・BTSなど…アルバム大盛況】

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 今月を振り返ります。先月に引き続きアルバムが大賑わいで、それらの収録曲がHot 100へも影響力を及ぼしました。

 

◇今月のHot 100上位推移

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◇今月のBillboard 200上位推移

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(緑背景はその週の新登場)
 

 

~各週のハイライト~

 

3/7のハイライト

BTSが42.2万という破格の数字で4度目のアルバム1位を獲得。複数バージョンのCDで大きく数字を稼ぐ。シングルでは”ON”が4位に登場したほか、”My Time”・”Filter”もHot 100入り

・YoungBoy Never Broke Againがアルバム2位。収録曲8つがHot 100入り

・Doja Catの”Say So”がトップ40入り

・Asheの”Moral of the Story”が71位に登場。プロデューサーはFINNEAS。TikTokで人気

 

 

3/14のハイライト

・Lil Babyが19.7万の総合売上で初のアルバム1位。ほとんどがストリーミングから。2.62億再生を記録し、14曲がHot 100入り

・Bad Bunnyがアルバム2位。総合売上17.9万とかなりの好成績。2.01億再生を記録し、Hot 100にも11曲が登場

Lady Gagaの”Stupid Love”が5位に登場

・ビデオ公開の”Say So”が16位まで浮上

 

 

3/21のハイライト

・Lil Uzi Vertが28.8万の売上でアルバム1位!4億ストリーミングを記録し、収録曲全てがHot 100入り。”Baby Pluto”など3曲がトップ10に

・Jhené Aikoが15.2万の売上でアルバム2位(ストリーミング中心の成績)

・Drakeが208曲目のHot 100入りを達成。Glee Castを上回りHot 100エントリー数が単独で歴代最多に

・Demi Lovatoの”I Love Me”が18位に登場

・”Don’t Start Now”が2位へ、”Blinding Lights”が4位に。次期1位候補

・”bad guy”や”Señorita”など合計27曲がチャートから外れる

 

 

3/28のハイライト

・デラックス版が新たにリリースされたLil Uzi Vertの”Eternal Atake”が引き続きアルバム1位。追加された14曲全てがHot 100入り

Harry Stylesの”Adore You”がトップ10入り(7位)

・Niall Horanがアルバム4位

・いずれもTikTokで人気の、”death bed”が71位に、”Supalonely”が88位に、”Savage”が98位に登場

 

 

主なトピックス

 

・続くアルバム激戦区、Hot 100に「アルバム曲」が大量登場

 今月も有力アルバムが多くリリースされました。10万超えの作品は先月と比較して7→5と減少したのですが、Hot 100へのエントリー数は格段に多かったです。

 

◇5つ以上の曲をHot 100に送り込んだアルバム

先月:Eminem (12)、Mac Miller (10)、Justin Bieber (6)、A Boogie Wit da Hoodie (7)

今月:YoungBoy Never Broke Again (8)、Lil Baby (14)、Bad Bunny (11)、Lil Uzi Vert (18+14)、Jhené Aiko (5)

 

 この各種アルバムの盛り上がりがHot 100でも今月一番の見どころでした。この大量エントリーの結果、多くの曲がHot 100から押し出されリフレッシュが進みました。(”Truth Hurts”、”HIGHEST IN THE ROOM”、”bad guy”、”Señorita”、そしてクリスマス後に特例復帰を果たした”Sucker”など 詳しいリストは記事後半にあります)

 

 

・Lil Uzi Vert

 そのアルバムで一番盛り上がったのはLil Uzi Vertの”Eternal Atake”です。待望のリリースだったこともあり、ストリーミングで爆発的な人気に。歴代4位の4億再生を記録し、アルバム1位を獲得。

 その人気により、収録曲全てがHot 100入りを達成。うち3曲がトップ10入り、そして13曲がトップ40圏内に入るなど順位も高かったです。

 さらに次の週にはデラックス版と称し(”Luv vs. World2”とも)、アルバムに14曲を追加。この追加曲も人気を博し、2週連続でアルバム1位を確保しただけではなく、追加された14曲全てがHot 100入りしました。順位は1週目ほど高くないですが(トップ10入り曲はナシ、トップ40に3曲)

 ビルボードは2週目の再生数をなぜか公表しなかったのですが、2週目も歴代8位タイ相当の3.49億再生を記録しました(なぜかNY Timesに載っていた)

 

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※2020年以降はビデオも加算され、従来よりも少しだけ再生数が増えています*1

※(週目)はリリースからの週数を指します

※再生数の単位はMillion、「平均」は1曲あたりの平均再生数

先月の記事の訂正:Justin Bieberの再生数を上回ったポップアルバムはAriana GrandeやBillie Eilishくらい、と述べていましたがTaylor Swiftも該当していました。(訂正済みです)

 

 Lil Uzi Vertは先行シングルの”Futsal Shuffle 2020”が5位デビューながらも9週滞在で終わる、という変わったチャートアクションを取っていましたが、アルバムは大成功を収めました。

 このアクションを見て、スタートの順位は「アーティストへの期待度」、その後の持続度は「シングルとしての成功度」を測るのかなと再認識しました。もちろんアーティストへの期待度の高さはシングルとしての成功の可能性を向上させますし、シングルの成功がアーティストへの期待度につながることもあるので、この2つはある程度の相互性はあります。

 ”Futsal Shuffle 2020”はラジオシングルにならなかった、などのサポート不足*2でHot 100成績は尻すぼみでしたが、依然として本人への期待度は抜群だったのでアルバムは大成功になったのだと考えました。

 そのアーティストがどういう成功を狙っているのか、または現在どのようなポジションにいるのかを考慮しつつ、チャートのどの「要素」に目を向けるかを使い分けることが重要だと感じました。

 

 Lil Uzi Vertはこのアルバム人気で、2週目には22曲がHot 100に入りました。これは歴代3位タイの多さです。

1 Drake:27曲 (”Scorpion”の25曲+その他2曲)

2 Drake:24曲 (”More Life”の22曲+その他2曲)

3 Lil Wayne:22曲 (”The Careter V”の22曲)

3 Lil Uzi Vert:22曲 (”Eternal Atake”の22曲)

 

 先週のLil Babyに引き続き、連続でLilがつくラッパーがアルバム1位を獲得。Lilがつくラッパーでアルバム1位を取ったのはLil Wayne(5回)、Lil Uzi Vert(2回)、Lil Baby(1回)の3人のみで、連続で異なるLilラッパーがアルバム1位を獲得するのは初です。3人って意外と少ないですね

 

 

・Jhené Aiko

 そのLil Uzi Vertに次いで3/21にアルバム2位だったのがJhené Aikoです。15.2万と優秀な成績を叩き出しています。元々シングルがApple Musicで軒並み高順位を記録しており、その期待感がアルバムでも発揮された印象です。そのApple Musicで絶大な人気を得たほか、シングルがそこまでヒットしていなかったSpotifyでも一定の人気が出ました(リリース日に17曲が圏内入り)

 H.E.R.との”B.S.”はHot 100で24位を記録し、Jhené Aiko自身のシングル最高位を更新しました。(客演ではOmarionChris Brownとの”Post To Be”が13位まで到達した)

 

 ちなみに今年は10万超えながらもアルバム1位を獲得できない作品が多く、3月の時点で既に昨年と同じ6作品がそうなっています。

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・Lil Baby

 Lil Uzi Vertの1つ前の週にアルバム1位だったのはLil Baby。特にApple Musicで大きな人気を集め、初のアルバム1位を獲得。そして14曲がHot 100入りを果たしました。

 先行シングルの”Woah”や”Sum 2 Prove”は上位デビューした後、さらに長く上位に留まるという、優秀なチャートアクションを収めていました。この期待感通りの成績をアルバムでも見せることに成功しました。

 Spotifyでもリリース日に全曲が圏内にランクインしています。

 

~Lil Babyの各アルバム or ミックステープからのHot 100エントリー数~

・Harder Than Ever (2018):3曲

・Drip Harder (2018, w/Gunna):8曲

・Street Gossip (2018):7曲

・My Turn (2020):14曲

 

 

・Bad Bunny

 アルバムチャートでは2位でしたが、今月一番インパクトがあったのはBad Bunnyかもしれません。

 スペイン語のアルバムとしては最高成績の17.9万枚相当の売上を記録。ストリーミングでの人気が高く、2.01億再生を記録。ラテンアルバムとして再生数記録を持っていたOzuna(5320万再生)の4倍程度と、従来の水準を大幅に上回る成績を叩き出しました。

 さらにその人気によってHot 100には11曲がエントリー。USでの人気ぶりをHot 100、アルバムチャートの両方で示しました。

 この作品はアルバム単位でのストリーミングが伸びやすいApple Musicで人気を得ただけではなく、Spotifyでも同等以上の人気。Lil Babyという強力な競合がいましたが、Apple MusicとSpotifyの両方でアルバム全曲がトップ100圏内に入りました(リリース日)

 Spotifyではさらにグローバル単位で偉業を果たしました。初日の「グローバル」再生数が6130万を記録。これは今年1番の成績です。(現在も)

 

1 Bad Bunny – YHLQMDLG 6130万

2 The Weeknd – After Hours 6040万

3 Eminem – Music To Be Murdered By 5050万

4 Lil Uzi Vert – Eternal Atake 4770万

5 Justin Bieber – Changes 4040万

6 BTS – Map of the Soul:7 3380万

7 Dua Lipa – Future Nostalgia 2920万

8 Mac Miller – Circles 2900万

ChartDataより)

 

 曲数の多さによる多少の有利不利はありますが、やはり英語圏のスターたちを抑えて彼が最も人気を集めたアルバム、という座をSpotifyというメジャーな媒体で獲得したのはやはりインパクトがあります。

 

 ちなみにこのアルバムは土曜日リリースだったのですが、金曜日リリースだったらもしかしたらアルバム1位だったかもしれません。集計が1日伸びて、ストリーミングの数値が7/6になったとしたらLil Babyを逆転します。*3ただ仮にそうだとしても、集計で増えるのはリリースから遠い7日目なので、純粋に7/6にはならないと思います。

 

 また、このアルバムは人気がある国とそうではない国が極端に別れています。USと全てのスペイン語圏のSpotifyで全曲がランキング圏内に入った一方、30カ国でリリース日のランクインが0曲でした。そしてこの2つの中間にあたる、アルバムの一部がランクインした国はわずか4つ(スイス、ポルトガル、カナダ、イタリア)でした。

 その後Spotify内最有力プレイリストToday’s Top Hitsのサムネになったこともあり、”La Difícil”はその他の複数国でランキング入りを果たしています。成績上ではグローバルを「制した」とも言えるBad Bunny。今後も変わらずスペイン語で曲をリリースし続けると思いますが、そのままでどこまで広範な地域に浸透するかにも注目です。

 

 

BTS

 同様に非英語圏アクトであるBTSは今月の初週にアルバム1位を獲得。42.2万という今年一番の数字でアルバム1位を獲得。BTSにとって4回目のアルバム1位です。「非英語アルバム」という括りでは10回目のアルバム1位です。

 

1963 The Singinng Nun – The Singing Nun (フランス語)

1995 Selena – Dreaming of You (スペイン語

2004 Josh Groban – Closer (イタリア語、スペイン語、フランス語、6曲が英語)

2006 Il Divo – Ancora (スペイン語、イタリア語、フランス語、一部英語)

2018 BTS – Love Yourself: Tear (韓国語)

2018 BTS – Love Yourself: Answer (韓国語)

2018 Andrea Bocelii – Si (イタリア語)

2019 BTS – Map of the Soul: Persona (韓国語)

2019 SuperM – The 1st Mini Album (韓国語)

2020 BTS – Map of the Soul: 7 (韓国語)

 

 総合売上42.2万のうち、純セールスで34.7万を記録。ツアーやグッズ戦略は行いませんでしたが、複数バージョンにわたるCDで売上が拡大。純セールス34.7万のうち、33.0万がCDによるものです。ほかストリーミングは4.8万、シングルDLからは2.6万を獲得しています。

 彼らは初のアルバム1位時から13.1万→18.5万→23.0万→42.2万と初週売上をぐんぐん伸ばしており、熱心なファンが増加していることが伺えます。

 

 Hot 100では”ON”が4位に登場。8.6万という超高水準のDLが高順位デビューの大きな手助けとなりました。ビデオのリリースはこの週の集計最終日だったため、ビデオ効果はこの週にはあまり出ていません。

 ただし2週目はそのビデオよりもDL下落の影響のほうが大きく、62位まで下落。さらに3週目には他のアルバム曲大量登場に押し出される形で圏外へ。

 2週の滞在は、アルバムの代表シングルの中で一番短いです。(Hot 100に登場するようになってから)

 

DNA 🗻67位 ⏰4週

FAKE LOVE 🗻10位 ⏰10週

IDOL 🗻11位 ⏰3週

Boy With Luv 🗻8位 ⏰8週

ON 🗻4位 ⏰2週

 

 BTSは今回のアルバムの成績でファンのさらなる熱量を証明しましたが、シングルの成績で一般的な浸透度という課題は残っていることも分かりました。

 

 これ以外に”My Time”が84位に、”Filter”が87位に登場しています。これでK-PopのHot 100歴代総エントリー数は22になりました。(”Baby Shark”を含む)

 

 

・上位の動向:次の1位は”Blinding Lights”? “Don’t Start Now”は?

