Jay-Zがアルバムチャート1位、そしてHot 100でも9曲登場と健在ぶりをアピールする一方で、実はその影響で多くの曲がチャートから外れたり、順位を落としたりしました。それらの曲とは……
・プレイリスト
92 Selena Gomez feat. Gucci Mane – Fetish (New)
Selena Gomezの新曲Fetishが92位で登場。他の曲とは違い木曜日リリースで、ダウンロード/ストリーミングの集計が1日分ながらも今週のチャートに登場。来週は1週間分集計されるので、ポイントの大幅増の予定です。Selena Gomezは前シングルBad Liarに引き続きの木曜日リリースなのですが、何かしら意図はあるのでしょうか。
※木曜日リリースのメリットは、同日にほかの曲がリリースされないので埋もれずに目立つこと、デメリットは最初の週のポイントが割れてチャートでロケットスタートできないことですかね……
91 Zedd & Liam Payne – Get Low (New)
ZeddとLiam PayneのGet Lowが91位で登場。Zeddの前シングルStayのスタート順位は28位、Liam Payneの前シングルStrip That Downのスタート順位は42位で、今回のGet Lowは91位スタートで物足りなく思えますが、ラジオでは順調に数字を伸ばしています。(今週既にPop系ラジオ36位)それに合わせてHot 100でも順位を伸ばせるでしょうか。
89 Macklemore feat. Skylar Grey – Glorious (New)
Macklemoreの新曲Gloriousが89位で登場。昨年まではMacklemore “and Ryan Lewis”という名義でしたが彼とは音楽的に決別し、今回の曲はMacklemore単独になってから最初の曲。今回のプロデューサーはJoshua Karp。ちなみに彼らの曲がよくかかるのはHip Hop系ラジオではなくPop系ラジオのようで、現在Pop系ラジオ35位。彼らの最大のヒットThrift ShopでもR&B,Hip-Hop系ラジオでは34位がピークです。
客演のSkylar Greyはチャートでは今まで”名脇役”のような成績を残しています。4位まで到達したEminemとDr. DreとのI Need A Doctoreをはじめとして、今まで客演としては6曲Hot 100にのっていますが、自身メインの曲では今のところ0曲です。
(以下マニアックなHot 100知識)
※ソングライターとしてもEminemとRihannaのLove the Way You Lieなどの実績があります。Eminem+RihannaといえばMonsterもありますが、このEminem + Rihannaの曲に参加したソングライターは客演ではHot 100に入るものの、自身の曲は入らないというジンクスがありました。MonsterではソングライターにJon Bellion、Bebe Rexhaが参加していたのですが前者はZeddのBeautiful Now、後者はDavid GuettaのHey MamaでHot 100に入るものの自身の曲は入らず、Skylar Greyのようなチャートの入り方をしていました。しかし2016年後半にJon Bellionが自身のAll Time LowでHot 100に入ると、それに続いて今年Bebe RexhaもI Got Youで自身の曲*1では初のHot 100入り。Skylar Greyもそれに続けるでしょうか。
今週はJay-Zがアルバムから9曲を送り込んだこともあって、入れ替わりの多めでした。またトップ40圏内で登場した曲が4曲と上位の曲も増えたため、先週まで横ばいだった曲は順位を少し落とす傾向にあります。ですが、その中で密かに大幅に順位を落としている曲もあって、Camila CabelloのCrying in the Clubが53位 → 71位、DrakeのPassionfruitが51位 → 67位など。なかでもLady GagaのThe Cureはかなり順位を落としていて50位 → 84位に。来週これらの曲は盛り返す可能性がありますが、ここまで大幅に順位を落としている曲は、あまり期待を持てないかもしれません。
52 Demi Lovato – Sorry Not Sorry (New)
Demi LovatoのSorry Not Sorryが52位で登場。この曲も週途中の登場ですが、こちらは火曜日リリースで3日分が集計に乗っています。Selena GomezのFetishほどではないものの、現在ダウンロードとストリーミング両方で上々の数字を残していてHeart Attack以来4年ぶりのトップ10に期待が持てるかも。
51 Jay-Z feat. Beyoncé – Family Feud (New)
Jay-Zが紆余曲折を経てiTunesやSpotify以外のストリーミングサービスでアルバムを公開した結果、見事にアルバムチャートBillboard 200で1位を獲得。Hot 100には9曲が登場。その中にはBeyoncéとの夫婦共演の曲も。今週のJay-ZとBeyoncéの直近のアルバムLemonadeのリリース週のすこし比較をしてみたいと思います。
BeyoncéのLemonadeはストリーミングではTidal限定だったものの、アルバム全12曲がHot 100に登場。その平均順位も32位とかなり高め*2であり、またアメリカ人のアルバムがHot 100に10曲以上を送り込んだ初の事例でもあります。*3 Tidal限定でこの数字を叩き出すBeyoncéの影響力や注目度の高さがわかるデータです。
