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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

NMEによる今のところの2017お気に入りポップスは? 【全曲リスト付き】

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NMEが先日2017今のところベストソング57を発表しました。以下がそのリストです (数字は順位ではなく、通し番号のようなものです)

 

  1. Lorde – ‘Green Light’
  2. Father John Misty – ‘Pure Comedy’
  3. The xx – ‘Dangerous
  4. Sälen – ‘Heartbreak Diet’
  5. Kehlani – ‘Undercover
  6. Young Fathers – ‘Only God Knows’
  7. RAC – ‘This Song (ft. Rostam)’
  8. Run The Jewels – ‘Down’
  9. Syd – ‘Nothin to Somethin’
  10. MUNA – ‘So Special’
  11. Methyl Ethel – ‘No 28’
  12. Wiley – ‘Speakerbox’
  13. Goldfrapp – ‘Anymore’
  14. Katy Perry – ‘Chained To The Rhythm’
  15. Marika Hackman – ‘Boyfriend’
  16. Sigrid – ‘Don’t Kill My Vibe’
  17. Ryan Adams – ‘Prisoner’
  18. Liv Dawson – ‘Searching’
  19. Simon Doom – ‘I Feel Unloved
  20. Confidence Man – ‘Boyfriend (Repeat)’
  21. The Shins – ‘Cherry Hearts’
  22. Superorganism – ‘Something For Your M.I.N.D.’
  23. Stormzy – ‘Cold’
  24. Kendrick Lamar – ‘HUMBLE.’
  25. Calvin Harris – ‘Slide (feat. Frank Ocean & Migos)’
  26. Pale Waves – ‘There’s A Honey
  27. Laura Marling – ‘Nothing Not Nearly’
  28. Fleet Foxes – ‘Third of May / Odaigahara’
  29. Alt-J – ‘3WW’
  30. Temples – ‘Roman God-Like Man’
  31. Jaded – ‘In The Morning’
  32. QTY – ‘Dress/Undress’
  33. Zara Larsson – ‘TG4M’
  34. Shame – ‘Tasteless’
  35. Frank Ocean – ‘Chanel
  36. Yaeji – ‘Noonside’
  37. Drake – ‘Passionfruit’
  38. Perfume Genius – ‘Slip Away’
  39. Pond – ‘The Weather’
  40. Mac DeMarco – ‘My Old Man’
  41. Sampha – ‘(No One Knows Me) Like The Piano’
  42. Maggie Rogers – ‘On + Off’
  43. Loyle Carner – ‘Stars & Shards’
  44. Future Islands – ‘Ran’
  45. Gorillaz – ‘We Got The Power (feat. Jehnny Beth)’
  46. Thundercat – ‘Walk On By (feat. Kendrick Lamar)’
  47. The Moonlandingz – ‘Black Hanz’
  48. The Black Angels – ‘Currency’
  49. Vince Staples – ‘BagBak’
  50. Jay Som – ‘Baybee’
  51. Charli XCX – ‘Babygirl (feat. Uffie)’
  52. Jorja Smith – ‘Beautiful Little Fools’
  53. Steve Lacy – ‘Dark Red’
  54. Little Cub – ‘Too Much Love’
  55. HMLTD – ‘To The Door’
  56. Hoops – ‘Rules’
  57. Superfood – ‘Double Dutch’
  58. Nick Hakim – ‘Green Twins’

 

元記事はこちら (※ページがかなり重く、スマホでは開けないかも……!)

www.nme.com

 

同時にアルバムのリストも発表しているので、そちらも(※こっちのページは重くないです)

www.nme.com

 

ポップスに関する論が意外と少なく思っていて、今年は重点的にポップスに関する論を考えようと思っていて、何曲かポップスが入っているこのリストについて触れようと思いました。このリストから今年のポップスで評判の良いのはどの曲だ?ということを振り返ろうと考えました。

 

ポップスとは何?という問いは意外と難しくて、それだけでも1冊の本が書けそうな気配がありますが(書きたい*1)、今回の記事では ①聞きやすい馴染みやすい ②ポップス系のラジオに混ざっても違和感が無い という定義で考えていきます。

それで、その定義に当てはまると思ったのは上のリストで太字にした曲です。分類的には曖昧で、The xxのDangerousやGoldfrappのAnymore辺りも入れても良かったかもしれません。

ちなみにこのリストの曲だと私はDangerous、Only God Knowsあたりが好きです。

では、それぞれがどのような曲なのかを、元記事のひとくちメモと合わせながら説明していきます。

 

Lorde – Green Light

“Lorde’s first taste of second album ‘Melodrama’ was this flawless breakup banger, written with fun.’s Jack Antonoff.”

 

PitchforkもBest New Track認定したLordeの1曲。この曲を契機に6月リリース予定のアルバムへの期待感が高まったように思います。2013年のブレイク以降、注目を浴び続けると同時に重圧もあると思いますが、それを跳ね返して新しい姿をアルバムで見せられるかに注目です。

 

Sälen – ‘Heartbreak Diet’

“Following the disarmingly odd likes of ‘Copper Kiss’ and ‘Diseasey’, the lyrics on ‘Heartbreak Diet’ are possibly the best yet from this minimalist London trio. “I am done with sticky people,” it goes. “They’re too hard to pick out of my teeth.”

 

実際ヒットチャートに躍り出てはいない曲ですが、ポップラジオで人気が出そうなポテンシャルを感じたました。無邪気なポップス。ビデオは血糊系のグロさがありますが、

 

Kehlani – ‘Undercover

This early cut from the precocious R&B star’s debut album ‘SweetSexySavage’ is deceptively simple, but it’ll burrow deep into your brain.