 アルバムの次はシングル上位の動向を見ていきます。”The Box”の1位支配は相変わらずですが、1/25以降続いていた”Life Is Good”の2位支配は3/14で終わりました。

 3/21には”Don’t Start Now”が、3/28には”Blinding Lights”が代わって2位に入りました。いずれもストリーミングでの勢いを保ちつつ、ラジオが伸びてきたことが上位進出の要因です。

 “Blinding Lights”は来週(4/4)にも1位になる可能性が。この週にはThe Weekndのアルバムリリースが反映されます。この曲もそのアルバムリリースによって大きく再生数が伸び、SpotifyAppleで“The Box”を上回ることに成功しました。

 現在ラジオ、DL、SpotifyAppleでは”Lights” > “Box”。YouTubeのみは”Box”の方が上です。

 さらにその次の週(4/11)にはDua Lipaのアルバムリリースもチャートに反映されますが、”Blinding Lights”と同様に1位を取るかは微妙です。アルバムはストリーミングでそれなりに優秀な数字を収めましたが、伸び幅はThe Weekndほどではないので、これがきっかけで1位に立つほどの成績になるかと言われると厳しそうです。

 

 

・絶好調:”Adore You”と”Say So”

 上位に新風をもたらしそうなのはこの2曲です。いずれもストリーミングで好調を保ち、さらにラジオのオンエア数が伴ってきたので、ここ数週Hot 100で大きく伸びています。”Say So”はビデオ公開による恩恵も大きいです。

 4月の上位注目シングルは、ここで紹介した4曲ですね。

 

 

・DrakeがGlee Castを上回りHot 100エントリー数が単独最多に(208曲)

 いつかは来るだろうと思われた記録をついに達成。Lil Yachty・DaBaby・Drakeが組んだ”Oprah’s Bank Account”がHot 100入り。これでDrakeは同エントリー数を208まで伸ばし、これまで最多タイだったGlee Cast(207曲)を振り切って単独首位に立ちました。

 DLの発展によってシングル単位の消費が刺激されHot 100エントリー数を伸ばしたGlee Castに対して、Drakeはストリーミングの発展によってアルバム曲Hot 100エントリー数を伸ばしたような印象があります。Drakeはジャンル固有の客演に依る部分も大きいとは思いますが。

 

1 Drake 208曲

2 Glee Cast 207曲

3 Lil Wayne 168曲

4 Elvis Presley 109曲 (Hot 100の前身時代は除く)

5 Nicki Minaj 108曲

6 Kanye West 107曲

7 Jay-Z 100曲

 

 

TikTok発とみられる曲

 今月は5曲、TikTok発とみられる曲がHot 100入りを果たしました

 

3/7:Ashe – Moral of the Story (71位→82位→圏外)

3/14:Surfaces – Sunday Best (98位→99位→74位)

3/28:Megan Thee Stallion – Savage (98位)

3/28:BENEE feat. Gus Dapperton – Supalonely (88位)

3/28:Powfu feat. beabadoobee – death bed (71位)

 

 一番ヒットしそうなのは”Savage”。AppleSpotifyだけでなくiTunesでもトップ10入りを果たしていて、次の週には大幅なジャンプアップが期待されます。

 

 この中では全くの無名なのはR&B調ポップバンドのSurfaces、ローファイ系ラッパーのPowfuです。この2人はまだウィキペディアが無いです。

 TikTok発というと、このように無名のアクトがいきなり躍進するケースも多いですが、残りのメンバーは以前からある程度知名度があったようです。

 

 Asheはソロデビュー前に何回かEDM曲のボーカルを務めた経歴あり。この”Moral of the Story”はNetflixのシリーズを経由して、TikTokでブレイクしました。FINNEASという強力なプロデューサーがついていることもあり、ヒットするのも納得です。ただ3月に入ってから伸び悩んだのは意外でした。

 BENEEはニュージーランド出身のシンガー。母国やオーストラリアではこの曲以前にもヒット曲がありました。彼女は“Glitter”という曲もTikTokで人気を集めています。

 そのBENEEの客演を務めるGus DappertonはNY出身のシンガーで既に来日公演も行っているようです。

 beabadoobeeはフィリピン系のイギリス人シンガーで、2020年のBBC Sounf of…(イギリスの新人賞企画)に入賞しています。この”death bed”は彼女が2017年にリリースした”Coffee”に乗せてPowfuがラップしている曲です。

 

 次に来そうなのはSAINt JHNの”Roses” (Imanbek Remix)です。TikTokでのブレイク以前に、既にUS以外では人気のあった曲ですが、USでは人気が出づらいゴリゴリのダンスリミックスだったため、ヒットせず。しかしTikTokで人気を得てからはUSのストリーミングでも上昇するようになりました。(特にSpotify

 SAINt JHN自身はガイアナアメリカ人で、普段はヒップホップ系の曲をリリースしています。ライオンキングのサントラで、Beyoncéなどと組んだ"Brown Skin Girl"でHot 100入り歴があります。

 今回の曲は元々ラップ調だったものをImanbekがゴリゴリのダンスリミックスに仕立て上げたものです。

 

 

・その他の曲の短評

 ほかに言及したい曲です。

 

・Lizzo – Truth Hurts

 ピーク1位、滞在42週という成績でチャートを後に。ピークも滞在期間も優秀です。ここでは、そのラップ性について見ていきます。この曲は「女性ラッパーとして最長タイの1位」、または「女性ラッパーのソロ曲として単独最多の1位」*4と表記されることがありますが、そこで指摘されるのは「この曲はラップかどうか」という点です。2010年代にHot 100首位を獲得した他の女性ラッパー曲とラジオの成績を比較します。

 

Truth Hurts” ポップ1位、リズミック1位、アーバン4位(この曲だけ)

“Fancy” ポップ1位 リズミック1位 アーバン2位(客演でもう2回ランクイン)

“Bodak Yellow” ポップ23位 リズミック1位 アーバン1位(合計7曲が1位に)

(ほか“I Like It”もHot 100首位を獲得しています)

 

 Cardi Bは当該曲だけではなくその後のキャリアでもアーバン系での人気が際立ちます。他の2人と比べると、アーバン界隈(≒ラップのフィールド)から出てきたスターという特徴があります。

 一方LizzoとIggy Azaleaはポップ系ラジオでの人気の方が高いです。Iggy Azaleaはアーバンに準じるラップ系統のリズミック系で他にも1位になりましたが、Lizzoはリズミック首位もこれだけです。この2人ではIggy Azaleaの方が若干ラップ寄りの方面で人気が出ていたことが伺えます。

 つまりLizzoの歌唱法はラップっぽいかもしれませんが、基本的にポップ方面で人気がある人物という評価になるでしょう。

 

・Juice WRLD & YoungBoy Never Broke Again – Bandit

 ピーク10位・滞在20週で外れました。ストリーミングでの人気はありましたが、元からラジオに恵まれない傾向にある二人だけあって、リズミック19位、アーバン圏外とラジオの成績が低かったです。

 この曲は11位でデビューした後、2週目に「ポイントを落としながらも」10位へ浮上する、という変わったトップ10入りをしています。上位の曲が、この曲以上にポイントを落としていたためです。

 

・Taylor Swift – The Man

 4曲目のシングルカット。ビデオを公開してヒットを狙うも 再登場後は92位→85位→圏外という成績に。ラジオも伸びておらず今後伸びる気配がありません。

 現在ストリーミング偏重の環境では、アルバムからのシングルは ①単純なシングルリリース・②アルバムを匂わせる2曲目シングル・③アルバムとほぼ同時にリリースされる3番目のシングル というカットが一番うまく行きやすいです。

 アルバム期から離れた時期に、シングルカットをしてもリスナーにとってそれは「アルバム時に聞いた曲」でもあるのであまり伸びない傾向にあります。(アルバムリリース時にどこまでストリーミングで人気だったか、にもよりますが)

 昨年のBillie Eilishはアルバムから時間を置いて”all the good girls go to hell”をカットしましたが、アルバム時のHot 100ピークを上回ることはありませんでした。このような例は他にもいくつか見られます。

 

 Taylor Swiftは前作の4つ目のシングルは最もヒットした”Delicate”だったので、一応それが希望の光ですかね。前作はアルバムリリース時にストリーミング開放されていなかったため、今作とは状況が違いますが。

 

・Jonas Brothers – Sucker

 クリスマス時に特例で復活したシングル×3がLil Baby・Bad Bunnyに押し出され全て圏外に。復活してから外れるまで、特に新しい動きは無くラジオのオンエアが持続するだけだったので、やはり特例で復活させた意義は見出しにくいです。

 この3曲のうち”Only Human”に2020年間チャート入りの可能性あり。ほかの”I Don’t Care”、”Sucker”も僅かに可能性あり。

(特例の復活についての記事:Hot 100 1/11 特集 【クリスマス後のリフレッシュ / 新方針?一度外れた曲を戻す】 - チャート・マニア・ラボ

 

Travis Scott – HIGHEST IN THE ROOM

 ピーク1位、滞在21週という成績でチャートを後に。1位としては短い滞在でした。最後の週が40位ながらも、Lil Baby・Bad Bunnyのアルバム曲大量登場によって押し出されてしまったため、アンラッキーな面もあります。

 ストリーミングほどラジオで人気が出なかったのも一因でしょうか。リズミック1位、アーバン7位、ポップ21位、そして総合23位でした。Hot 100首位獲得曲としては2018年の”SAD!”*5後で最も低いラジオ順位です。(”All I Want for Christmas Is You”も昨年ラジオ14位まで行った)

 デビュー時に勢いよくスタートしたものの、そこまで長くは持たなかったというチャートアクションだったので、Travis Scottへの期待感は引き続き高いものの、シングルとしては「それなりな」成功だった、という印象です。

 

・BROCKHAMPTON – SUGAR

 TikTok発と称される曲ですが、面白かったのはそれとほぼ同タイミングでラジオにかかっていたことです。TikTok発の曲は突発的な物が多く、ラジオのポイントを取り込めずHot 100で苦戦することもありましたが、この曲はその欠点を克服しています。ポップ系ラジオ28位まで到達。

 BROCKHAMPTONは初のHot 100エントリー。2018年の”Ginger”の時にHot 100エントリー無しアーティストながらもアルバム1位獲得、という少し珍しい記録を持っていましたが、その「ねじれ」(?)を今回解消しました。

 

・Jonas Brothers – What a Man Gotta Do

 Jonas Brothersはラジオが安定して~みたいなことを言っていたら3月に入ってからラジオが急落しました。昨年のようにはいかず。

 

・Demi Lovato – I Love Me

 初週はDLがかなり高く、ストリーミングも上々の成績だったので、18位と高順位でスタート。ただしDLが落ちた2週目は43位に。ここからDL・ストリーミングの下落をラジオ上昇で補うようなチャートアクションを取ると思いますが、果たして……?

 

・JACKBOYS feat. Young Thug – OUT WEST

 アルバム曲として人気を博したのち、プレイリストに入ったことやTikTokでの人気によってストリーミングで上位をキープ。Hot 100では10週チャートに滞在。

 そしてチャートが外れたぐらいのタイミングでラジオのオンエアが開始。ビデオも公開されました。似たようなチャートアクションだった“VIBEZ”と違ってまだ滞在が20週に達していないため、今後再登場する可能性もあります。

 この手の曲としては比較的うまくシングル運用できていると思います。

 

・Billie Eilish – bad guy

 ピーク1位、滞在49週という成績でした。最後の週はLil Uzi Vertアルバム曲大量登場によって45位から押し出されたため、それが無ければ滞在は1年まで伸びたかもしれません。

 Billie Eilishはアルバム以前、ラジオのオンエアにあまり恵まれていませんでした。2018年半ばからブレイクの兆しを見せていましたが、ポップ系ラジオでのオンエアが始まったのは2019年に入ってからでした。オルタナティブ系ラジオでは早めにオンエアされていましたが。

 しかしこの”bad guy”はポップ系ラジオで1位に、ラジオ総合3位まで到達することに成功しました。この「大衆的な」成功は、グラミー4部門受賞の大きな要因になったと思います。

 

・Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

 ピーク1位、滞在37週。Shawn Mendesに初の1位をもたらした大ヒットです。滞在は1年に及ばず。滞在長さでは”Stitches”は52週、”Treat You Better”は39週に次ぐ3番目の記録です。*6

 Shawn Mendesの次回アルバムは大規模ヒットになる予感がするのですが、リリースはいつでしょうか。

 

・Don Toliver – Cardigan

 5曲目のHot 100入りを達成。アルバムがストリーミングで人気を博し、4.4万相当の売上で7位に登場。この曲のHot 100入りも、そのアルバムのストリーミング人気によるものです。TikTokでのブレイク以降、着実にキャリアを積み重ねている少し珍しい存在です。客演で人気を集めているので、もしかしたらTikTokでのブレイクが無くてもいずれHot 100入りしていたかもしれません。

 

 

・今月のデータ

 

・新たにトップ40入り

 

3/7

☆4 BTS – ON

△20 The Weeknd – After Hours (事実上デビュー週)

☆28 YoungBoy Never Broke Again – Lil Top

△30 Pop Smoke – Dior (キャリア初のトップ40)

△33 Doja Cat – Say So (キャリア初のトップ40)

△39 Kane Brown – Homesick 

 

3/14

☆5 Lady Gaga – Stupid Love

☆18 Lil Baby & Gunna – Heatin Up

☆21 Lil Uzi Vert – That Way

☆23 Lil Baby feat. Lil Uzi Vert – Commercial

☆28 Lil Baby feat. Future – Live Off My Closet

☆31 Lil Baby – Emotionally Scarred

☆32 Bad Bunny – Si Veo A Tu Mamá

☆33 Bad Bunny - La Difícil

☆38 G Herbo feat. Chance the Rapper, Juice WRLD & Lil Uzi Vert – PTSD

 

3/21

☆6 Lil Uzi Vert – Baby Pluto

☆8 Lil Uzi Vert – Lo Mein

☆9 Lil Uzi Vert – Silly Watch

☆11 Lil Uzi Vert – P2

☆18 Demi Lovato – I Love Me

☆22 Lil Uzi Vert – Homecoming

☆24 Jhené Aiko feat. H.E.R. – B.S.

