チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

イギリスシングルチャート 7/7 【新ルールの第一週目】

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Travis Scott。今週、Goosebumpsがイギリスシングルチャートに登場したのですが、それにはある理由があります……!

 


イギリスの音楽チャートを運営するOfficial Chartsは、先月シングルチャートにルール変更を加えることを発表しました。そのルール変更とは……

・同一アーティストの曲は3曲まで (アルバム曲を抑制するため)

・古い曲のストリーミングのレートを調整する (詳細は不明)

……全ては新しい曲 / 才能を映し出すショーケースであり続けるため……

 

このルール変更はどのような効果を及ぼすのか。今週ルール実施後初のチャートだったため、チャート観察を行いたいと思います。

 

まず、どのような曲が落ちたのか。という点から見ていきます。今週チャートから外れた曲は……

先週の順位 / アーティスト名 / 曲名 / (ピーク順位 / チャート滞在週数)

100 Sigrid - Don't Kill My Vibe (62位 / 7週)
99 Ed Sheeran - New Man (5位 / 14週)
97 Drake - Blem (10位 / 15週)
96 Royal Blood - Lights Out (96位 / 2週)
95 The Chainsmokers - Paris (5位 / 24週)
94 JP Cooper - September Song (7位 / 31週)
93 Imagine Dragons - Whatever It Takes (93位 / 1週)
91 The Chainsmokers - Closer (1位 / 47週)
90 James Arthur - Can I Be Him (69位 / 7週)
89 Little Mix - Shout Out to My Ex (1位 / 35週)
88 Ed Sheeran - Happier (6位 / 16週)
87 James Arthur - Say You Won't Let Go (1位 / 42週) 
86 Starley - Call On Me (6位 / 33週)
83 Ed Sheeran - Thinking Out Loud (1位 /118週)
82 Drake feat. Wizkid & Kyla - One Dance (1位 / 65週)
81 Lady Gaga - The Cure (19位 / 11週)
78 Martin Garrix & Dua Lipa - Scared to Be Lonely (14位 / 22週)
75 DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jremih - Don't Quit (75位 / 1週)
57 Ed Sheeran - What Do I Know (9位 / 17週)
50 Ed Sheeran - Perfect (4位 / 17週)
28 Liv'n' G - Smile for Bradley (28位 / 1週)

 

以上21曲が今週チャートから外れました。先週の9曲と比べると、入れ替わりが激しい週ということが分かります。そして、太字の6曲が新ルールの影響でチャートから外れた曲だと思います。Ed SheeranはShape of You、Galway Girl、Castle on the Hillの3曲が上位にいるため、Little MixはPower、No More Sad Songs、Touchの3曲が上位にいるため「3曲ルール」に引っかかりました。またDrakeのOne Danceは1年以上チャートに入り続けていているので、古い曲のストリーミング調整に引っかかったのだと思います。ストリーミング単独では順位を上げていて、チャートから外れ無さそうな様子だったので、何かしらの調整が行われている可能性が高いでしょう。New Man、Blemはルール関係ない自然減だと思います。

この6曲に加え、この週リリースのCalvin HarrisのCash Out、Heatstrokeもおそらくこのルールに阻まれたので、この新ルールによってチャートを8枠拡大したと言えます。

そのことを頭の片隅に起きながら、今週のチャートを見ていきます。

 

100 KSI - Creature (New)

99 Bugzy Malone - Bruce Wayne (New)

98 Dua Lipa - Be the One (↓)

97 Taylor Swift - Shake It Off (Re)

96 Travis Scott (feat. Kendrick Lamar) - Goosebumps (New)

95 Katy Perry feat. Skip Marley - Chained to the Rhythm (↓)

94 Stormzy - Big For Your Boots (↓)

93 Tyler, the Creator - Who Dat Boy (New)

上記のルールが開けた8枠によって入ってきた8曲です。そのうち4曲が新登場、さらには、Bugzy MaloneとTyler, the Creatorは初のイギリストップ100、Travis Scottも客演以外では初なので、新曲 / 才能のためのルール改正という狙いは最初の週から成果が見えています。8枠は一見少ないと思いましたが、今後も効果がありそうですかね。

 

92 Future feat. Chris Brown - Pie (New)

Mask Offが22位まで一時期上昇し、イギリスでも知名度を上げてきたFutureの新曲がさっそくチャートに登場。One Dance以降Drakeはイギリスでも完全に定着しましたが、それに続く形で他のラッパーの躍進も続いています。

 

91 Not3S - Aladdin (New)

USで支持されるヒップホップの他にも、グライムなどイギリス産ヒップホップの支持も拡大。このNot3Sもその一人。このAladdinのほかAddison Leeも63位に。

 

84 Bruno Mars - Versace on the Floor (New)

David Guettaとのシングルバージョンのリリースによりチャートに新登場。

 

