チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

ビルボードに新加入!パンドラがHot 100に与える影響を考察

先日の2/11付のHot 100、並びにそれに準ずるチャート(ジャンルごとのHot○○など)にパンドラが導入されることが発表されました 


現在ラジオ全体の10%ほどの割合を占めるとも言われており、常に最適なチャート配分を目指すビルボードの姿勢が伺えます。

今回は、このパンドラについて、パンドラがチャートにどのような影響を与えるか少し考察してみようと思います。

 

1 パンドラとは?

 

パンドラとは、よくPandora Radioという呼称で呼ばれる通り、ラジオ風なストリーミングサービスです。基本的にステーションを選択して再生し、お気に入りの曲には”Thumbs Up”、”Thumbs Down”を選択して、Pandoraを使っていくうちにだんだんその人の音楽の趣味に馴染んでいく、という感じのようです。

曲を能動的に選ぶ、というよりはステーションを選択し新たな曲との出会いを受動的に楽しむサービス、と思われます。ステーションはジャンル別、他人の作ったステーションなどを選べる模様ですね。

ラジオ曲形式で受動的に曲を聴くサービスなので、新曲がリリース直後に一気に再生回数が上げるというよりは、だんだん再生回数が増えていく傾向にあるようですね。

 

ここまで読んで、多分あなたは気になる点があると思います。【何でここまでこんなに推測が多いのか?】と。それはパンドラが日本でまだ解禁されていないからです。実際触って検証できない部分は推測の形で文を閉じています。アメリカ、ニュージーランド、オーストラリアのみの解禁のようです。イギリスですら解禁されていないので、比較的ローカルな音楽アプリと言えるかもしれません。

 

日本で使えるアプリでいうと、Jangoに似ていると思います。これもステーションを選んでThumbs Up, Thumbs Downする音楽サービスです。

 

2 チャートへの影響は?

 

端的に述べると、パンドラが加入しても大きくチャートに影響が及ぶことはないと思います。なぜかというと、パンドラで多く聴かれる曲は他のサービスと大差なく、独自のヒットも見られないからです。例えばYouTubeならば、ビデオが面白かったり、また○○チャレンジなどYouTube独自のヒットにより曲がHot 100に入ったりして、加算するかしないかで違いが生まれますが、パンドラにはそれが無さそうです。

 

パンドラと他のサービスでの曲のヒットの違いを検証します。パンドラ、Spotify、ラジオ総合、ストリーミング総合の比較を行います。

 

 

Pandora

Spotify

Radio

Streaming

1

Fake Love

Bad and Boujee

Don't Wanna Know

Bad and Boujee

2

Black Beatles

Shape of You

Scars to Your Beautiful

Shape of You

3

Bad And Boujee

Fake Love

Bad Things

Black Beatles

4

Scars To Your Beautiful

I Don't Wanna Live Forever

Closer

Starboy

5

Don't Wanna Know

Paris

Shape of You

Closer

6

Love on The Brain

T-Shirt

Side to Side

Bounce Back

7

I Don't Wanna Live Forever

Bounce Back

Let Me Love You

Caroline

8

Shape of You

Starboy

Love on The Brain

Fake Love

9

Starving

iSpy

24K Magic

Juju on that Beat

10

Bounce Back

Caroline

Fake Love

Paris

 

※パンドラ、Spotifyは1/27-2/2、Radioは1/23-1/29、Streaming総合は1/20-1/26の集計。

太字は4つの項目の中で、一つにしか入っていないもの

 

最新のチャート期間がサービスによって違う故、集計期間がずれてしまっているという問題もあるが、なんとなくそれぞれの傾向が分かるだろうか。なんとなくではあるが、パンドラがラジオとストリーミングを足して2で割ったようなランキングを表しているとは言えるのではないだろうか。

さらに、実はもっとラジオに近いような気もする。パンドラのチャートでは17週目以降の曲を外すというルールがある。ただし、ピークを更新しそうな見込みがある曲は例外のようだ。↓のようなメッセージを添えて、Hot Streak表記されている。

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ストリーミングはすぐに新しい曲を再生しやすいが、ラジオはゆっくり上昇、下降する傾向がある。ラジオ的特性をもつパンドラのチャート上位には16週ルールに引っかかったラジオでよくかかる曲があるのではないか、と自分は推測している。

 

その例として挙げられるのが、Lady GagaのMillion ReasonsとCalum ScottのDancing on My Ownだ。この2曲は上記の【ビルボードがパンドラをチャートに加えた】という記事に、パンドラの恩恵を受けてHot 100に入った例として挙がっている曲だ。実際、パンドラのチャートではそれぞれ48位、35位とそこそこの順位を記録している。しかし、同じくストリーミングサービスであるSpotifyでは両方共200位圏外となっている。また、この2曲はポップ系のラジオでそれぞれ30位、35位を記録している。この3点から、パンドラはストリーミングサービスとして考えられるものの、ラジオ的な曲が流行ることがあると言えるのではないだろうか。

つまり、ストリーミングのポイントの枠でラジオ系の曲がポイントを稼ぐ可能性があるのだ。

Hot 100ではダウンロード35-45%、ラジオ30-40%、ストリーミング20-30%という割合があって、どれかが極端に低いと主要なポイント源で大きく稼いでいても“足切り”を喰らう可能性がある。なので、このパンドラは、ストリーミングでの稼ぎが少ないがラジオでよくかかる曲の救世主となる可能性もある。具体例を挙げるなら、カントリー曲などだろうと思われる。

 

 

まとめ!!!

・パンドラの加算はチャートに特大の影響を及ぼすわけではない

・ラジオでよくかかる曲が恩恵を受ける可能性がある。