☆25 Lil Uzi Vert – Prices

☆28 Lil Uzi Vert – POP

☆33 Lil Uzi Vert – Bigger Than Life

☆34 Lil Uzi Vert – Celebration Station

☆36 Lil Uzi Vert – You Better Move

☆37 Lil Uzi Vert – I’m Sorry

☆39 Lil Uzi Vert – Venetia

△40 Jhené Aiko – P*$$y Fairy (OTW)

 

3/28

☆13 Lil Uzi Vert – Myron

☆19 Lil Uzi Vert feat. Chief Keef – Bean (Kobe)

☆26 Lil Uzi Vert & 21 Savage – Yessirskiii

△36 Gabby Barrett – I Hope (キャリア初)

△38 Lil Mosey – Blueberry Faygo (キャリア初)

△39 Jake Owen – Homemade 

△40 Rod Wave – Heart On Ice (キャリア初)

 

 

・外れた主な曲

 

3/7

45 Lizzo – Truth Hurts (🗻1位 /⏰42週)

62 Juice WRLD & YoungBoy Never Broke Again - Bandit (🗻10位 /⏰20週)

97 Idina Menzel & AURORA – Into the Unknown (🗻46位 /⏰10週)

 

3/14

40 Travis Scott – HIGHEST IN THE ROOM (🗻1位 /⏰21週)

41 SHAED – Trampoline (🗻13位 /⏰39週)

43 Jonas Brothers – Sucker (🗻1位 /⏰47週)

44 Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care (🗻2位 /⏰39週)

48 Jonas Brothers – Only Human (🗻18位 /⏰36週)

83 DaBaby feat. Lil Baby & Moneybagg Yo – TOES (🗻28位 /⏰13週)

86 Ed Sheeran feat. Camila Cabello & Cardi B – South Of The Border (🗻49位 /⏰12週)

90 Kelsea Ballerini – homecoming queen?  (🗻78位 /⏰12週)

95 Summer Walker & Usher – Come Thru (🗻42位 /⏰11週)

96 Dustin Lynch – Ridin’ Roads (🗻47位 /⏰17週)

 

3/21

43 Shawn Mendes & Camila Cabello - Señorita  (🗻1位 /⏰37週)

45 Billie Eilish – bad guy (🗻1位 /⏰49週)

46 Sam Hunt – Kinfolks (🗻34位 /⏰21週)

50 Old Dominion – One Man Band (🗻20位 /⏰28週)

68 BTS – ON (🗻4位 /⏰2週)

80 Jimmie Allen – Make Me Want To (🗻49位 /⏰10週)

90 JACKBOYS feat. Young Thug – OUT WEST (🗻38位 /⏰10週)

92 YoungBoy Never Broke Again – Make No Sense (🗻57位 /⏰17週) ※

93 YNW Melly – Suicidal (🗻34位 /⏰15週) ※

※のちに再登場

 

3/28

71 Doja Cat & Tyga - Juicy (🗻41位 /⏰20週)

 

 

・各週ラジオで伸びた曲

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Kworb参照。ここで表示された週間の伸び幅が一定以上の曲を太字にしています。

※グレー背景曲は、既にHot 100でリカレントになった曲

 

 

・今週の各指標の1位推移

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 DL首位は昨年の11/30以降、18週連続で違う曲になっています。ただ次の週も”Blinding Lights”が1位見込みで、この記録は止まりそうです。

 リリース初週に数字が集まる傾向があるのは、ファンによる「応援」が今日のDLで主要な部分なのでは、という印象を受けます。

 

 

・今月のRolling Stoneチャート トップ10推移

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 (日付はビルボードに揃えています)

 ストリーミングの比率が高いRSチャートでは、アルバムラッシュがあった場合にビルボード以上の影響を受けます。3/14はトップ10のうち4曲がLil Baby、3/21はうち7曲がLil Uzi Vert、3/28は4曲がLil Uzi Vertでした。

 

 

・2月号

 

 

・1月号

 

 

 

 

 

 

 

*1:推定5%程度? なぜかというと従来約1300再生=1枚ぐらいの割合が、ビデオ導入で1420再生=1枚程度になったため。主要なビデオ媒体であるYouTubeは無料で、一律3750再生=1枚のため、1300→1420の割合に引き上げるためにはだいたいビデオは5% ただし作品によって差があります。また、シングルが際立っていく2週目以降はビデオの比率が上がると思います

*2:Lil Uzi Vertはラジオにあまり恵まれない傾向が近年続いており、アルバム”Luv Is Rage 2”より後にリリースした彼のシングルはビルボードの各ラジオチャートに一切載っていません。

*3:ストリーミングで14.2万枚相当を記録。これを7/6すると16.5万枚まで増加。+2.3万枚なので、Lil Babyとの差1.8万枚の差を逆転できる

*4:ソロかどうかってそんなに大切か?って思いますが……

*5:訃報による1位浮上だったことも大きいですが、XXXTENTACIONはキャリアを通してラジオ50位以上に入ったことすら無かった

*6:余談ですが、最近ビルボードのChart Historyの並びがピーク順ではなく、滞在週数順になりました

Today’s Top Hitsを5つのポイントで見る

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 Spotifyで圧倒的なフォロー数を誇る、総合ヒットプレイリストのToday’s Top Hits。そのリストを1年ぐらい熱心に追ってきたので、そこで分かったことを5つの項目に分けて説明します。

 

 

1 フォロワー数

 まずフォロワー数が圧倒的に多いです。2位以下にダブルスコアをつけてサービス内最大のリストとして君臨しています。この規模の大きさから、Today’s Top Hitsに入るだけでランキングを動かすこともあります。

 

Today’s Top Hits 2601万

RapCaviar 1273万

¡Viva Latino! 1058万

Baila Reggaeton 996万

Songs to Sing in the Car 925万

※フォロワー数は3/22の数字 

 

 Spotifyではこのような様々な曲をテーマ別に入れた「ディスカバー系」のリストが人気を集めています。一方アーティストプレイリストは、最もフォロワーの多いEd Sheeranでも447万人です。Today’s Top Hitsとは約6倍の差が開いています。

 そのEd Sheeranのフォロワー数はアーティストプレイリストの中では抜けていて、2位以下とは差があります

 

This Is Queen:319万

This Is BTS:297万

This Is Drake:290万

This Is Billie Eilish:259万

 

 主にディスカバー系のプレイリストが重宝されるようで、特定のアーティストを聴くよりも「発見」がプレイリストに求められる機能のようです。Queenがアーティストリストで2位なのも、Spotifyの主なユーザーである若い世代が映画等をきっかけに過去曲を「発見しよう」という需要によるのかもしれません。

 

 

2 曲数

 リストの曲数は基本的に50を維持します。Apple Musicのプレイリストは曲数が自在に変化しますが、Spotifyのリストは基本的に曲数を一定に保つ傾向にあります(多くの場合50曲) 

 唯一の例外はアーティストへの追悼の意を示す場合です。昨年ではAviciiのアルバムリリース時に”Wake Me Up!”が、Juice WRLDが亡くなった時に”Lucid Dreams”がリスト末尾に追加され、一時的に51曲リストになっていました。

 

 その50曲のうち、週平均で6曲が入れ替わります。主に曲が入れ替わるのはリリースが多い金曜日ですが、ヒット度に応じて週の途中に曲が追加されることも多いです。その場合は、何かしらの曲を外して50曲を維持します。

 また曲を入れ替えるだけでなく、順番の入れ替えも定期的に行われています。金曜日と週の途中に2回行われます。

 

 

3 入れる曲について

 その題名通り、基本的には現在ヒットしている曲がリストに入っているのですが、ランキング上位曲トップ50がそのままリストに入っている、というわけでもないです。

 ここで実際どのような曲が入っているか?を見ていきます。以下が2019年内に長くリスト入りしていた曲のランキングです。

 

 

1 Lewis Capaldi – Someone You Loved 47週

2 Billie Eilish – bad guy 37週 *1

3 Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People 27週

4 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus(など) - Old Town Road 26週

4 Lizzo – Truth Hurts 26週

4 Lizzo (feat. Ariana Grande) – Good As Hell 26週 (+)

7 Daddy Yankee feat. Snow (& Katy Perry) – Con Calma 25週

8 Sam Smith – How Do You Sleep 24週

8 Tones And I – Dance Monkey 24週 (+)

10 Ali Gatie – It’s You 22週

11 Lil Nas X – Panini 20週

12 Lewis Capaldi – Bruises 19週 ▲

12 Lil Tecca – Ransom 19週

12 Sam Feldt feat. Rani – Post Malone 19週 ▲

15 SHAED (& Zayn) – Trampoline 18週 (+)

15 Mabel – Don’t Call Me Up 18週

15 Khalid – Talk 18週

15 Y2K & bbno$ - LaLaLa 18週

15 Post Malone – Circles 18週(+)

15 blackbear – hot girl bummer 18週(+)

 

※(+)は2020年内も続けてリスト入りしていた曲

※▲はHot 100に入らなかった曲

※集計は毎週金曜日に行い、金曜日時点で入っているかどうか?でカウントしています。

※リミックス等も合算して集計しています

 

 まずはどのようなジャンルを主に入れるのか?を見ます。ベースとなっているのは英語のポップスです。”Con Calma”やOld Town Road”、”Panini”など一部他のジャンルも上記の滞在ランキングに入っていますが、これらは共通してUSのポップ系ラジオでかかっていました。

 “LaLaLa”と”It’s You”の2曲だけ実はUSポップ系ラジオであまりかかっていなかったのですが、その他のラジオ系統にも同様にかかっていませんでした。(USだとSpotifyのみのヒットで、そもそもラジオ側にあまり認識されなかった。ちなみにAli Gatieは次のシングルがポップ系ラジオにかかりました)

 

 これ以外のジャンルも入ってきますが、その判断は「英語ポップラジオとの距離」で測られているような印象です。実際にUSのポップ系ラジオでかかる見込みもある、英語の他ジャンルの曲は英語ポップに次いでリスト入りしやすいです。

 英語ラップはヒット度相応にリスト入りしますが、ポップと比べて滞在が短いことが多い印象です。他場合に応じて英語ロック、英語カントリーなどもリスト入りします。

 

 注目は非英語曲のヒットです。Spotifyのグローバルランキングに非英語曲が入るのは別に珍しいことではないです。グローバル週間トップ50には昨年平均して10.9曲の非英語曲*2が入っていました。多くがスペイン語曲ですが、韓国語曲、ドイツ語曲、フランス語曲のトップ50入りも昨年はありました。

 一方Today’s Top Hitsには平均して3.1曲の非英語曲が入っていました。グローバルトップ50の割合からするとやや少なめです。最多時で6曲、最少時で1曲でした。多くはスペイン語曲で、それ以外に時折K-Popが入ります。(BTSの"Boy With Luv"と"Make It Right"、BLACKPINKの"Kill This Love"、そして同メンバーJennieの"SOLO")

 このリストを観察し始めた当初は、「なぜ海外曲がここまで少ないのか?」という思いが強かったのですが、最近はテーマ上致し方無いと感じるようになってきました。というのも、

①グローバル上位といってもその語圏以外での人気が低い場合も多い(≒「グローバル」なヒットとは言い難い) 

②英語曲がメインで、英語圏のリスナーが主要のリストに非英語曲を入れてもハマる公算が低い(≒リストのカラーを守るため)

③真の意味でのグローバルヒットを知りたければランキングを見れば良いので、このリストの意義は必ずしもグローバルヒットを正確に伝えることではない

 

 などという考えが浮かんだからです。この「グローバル / 言語」の捉え方ってすごく難しくて、今後突き詰めていきたいテーマの一つではあります。

 

 

 そのような問題点を解決するためか、英語を含むスペイン語曲はスペイン語のみの曲よりもやや優先してリストに入れられる傾向にあります。

 ただし”Con Calma”ではスペイン語のみバージョンの期間の方が長く滞在していました。Katy Perryのリミックスが出た直後はその英語入りの方が入っていましたが、原曲の方の順位が一貫して高かったため、数週後にはスペイン語版に戻されました。

 USラジオは英語入り / 無しによってかなりオンエア数に差が出ます。その傾向はこのリストにもある程度見られますが、ラジオと比べると選曲は柔軟だと感じます。

 

 

 次に曲の滞在期間についてです。必ずしもヒット度=リスト滞在の長さ、とはなりません。滞在上位には”Someone You Loved”、”bad guy”と納得の大ヒット曲が並んでいますが”Señorita”や”7 rings”は滞在がそのヒット度の割には短めでした。

 まだ上位でも「ピークと比べると」勢いが落ちたと判定された場合、また先に述べた「非表示」が多い時など、これからの上昇が見込める材料が無いと、まだランキング上位にいる段階でもリストから外されることも多いです。

 また、同一アーティストの曲が複数ある場合には順位に関わらず新しい方の曲を優先して残す傾向があります。多くの曲にチャンスを与えるために「切る」判断も早い印象です。

 

 

 

4 グローバル順位との比較・順位の割にリスト入りする曲?

