チャートのチャート研究ラボ

音楽チャート・ポップス等の動向・文化について頑張って研究しています!議論のネタになるような変わった視点からの記事を目指しています。

新リカレント(53週ルール)について再考察 【チャートマニア向けマニアック記事】

先週お伝えした通り、SiaのCheap ThrillsとThe ChainsmokersのDon’t Let Me Downがチャートから姿を消しました。

 

落ちる直前の週がそれぞれ32位、44位だったので、まだまだやれそうな気もしますが、なぜチャートから姿を消してしまったのでしょうか。

 

ポイントは「チャート圏外に落ちる」ではなく「チャートから姿を消すという」ことです。

 

自分が普段から口酸っぱく言っているとおり、Hot 100には「リカレント・ルール」というものが存在します。その「リカレント・ルール」というのはいわば「足切り制度」

ヒットした曲がだらだらとチャートに居座ることを防ぎ、新しい曲にポジションを譲るためのルールなのです。

どこから足切りか、というのはチャート滞在週数と順位によって主に決まります。発動が多いのは、「21週目以降に51位以下になったらチャートから外す」というもの。週に1曲か2曲程度このルールが適用されており、チャートを毎週追っていると自然と気づく方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただ例外もあり、それは上昇の見込みがある曲。将来的にピークを更新していってヒットが見込まれる曲は上の条件を満たしていても例外的にチャートに残ります。

本当にその後ヒットするか、あっけなく22週目にチャート圏外へ、となるかはその曲次第。

 

直近の例だとLil Uzi VertのYou Was Rightが、21週目以降ながらも50位前後で伸びしろを見せ続け、ついに26週目で40位に到達。

時折、ビルボードが判断を誤る?こともあり、2013年のImagine DragonsのDemonsは20週目に63位だったあとにチャートから一旦姿を消した。しかしその数週後に再登場し、結局ピーク6位まで達して特大ヒットとなりました。

 

このように、ビルボードには「リカレント・ルール」が存在するわけですが、2015年末には新たにもう一つの枠組みが出来ました

www.billboard.com

53週目以降、26位以下になったらチャートから外す、というもの。

53週、つまり1年超の曲はよほど上位じゃなかったらチャートから外すよ、というルール。

 

2013年あたりから1年以上にチャート滞在する曲は増えてきていて、初めて1年超えチャート滞在を果たしたEverything but the Girl のMissingが誕生した1996年から2012年にかけては21曲、つまり年平均約1.2曲の1年超えが記録されていたが、2013年から2015年は13曲、つまり年平均4.3曲の1年超え曲が記録されており、そのロングヒットのインフレを防ごう、という意図が見られるルールだったのだ。

 

このルールが2015年に新設された時にこのルールについて考察した。↓の記事を読んでからこの記事を読むと分かりやすいかもしれない……!


現在は53週ルール新設から1年以上が経過し、先週Cheap ThrillsとDon’t Let Me Downがこの53週ルールに引っ掛かったこともあり、今回はこのテーマを再考察しようと考えた。

 

まずはこの53週ルールが今までどのように働いていたかを振り返っていく。

以下が53週ルール以降に新リカレントに引っ掛かった曲だ。

Ed Sheeran                            Thinking Out Loud

Walk the Moon                        Shut Up and Dance

Mark Ronson ft. Bruno Mars      Uptown Funk

Fetty Wap                               Trap Queen

Wiz Khalifa ft. Charlie Puth        See You Again

Shawn Mendes                       Stitches

twentyonepilots                       Stressed Out

The Chainsmokers ft. Daya       Don't Let Me Down

Sia ft. Sean Paul                      Cheap Thrills

 

計9曲。53週ルール新設から現在66週経過したので、約7週に1回発生している、ということになる。さらにこれらの曲の詳しいデータを見ていく。

 

適用された週

アーティスト

曲名

最終順位

滞在週

2015/12/5

Ed Sheeran

Thinking Out Loud

45

58

2015/12/5

Walk the Moon

Shut Up and Dance

39

53

2015/12/19

Mark Ronson ft. Bruno Mars

Uptown Funk

21

55

2016/2/6

Fetty Wap

Trap Queen

39

52

2016/3/26

Wiz Khalifa ft. Charlie Puth

See You Again

49

52

2016/6/4

Shawn Mendes

Stitches

41

52

2016/10/8

twentyonepilots

Stressed Out

38

52

2017/3/5

The Chainsmokers ft. Daya

Don't Let Me Down

44

52

2017/3/5

Sia ft. Sean Paul

Cheap Thrills

32

52

 

53週ルールが適用されはじめた週が2015の12/5。つまりUptown Funkとルール制定前の2曲(Thinking Out Loud。Shut Up and Dance)は対象の最初の週の53週目でこのルールによって落ちていることがわかる。つまり、この53週ルールは乗り越えることが難しいルールであることが伺える。

 

次に、この53週ルールがもし無かったら?ということを試算していく。実際のチャートは単純なものではなく落ちるだけ、上がるだけということは無いのだが、ここではピークからの曲の週ごとの平均下落順位から53週ルール適応以降のチャートアクションを推測していく。

 