 

Kehlaniはジャンルで分類するならR&Bですが、ポップスのリスナーにも響きそうと考え、今回はポップスとしました。ワイルドスピードのサントラからのGood Life(G-Eazyとの曲)はかなりポップスで、今年はKehlaniのポップス侵攻が進むかもしれませんね!

 

Katy Perry – ‘Chained To The Rhythm’

On this song Perry takes jabs at blissful ignorance via the metaphor of pop, which we can’t help feel is sort of shooting herself in the foot. But as the first example of her self-described “purposeful pop” it’s not a bad start – mainly thanks to it also being a massive tune.

 

この記事を書こうと思ったきっかけその①です。この曲を選んでいるのは正直意外でした。NMEは「メタファーが潜んだポップで、それに完全に同意とまではいかないが、それでもリスナーを満足させるだけのポップス曲としての強さがある」と評しているようですね(かなり意訳しています)

しかしその意向はヒットチャートでは従来と比べるとそこまで振るわず、現在アメリカでもイギリスでも順位を落としつつあります。このままいくと、最初の注目度の割には尻すぼみになってしまった昨年のMeghan TrainorのNOのようになりそうです。

他の媒体はこの曲をどのように評価しているかは分かりませんが、もしかしたら年末になったら2015年のCarly Rae Jepsenのように「ポップチャートでは奮わないものの批評家には評判の高いポップス歌手」になったりするのですかね。ヒット度、評判ともに今後の動向に注目です。

 

Sigrid – ‘Don’t Kill My Vibe’

Few have made an entrance quite like Norwegian 20-year-old Sigrid this year. This is the kind of pop debut that only comes around every so often – thanks in no small part to its enormous ‘fuck-off’ of a chorus.

 

曲のリリースはこのDon’t Kill My Vibeだけながらも、その1曲で大きな注目を集めているノルウェーの20歳のSigrid。NMEが”Fuck-Off of a Chorus”と評したサビコーラスの壮大なスケール感が魅惑的です。近年はエレクトロサウンドを下敷きにしたポップスが多いと感じていますが、この曲はどちらかというとロック風サウンドが下敷きになっています。LordeのGreen LightやHarry StylesのSign of the Times辺りが好きな人には向いている曲かな、と思います。まだヒットチャートには出てきていませんが、今年後半の台風の目にもなりそうなポテンシャルを感じる曲です。

 

Calvin Harris – ‘Slide (feat. Frank Ocean & Migos)’

“All my songs in 2017 have been sonically designed to make you feel fucking incredible,” Calvin Harris wrote before releasing this Frank Ocean/Migos collab. This one’s not far off.

 

Calvin Harrisの「ポップス界、EDM界に革命を起こしてやるぜ」という気概を感じる一曲。このSlideの次のシングルHeatstrokeでもYoung Thugなどを起用したように、今まで無かったような人同士を組み合わせせる実験を高いレベルでこなしているように思います。曲単位ではPitchforkもBest New Trackにも認定されましたが、このEDMという批評家からは遠い世界のスターが、アルバムで科学実験を成功させるかに注目が集まります。

 

Zara Larsson – ‘TG4M’

From the Swedish popstar’s international debut ‘So Good’, this mid-tempo balladbanger deals with self-destructiveness and low self esteem: “You’re too good for me / but I want you anyway.”

 

この記事を書こうと思ったきっかけその② アルバムでの高評価(4/5点)に引き続きベストソングにもピックアップ*2と、NMEのZara Larsson推しの姿勢が伺えます。私はアルバムの新規曲の中ではOnly Youを推している(参考↓)のですが、NMEはTG4Mなのですね。ミッドテンポなエレクトロポップで、全体的な浮遊感が心地よいですね。密かにアメリカとイギリスのSpotifyでシングルのSymphonyに次ぐ2番人気(アルバムの新規曲で)になっていて、今後のヒットにも期待ですね。

 

 Drake – ‘Passionfruit’

Every time Drake produces a sadbanger of this quality, it just proves that Sad Drake is the best kind of Drake.

 

One Danceに次ぐDrakeのダンスホール系ポップスチューンのPassionfruit。Drakeこそが現在のポップスの王で、流行の先端はここにあるということを証明している曲かなと感じます。

 

Charli XCX – ‘Babygirl (feat. Uffie)’

This glossy, funny highlight from Charli’s mixtape ‘Number 1 Angel’ practically winks at the listener. ‘Babygirl’ is cutesy and ironic, taking suggestive pop lyrics to the extreme.

 

NMEにとってCharli XCXはイギリス代表の一人のようなものだと思います。2016のNME AwardsではAdeleを差し置いてBest Solo British Artistに選ばれています。今回のミックステープもBest Albumのほうにも名を連ねており、「90年代を彷彿とさせる力強く興味深いポップアルバム」と賞賛しています。同時にMØとの3 AMをNMEは賞賛していて、この2曲がアルバムの主役ということなのでしょう。実験的な要素もあったミックステープですが、この2曲は正統派ですよね。

 

(参考)

 いかがでしたでしょうか。(だいたい)4月までのポップスではこれらの曲の評判が良いのですね。ポップスに批評家の目線が入ることは少ないと思ったので今回はこのように取り上げてみました。ちょっと意外な選曲もありましたが……!

あとNMEはEd Sheeranのアルバムを好意的に捉えていたのに(4/5点)、一曲も入れていなかったです。イギリスのみならずポップスの主役は彼なので、これは意外ですかね。

 

 

プレイリストも作りました。今回はSpotifyもあります。

*1:気力「だけ」はある

*2:歌詞に出てくるPick up the Phoneの部分とかけている()