 この章は少しマニアックな内容です。リストに入っていた曲、そして実際の再生数(ランキング)とのギャップを見ていきます。再生数の割にリストに長く入っている曲、何かしらの要因で「リスト特有」になっている曲を探そうということです。

 理由としてまず考えられるのは、リスナーによる いいね/非表示の投票です。いいねを押せばプラス、非表示にすればマイナス票を入れるということになります。グローバル順位では微妙な位置でも、リストのリスナーのいいねが多ければ、リストに長く残ることが可能です。

 もう一つは「管理者による判定」です。リスト管理者が、「この曲は粘れば流行る」などと考えた場合は、長く残す判定をされるかもしれません。

 

☆調査方法

・リストに入った2週目以降、直近の週間グローバル順位が圏外なら+2、100位未満200位以上ならば+1ポイントを追加。1週目をカウントしないのは、その週リリースで順位が出ない曲もあるためです。

 

・楽曲ランキング

1 Maren Morris – The Bones 25P

2 Jeremy Zucker – comethru 21P

3 Dermot Kennedy – Outnumbered 20P

4 Dennis Lloyd – Never Go Back 16P

4 Alec Benjamin – Jesus In LA 16P

6 Dominic Fike – 3 Nights 14P

6 Bryce Vine feat. YG – La La Land 14P

8 Lewis Capaldi – Bruises 13P

8 Noah Cyrus – July 13P

10 Dermot Kennedy – Power Over Me 12P

10 Martin Jensen & James Arthur – Nobody 12P

10 Why Don’t We – I Don’t Belong In This Club 12P

 

・アーティストランキング

1 Dermot Kennedy 32P

2 Why Don’t We 26P

3 Maren Morris 25P

4 Jeremy Zucker 21P

5 Alec Benjamin 20P

6 Julia Michaels 19.5P

7 Lewis Capaldi 18P

8 Denis Lloyd 16P

9 Diplo 15P (複数名義)

10 Dominic Fike 14P

10 Bryce Vine 14P

※客演の場合は半分でカウント

 

 Why Don’t We、Diplo以外は全員シンガーソングライターです。曲の方でもそのWhy Don’t We、DJのMartin Jensen以外はそうです。ここに入っているシンガーソングライターは、なんとなくの共通点として「独特のスタイルを持つ」「飾らない」ような印象があります。このような価値観はリスナーから自然発生したものなのか、Spotify側の考えなのかは気になります。

 曲別ランキングでは、「上昇の気配が消えない曲」や「ピークが分散している曲」が長く入っています。

 ”The Bones”はリリース期にまずは1回リスト入り。その後ヒット度が微妙で外れますが、後にシングルカットくらいのタイミングで再びリスト入り。この時同じく女性カントリー歌手のKelsea Balleriniの曲もランク外ながらリスト入りしたので、Spotify側にカントリーへの何らかの期待感があったのかもしれません。

 ただその後はグローバルランキング入りを果たせず、再びリストから外されました。ただその後、USのラジオで人気に火が付きHot 100で順位をぐんぐんと上げました。Spotify内での成功は控えめでしたが、リスト内での期待を裏切らないヒットを外部で記録しました。

 アーティストで最も順位とのギャップがあったDermot Kennedyも同じく外部で成功を収めました。Spotify内でグローバルトップ100に入ったのはアルバムがリリースされた1週のみでしたが、UKのアルバム1位を獲得しました。

 

 ほか”comethru”、”3 Nights”、”July”あたりは粘ったことが功を奏し、最終的にはロングヒットになりました。長く残った曲/アーティストが必ずしも結果を残すわけではないですが、順位の割にリストに残っている曲は何かしらの意義があるのだと思われます。

 

 ちなみにこの調査を同様にアメリカのランキングでも行ってみたところ、グローバルランキングよりも少しギャップがあったので、このリストはアメリカよりもグローバルの再生数を意識して選曲していることが伺えました。(グローバルでは人気で、かつリストにも長めに入っているダンス系の曲が、アメリカではあまり奮わない)

 

 

5 サムネイル

 このリストにはサムネイルがあり、ある程度の宣伝効果が見込まれます。(ただしサムネになったとしても伸びるかどうかはケースバイケースです)

 私がこの集計を始めた以降のサムネの推移をまとめました。最も注目が集まるリリース週にサムネになることもあれば、注目を再起するためなのかリリース2・3週目にサムネになっているケースもあります。

 また、サムネになっているアーティストの曲がリストの1番目に配置されることが多いですが、時折1番目ではない時もあります。

 

サムネのアーティスト – その時一番上部に配置されていた曲

 

2/22 Daddy Yankee – Con Calma

3/1 benny blanco, Selena Gomez, J Balvin & Tainy – I Can’t Get Enough (S)

3/8 Bebe Rexha – Last Hurrah

3/15 Jonas Brothers - Sucker

3/22 Marshmello & CHVRCHES – Here With Me

3/29 Billie Eilish – bad guy (A)

4/5 Alec Benjamin – Let Me Down Slowly

4/12 Lil Nas X (feat. Billy Ray Cyrus) – Old Town Road

4/19 BTS feat. Halsey – Boy With Luv

4/26 Taylor Swift (feat. Brendon Urie) – ME! (S)

5/3 Bazzi - Paradise

5/10 Ed Sheeran (& Justin Bieber) – I Don’t Care *3 (S)

5/17 Lizzo – Truth Hurts

5/24 Shawn Mendes – If I Can’t Have You

5/31 Lewis Capaldi – Someone You Loved

6/7 Avicii (feat. Aloe Blacc) – SOS (S)

6/14 Katy Perry – Never Really Over

6/21 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita (S)

6/28 Lil Nas X - Panini

7/5 Post Malone (feat. Young Thug) – Goodbyes (S)

7/12 Ed Sheeran (feat. Khalid) – Beautiful People (A)

7/19 Billie Eilish & Justin Bieber – bad guy (S*リミックス)

7/26 Sam Smith – How Do You Sleep 

8/2 Lil Tecca – Ransom

8/9 Katy Perry – Small Talk (S)

8/16 Lewis Capaldi – Someone You Loved

8/23 Taylor Swift – Lover (A)

8/30 Tones And I – Dannce Monkey

9/6 Post Malone – Circles (A)

9/13 Halsey – Graveyard (S)

9/20 Camila Cabello - Liar

9/27 Ariana Grande, Miley Cyrus & Lana Del Rey – Don’t Call Me Angel

10/4 blackbear – hot girl bummer

10/11 Travis Scott – HIGHEST IN THE ROOM

10/18 Harry Styles – Lights Up

10/25 Selena Gomez – Lose You To Love Me (S)

11/1 Dua Lipa – Don’t Start Now (S)

11/8 Arizona Zervas - ROXANE

11/15 Billie Eilish – everything i wanted (S)

11/22 Maroon 5 - Memories

11/29 The Weeknd – Heartless (S)

12/6 Camila Cabello (feat. DaBaby) – My Oh My (A)

12/13 Post Malone - Circles

12/20 Harry Styles – Adore You

12/27 Dua Lipa – Don’t Start Now

 

※(S)はシングルリリースの週にサムネになった

※(A)はアルバムリリースの週にサムネになった

 

 まとめると13名(のべ)がシングルリリースと同時にサムネに、5名がアルバムリリース時に、27名がその他のタイミングでサムネになっています。リリース即プロモすべきか、落ち着いてきた時に再浮上させるべきか、適宜使い分けながらサムネ起用がされています。

 シングル / アルバムリリース時には、サムネにしなくとも自然と盛り上がるので、そうではないタイミングでサムネにすることで、より多くの曲にチャンスが行き渡らせることができるかもしれません。

 回数も最多でもBillie Eilish、Post Maloneの3回で、なるべく多くのアーティストをサムネにしようという意気込みを感じます。

 

 

(おまけ2020年に入ってからのサムネの推移)

 

1/3 Justin Bieber – Yummy (S)

1/10 Selena Gomez – Rare (A)

1/17 Halsey – You Should Be Sad (A)

1/24 Roddy Ricch – The Box

1/31 The Weeknd – Blinding Lights

2/7 Dua Lipa – Don’t Start Now

2/14 Justin Bieber feat. Quavo – Intentions (A)

2/21 Doja Cat – Say So

2/28 Lady Gaga – Stupid Love (S)

3/6 Bad Bunny – La Difícil 

3/13 Lil Uzi Vert – That Way

3/20 The Weeknd – Blinding Lights (A)

 

 

*1:2020年にも入ったが、数日間だった

*2:英語+非英語が共存する曲は、ビルボードのジャンルで判定します。Hot Latin Songs or World Digital Songs等に入っていれば、その曲は非英語の要素が強いので、非英語曲としてカウントします

*3:ただし見出にはJustin Bieberへの言及あり

【2019・毎週のHot 100ハイライト+トップ10推移表】

 

 今までアップしてきた毎週のHot 100ハイライトを一つにまとめました。巻末にトップ10推移表も付け加えたので、昨年のHot 100をザッと振り返りたい時などにご活用ください。(情報をまとめただけで、特に新情報はございません 笑)

 

※日付をクリックすると、その週の記事に飛びます

※一部内容は訂正しています

※トップ10推移表は最後に貼ってあります

 

☆1/5

・クリスマス曲がさらに増加。計23曲がランクイン、“All I Want for Christmas Is You”は3位へ

・21 Savageがアルバム1位。ストリーミング(特にApple Music)での人気により9曲がHot 100入り

・アルバム2位のA Boogie wit da Hoodieも4曲がHot 100入り

 

 

☆1/12

・Halseyの“Without Me”が首位浮上!”Closer”に次ぐ自身2曲目の1位シングル。2010年代において、Hot 100首位を複数曲獲得した9人目の女性シンガーに

・先週までのクリスマス曲が全てHot 100から外れ、チャートに大きな変化が。子供用ビデオの“Baby Shark”やZara Larssonなどが新登場

・アルバム1位は引き続き21 Savage

 

 

☆1/19

・“Sunflower”が首位浮上!DL、ストリーミング、ラジオでまんべんなく人気

・A Boogie wit Da Hoodieがアルバム1位に。ポイントをほとんどストリーミングから得ており、純売上は1000枚未満

Chris Brownの新曲“Undecided”が35位に登場

 

 

☆1/26

・Juice WRLDリミックス効果でHalseyの“Without Me”が首位返り咲き

・GesaffelsteinとThe Weekndの“Lost in the Fire”が27位に登場。ラジオでの人気が急浮上中

・Sam SmithとNormaniの“Dancing With a Stranger”が33位デビュー

・City Girlsの“Twerk”がビデオ効果で52位に再登場

 

 

☆2/2

・Ariana Grandeの”7 rings”が首位で登場!今週8530万ストリームを記録

・J. Coleの“MIDDLE CHILD”が集計約1日ながらも26位に登場。来週はトップ10入り濃厚

・Logicの新曲“Keanu Reeves”が38位に登場

・Futureがアルバム1位、8曲がHot 100入り

宇多田ヒカルSkrillexの“Face My Fears”が98位に登場。史上11曲目の日本人Hot 100入り

 

 

☆2/9

・J. Coleのシングル“MIDDLE CHILD”が4位に。自己最高位を更新

・Ella Maiの新シングル“Shot Clock”が88位に登場

・グラミー新人候補のカントリーシンガー、Luke Combsの“Beautiful Crazy”がトップ40入り。彼はデビュー以来シングルが全てトップ40入り

・Billie Eilishの”bury a friend”が集計2日ながらも74位に登場

 

 

☆2/16

・ハーフタイムショーよりもゲーム内「仮想」DJ? Marshmelloの“Happier”が2位浮上、”Alone”が28位に再登場

・“Girls Like You”は10位にステイ。これでトップ10滞在が歴代最長タイの33週目に(”Shape of You”に並ぶ)

・21 Savageの”a lot”が(出生地騒動を受け)12位へ浮上

・Billie Eilishの”bury a friend”が14位に

 

 

☆2/23

・Ariana GrandeがHot 100の1位―3位を支配!1964年のThe Beatles以来、史上2回目の偉業。

・アルバム”thank u, next”の収録曲が全てHot 100入り。一番順位の低い”make up”でも48位と高順位(それ以外の曲は全てトップ40圏内)

・この大量登場の影響で”breathin”がチャートから外れる。前アルバム”sweetener”の収録曲が全てHot 100外に

・Khalidの“Talk”が44位に登場

 

 

☆3/2

・Cardi BとBruno Marsの“Please Me”が5位に登場

・殺人の容疑がかけられたYNW Mellyの“Murder On My Mind”が14位に浮上

・Juice WRLDの新曲“Robbery”が27位に登場

・2週目の”thank u, next”がアルバム1位。今週も収録曲全てがHot 100に残る

 

 

☆3/9

・“Shallow”がオスカーの効果で首位浮上!DLの大きな増加に加え、ストリーミングやラジオも浮上。Lady Gagaは2011年の”Born This Way”以来4曲目のHot 100首位、Bradley Cooperは初。

・オスカーのBest Original Songを受賞した曲がHot 100で首位になるのは“Lose Yourself”以来

・Bluefaceの“Thotiana”が9位に浮上。Cardi BやYGのリミックスも

・Offsetがアルバムから5曲、Gunnaがアルバムから6曲がHot 100に入る

 

 

☆3/16

・Jonas Brothersの“Sucker”が首位デビュー。彼らにとって初のHot 100首位。2003年のB2K以来16年ぶりのボーイバンドによるHot 100首位

・“Please Me”がビデオ効果で3位へ浮上

・カントリー風ラップ?の新ミーム候補、“Old Town Road”が83位に登場

・Lil Skiesの“I”が39位と高順位に登場

 

 

☆3/23

CHVRCHES、Marshmelloとのコラボで初のHot 100入り

・Juice WRLDがアルバム1位、7曲がHot 100に

SICKO MODEがトップ10に残り、32週目のトップ10滞在に。歴代3位タイの長さ

・”7 rings”が首位返り咲き。先週1位の“Sucker”は6位へ

・“Mo Bamba”、”Leave Me Alone”などがチャートから外れる

 

 

☆3/30

・Jojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”がついにHot 100に登場!(96位)彼にとって初のHot 100、88risingメンバーがHot 100入りするのも初

