チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Linkin Park のHeavyをチャート観点から評価

通常の更新で、Linkin ParkのHeavyについて書いていたらやたらと長くなってしまったので、個別記事にします。このHeavy、そしてアルバムOne More Lightを主にチャート面から考えるという記事です。

↓通常の更新

 


この成績はもろ手を挙げて喜べるかというと、微妙。その理由は今回のアルバムのコンセプトにあります。以前のアルバムに無いほど今回のアルバムはポップ。デビューアルバムから17年のベテランが7枚目のアルバムで大胆なモデルチェンジを行う勇気は凄いと思います。実際、これは痛みを伴う改革で、Linkin Parkが元々支持を得ていたRock系ラジオでの支持を失い(HeavyはRock系ラジオ44位、前アルバムのUntil It’s GoneはRock系ラジオ16位かつ、Mainstream Rock系*1ラジオでは1位、Heavyは圏外)、Pop系ラジオで16位と躍進しました。Pop系ラジオで20位以上に入るのは約10年ぶりのことです。

しかし、Hot 100で50位 / Pop系ラジオで16位には不足感も感じます。まず制作陣との比較から行きます。この曲の客演はKiiara、ライター陣はJustin BieberのSorryなどでおなじみのJustin Tranter+Julia Michaelsです。実は、この2組は他の曲でより高い数字を出しているのです。

まずKiiara、昨年Goldでブレイクした彼女ですが、そのGoldはHot 100では13位でPop系ラジオではなんと5位まで到達しています。個人的にこのHeavyとKiiaraの相性は微妙だと思っています。その理由Kiiaraの志向スタイルにあって、Kiiaraは代表曲Goldや最近のWhippin’では歌い上げるというよりもトラップにも似た囁くようなオルタナティブな歌唱スタイルに特徴があります。”憂鬱なエレクトロポップ”とも評されることもあるようです。しかし、このHeavyのKiiaraパートはかなり歌い上げるような歌唱スタイルなので相性はどうなのかな、と思っていましす…Kiiaraの新境地というと聞こえは良いですが、もう少し適材がいたような気がします。

そしてJustin Tranter+Julia Michaelsについて。このコンビはソングライターとしてJustin BieberのSorry(ピーク1位)、Selena GomezのGood For You(ピーク5位)などのヒットに貢献してきました。いくら知名度のあるLinkin ParkといえどもJustin Bieber、Selena Gomezほどの人気は無いので、そこと比べるのは酷です。しかし、今回の似たような制作陣によるJulia Michaelsが歌うIssues(今週11位。ピークも11位 Pop系ラジオでは7位)との比較は避けられない気がします。Julia Michaelsは裏方として2015年終盤から大きな存在感を発揮していましたが、歌手として表に出るのはこの曲がほぼ初。そのデビューシンガーをもここまで引き上げるポテンシャルがこのJustin Tranter + Julia Michaelsのライター陣にはあるということがこの曲で証明された、と言って良いと思います。インスタ女王Selena Gomezが紹介するなど複合的な理由もありますが。↓参考

もう1回このHeavyの成績を振り返ります。Hot 100で50位、かつPop系ラジオで16位。制作陣Kiiara、Justin Tranter + Julia Michaelsの成績を下回っているので、彼(彼女)らのポテンシャルを考慮するとチャートでもう少し上を目指せたかもしれません。まだ伸びしろは無くはないですが、大きくは無いと思います。

さらには過去の成績と比べてもやや物足りないかもしれません。2000年台はロック~ラップスタイルを志し、ヒットを連発しIn the EndをはじめとしてHot 100、Pop系ラジオでいずれもトップ10を3曲記録しました。ロック~ラップスタイルでもHot 100上位を狙えたのに、今回のポップでその成績に届かないのか…という感じもありますかね……

 

ここまでこのチャート成績をネガティブに捉えてきましたが、新しいスタイルでもアルバム1位を獲得したという点は見事(今年唯一のロックミュージシャンのアルバム1位)で、Hot 100でも悪くないところまで来たという点、前アルバムのチャート的な不調を克服したという点は見事で、もう少し上を目指せた感はあるものの、総合的に鑑みるとチャート的には及第点でしょうか……!!

本人曰く、「今回のアルバムを”セルアウト”と言った奴には口をメッタ刺しにしてグチャグチャにしてやる」だそう。

”セルアウト”というと聞こえが悪いですが、要は彼らは今回のアルバムで”時代への順応”を試みたのだと思います。その”順応”がポップへの方向転換だったのでしょうね。チャート上でそれに対するリアクションは、上でも言った通り及第点だと思います。

 

ちなみに評論家からの意見は……… 


 

*1:ハードロック系