チャート・マニア・ラボ

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El Perdónのすごさについて【ビルボード Hot 100の足切りルールについて】

 みなさんどうも。先週、El Perdónがチャートから姿を消しました。

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残念ですね。

最終週の順位が56位、ピークが56位、チャート滞在週が30週間です。

これってすごいんです。え、どこが?

ピーク56位でチャート滞在30週間」これがすごいんです!ではこれがすごい理由を順を追って説明していきます。

 

ビルボードHot 100の足切りルールについて

 ビルボードのHot 100にはその名の通り、100もの曲がエントリーしています。次の週にはチャートのどこの位置にいるかは予測不能です。実際過去に97位の曲が次週1位になったり、17位の曲が次週96位になったり、9位の曲が次週にはチャートから姿を消すなんて事例もありました。しかし、チャートからの脱落で違和感を感じるケースはありませんか?例えばこういう例です。

 「40~45位前後にいた曲がいきなりチャートから外れた」

 具体例を挙げると、The WeekndのEarned Itが 42位→44位→47位→48位と来てその次の週にチャートから姿を消しています。

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 普通、このペースで順位を落としていくなら、チャート圏外に行くのではなく、52位とか、そこら辺で落ち着くかと、思う方は多いと思います。

 そこで登場するのが、「リカレントルール」というものなのです。

 このルールはどういう物かというと、「落ちている曲が21週目以降に50位未満になったらその曲をチャートから除外する」という物です。

 つまり、先ほどのEarned Itのような例はこのルールが適用されている訳です。つまり、今週、50位未満相当のポイントしか稼げなかったため、チャートから姿を消しました。というわけです。

 

 

あれ?さっき「ピーク56位でチャート滞在30週間」とか言ってたけどそれおかしくない?

 はい。50位未満なのに21週目以降を迎えていておかしいですよね。実はこのルールには「抜け道」があるのです。

 

②「リカレントルール」の例外について

 先ほどのリカレントルールの定義をもう一回述べます。

 「落ちている曲が21週目以降に50位未満になったらその曲をチャートから除外する」です。そしてこの例外を説明する時に重要になってくるのは「落ちている曲」という部分です。このルールが適用されるのは「落ちている」曲のみなのです。

 そもそも、この「リカレントルール」が適用されている訳は、チャートのリフレッシュ、つまり新しいヒットに道を譲るという理由があるのです。

 なぜそんな事をする必要があるのか。それは意外とリカレントルールが適用された曲がポイントを稼いでいるからです。

 

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 これ今週のダンス系統の曲のみのチャートなのですが、8位のRosesは今週95位なのでそれより上はHot 100圏内ということになりますが、4位のHey Mamaと7位のYou Know You Like Itはすでにリカレントルールが適用されてチャートから外れています。つまり、こうやって粘る曲が多数発生するため、リカレントルールという物が作られたのですね。

 では、話を元に戻します。リカレントルールは「新しいヒットに道を譲るため」に作られたルールで、かつ上記のような過去のヒットのチャート居座りを阻止するためのルールなので、これからヒットする見込みのある曲はチャートから除外する必要は無いのです。

 

では、どこでその「これからヒットするか」を見極めるのでしょうか。それはこれです。

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この◎です。

 

この◎にどんな意味があるのでしょうか。

この◎は「先週との比でポイントが上がっている」(ビルボード公式ではパフォーマンスが向上みたいな言い方をされています)という意味合いがあるのです!この◎は順位が上がっているとは同義では無いです。例えば、

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のように順位は下がっているもののポイントを伸ばしている曲や

 

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のように順位は上がっているもののポイントが伸びていない曲があります。

ある意味、順位は「相対」で、◎は「絶対」と言えるかもしれませんね。

 

 ビルボードでは、この◎が付いている曲、つまり今週ポイントが伸びた曲を「今後ヒットする見込みのある曲」として除外の対象外としてチャートに残しているのです。

 つまり、50位未満にいる曲がチャートに居座り続けるには、連続でポイントを伸ばし続けなければならないのです。(ただしこの◎以外にもラジオで伸びていれば「上昇」と判定されるケースもある)

 

③結局どうすごいの?

では冒頭の疑問に戻りましょう。

ピーク56位でチャート滞在30週間」のこれのどこがすごいんですか?という疑問でしたね。

 解説していきます。ピーク56位以下=常に50位未満

チャート滞在30週間=本来曲が除外されてしまうかもしれない20週をゆうに超えている。

 

 つまり、21週目~30週目まで毎週チャートから消えてしまう危機に晒されながら連続でポイントを伸ばし続けて、チャートに居座り続けたということです。

 20週目というと、その時点でチャート登場から4~5ヶ月経っていることになりますが、そこから10週連続でポイントを伸ばし続けたということです。

 そのロングヒットぶりが驚異的だったのです。

 その異様なチャートランを証明するかのように、このEl Perdónは初のトップ40に届かなかったのに年間順位に入る曲になる「見込み」です。(なりました)

 意外と知られていないのかもしれませんが、チャートからリカレントルールが適用されて外れた曲はいくら51位相当のポイントを稼いでいても、年間順位のポイントには加算されないので、比較的チャート滞在の長さがより年間順位に反映される傾向があるのです。なので、おそらく30週という低ピークの曲としては驚異的な長さの滞在期間の恩恵を受けて年間順位入りする「見込み」なのです。

 

 

Hot 100で突然曲が消えてしまう理由や、El Perdónがすごい理由などをご理解頂けたでしょうか!

 

 

 

 

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