・Iggy Azaleaの“Sally Walker”が62位に登場

・“Old Town Road”が好調(52位→31位)

・アルバム1位は引き続きJuice WRLD

 

 

☆4/6

・”7 rings”が8週目の首位。”thank u, next”(7週1位)より長い首位滞在に

・NAVがアルバム1位に。週の後半にリリースしたデラックス版と絡めた、チケットやグッズ+音源戦略も有効に働く (※主要なポイント源はストリーミング)

・先週Hot 100に登場したJojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”は今週チャートから外れる(滞在は1週間だった)

 

 

☆4/13

・Old Town Roadが1位へ浮上!リミックスの分は基本的にまだ集計には入っておらず、ほぼオリジナルのみの人気で首位になったことに(DL・ストリーミングは未集計、ラジオは若干リミックスの数字が集計に入っている)

・Billie Eilishがアルバム1位。収録曲は12曲がHot 100入り。さらにその他の2曲を合わせて彼女はHot 100に14曲ランクイン。女性としては最多のHot 100エントリーに (※9月にTaylor Swiftに塗り替えられる)

・急逝したNipsey Hussleの楽曲が4つHot 100に登場

 

 

☆4/20

・”Old Town Road”が圧倒的1位。Hot 100ではオリジナル・リミックスが合算で集計されています。史上最多の1.43億再生という圧倒的なストリーミング数を記録

・Khalidがアルバム1位に。収録曲のうち8曲がHot 100入り、先行シングル”Better”は8位とトップ10入り。

・BLACKPINKの“Kill This Love”が41位に登場

 

 

☆4/27

BTSがアルバム1位。シングルの”Boy With Luv”は8位に登場!ほかアルバム曲の“Make It Right”も95位にランクイン

・そのBTSの2曲のほか、“Kill This Love”・”Baby Shark”がチャートに残り、今週韓国産の曲が4つ同時にHot 100入り

・Lil Uzi Vertの“Sanguine Paradise”が28位に登場

 

 

☆5/4

・豪華メンバーが揃うLil Dickyの”Earth”が17位に登場

・Khalidの”Talk”がトップ10に浮上

・”ME!”が約2日分のラジオ再生「のみ」で100位に登場(DL/ストリーミングの集計はまだ)

・Daddy Yankeeの”Con Calma”が34位へ浮上。Katy Perryリミックス効果でラジオ/DL人気が拡大

・Billie Eilishがアルバム1位に再浮上

 

 

☆5/11

・Taylor Swiftの”ME!”は2位に。”ME!”は2018年以降で最も高いセールス(19.3万)を記録するも、ストリーミングで圧倒的な数字を記録する”Old Town Road”には及ばず。”Old Town Road”は4週連続で1億再生超え

・DaBabyの“Suge”が46位→27位と浮上

P!nkが僅差を制しアルバム1位に

 

 

☆5/18

・Shawn Mendesの“If I Can’t Have You”が2位に登場!DL、ラジオ、ストリーミングの全てが高次元の成績

・LogicとEminemの“Homicide”が5位に登場

・Vampire Weekendがアルバム1位。Hot 100未登場ながらも3枚目のアルバム1位

・Lizzoの“Truth Hurts”が50位に登場

 

 

☆5/25

・Ed SheeranとJustin Bieberの“I Don’t Care”は2位スタート。

・首位は引き続き“Old Town Road”。今週も1億再生越え

・Logicが自身3度目のアルバム1位

・イギリスで大人気、Lewis Capaldiの“Someone You Loved”が85位に登場

・Jhené Aikoの“Triggered”が51位に登場

 

 

☆6/1

・Tyler, the Creatorがアルバム1位。Hot 100には8曲が登場、”EARFQUAKE”が最高位=13位

・DJ Khaledがアルバム2位、7曲がHot 100入り

・Sweet but Psychoがトップ10に浮上

・Halseyの“Nightmare”が15位に登場

・“Baby Shark”、”thank u, next”、”Drip Too Hard”などが外れる

 

 

☆6/8

・DaBabyの“Suge”が9位に上昇、トップ10入り

・Young Thug、J. ColeとTravis Scottが参加した“The London”が12位に登場、Young Thugがメインの曲では初のトップ40

・“Girls Like You”が1年のチャート滞在の末に外れる

・Ed Sheeranの“Cross Me”が34位に登場

・Billie Eilishがアルバム1位に再浮上

 

 

☆6/15

Katy Perryの“Never Really Over”が15位に登場

・Cardi Bの“Press”は16位デビュー

・Miley Cyrusの”Mother’s Daughter”が54位に登場。EPはアルバムチャートで5位

・アルバム1位はThomas Rhett

・新バイラルヒット候補!Lil Teccaの“Ran$om”が93位に登場

 

 

☆6/22

Chris BrownとDrakeの“No Guidance”が9位に登場。DrakeはThe Beatlesと並ぶ34曲目のトップ10に

・Jonas Brothersがアルバム1位に。初週41.4万は今年最大の数字。ツアーチケットのバンドルの恩恵を受ける

ネクストOld Town Roadとも評されるカントリー調の“The Git Up”が66位に登場

 

 

☆6/29

・Taylor Swiftの"You Need To Calm Down"が2位に登場。"Old Town Road"の牙城は崩せず

・Drakeの"Money in the Grave"が7位に登場。"Omertà"は35位

・Jojiの新曲"Sanctuary"が80位に登場。2回目のHot 100入り

Madonnaがアルバム1位。バンドルで数字を稼ぐ

 

 

☆7/6

・Shawn MendesとCamila Cabelloの“Señorita”が2位に登場

・Lil Nas XのEPから複数曲が上位入り。”Panini”が16位、Cardi Bとの“Rodeo”が22位。EPはアルバムチャートで2位

・Nicki Minajの“MEGATRON”が20位に登場

・アルバム1位はThe Raconteurs。バンドル&ヴァイナルで数字を稼ぐ

・”You Need To Calm Down”が2位→13位と下降

 

 

☆7/13

・Lizzoの“Truth Hurts”が6位へ浮上!初のトップ10入り

・Ed SheeranとKhalidの“Beautiful People”が26位に登場

Chris Brownがアルバム1位

・J BalvinとBad Bunnyの“QUÉ PRETENDES”が65位に登場。2人のコラボアルバムは9位

・Saweetieが初のHot 100入り。”My Type”が81位に登場

 

 

☆7/20

・Post MaloneとYoung Thugの“Goodbyes”が3位に登場

・J. Cole率いるDreamvilleのミックステープがアルバム1位に。収録曲が4つHot 100にランクイン

・UKで大人気、Lewis Capaldiの“Someone You Loved”がUSでもトップ40に突入

・NLE Choppaの“Shotta Flow”がトップ40入り

 

 

☆7/27

・”Old Town Road”が首位をキープ。史上最長タイの16週目の1位に。2位”bad guy”の1.3倍のポイントを記録

・Ed Sheeranがアルバム1位。収録曲が8曲Hot 100入り

・“Eastside”が52週の滞在の末チャートから外れる

・Nicki Minajの“MEGATRON”が3週でチャート圏外に (※後に再登場し、合計5週Hot 100に滞在)

・Billie Eilishの”Ocean Eyes”がピーク82位 / 滞在20週と超低空飛行の成績でチャートから外れる

 

 

☆8/3

・”Old Town Road”が歴史を動かす!史上最長17週目の1位を記録

・Lil BabyとDaBabyの”Baby”が42位に登場

・Anuel AAらラテン5人衆の”China”が52位に登場

・”If I Can’t Have You”がトップ10に再浮上

・Beyoncéの7歳の娘、Blue IvyがHot 100デビュー。女性シンガーでは最年少

 

 

☆8/10

・“Old Town Road”が首位キープ。18週目の1位

・Lil Teccaの“Ran$om”が10位に

・NFがChance the Rapperとのアルバム1位争いを制する。両方ともバンドルを採用し、そこでのセールス差がそのまま順位に出ました。(ストリーミングはChance優勢だった)

パナマ出身Sechの“Otro Trago”がリミックス効果で34位に浮上

・ビデオ公開の“No Guidance”が6位へ浮上

 

 

☆8/17

・”Old Town Road”が19週目の1位。2位”bad guy”の1.2倍のポイントを記録。両方ともポイント下落

・Ariana GrandeとSocial Houseの“Boyfriend”が8位に登場

・Drakeの“Care Package”がアルバム1位。6曲がHot 100に登場

・“High Hopes”と”SICKO MODE”が1年の滞在の末にチャートを後に

 

 

☆8/24

・”bad guy”が1位奪取。先週まで累計9週間2位でしたが、ついに首位に。

・“Old Town Road”は3位へ。19週にわたる1位滞在が終わる

・Megan Thee Stallionの“Hot Girl Summer”が11位に登場

Slipknotが3回目のアルバム1位。Hot 100エントリーが無いアーティストでは最多タイ

・“Shallow”が45週の滞在の末にHot 100から外れる

 

 

☆8/31

・“Señorita”が首位に。Shawn Mendesは初、Camila Cabelloは2回目のHot 100首位

・Young Thugが初のアルバム1位。ストリーミングの人気により計10曲がHot 100入り

・Normaniの“Motivation”が33位に登場

・“Happier”が1年の滞在の末に外れる。”Going Bad”、“Sweet but Psycho”なども外れ、入れ替わりの多い週に

・Doja Catが“Juicy”でHot 100デビュー

 

 

☆9/7

・Lizzoの“Truth Hurts”が首位に!VMAiTunes割引の効果でDLが先週比2倍に

・Taylor Swiftが86.7万という圧倒的な数字でアルバム1位に。純セールスは69.7万

・ストリーミング数も優秀。2.26億再生は女性のアルバム、ポップアルバム、今年のアルバムとしていずれも2番目の成績。(この3つ全てで”thank u, next”が1位=3.07億再生)

・収録曲(18曲)全てがHot 100に入る。2曲がトップ10入り

 

 

☆9/14

・Post Maloneの“Circles”が7位に登場

・Lana Del Reyの”Doin’ Time”が59位に登場。アルバムチャートでは3位

・アルバム1位はTool。チケット戦略などで高いセールスを記録

・Lil Teccaのアルバムがストリーミングで人気。5曲がHot 100入り。アルバムチャートでは4位

・先週アルバム全18曲がHot 100に入ったTaylor Swift。今週は6曲まで減少

 

 

☆9/21

・Post Maloneが48.9万でアルバム1位を獲得。収録曲全てがHot 100入りし、新リリースの”Take What You Want”など4曲がトップ10入り

・再浮上した”Sunflower”のトップ10滞在週数が歴代最長タイの33週に

・”Someone You Loved”がトップ10入り

・Camila Cabelloの”Liar”が56位に、”Shameless”が60位に登場

 

 

☆9/28

・Ariana, Miley, Lana Del Reyによる”Don’t Call Me Angel”が13位に登場

・好調の”Someone You Loved”が4位まで浮上

・ビデオの好調とDaBabyリミックス追加により、Lil Nas Xの”Panini”が5位に

・Post Maloneが引き続きアルバム1位。14/17曲がHot 100に残る

 

 

☆10/5

・ストリーミング、主にApple Musicで絶好調のDaBabyの”INTRO”が17位に登場。アルバムが反映される来週はさらに上昇する見込み

Maroon 5の”Memories”が22位に登場。DLが今週首位

・シングル&アルバム共に1位は変わらず。それぞれ”Truth Hurts”が5週目の1位、Post Maloneが3週目の1位。

・YNW Mellyの”223’s”がトップ40まで突入

・入れ替わりが7曲と動きが少ない週

 

 

☆10/12

・DaBabyがアルバム1位。ストリーミング、特にApple Musicで熱い支持を受け収録曲すべてがHot 100入り!”INTRO”が13位、”BOP”が19位など複数曲が上位に

・j-HopeとBecky Gの”Chicken Noodle Soup”が81位に登場。BTSメンバーがソロでHot 100入りするのは初

・Zaynを迎えたSHAEDの”Trampoline”が18位まで浮上

・French MontanaがPost MaloneとCardi B、ラテンのプロデューサーRvssianと組んだ”Writing on the Wall”が56位に登場

 

 

☆10/19

Travis Scottの”HIGHEST IN THE ROOM”が1位に登場!