72 Bryson Tiller - Run Me Dry (New)

リリースから数週経っての登場。Bryson TillerのRun Me Dry。DJ Khaled、Rihannaと組んだWild Thoughtsで知名度を上げた、と思ったのですが、Wild Thoughts前後でそこまでヒット度は変わらないようです。

 

65 Raye - The Line (New)

iTunesダウンロード割引の恩恵を受けRayeのThe Lineが登場。65位。Stormzyのグライムアンセム、Big For Your Bootsのビデオに登場し、またXファクター出身の5 After MidnightのUp in Hereのソングライトに参加し、さらにイギリスの上半期6番目のヒットJax JonesのYou Don't Know Meでは客演を務めるなどイギリスで幅広い活動をしているRaye。ゆくゆくはイギリスを代表するシンガーになるかも。注目株です。

 

59 Axwell ∧ Ingrosso - More ThanYou Know (New)

Swedish House Mafiaの3人中2人が集まったAxwell ∧ Ingrosso。そのMore Than You Knowが59位で登場。この名義ではイギリス5曲目のチャート入り。この名義でHot 100(アメリカ)に入ったことはありません。ただI Love Youがポップ系ラジオで多くかかるなど、ある程度ヒットの兆しはありました。

 

56 Liam Gallagher - Chinatown (New)

新曲Chinatownが56位で登場。Wonderwallが69位、Don't Look Back in Angerが87位ほか、Liam Gallagher名義のWall of Glassが45位に入っていますが。ソロ / グループの両方で入っていても「同一アーティスト3曲以下」のルールには引っかからないようです。まあ、当たり前といえば当たり前ですが……

 

55 The Killers - Mr. Brightside (↑)

古い曲を制限するルールもどこと吹く風?イギリスシングルチャートの見どころ、The KillersのMr. Brightsideが今週も元気に55位でチャートイン。この曲は古い曲で、新しい曲のためのチャートにするならこの曲は真っ先に消されそうですが意外とチャートに残りました。この曲をどう扱うか、が今後の「新曲をサポートしたい」イギリスシングルチャートを観る上で重要な項目な気がします。

 

43 Calvin Harris feat. Future & Khalid - Rollin' (Re)

アルバムリリースで再注目を浴びて再登場。Feelsは6位まで上昇しました。アルバムチャート1位の座はEd Sheeranに譲りましたが、5曲が100位相当のストリーミングやダウンロードを記録しています。ただし、上記のような3曲ルールで実際にチャートに載るのは3曲です。アメリカではアルバム1位を取ると思っていましたが、現状DJ Khaledの2週目のアルバム1位が見込まれているようです。

 

30 ALMA - Chasing Highs (↑)

ダウンロード割引の効果で上昇。フィンランド人シンガーALMAのChasing Highsが30位まで上昇。黄色い髪がトレードマークの彼女は、Martin Solveigの新曲All Starの客演も務めています。

最近 Charli XCXとDua LipaがこのALMAを訪れてフィンランドに行ったようです。

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24 Rudimental feat. James Arthur - Sun Comes Up (New)

今週1番高い順位で登場した曲。RudimentalとJames ArthurのSun Comes Upが24位で登場。イギリスで人気の二組による夏アンセムです。初期のJohn NewmanとのFeel the Loveというよりは、セカンドアルバムのRumour Mill風の軽やかな作風です。

 

21 Imagine Dragons - Thunder (↑)

アメリカでは今週Believerがトップ10入りし、今年初のロック曲のトップ10入りとなりましたが、イギリスではThunderのほうが人気です。

 

9 Maggie Lindemann - Pretty Girl (↑)

Maggie LundemannのPretty Girlが9位に上昇。自身初のイギリストップ10。ポイントのほとんどをCheat Codes X Cade Remixで稼いでいます(=Remixがメインバージョンのようになっています)。Cheat CodesはSexに次いで2曲目のイギリストップ10です。Maggie LindemannもCheat Codesも両方共アメリカ出身ですが、まだアメリカのチャートでは100位にも入っていません。

ちなみに個人的にはリミックスじゃない原曲バージョンが2017後期にアメリカで流行るのではないか?と密かに期待しています。

 

7 Rita Ora - Your Song (↑)

7位浮上と好調のRita OraのYour Song。2012年のデビュー以降9曲目のイギリストップ10と、イギリスで支持されています。How We Do、I Will Never Let You Down(と客演のBlack Widow)に続くアメリカのHot 100入りも期待できそうです。

ちなみにRita OraはR.I.P.ではDrake、I Will Never Let You DownではCalvin Harris、Black Widow(客演)ではKaty Perry*1、そしてこのYour SongではEd Sheeranがソングライトに参加するなど、多様なアーティストと組んで楽曲をリリースしています。

*1:厳密にいうと、ソングライトというよりも、Katy Perryが採用しなかった曲をIggy Azaleaが拾ったもの