チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

グラミーとチャート 当時を振り返る Hot 100 (2012~2017)

グラミーのパフォーマンスももうそろそろですね。(執筆時)

グラミーはご存知の通り、世界で最も有名な音楽の祭典の一つですが、やはりそれだけ大きなイベントですと、アメリカのチャートのHot 100における影響も大きいです。

というわけで、グラミーの影響を最も大きく受ける週(=集計にグラミー当日が入る週)の過去数年間のHot 100の動向を振り返ってみましょう。

 

2017 (グラミー開催日 2/12 Hot 100では3/4)

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この年ではAdeleが新人王以外の主要賞を全て受賞しました。(Album、Song、Record)しかし、それに対しAdeleが「ビヨンセが受賞すべきだったわ」と語ったことが印象的でした。この年のグラミー時のチャートで順位を上げたのは……しかしパフォーマンスではカバーなどが多かったことから、具体的にチャート成果が現れた曲は少なかったです。

 

Katy Perry feat. Skip Marley - Chained to the Rhythm (初登場4位)

Katy Perry新曲Chained to the Rhythmが4位で登場。グラミーでのパフォーマンスも追い風になったか、4位と好位置でスタート。ここから順位を上げていけば宿敵?Taylor Swiftとの順位争いが生じるかも…(現在2位のI Don’t Wanna Live Foreverと)

※2人の1位争いを期待していますが、Shape of Youの壁は高くどちらも1位を取れず。Katy Perryはその後チャートでかなりの不調に……

 

DJ Khaled feat. Beyoncé & Jay-Z - Shining (初登場 62位)

驚きの夫婦コラボ。4年前もグラミーでパフォーマンスし、Drunk in Loveを2位に浮上させていました。今年の順位は控えめで62位に。その後もそこまで上昇できず。DJ Khaledはこの年新人賞を受賞したChance the Rapperなどを起用したI'm the Oneで自身初の1位を獲得しています。

ちなみにJay-ZといえばTidalですが、この曲はリリースしてすぐにApple MusicやSpotifyで開放していました。DJ Khaledメインの曲だからでしょうか?

(しかしDJ KhaledはDrakeとのTo the Maxをリリース後にApple MusicやSpotifyから削除するという謎の行動を取っています)

 

The Weeknd feat. Daft Punk - I Feel It Coming (16位→9位)

パフォーマンス効果によってトップ10入り。その後水原希子が出演したビデオの効果などで最高4位まで到達しました。同じくパフォーマンスされたStarboyは12位→14位と順位を落としています。

 

★この週の他の音楽動向

 

Julia Michaels - Issues (41位→34位)

次の年のグラミーで新人賞にノミネートされるJulia Michaelsが、このタイミングで初のトップ40を達成しています。元々ソングライターとして大活躍していましたが、この曲をきかっけにシンガーとしても注目を集めました。

 

↓この週の詳しい順位はこちら

 

あとこれも……

 

 

2016 (グラミー開催日 2/15 Hot 100では3/5)

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この年のグラミーはKendrick Lamarのパフォーマンスが印象的でした。しかしその名パフォーマンス+傑作アルバムを持ってしてもBest Album of the Yearは獲得できず。この選考により、グラミーへの不信感が募り、翌年のAdeleの発言に繋がったとも考えられます。

 

Tori Kelly - Hollow (93位→68位)

James Bay - Let It Go (75位→38位)

新人賞にノミネートされていた二人がパフォーマンス。順位を上げました。Let It Goはこの週の「最もダウンロードが伸びた曲」に。

 

The Weeknd - Can't Feel My Face (42位→32位)

アルバムがアーバンコンテンポラリーの賞を受賞したThe Weeknd。このCan't Feel My Faceのパフォーマンスもグラミーのステージ行いました。チャート滞在37週目と、チャート滞在の終盤でしたが、この曲にとって貴重なプラスとなりました。

 

Mark Ronson ft. Bruno Mars - Uptown Funk (圏外 [35位程度?] → 22位)

53週以上チャートに滞在した曲に適用される、25位以上相当のヒットにならないとチャートに復帰できないという厳しいルールを乗り越えて22位でチャートに返り咲いたUptown Funk。さすがRecor of the Yearといった感じです。

 

★この週の他の音楽動向

 

Rihanna feat. Drake - Work (4位→1位)

Workが一位に上昇。かつてのような派手な曲調ではないですが、さすがRihannaと言うべきか、1位を獲得しました。Tidal限定?のような騒動も懐かしいです。

 

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2015 (グラミー開催日 2/8 Hot 100では2/28)