・Dan + ShayとJustin Bieberの”10, 000 Hours”が4位、Juice WRLDとYoungBoy Never Broke Againの”Bandit”が11位、と上位デビューが相次ぐ

・韓国SM事務所の特別ユニットSuper Mが圧倒的なセールスでアルバム1位に

・Summer Walkerがアルバム2位。ストリーミング人気が高く8曲がHot 100入り

・複数国でシングル1位の“Dance Monkey”が96位に登場

・”SLOW DANCING IN THE DARK”が約半年ぶりにHot 100再登場(100位)

 

 

☆10/26

・YoungBoy Never Broke Againがストリーミング人気によりアルバム1位。8曲がHot 100入り

・その彼とJuice WRLDのタッグ曲“Bandit”がトップ10入り(この曲はアルバムには入っていない) *1

・“Truth Hurts”が1位返り咲き(7週目)

Harry Stylesの新曲“Lights Up”が17位に登場

・ビデオ効果でMaroon 5の”Memories”が20位→12位と浮上

 

 

☆11/2

・”Someone You Loved”が1位に。母国UKで1位を獲得したのは3月。その後USでもじわじわ勢力を伸ばし、ついに覇権を取る

・約2日分の集計ながらも、Selena Gomezの”Lose You to Love Me”が15位に登場。2日分でDL数が今週1位

TikTokの効果で“Hate Me”が69位に再登場。ピークを更新

・Frank Oceanの“DHL”が98位に登場

・Post Maloneがアルバム1位再浮上

 

 

☆11/9

・"Lose You to Love Me"が首位に浮上。Selena Gomezは初のHot 100 首位

Kanye Westが9回目のアルバム一位。全曲がHot 100入り。"Follow God"は7位に登場

・リミックス効果でLizzoの"Good As Hell"がトップ10入り(6位)

・先週まで53週滞在の"Sunflower"が外れる

 

 

☆11/16

・”Someone You Loved”が1位復帰。”Circles”が2位に浮上

Maroon 5の”Memories”が9位に浮上。キャリア15曲目のトップ10

・リミックス&ビデオ効果でYoung Thugの”Hot”が11位に

・Dua Lipaの”Don’t Start Now”が30位に登場

・”Don’t Call Me Angel”が7週の滞在でHot 100から外れる

・Kane Brownの”For My Daughter”がDL1位ながらもHot 100では90位

 

 

☆11/23

・"All I Want for Christmas Is You"が39位に再登場。昨年よりも1週早いタイミングで

・アルバム1位はLuke Combs。シングルの”Even Though I’m Leaving”は11位まで浮上

・Lil Babyの"Woah"が19位に登場

TikTok発とされる曲が複数デビュー("Yellow Hearts"=81位 "Valentino"=92位)

 

 

☆11/30

・Post Maloneの”Circles”が1位に!”rockstar”、”Psycho”、”Sunflower”に次ぐ4曲目の首位

・Billie Eilishの新曲”everything i wanted”が8位まで浮上。”bad guy”に次ぐ2回目のトップ10

・Lizzoの”Good As Hell”が3位まで浮上。ラジオ再生数では1位に(”Truth Hurts”に次ぐ)

・”Roxanne”が12位とトップ10に接近

Celine Dionがチケットバンドルの恩恵でアルバム1位

 

 

☆12/7

TikTok発のArizona Zervasの”Roxanne”が5位まで浮上

・Bad Bunnyの新曲”Vete”が33位に登場

・クリスマス曲が5つ再登場。”All I Want for~”は18位に浮上

・Trippie Reddが初のアルバム1位。5曲がHot 100入り

・”Frozen 2”がアルバム3位に浮上。3曲がHot 100入り

 

 

☆12/14

・The Weekndの“Heartless”が1位に浮上!彼にとって4曲目の首位。もう一つの”Bliding Lights”は11位

・クリスマス曲が8つ増加し、計14曲がHot 100入り。“All I Want for Christmas Is You”は3位へ、”Rockin’ Around the Christmas Tree”は8位に

・“Frozen 2”がアルバム1位

TikTok発“No Idea”が68位に登場

 

 

☆12/21

・”All I Want for Christmas Is You”が1位に!Mariah Careyにとって11年ぶりのHot 100首位(累計19曲目)

・Juice WRLDへの追悼で関連曲が7つHot 100に。(先週も滞在していた曲も複数含む)“Lucid Dreams”は8位

・Roddy Ricchがアルバム1位。5曲がHot 100入り

・先週1位の“Heartless”は17位へ。1位からの下落幅は歴代で最大

・“Dance Monkey”がトップ10入り

Harry Stylesの“Adore You”が35位に登場

 

 

☆12/28

Harry Stylesが総合売上47.8万という圧倒的な数字でアルバム1位。チケットやマーチ戦略を活用し、純セールスが39.3万。ストリーミングの数字も優秀(1億再生越え)で、7曲がHot 100入り。

・Lil Uzi Vertの新曲”Futsal Shuffle 2020”が5位に登場

・“All I Want for Christmas Is You”が首位キープ。2位も”Rockin’ Around the Christmas Tree”で、1位2位がクリスマス曲

 

 

 

 ☆トップ10推移表

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*1:これよりも上位の曲がポイントを落としたため、この曲自体のポイントは減少したにも関わらず順位を上げる、という変わったトップ10入りの仕方

2019のRIAA報告を見る:4年連続の2桁成長

 

 RIAAアメリカレコード協会)の売上データベース2019年版が更新されました!今年も引き続き2桁成長を達成し、ストリーミングを中心とした好調が続いていることが伺えます!

 RIAAによる分析記事もあるのですが(Charting a Path to Music’s Sustainable Success - RIAA - Medium) 

 私なりの目線でも2019年版のデータを掘り下げてみようと思います。RIAAのサイトにあるデータベースを見ながら、読んでみてください。

※この記事を書いているのは2020年ですが、便宜上 今年=2019年とします。

 

 

・4年連続の2桁成長

 2016年以降、2桁成長が4年連続で続きました。これはRIAAのデータベース上では初のことのようです。以下は成長率の変遷です。

※単位はM(Million)$

 

売上額 前年比 成長率 覇権媒体
1973 2000     ヴァイナル
1974 2200 200 10.0%
1975 2400 200 9.1%
1976 2700 300 12.5%
1977 3500 800 29.6%
1978 4100 600 17.1%
1979 3700 -400 -9.8%
1980 3700 0 0.0%
1981 4000 300 8.1%
1982 3600 -400 -10.0%
1983 3800 200 5.6% カセット
1984 4300 500 13.2%
1985 4400 100 2.3%
1986 5600 1200 27.3%
1987 6300 700 12.5%
1988 6300 0 0.0%
1989 6600 300 4.8%
1990 7500 900 13.6%
1991 7800 300 4.0% CD
1992 9000 1200 15.4%
1993 10000 1000 11.1%
1994 12100 2100 21.0%
1995 12300 200 1.7%
1996 12500 200 1.6%
1997 12200 -300 -2.4%
1998 13700 1500 12.3%
1999 14600 900 6.6%
2000 14300 -300 -2.1%
2001 13700 -600 -4.2%
2002 12600 -1100 -8.0%
2003 11900 -700 -5.6%
2004 12300 400 3.4%
2005 12300 0 0.0%
2006 11800 -500 -4.1%
2007 10700 -1100 -9.3%
2008 8800 -1900 -17.8%
2009 7800 -1000 -11.4%
2010 7000 -800 -10.3%
2011 7100 100 1.4%
2012 7000 -100 -1.4% ダウンロード
2013 7000 0 0.0%
2014 6700 -300 -4.3%
2015 6700 0 0.0% ストリーミング
2016 7600 900 13.4%
2017 8800 1200 15.8%
2018 9800 1000 11.4%
2019 11100 1300 13.3%

 (3年連続で続くことは何回かあったようです)

 

 今年は2007年以来の100億$超えを達成。仮に今後も2桁成長が続くとすれば、2022年には過去最高額の売上に到達します。

 

 

・全体の約80%がストリーミングから!

 今年の売上の中心になったのは、もちろんストリーミングです。中でもOn-Demand(選択式、SpotifyAppleなど)の有料会員からの収入は全体の53.4%を占めています。(額でいうと59億$)

 さらにその他のストリーミングである広告付きOn-Demand(8.2%)、広告付きその他のストリーミング(2.3%)、デジタル・ラジオ(8.2%)、制限付きストリーミング(7.5%)らを全て合わせると約80%を占めることになります。

 

 

・各ジャンルの増減

 さらに各ジャンルの伸び率を見ていき、今年の2桁成長の要因を探っていきます。2017年→2018年、2018年→2019年の推移を比較します。

 

※単位はM(Million)$

※ジャンルの詳しい説明は後述します

  2018→2019 2017→2018
全体 1300 13.3% 1000 11.4%
LP/EP 78 18.7% 31 7.9%
CD -84 -12.0% -402 -36.5%
Music Video (Physical) 0 0.4% -11 -28.5%
アルバムDL -105 -21.1% -169 -25.3%
シングルDL -76 -15.4% -188 -27.7%
Other Digital 2 8.6% 3 17.2%
On-Demand (Paid Subscription) 1200 25.5% 1200 34.3%
On-Demand (Ad-Supported) 149 19.6% 101 15.3%
Other Ad-Supported Streaming
0 -0.1% -10 -4.0%
Sound Exchange -45 -4.7% 301 46.1%
Limited Tier Paid Subsctiprtion
82 11.0% 156 26.3%
Synchronization -9 -3.2% 53 23.0%

 

 稼ぎ頭である有料会員のOn-Demandストリーミングは今年も昨年も同じ伸び「幅」です。ただし伸び「率」という観点で見ると昨年よりは劣ります。その他のストリーミングも同様に、昨年ほどの伸び率を記録していない媒体も多いです。

 これにも関わらず全体の伸び率は今年の方が高いです。理由として大きそうなのはCDの落ち幅をかなり抑えられたことです。2018年には約4億$(-36.2%)という凄まじい落下幅を記録しましたが、2019年は約8000万&(-12.0%)と控えめになりました。また、同様にダウンロードの下げ幅も2018年と比べて落ち着きました。

 

(表にするとこんな感じです)

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  今年の2桁成長は、もちろんストリーミングが引き続き伸びていることが大きいのですが、密かにセールスの落ち幅が控えめになったのもキーポイントだと感じました。

 

 ※ジャンル名の補足説明

・Other Ad-Supported:On-Demandなどのストリーミングではなく、後述のSound Exchange=ラジオ型でもないストリーミングのことを指しています。これ以外の有力なストリーミングというと、YouTubeが浮かびます。 (後日訂正:On-DemandのAd-SupportedにはVideo Serviceが含まれると書いているのでYouTubeはOther AdではなくOn-DemandのAdに含まれるっぽいです。すいません)

 

・Sound Exchange:デジタル・ラジオ、Pandoraなどです。

 

・Limited-Tier Paid Subscription:有料会員ではあるものの、機能に制限があるストリーミング。Amazon Echoの4$プランが例の一つのようです。

 

・Synchronization:映像媒体における音楽の使用料のことです。

 

 

・CDとダウンロードの推移

 最後に今年の2桁成長にある意味貢献(?)した、CDとダウンロードが登場以来どのように推移してきたかを見ます。

 

 ☆CD(シングル+アルバム)

売上(M$) 前年比 成長率
1983 17    
1984 103 86.1 500.6%
1985 390 286.2 277.1%
1986 930 540.6 138.8%
1987 1600 669.9 72.0%
1988 2100 500 31.3%
1989 2600 500 23.8%
1990 3500 900 34.6%
1991 4335 835.1 23.9%
1992 5345 1010 23.3%
1993 6546 1200.7 22.5%
1994 8556 2010.3 30.7%
1995 9511 954.8 11.2%
1996 10084 573.2 6.0%
1997 10173 88.6 0.9%
1998 11613 1440.5 14.2%
1999 13022 1409.2 12.1%
2000 13343 320.3 2.5%
2001 12979 -363.3 -2.7%
2002 12020 -959.8 -7.4%
2003 11236 -783.6 -6.5%
2004 11415 179 1.6%
2005 10511 -904.1 -7.9%
2006 9408 -1103.2 -10.5%
2007 7512 -1895.5 -20.1%
2008 5504 -2008.7 -26.7%
2009 4303 -1200.4 -21.8%
2010 3403 -900.2 -20.9%
2011 3104 -299.4 -8.8%
2012 2503 -600.3 -19.3%
2013 2102 -400.8 -16.0%
2014 1804 -298.8 -14.2%
2015 1401 -402.4 -22.3%
2016 1100 -300.9 -21.5%
2017 1102 1.2 0.1%
2018 699 -402.9 -36.6%
2019 615 -83.9 -12.0%

 

☆ダウンロード(シングル+アルバム)

売上(M$) 前年比 成長率
2004 184    
2005 499 315.5 171.9%
2006 857 357.5 71.6%
2007 1308 451.9 52.8%
2008 1635 326.9 25.0%
2009 1944 309 18.9%
2010 2172 228.1 11.7%
2011 2600 427.6 19.7%
2012 2800 200 7.7%
2013 2800 0 0.0%
2014 2500 -300 -10.7%
2015 2300 -200 -8.0%
2016 1769 -531.2 -23.1%
2017 1347 -421.8 -23.8%
2018 990 -356.9 -26.5%
2019 809 -180.8 -18.3%

 

  いずれも今年は黎明期並の数字に戻りました。「落ち止まり」みたいな感じですかね。これからすぐにセールスが皆無になることは考えづらく、今後CDやダウンロードの落下が全体の成長の足を引っ張るという展開は考えづらそうです。

 ただしDLに関してはiTunes廃止の説があるので、これが万が一実行されればDLが大きく落ちて、影響が出るは避けられないでしょう。実行されるのかは分かりませんが。

 

 これからはさらにセールスが全体に占める割合が落ちていくと思うので、いかにストリーミングが成長を保てるかが今後のテーマになりそうです。成長をしているうちに次なる手を打つのが理想的だとは思うのですが、果たして……?