一方Jay-ZはTidal限定ではなくSpotify以外のストリーミングサービスで公開して9曲エントリー。ちなみにTidalでは前の週から公開されていますが、Tidal側が数字を非公開にしたためチャートには反映されていませんでした。9曲とふたケタにわずかに及びませんでしたが、アルバムが10曲しかないのでこの数字はかなり良い数字だと思います。例えばMigosのCultureでは13曲中7曲がエントリーだったので、対比するとJay-Zの健在ぶりがよく分かると思います。
ちなみにこのアルバムリリースでJay-ZはHot 100エントリー曲数が計96曲になり、James Brownを抜いて歴代5位の多さに。(それより上位はGlee Cast、Drake、Lil Wayne、Elvis Presley)
参考↓
33 21 Savage – Bank Account (New)
21 SavageのアルバムIssa Albumが今週チャートに反映され、Hot 100には2曲が登場。Famousが94位、Bank Accountが33位で登場。Metro Boomin、Futureとのシングル“X”をのピーク(36位)を超えることに成功しました。ちなみにこのIssa AlbumでもMetro Boominが14曲中8曲で登場します。このBank Accountは違いますが。
※後日追加 Metro Boominは「サブ・プロデューサー」のような形でこの曲に携わっていたようです。
アルバムチャートでも2位と健闘。純セールスは3位でした。純セールス1位はJay-Zで、2位はHAIM。HAIMは総合アルバムチャート(=Billboard 200、ストリーミングやシングルも考慮)では7位でHot 100への登場は0曲。
25 Kesha – Praying (New)
Keshaの復活シングル、Prayingが25位で登場。この曲のプロデューサーはRyan Lewis。Macklemoreと決別したからは初のプロデュースで、両者にとって再スタートを期す一曲に。Keshaの従来の軽快なエレクトロ系ダンスポップとは一線を画するバラード調の1曲。8月リリース予定のアルバムがどのような作風になるかが興味深いです。来週のチャートで先週リリースのWomanが登場見込みです。
ちなみにかつてはKe”$”ha名義でしたが 2014年1月にKe”s”haに名義変更しています。
23 Jay-Z – The Story Of O.J. (New)
Jay-Zのアルバムから登場した9曲のうち、一番高い順位で登場したのはビデオも公開されたThe Story Of O.J.で23位。今週はこの曲など、計4曲がトップ40で登場し上位をかきまわしました。ちなみにJay-ZがYouTubeにビデオを上げるのは珍しいことで、約6年ぶりのことになります。Holy Grail.. Magna Carta期はYouTubeではない媒体にビデオを上げていました。最近ではDrakeやFrank Oceanなどの、YouTubeに一曲も音源を上げない事例が増えてきましたが、Holy Grail~のJay-Zはその事例の先駆けだと私は考えています。
↓参考
8 Shawn Mendes – There’s Nothing Holdin’ Me Back (↑)
Shawn MendesのThere’s Nothing Holdin’ Me Backが8位に浮上!Stitches、Treat You Betterに次いで自身3曲めのトップ10。値下げに加え、アコースティックバージョンのリリースがダウンロード上昇につながりました。今週ポップ系ラジオで一番オーディエンスが増えた曲でもあるので、まだ伸びしろはありそうです。
× Harry Styles – Sign Of the Times (↓)
Jay-Zの9曲エントリーなどがあり、今週は16曲がチャートから外れました。その中には「途中」でチャートから外れてしまった曲も。
「途中」とはどういうことかというと、Hot 100では21週目以降の曲が51位以下に”落ちると”チャートから外す制度があり、いわゆるヒット曲はその制度でチャートから消えていきます。その制度で消さないと過去のヒット曲が新しい曲のエントリーを阻んでしまうからです。21週目で消えるためにはその前の週、つまり20週はチャートに入っていなければならないので、20週チャートに滞在するのはある種ヒットの目安の一つでもあります。この20週チャート滞在することを「完走」といったりもします。
つまるところ「途中」とは20週に満たないうちにチャートから外れてしまうことを指します。今週はヒットが期待された曲がいくつか「途中」でチャートから外れてしまいました。Katy PerryのSwish Swish (ピーク46位 / 7週滞在)、Fifth HarmonyのDown (ピーク42位 / 5週滞在)、DrakeのPortland (ピーク9位 / 16週滞在)、Harry StylesのSign of the Times (ピーク4位 / 13週) などがそうです。特に後ろふたつは、デビュー週からいきなりトップ10で登場しましたが、尻すぼみになってしまいました。Portlandは特段にプロモーションもせず、ラジオでもかからず、ほとんどストリーミングでポイントをキープしてHot 100に滞在していたのでいずれ落ちるのは自然(むしろ16週もキープしたのがすごい)ですが、つい最近までは上位にいたSign of the Timesがここ数週で一気に落ちたのは意外でした。