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この年のグラミーで話題になったのはBeckが驚きのBest Album of the Yearの受賞と、それに対するKanye Westのステージ乱入。Beyoncéがアルバムの有力とされていましたが、受賞できず。そのことに対してKanye Westは抗議したのです。しかし、後にこのことを謝罪しています。(ついでにBruno Marsにも謝罪します)

チャートではKanye Westの楽曲が少しだけ恩恵を受けています。

 

 

Miranda Lambert - Little Red Wagon (新登場 76位)

ベストカントリーアルバム賞を受賞したこと、パフォーマンスを行ったことのダブル効果で76位に新登場しています。

 

Kanye West ft. Paul McCartney - Only One (69位→45位)

パフォーマンスだけでなく、BeckがAlbum Of The Yearに選ばれた時にステージに上がるなど、良くも悪くも存在感を示しました。この曲のビデオにはKanye Westの愛娘、ノースちゃんが登場していました。

RihannaPaul McCartneyとのFourFiveSecondsも6位→4位と上昇しています。

 

当時存在していたKanye WestTwitterアカウントでこのような発言を当時していました。

 

 

Sia - Chandelier  (32位→20位)

パフォーマンス+Song Of The Yearなど複数ノミネートの効果で上昇。独特の髪型も話題になりましたね。

 

Sam Smith - Stay With Me (14位→11位)

昨年のグラミーの主役は彼でしたね。 パフォーマンス+Song Of The Year、Record Of The Year、New Artistなど複数要因で上昇しました。とはいえ、前々から注目度が上がっていたせいか、伸び幅はそこまででもないです。当時はトップ10に入るのでは?と考えていた気がします。

 

 

★この週の他の音楽動向

 

この週はDrakeのリリースしたIf You're Reading This, It's Too Lateの曲が多くチャートインした週。(五曲)※来週さらに増える

アルバムからのエントリーラッシュとグラミーの効果が重なり、なかなかカオスなHot 100に。こういう週はチャートマニアにとってはとても楽しいです。

 

また当時は映画Fifty Shades Of Greyのサントラ曲が非常に勢いがありました。この曲をきっかけにThe Weekndがブレイクしていきましたね。(次の年のグラミーに登場します)

 The Weeknd - Earned It (29位→12位)

Ellie Goulding - Love Me Like You Do (9位→6位)

 

↓この週の詳しい順位はこちら

 

 

2014 (グラミー1/26、Hot 100では2/15)

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この年ではDaft Punkのパフォーマンスが印象的でした。当時はファレルの長帽子も注目されていた記憶があります。ただしこの時Daft Punkの曲は既にチャートから姿を消しており、チャートでの上昇はならず。

 

John Legend - All Of Me (27位→17位)

パフォーマンスで上昇。のちに一位を取ることになるシングル。ここから一位をとるまであと13週かかります。(歴代で3番目に遅い30週目での1位獲得)

 

Imagine Dragons - Radioactive (33位→13位)

グラミーではKendrick Lamarとパフォーマンスを行い注目を集めました。またそれと同時に彼を迎えたバージョンのリミックスをリリースし、ダウンロードを多く集め、順位を大きく上げたこの曲。ちなみに現在のルール(リカレント)を適用させると上昇ではなく、再登場のような形になります。(53週以降の下降中の曲は26位以下に落ちるとチャートから姿を消すため)

なんとこの時点で75週目のチャート滞在。最終的に87週もチャートに滞在し、歴代で最も長いチャート入り記録を樹立しています。この記録は上記のリカレントルール改定により、今後破られないような気がします。

 

Beyoncé ft. Jay-Z - Drunk In Love (13位→2位)

パフォーマンスの恩恵を受け順位が大きく上昇。結局この週の2位が最高位となりました。その後は順位を落としていって、年間順位も35位とピーク2位の割には低めの順位になりました。(ちなみに年間順位で一個下の36位のNicki MinajのAnacondaもピーク2位でした)

 

★この週の他の音楽動向

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Can't Remember To Forget You (61位→15位)

この週で大きく動いたのは、露出多めの刺激的なビデオで注目を集めたShakiraRihannaCan't Remember To Forget You。61位から15位に急上昇しました。

 

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2013 (グラミー2/10 Hot 100では3/2)

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この年のグラミーからは、Rihannaが最もチャートで恩恵を受けていたようです。当時のRihannaはこんな感じでした。

 

fun. - Carry On (43位→20位)

アルバムからの3曲目のシングルのパフォーマンスを行い、これが功を奏し順位が上昇。結局この20位が最高位となりました。この年のBest New Artistにも選ばれています。

 ちなみに2012年のグラミー時は、スーパーボウルのハーフタイムのCMの効果でWe Are Youngが6位に入っていました(その効果が一番大きく現れたのはその1個前の週)