  

  

Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】

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 こんばんは。今月シングル上位の動きが鈍かったですが、アルバムチャートは見ていて面白かったです!(けっこう記事でアルバムチャートも扱うことが多いと感じたので、記事名にもBillboard 200を入れました)

 

※記事は月1ですが、Twitterでは毎週のHot 100の動向・ショート版を配信しています。宜しければそちらも…… あと今月記事が少なかったので、来月以降は改善しようかな~と考えています。

 

 

・今月のトップ10(シングル)推移

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・今月のアルバムトップ5推移

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・今月の各指標の1位推移

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※日付はHot 100準拠

 

 

~各週のハイライト~

 

2/1のハイライト◇

Eminemが27.9万枚でアルバム1位。10作連続での1位。12曲がHot 100入りし、”Godzilla”は3位に

・アルバム2位のHalseyは23.9万枚、アルバム3位のMac Millerも16.4万枚とかなりハイレベルなレース。Halseyはセールスが中心。Millerはストリーミング中心で10曲がHot 100入り

・“The Box”が首位キープ。アルバムは4位ながらも売上は10.3万枚

・Jonas Brothersの新曲が16位に登場

 

2/8のハイライト◇

・グラミー効果で”bad guy”が24個順位を上げて17位まで浮上。同様に”everything i wanted”も13位上昇で10位へ

・Dua Lipaがキャリア2曲目のトップ10!”Don’t Start Now”が9位に浮上

・Megan Thee Stallionの新曲が31位に登場

・Roddy Ricchがシングル&アルバム両方で1位

・グラミーでパフォーマンスされたDemi Lovatoの”Anyone”が多くのDLを稼いで34位に登場

 

2/15のハイライト◇

・Lil Wayneがアルバム1位。4曲がHot 100入り

・今週ラジオの伸び幅が最大だった”The Box”が引き続き首位

・Taylor Swiftの”Only the Young”が50位に登場

・Dua Lipaの”Physical”は60位に

・Meghan TrainorがNicki Minajとの”Nice To Meet Ya”で2年ぶりのHot 100(89位)

・アルバム1位のLil Wayne、同4位のRuss、同7位のKesha、同9位のLouis Tomlinson、同10位のYo Gotti全員がチケットやグッズのバンドル戦略でセールスを稼ぐ

 

2/22のハイライト◇

・Justin Bieberの”Intentions”が11位に登場

・Nicki Minajの新曲”Yikes”が23位に登場。DLが今週1位。しかし来週は大きく順位を落としそう (追記:2週目は81位に)

・Jojiの”Run”が68位に登場。3回目のHot 100入り&キャリアピークを更新(”SLOW~”のピークは69位)

・Roddy Ricchが再びシングル&アルバム両方で1位

 

2/29のハイライト◇

・Justin Bieberがアルバム1位。売上は23.1万で6曲がHot 100入り。”Intentions”がトップ10に

・A Boogie Wit da Hoodieがアルバム2位。11.1万の売上はほとんどストリーミングから。7曲がHot 100に

・Tame Impalaが11.0万でアルバム3位

・”Don’t Start Now”が5位浮上。”New Rules”を上回る

 

 

主なトピックス

 

・2/1のアルバム激戦区

 2月はこのアルバム激戦区でスタートしました。Eminemが27.9万、Halseyが23.9万、Mac Millerが16.4万とかなり高水準の成績を記録。これらは全て1月ならばどの週でもアルバム1位を獲得できる成績です。 (ほか4位のRoddy Ricch(新リリースではない)も10万超えの成績を記録しています)

 またこの激戦区はHot 100にも影響を及ぼしました。EminemMac Millerの2作品がストリーミングで絶大な人気を得て、Hot 100にアルバム曲が大量登場したため、この週は合計で25曲がチャートから外れました。

 

 Eminemの今作の売上27.9万は、前作”Kamikaze”の43.4万よりは数字を落としたものの、それよりもサプライズリリースでここまでの数字を連発できる凄さの方が目を引きます。純セールスの数字は(25.2万→11.7万)落としたものの、ストリーミングによる売上は大差ありません。(16.8万→15.4万 ただし曲数が前作よりも多いので曲ごとの平均では落ちた) 

※ちなみに2017年末の“Revival”は総合26.7万、純セールス19.7万 

 

 これでEminemは10作連続10回目のアルバム1位。10作連続1位は歴代最長の記録。通算1位数も歴代で5位タイです。(最多はThe Beatlesの19枚)

 そのストリーミング人気から12曲がHot 100に登場。Juice WRLDとの”Godzilla”は3位に登場。この曲はUK1位など、ほかの国でもヒットしています。最後のヴァースで秒あたりのワード数記録を更新したことも少し話題に。(前はEminem自身の“Rap God”がこの記録を持っていた)

 ほか客演で参加のAnderson .PaakとWhite Goldが初のHot 100入りを成し遂げています。

 

 ちなみに“Godzilla”が歌詞に登場するHot 100に入った曲は4つ見つかりました。

Kanye West feat. Jay-Z, Rick Ross, Nicki Minaj & Bon Iver – Monster

Eminem feat. Royce da 5’9” – Not Alike

Eminem feat. Juice WRLD – Godzilla

Eminem feat. Don Toliver – No Regrets

 太字になっている人物のパートで“Godzilla”が登場します。Eminemが好んで使っている表現のようですね。ほかHot 100に惜しくも入らなかったFutureやGunnaの曲にも”Godzilla”が登場していました。

 

 

 Halseyはチケットやグッズ戦略を駆使したセールス中心に数字を稼ぎ、前作の2倍以上の23.9万枚を売上。アルバム2位としては2016年のBeyoncé*1後で最大の数字です。ストリーミングも5.6万で、同様にかなり伸びました。普通に好成績ですが、それでも2位なのは巡り合わせが悪いだけです。昨年このアルバムよりも高い成績を記録したのは8人(組)のみでした。アルバムからのHot 100エントリーは2曲。

 これでHalseyは3作の中で最も売上が低い(10.6万)のセカンドが唯一のアルバムチャート1位という変わった経歴の持ち主となりました。

 

 Mac Millerはストリーミング中心の人気。これにより10曲がHot 100入りを果たしています。そしてグッズ戦略も使ってセールスも少し稼ぎ、総合売上は16.4万でキャリア最高です。アルバム1位を獲得した2011年のデビュー作は14.4万でした。

 

 

・激戦区再び?2/29のアルバムチャートも……

 1週目ほどではないですが、2月の最終週も10万超えが3つ登場する激戦区でした。Justin Bieberの”Changes”が23.1万で1位。(7作目の1位) 次いでA Boogie Wit da Hoodieが11.1万で2位、Tame Impalaが僅差の11.0万で3位です。JustinとTameはチケット+音源戦略*2やグッズバンドル戦略を駆使してセールスを稼ぎました。

 

 Justin Bieberは前作”Purpose”の総合64.9万と比較すると数字が落ちました。これはもちろん2015年と2020年の環境の違い:人々が購入からストリーミングへ移行したこと、が影響しています。実際に純セールスは52.2万→12.6万と数字を落とす一方、ストリーミングは7700万→1.3億と伸びています。再生数はポップアルバムでは歴代でも屈指の数字で、好成績と捉えることもできます。

 しかし前作では収録曲が17もHot 100入りを果たしていたのに対し、今回は6曲のみのエントリーに。ストリーミングへの移行により、環境的には2020年の方がアルバム曲のHot 100エントリーは増えているのにも関わらず、Hot 100入りが減少。この点に関しては物足りなさを感じます。シングルの”Intentions”が多少はヒットしそうな点が希望の光でしょうか。

 

 次いでA Boogie Wit da Hoodie。2019年にアルバム1位を獲得した実績はありますが、今回は2位デビューに。前作ではストリーミング人気の持続によってリリース週ではない週にアルバム1位を獲得しましたが、次週以降もリリースラッシュが続くため今作ではアルバム1位にはならなそうです。

 とはいえ各種バンドルといったセールス戦略を使わずに11.1万という成績はかなり優秀だと思います。純セールスはわずか3,000のみで、成績はほとんどストリーミングによるものです。Apple Musicでは絶大な人気でしたが、Spotifyではそこそこ。

 ちなみに彼は前作で純セールスが1000以下ながらもアルバム1位、という史上初の記録(当時)を成し遂げています。

(参考:Hot 100 1/19 見どころ 【“Sunflower”が首位奪取 + ストリーミング時代のアルバムチャート】 - チャート・マニア・ラボ

 

 ちなみに今年はここまで収録曲を5曲以上(同時に)Hot 100入りに送り込んだ作品が5つあります。これは2018年の29アルバム/53週を上回るペースです。さらに来週はYoungBoy Never Broke Again、2週間後はLil Babyなど、今後も5曲以上がHot 100に入りそうなアルバムが相次ぐことから今年は歴代で最も「アルバム曲Hot 100ジャック」が見られる年になるかもしれません。

 

※5曲以上が同時にHot 100入りした作品

1/11:JACKBOYS 6曲

2/1:Eminem 12曲

2/1:Mac Miller 10曲

2/29:Justin Bieber 6曲

2/29:A Boogie Wit da Hoodie 7曲

 

 

  そして躍進が光ったのは3位のTame Impalaです。Hot 100入りの経験は無いですが、11.0万と週によっては充分1位を獲得できるクラスの成績を記録。前作の4.5万から大幅に上昇しました。

 チケットやグッズ戦略も活用。さらにはヴァイナル人気も伴い、セールス(8.0万)で大きく数字を稼ぎました。

 またストリーミングも好成績を記録。特にSpotifyでの人気が高く、リリース日には収録曲全てがランキング圏内に登場。その中でも特に人気のあった”Breathe Deeper”がHot 100に入るかも!?と少し期待していたのですが、残念ながらBubbling Underにも届かず。

 Tame Impalaは過去作品も注目されていて、2015年の”The Less I Know The Better”がリリースから4年が経過した昨年、はじめてSpotifyのグローバルチャートに登場するという快挙も成し遂げています。今年に入ってからも断続的にランクインしています。(この曲が収録された”Currents”はUSアルバムチャートに再登場を果たしました)

 ストリーミングで人気を獲得し、さらにはヒップホップ方面とのタッグ(RihannaTravis Scott)もこなすTame Impala。そんな彼(ら)がメインストリームでも大躍進する日がいつか来るかもしれません。

 

 ほかこの週はK-PopグループMonsta Xが複数戦略(チケットやグッズ、ポップアップストア、CD複数バージョンなど)を駆使してセールスを稼ぎ、5.2万の成績でアルバム5位に食い込みました。

 彼らはHot 100には未登場ですが、昨年French Montanaとの英語シングル“Who Do You Love”がポップ系ラジオで26位まで浮上と人気を得て、飛躍の兆しを見せています。 (BTSでもポップ系ラジオ最高成績は22位なので、K-Popがここまでラジオにかかるのは珍しいです。ラジオでかかるには英語歌詞がやはり大切なのかも? ちなみにMonsta Xは今回のアルバムも全編英語歌詞のようです)

 

 

・全員バンドル? 特徴的だった2/15のアルバムチャート

 激戦区ではないのですが、2/15のアルバムチャートも面白かったです。トップ10に新作が5つ登場したのですが、その全部がバンドル戦略を活用していたのです!もはやこのようなセールス戦略を活用しないほうが珍しく、アルバムチャートはこのセールス戦略をいかに活用するか・ストリーミングでいか人気を得るかの2つの軸で争われている印象があります。

 この戦略を用いた場合、初週の数字は高くなりますが2週目に反動でガクっと数字を落とす傾向にあります。この週の作品はどうだったでしょうか。

 

Lil Wayne 🎫👕:1位 → 6位

Russ 🎫👕:4位 → 46位

Kesha 🎫👕:7位 → 139位

Louis Tomlinson 🎫👕:9位 → 圏外

Yo Gotti 👕:10位 → 30位

(🎫=チケット+音源戦略 👕=グッズバンドル戦略)

 

 セールス戦略を導入したとはいえ、ストリーミングの成績が半分以上を占めたLil WayneとYo Gottiの下げ幅は最小限に。同様にストリーミングで一定の成績を収めたRussも落下はそこまで大きくないです。

 ただしストリーミングの数字をあまり稼げなかったKesha・Louis Tomlinsonは順位を大きく落としました。

 

 

・動きが鈍い上位

 今月アルバムチャートの話題は盛りだくさんでしたが、Hot 100上位の動きは鈍かったです。1位の”The Box”、そして2位の”Life Is Good”が2月の間ずっと順位をキープ。さらに”Circles”も2/1の週以外はずっと3位に居座っていました。

 “The Box”と”Life Is Good”はストリーミング中心の人気。そして”Circles”はラジオ中心の成績です。”Circles”は今月4週にわたりラジオ1位を記録しています。(1週だけ”Memories”がラジオ1位になった。その”Memories”も長く上位に)

 

 あまり変化が無かったHot 100の上位で数少ない新風となったのはDua Lipaの“Don’t Start Now”。

 この曲はリリース時から注目を集め、次第にラジオでも浮上。ストリーミングでも数字を落とさずに人気をキープしたことによりHot 100で好成績を記録。かつての”New Rules”の6位ピークを上回る5位まで到達しました。このようにラジオとストリーミングの足並みが揃う曲は最近では少しレアだと思います。

 最後の週にトップ10入りを果たした”Blinding Lights”も来月以降の活躍に期待ができそうです。この曲はアメリカ国外で人気を得たことによって、USのラジオでもシングルカットされHot 100で急浮上しました。

 

 

・グラミーの週

 昨年のグラミーのチャートへの影響力は最小級でした。披露する曲のチョイスを巡ってグラミー出演がキャンセルされたAriana Grandeのアルバム曲がチャートを支配する一方で、グラミー関連曲でHot 100に登場したのは96位のKacey Musgravesの”Rainbow”くらいです。

(参考:Hot 100 2/23 見どころ 【Ariana Grande、1位2位3位を支配、史上2回目の偉業】 - チャート・マニア・ラボ

 

 その昨年と比べると、今年はチャートで動きがありました。まず4部門制覇のBillie Eilish。”bad guy”が41位→17位へ、”everything i wanted”23位→10位へと上昇。次週以降もそこまで順位を落とさず、本格的な「再浮上」になりました。特に後者は以降ラジオの伸びが見られたので、グラミーがきっかけに曲がさらにヒットしたと言えます。

 

 これ以外にも34位にDemi Lovatoの”Anyone”、80位にMeek Millの”Letter To Nipsey”、93位にAlicia Keysの”Underdog”、94位にCamila Cabelloの”First Man”と複数のグラミー関連曲がHot 100デビュー。グラミーはチャートで一定の存在感を示しました。ただしこれらの曲はBillieとは違い、すぐにチャートから外れてしまいました。

 

 

・表記の揺れ?