流行に目もくれないスタイルの曲でいきなり4位デビューしたことはHarry Stylesのカリスマ性を考慮しても正直快挙だと思っていたので、この急落下は個人的に少し残念でした。
※Jay-Z関連の曲が減るであろう来週は、いくつかの曲はチャートに戻るかもしれません。特にFifth HarmonyのDownはラジオで伸びているので復活の線が強いと思います。
× Travis Scott (feat. Kendrick Lamar) – Goosebumps (↓)
Travis ScottのGoosebumpsがチャートから陥落。一回は50位手前に来たあたりで21週目になってチャートから外れたこの曲ですがビデオのリリースで息を吹き返してすぐにチャート復活。ピークを32位まで伸ばし、チャート滞在も合計34週に。ピーク32位とはそこまで高い数字ではないですが、ピークが複数あって復活する“不死鳥タイプ”で粘った曲は総合的なヒット度がピークのわりに高くなるので、年間チャートに入る可能性が高いと思います。
× Migos – T-Shirt (↓)
Bad and Boujeeの後の1月にリリースされたMigosのアルバムCultureの代表曲「その2」のT-Shirtが今週チャートから外れました。Bad and Boujeeは43位(35週目)でまだチャートにいます。43位で登場して以降、すべての週を50位以上で過ごすというMigosの今年の注目度の高さが伺えるチャートアクションでした。
チャートで今週伸びを見せた曲たち
今週最もラジオで伸びた曲 DJ Khaled feat. Rihanna & Bryson Tiller – Wlid Thoughts
今週最もダウンロードが上昇した曲 Hailee Steinfeld – Most Girls
今週最もストリーミングが伸びた曲 J Balvin & Willy Williams – Mi Gente
最も高い順位で新登場した曲 Jay-Z – Story of O.J.
今週チャートから外れた曲 (16曲)
【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位/チャート滞在週数)】
100 Dan + Shay – How Not To (57位 / 14週)
99 Future feat. YG – Extra Luv (99位 / 1週)
97 Brothers Osborne – It Ain’t My Fault (97位 / 4週)
95 Russ – Losin Control (62位 / 19週)
94 Nicky Jam – El Amante (93位 / 10週)
90 Drake feat. Quavo & Travis Scott – Portland (9位 / 16週)
88 Katy Perry feat. Nicki Minaj – Swish Swish (46位 / 7週)
87 Tyler, The Creator (feat. A$AP Rocky) – Who Dat Boy (87位 / 1週)
86 Fifth Harmony feat. Gucci Mane – Down (42位 / 5週)
77 Metro Boomin feat. Offset & Drake – No Complaints (71位 / 2週)
76 Calvin Harris feat. Future & Khalid (62位 / 3週)
73 Harry Styles – Sign Of The Times (4位 / 13週)
55 Kodak Black – Tunnel Vision (6位 / 20週)
48 Migos – T-Shirt (19位 / 25週)
47 Travis Scott (feat. Kendrick Lamar) – Goosebumps (32位 / 34週)
45 Keith Urban feat. Carrie Underwood – The Fighter (38位 /22週)
☆近いうちのヒットが期待されるシングルたち
Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲を集めました。
(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora、Apple Musicで50位以上)
French Montana feat. The Weeknd & Max B (Apple 18位)
SZA – The Weekend (Apple 26位)
21 Savage – Close My Eyes (Apple 29位)
The Revivalists – Wish I Knew You (Shazam 38位)
Lauv – I Like Me Better (Spotify 39位)
Khalid – Young Dumb & Broke (Spotify 42位)
21 Savage – Bad Business (Apple 43位)
Maren Morris – I Could Use A Love Song (Pandora 49位)
Apple MusicのUSでのランキングのデータを発見したので、調査対象にしました。また好調の範囲を50位以上に狭めました。来週のチャートではFrench Montanaのアルバムリリースが反映されるのでHot 100での注目はそこですかね。そして密かに注目なのはアルバムチャートでのEXO(韓国のグループ)です。もしかしたらアルバムチャートトップ10圏内に入るかもしれないです。