 

Rihanna ft. Mikky Ekko - Stay (57位→3位)

3位と大きく順位を上げました。その後、順位を少し落としますが再び3位まで上昇します。ちなみに客演のMikky Ekkoは今のところHot 100へのエントリーはこの曲のみです。バラードが多くの人の心を打ったようですね。(その週のダウンロード伸び幅最大)

 

★この週の他の音楽動向

 

Baauer - Harlem Shake (初登場1位)

なんといってもこの週は、Harlem Shakeが1位でいきなり登場したのが最大のトピック。ストリーミングで大きくポイントを稼ぎました。しかもこの週だけでかなりのポイントを稼いでおり、この週だけで年間チャートの60~70位相当のポイントを稼いだという試算も一部では出ていました。

しかし、今になって冷静に考えると、ストリーミングのポイントを過剰に評価していた気もします。Harlem Shake関連のビデオを現在YouTubeで検索するとHot 100で1位を取るにはいささか不足しているように思います。あくまで私の推測ですが……

 

↓この週の詳しい順位はこちら

 

2012 (グラミー2/12 Hot 100では3/3)

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この年のグラミー時のチャートは歴代でも屈指に濃いチャートで、チャートマニアとしてはかなり大好きな週です。チャートでもグラミーのステージでも際立ったのはAdeleでした。

この年はダウンロード+ラジオの2項目での集計ラストの年(2012年中盤からストリーミングが導入される)で、ダウンロードの影響力が今よりも少し高かったチャート最後のグラミーです。

つまり何が言いたいかというと、ダウンロードをガンガン集めた曲が今よりも高い順位で登場できたということです。それを現すかのように、3曲がトップ10初登場しています。

 

Adele - Rumor Has It (再登場 67位)

Adele - Someone Like You (11位→7位)

Adele - Rolling in the Deep (17位→5位)

Adele - Someone Like You (2位→2位)

グラミーで新人賞以外の主要賞を総なめにしたAdele。その効果で多くの曲が上昇しています。一番大きく上昇したのはパフォーマンスされたRolling in the Deep。この週に女性としては当時2人目の記録、トップ10に同時3曲を達成しています。(のちにIggy Azalea、Ariana Grande、Cardi Bも達成しています)

ちなみにRumor Has Itのプロデューサー、Ryan Tedderはこの年のベストプロデューサー部門(クラシック以外)にノミネートされていました。(受賞はならず)

 

Katy Perry - Part Of Me (初登場1位)

グラミーで披露された新曲、Part Of Meが見事1位を獲得しています。グラミーのパフォーマンス効果でその週のHot 100で新曲が1位を取るのは、その前の年のLady GagaのBorn This Wayに引き続き2年連続です。(ただし歴代でこの2つだけ)

 

Chris Brown - Turn Up the Music (初登場10位)

パフォーマンスにより、多くのダウンロードを獲得。その効果でいきなり10位で登場しています。

 

Nicki Minaj - Starships (初登場9位)

この曲はパフォーマンスされなかったものの、この週にリリースされたStarshipsが初登場9位に。近年はグラミー効果でトップ10に上昇することは少なくなってきましたが、ダウンロードがかなり多かったこの当時は、一つの年に複数ものトップ10浮上曲があります。少し隔世の感があります。

 

Deadmu5 feat. Greta Svabo Bech - Raise Your Weapon (初登場 100位)

グラミーでパフォーマンスしたDeadmau5。後にも先にも唯一Deadmau5がHot 100に入った週です。

 

★この週の他の音楽動向

 

Whitney Houston - How I Will Know (再登場 49位)

Whitney Houston - Greatest Love Of All (41位→36位)

Whitney Houston - I Wanna Dance With Somebody (35位→25位)

Whitney Houston - I Will Always Love You (7位→3位)

この時、Whitney Houstonが亡くなったばかりで、それに対する追悼のダウンロードも多くありました。4曲がHot 100に再登場し、I Will Always Love Youは3位にまで入っていました。グラミーではJennifer Hudsonがこの曲のカバーをしていました。(もともとこの曲はDolly Patronのカバーでしたが)

ちなみにこの1個前の週ではWhitney HoustonMadonnaがトップ10に両方入っており、2010年代では珍しい面々が上位に入っていると感じました。

 

One Direction - What Makes You Beautiful (初登場 28位)

この週にOne Directionは初のHot 100入りを記録。アメリカ上陸です。のちにこの曲は週間4位まで浮上し、年間10位に食い込みます。

 

↓この週の詳しい順位はこちら


ではみなさん、グラミーを楽しみましょう!