 細かいところなのですが、ビルボードの表記とストリーミングなどでの表記が少し異なるケースがいくつか見られます。多いのは、ストリーミングでは2人目以降のアーティストがfeat.なのに、ビルボードでは&でくくられて全員がメインアーティストになっている事例です。直近の週で言えばMigosの”Give No Fxk”です。この曲に関しては曲名も微妙に異なります。(ビルボードでは”g n f (Give No Fxk)”と表記されていますが、他でこのg n fという表記を見たことが無い)

 メインか客演かならば些細な問題だと思うのですが、少し気になるのはリミックスの名義を載せるかどうかの問題です。ビルボードは人気のバージョンの方の名義を採用する*3としていますが、ストリーミングでの数字と比例しないケースも多く見られます。ラジオの成績準拠なのかもしれませんが。

 ストリーミングではリミックスのほうが人気なのにビルボードではリミックス名義が載らないというケースが多いのですが、2/22に登場した”Rodeo”ではLil Nas X & Cardi B or Nasという柔軟な表記をしています。この"or"の表記はレアですが、動向を忠実に反映させていて良い表記だと思います。

 

 

・曲ごとの短評

 その他気になった曲について書いていきます。

 

・Jonas Brothers - What A Man Gotta Do

 ストリーミングでは”Sucker”のような成績を記録できませんでしたが、DLでは同週リリースのBTSを上回り1位に。ほかラジオでも熱烈な支持を受けてHot 100で16位デビュー。その後もラジオでの好成績によって中位に留まっています。彼らは過去曲の”Sucker”や”Only Human”もラジオでの人気が長く持続しています。このラジオ人気があれば、今後もHot 100で安定した成績を残しそうな予感がします。

 

・Taylor Swift – Lover

 ピーク10位で滞在22週と十分好成績なのに、年を跨いだことによって年間チャート入りが難しい曲。アルバムリリース時のストリーミング成績は良かったですが、ラジオがそこまで伸びなかったこと、Shawn Mendesリミックスがそこまで効力を発揮しなかったことが誤算でしょうか。次シングルは“The Man”

 

Chris Brown feat. Gunna – Heat

 ピーク36位・滞在20週と地味に良い成績だと思います。リズミック系1位・アーバン系2位とラジオの好成績によってHot 100で成功を収めました。

 Chris Brownは“No Guidance”も同様にラジオで強く、R&B/Hip-Hop Airplay*4では合計27週1位。これは歴代で最長の1位滞在です。 (それまで記録を持っていたのは”Adorn”の23週)

 

・Joji - Run

 Joji3曲目のHot 100エントリー。68位に登場し、”SLOW~”の69位を上回りキャリア最高位を更新しました。Spotifyでは週間16位とかなり好成績でした。 ただ2週目にはHot 100から外れ、ストリーミングでも数字を落としていきました。

 このような「登場時のストリーミング成績は高いが、その後数字を早く落としてしまう」というアクションは2つの捉え方ができると思います。

 

 1つ目はリリース時の高順位に着目して、「人への期待度が高い」という捉え方です。インディーアクトなどにも見られる動きで、この傾向があるアーティストはアルバム時に伸びることが多い印象です。

 世間的な注目度、例えばラジオのオンエア・メディアでの露出・過去のシングルヒット数などから予測されるヒット度を上回るとこの印象がつくと思います。Jojiもラジオのオンエア少なめなので、こちらの印象が付くと思います。あとは5位ピークながらも9週でHot 100を去ったLil Uzi Vertもこちらのパターンだと思います。

 

 Jojiは新曲の”Run”こそ順位がすぐに落としてしましましたが、”SLOW DANCING IN THE DARK”はSpotifyで超絶ロングヒットを記録しています。この曲の存在が彼への期待感を高めている、という捉え方もできます。以下はこの曲のSpotify順位推移です。

 

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2018年のクリスマスの1週を除き、リリース以降全ての週でランクインし続けています。

 

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さらに再生数ベースの表です。横ばいどころか、微増の傾向が伺えます!

 

 

 2つ目は落ちる方に着目して、「期待はずれ」という捉え方です。これは従来ならばシングルヒットを多く飛ばしているアーティストなのに……というニュアンスが含まれています。すぐ順位を落としてしまう状況は、あまりシングルヒットとは言い難いです。Nicki Minajなどがどちらかというとこのパターンでしょうか。

 2つ目とは逆に、ラジオ・メディアのサポートを受けているとこの印象が強くなるかもしれません。ラジオでたくさんかかっていたのに、すぐに順位を落としてしまうと「ヒットを逃した」感が出てしまいます。

 とはいえアーティストとしての注目度が高いことはたしかなプラス材料です。最初の注目度が高ければ、今後のリリースでヒットを生み出すチャンスも大きいですし、アルバムで人気を集める可能性も大きいです。

 いくら落下度が高くても、その初動の火を消さないことが大切だと思います。

 

 

・Don Toliver – No Idea

 ピーク43位・滞在11週という成績でチャートを後に。トップ40に惜しくも届かず。Hot 100では重要なラジオの数字をあまり得られなかったことが痛かったです。

 彼はこの曲でHot 100で登場以降、JACKBOYSのアルバムで2曲、さらにはEminemの客演として1曲のHot 100入りを成し遂げました。この多方面からの人気ぶりは今後の飛躍を予感させます。

 

・The Black Eyed Peas & J Balvin – RITMO (Bad Boys For Love)

 The Black Eyed PeasがJ Balvinと組んだ”RITMO”がトップ40まで到達。BEPは”Just Can’t Get Enough”以来、およそ10年ぶりのトップ40です。

 この曲はJ Balvinがスペイン語ヴァースで参加していることにより、まずはラテン圏で人気になり、SpotifyYouTubeの両方でグローバルトップ10まで到達。その後USラジオでのオンエアが始まり、Hot 100にも登場。現在ストリーミングでのピークは過ぎたような印象ですが、ラジオでの人気拡大によってトップ40入りを成し遂げました。ラテンのスターに牽引される形で英語圏のビッグアクトが復活を遂げたという構図は興味深いです。

 USのラジオでオンエアされたのはある意味The Black Eyed Peasの功績とも言えます。ラテン曲ヒットのうち、全パートスペイン語の曲だとラテン以外のラジオにあまりかからないですが、英語パートがある程度混ざっていると他系統のラジオにも波及しやすいようです。

 昨年Spotifyのグローバルトップ10入りしたラテン曲を調べたところ、英語ヴァースのある曲はラテン系以外のラジオでもかかる一方、スペイン語のみの曲はDrakeが参加した”MIA”を除きすべてラテン系以外のラジオチャートへのエントリーがありませんでした。

 Hot 100で順位をより伸ばすには、ラジオの成績が大切ですが、そのラジオでオンエアされるためには英語ヴァースが必要、ということです。

 

 

・DaBaby - VIBEZ

 “VIBEZ”がピーク21位・滞在20週という成績でチャートから外れました。いわゆる「完走」です。

 この曲の特筆すべきポイントは、ラジオの成績(ほぼ)無しで20週もHot 100に残ったという点です。DaBabyのシングルは現在”BOP”の方で、”VIBEZ”はビルボードのラジオ系チャートに一切登場していないですが、ストリーミング人気を長く持続してHot 100に残り続けました。純粋にDaBaby人気が抜群なこと、TikTokで人気を得たこと、プレイリストに長く入っていたことなどが人気の理由だと思います。

 ラジオではシングルカットを「順番に」行うため、ストリーミングで盛り上がるタイミング=多くはアルバムリリース直後のタイミングを逃してしまうことがありますが、プレイリストは同一アーティストの曲を複数含むことも多いので、ヒットの熱を逃さず複数シングルを活かすことが可能です。

 DaBabyは現在、”TOES”もTikTokやプレイリストの恩恵を受けてHot 100にランクイン(12週目)。”VIBEZ”と同様にラジオなしでどこまで奮闘するか、見ものです。

 

 

・来月の展望:Spotifyで人気の…… / Lil BabyとMigos

 来月に向けて、私が注目しているのはSpotifyで人気浮上中の曲たちです。その中でも期待が大きいのはAsheによる“Moral of the Story”。昨年リリースの曲ですが、TikTokの人気などもあってここ1週間ぐらいで急浮上。プロデューサーFinneasということもあり、今後ますます注目を集めそうです。

 他の注目候補はSurfacesの“Sunday Best”、Powfuの”death bed”、または同じくFinneasプロデュースJP Saxeの”If the World Was Ending”など。そして既にHot 100入りしている”Blueberry Faygo”や”WHATS POPPIN”もヒットの見込みあり。

 

 あともう一つ気になるのはMigosとLil Baby。ともにQuality Controlというレーベルに所属しているのですが、このレーベルのエースがLil Babyになるのでは?ということです。

 Lil Babyはここ最近のシングルリリースが好調。スタート時からトップ40に登場し、その後もある程度は上位に残っています。この調子を見るかぎり、今週末リリースのアルバムでかなりの成績を残しそうです。

 一方Migosは微妙な成績。Travis Scott・Young Thugという強力なゲストを迎えた”Give No Fxk”も46位スタートとそこそこな成績。さらに各ストリーミングですぐに順位を落としたため、2週目以降の数字に不安を残しています。(実際、圏外に)

 メンバーのQuavoが参加したJustin Bieberの“Intentions”が好調なので、全く奮わないというほどではないですが。

 

 

今月トップ40(以上)に入った曲

(☆=新登場 ◇=再登場 △=順位上昇)

 

2/1

☆3 Eminem feat. Juice WRLD – Godzilla

☆16 Jonas Brothers – What A Man Gotta Do

☆28 Eminem – Darkness

☆31 Eminem feat. Ed Sheeran – Those Kinda Nights

☆36 Eminem feat. Young M.A – Unaccommodating

☆38 Mac Miller – Blue World

△40 Camila Cabello feat. DaBaby – My Oh My

 

2/8

☆31 Megan Thee Stallion – B.I.T.C.H.

☆34 Demi Lovato – Anyone 

 

2/15

☆33 Lil Wayne feat. Big Sean & Lil Baby – I Do It

△34 Sam Hunt – Kinfolks

 

2/22

☆11 Justin Bieber feat. Quavo – Intentions

☆23 Nicki Minaj – Yikes

△36 The Black Eyed Peas & J Balvin – RITMO

 

2/29

☆16 Billie Eilish – No Time To Die

☆23 A Boogie Wit da Hoodie feat. Roddy Ricch, Gunna & London On da Track – Numbers

☆24 Justin Bieber feat. Post Malone & Clever – Forever

 

※CleverとLondon On da Trackは初のトップ40。(ただし後者は”Lifestyle”などプロデューサーとしてのトップ40入り経験はあります。)

 

 

今月Hot 100から外れた主な曲 (滞在10週以上かピークが10位以上の曲)

 

2/1

46 Wale feat. Jeremih – On Chill (🗻22位 /⏰23週)

48 Khalid – Talk (🗻3位 /⏰46週)

49 Lady Antebellum – What If I Never Get Over You (🗻40位 /⏰21週)

50 Taylor Swift – Lover (🗻10位 /⏰22週)

54 Summer Walker – Playing Games (🗻16位 /⏰20週)

59 Chris Brown feat. Gunna – Heat (🗻36位 /⏰20週)

78 NLE Choppa – Camelot (🗻37位 /⏰18週) ※のちに再登場

80 Thomas Rhett – Remember You Young (🗻53位 /⏰18週)

85 Quality Control, Layton Greene, PnB Rock, Lil Baby & City Girls – Leave Em Alone (🗻60位 /⏰15週)

95 Niall Horan – Nice To Meet Ya (🗻63位 /⏰14週)

98 YNW Melly & 9lokknine – 223’s (🗻34位 /⏰19週)

 

2/8

94 Post Malone feat. Ozzy Osbourne & Travis Scott – Take What You Want (🗻8位 /⏰20週)

 

2/15

49 Lil Nas X - Panini (🗻5位 /⏰32週)

64 Halsey - Graveyard (🗻34位 /⏰20週)

 

2/22

99 NLE Choppa - Camelot (🗻37位 /⏰20週)

 

2/29

46 Young Thug feat. Gunna - Hot (🗻11位 /⏰26週)

47 Luke Combs – Even Though I’m Leaving (🗻11位 /⏰24週)

52 Jon Pardi – Heartache Medication (🗻42位 /⏰20週)

65 DaBaby - VIBEZ (🗻21位 /⏰20週)

84 Lil Uzi Vert – Futsal Shuffle 2020 (🗻5位 /⏰9週)

88 Don Toliver – No Idea (🗻43位 /⏰11週)

94 Roddy Ricch & Gunna – Start Wit Me (🗻56位 /⏰13週)

95 DaniLeigh feat. Chris Brown - Easy (🗻79位 /⏰15週)

98 Tory Lanez & T-Pain – Jerry Sprunger (🗻44位 /⏰10週)

 

 

・各週のHot 100順位リンク

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-01

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-08

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-15

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-22

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-29

 

 

・おまけ:今月のRolling Stone Chartsトップ10推移

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※日付はHot 100と揃えています。

 1位・2位の並びはHot 100と同じですが、それ以外は並びは違う点が多いです。

 

 

・先月号

 

☆2020/3/30 一部内容を補足・訂正しました

 

*1:このアルバムはHalseyとは違い、一つ前の週に1位を獲得しています。

*2:ツアーのチケットを買うと音源を入手できるプラン。その分チケットの値段が上がっているとの説もあり

*3:"Lover"のShawn Mendesリミックスがリリースされた時、ビルボードの記事でそのような言及がありました。結局Shawn Mendesはクレジットされませんでした

*4:アーバン系+アダルトR&B系の合算