チャート業界では一般的にピークはピーク順位の最初の週を指すことが多いのだが、実際のポイントのピークはピークの中でも真ん中あたりに来ると思われるので、ピークの中でも真ん中の週をピークとする。

例えば1/7 3位 1/14 3位 1/21 3位 

のようにピークを推移している曲は1/14をピーク扱いする。ピークの週数が偶数週のものは真ん中2つのうち後ろのほうをピークとした。

そして、ピークと影響を受けない52週目の順位を結んで週当たりの平均下落(傾き)を求める。53週目以降はその傾きが続くと仮定し、50位以上になる最後の週までチャートに滞在するものとする。

小数点以下は四捨五入する。

試算結果は以下となった。

 

アーティスト

曲名

最終順位

滞在週

最大滞在/あと何週

ピーク(日時・順位)

傾き=週あたり平均下落

Ed Sheeran

Thinking Out Loud

45

58

(63) あと5

2016/2/28(2)

1.09

Walk the Moon

Shut Up and Dance

39

53

(60)あと7

2016/6/13(4)

1.48

Mark Ronson ft. Bruno Mars

Uptown Funk

21

55

(66)あと11

2016/2/28(1)

0.95

Fetty Wap

Trap Queen

39

52

(63)あと11

2015/5/23(2)

1.03

Wiz Khalifa ft. Charlie Puth

See You Again

49

52

(53)あと1

2015/6/13(1)

1.2

Shawn Mendes

Stitches

41

52

(59)あと7

2015/11/7(4)

1.23

twentyonepilots

Stressed Out

38

52

(63)あと11

2016/2/27(2)

1.16

The Chainsmokers ft. Daya

Don't Let Me Down

44

52

(56)あと4

2016/7/23(3)

1.32

Sia ft. Sean Paul

Cheap Thrills

32

52

(68)あと16

2016/8/20(1)

1.15

 

どの曲もある程度滞在を伸ばすことが予想される。ただ爆発的に伸びる、というわけでもない様子が。歴代で最も長いチャート滞在のRadioactive (87週)を見るとやや滲む数字。

実際のチャートは落ちるだけではなく、息の長い曲が再浮上するケースもあるのでこの試算のように落ち続けずに浮上によって滞在週が伸びる可能性も十分にある。

実際Uptown Funk!は53週ルール適応以降、ハーフタイムショーとグラミーのベストレコード受賞という形で再注目を浴び、1週のみであるが22位で再登場している。上で試算した66週よりも長いチャート滞在を果たし、Radioactiveに迫る長期チャート滞在を果たしていた可能性もある。

 

結局このルールはどうなの?

 

先にもリンクを貼った53週ルール適用直後の記事でメリットとデメリットをこう述べました(詳しくはリンクからお願いします)

Hot 100の新リカレント・ルールとは?【それと自分の考察】 - チャートのチャート研究ラボ

 

メリット

①チャートのリフレッシュ強化 ②歴代チャートや年間チャートでのポイントのインフレの阻止

 

デメリット

①ロングヒット記録などの古い曲のチャート目標がなくなる ② 53週を超えた曲の再びチャートインが高い確率で阻まれる ③ そもそもこのルールに当てはまる曲数・期間がそこまで長くない ④ もしかしたらピーク前の曲がチャートから外れる……?

 

 

現状から個人的な見解を述べるとデメリットのほうが強いのかな、思う。デメリット③は特に感じる部分で、上でも述べた通り7週に1度程度の発動率なのでそこまで発動していない。さらに表でも考察した通り、53週ルールが無かったとしても伸びる週数は少ない。

ここまでしてロングヒットの曲を制限する必要はあったのか、と思う。

ただメリット②については結果が出ていると言えそうで、Uptown Funkは2016の年間チャートにも入らず、歴代順位(Greatest of All Time Hot 100 Singlesの項目)も12位と予想よりは控えめだった。ただ1位、トップ10滞在いずれも歴代2番目の長さを記録していたこの特大ヒットを歴代の順位で控えめにするのは、そもそもメリットか?という疑問もある。

 

毎週多くのアーティストが楽曲をリリースし、私達は音楽を聴く喜びを享受する。新曲ラッシュは我々に幸せな悩みを与える。聴きたい音楽が多すぎる現象が発生する。

だが、それは楽曲の寿命を縮めるという結果を生み出す可能性もあるのかもしれない。

この53週ルールはロングヒットを制限し、新しい曲の枠を増やそうというルール。新曲に有利なルールで曲が入れ替わるサイクルを早めているルールともいえる。

チャートの力で何かができるのなら、新しい古い関係なくなるべく残して欲しいと私は考える。従来の21週のほうのリカレントは、発動率からみて必須と言えるが、発動率の低い53週ルールを作ってまでロングヒットを制限する必要はあったのかとはやはり思う。

 

と言っても実際には仕方がない。笑

この記事でルールが変わることも無いので。

このルールが有ろうがなかろうが、チャートは多くの着眼点を持ち面白いことには変わらないので、皆さんこれからもHot 100を楽しんでいきましょう!!!?

 

その際にこのようなルールに注目すると何かしらの発見があって面白いかもしれません!

ありがとうございました!!!