チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 8/5 見どころ 【ストリーミングで1位を獲得した曲の悩み?】

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今週の見どころは、Jay-Zの曲がチャートから外れた影響から代わりに再浮上した曲です。↑はその一例のTravis ScottのButterfly Effectです。

 

 

96 Kesha feat. The Dap-Kings Horns – Woman (New)

Keshaの8月リリース予定のアルバムに向けたプロモーショナルシングル、Womanが96位で登場。バラード調のPrayingとはややスタイルの違うパワフルなポップです。この曲のソングライトにはAfrojack、Marshmelloの客演を務めたこともあるWrabelが参加しています。

 

91 Khalid – Young Dumb & Broke (New)

現在Spotifyで31位とじわじわ人気を集めていたKhalidのYoung Dumb & BrokeがついにHot 100に登場。91位での登場。客演を含めて今年4曲目のHot 100です。彼はLocationがHip-Hop & R&B Airplayで一時期2位に到達するなど、アーバン系リスナーから支持を得て飛躍しましたが、その人気は最近ポップ系リスナーにも飛び火しています。現在Locationはポップ系ラジオで35位とゆるやかに伸びていて、Hot 100でも順位が再上昇中です。Khalidは他にもLogic、Alessia Caraとの1-800-273-8255でもポップ系ラジオの支持を集めています(ポップ系ラジオ29位)

※また、今週Calvin Harris、FutureとのRollin’がHot 100の97位で再登場しています。

 

86 Jake Paul & Erika Costell feat. Uncle Kade – Jerika (New)

Vine出身現YouTuber、Jake Paulの歌手キャリア2曲めのHot 100エントリー。客演の2名ともHot 100には初登場。前シングルIt’s Everyday Broのダンスラップよりはややしっとりしたラップ曲です。

 

78 Fifth Harmony feat. Gucci Mane – Down (Re)

先週はJay-Zのアルバム曲が多くエントリーして入れ替わりが激しかったと言いましたが、今週はJay-Zのエントリーは2曲まで減ったので、多くの曲がチャートに返り咲きました。(7曲)Fifth HarmonyのDownは消える直前の週(86位)よりも順位を上げてチャートに再登場しました。ここからどこまで巻き返せるか要チェックです。ラジオでの支持が下がり始め、チャートポイントが下り坂に突入したFifth Harmonyの元メンバー、Camila Cabello*1のCrying in the Club(今週73位)の順位を来週抜くのではないかと思います。

 

75 French Montana feat. The Weeknd & Max B – A Lie (New)

この週の注目アルバムだったFrench MonatanaのJungle Rules。アルバムチャートでは新アルバムの中では一番高い順位の3位で登場しています。(1位Jay-Z、2位Kendrick Lamar)Hot 100ではThe Weeknd、獄中の盟友Max Bを客演に迎えたA Lieが75位で登場、そしてUnforgettableはダウンロードを伸ばして5位まで順位を上げています。French MontanaはChris BrownのLoyal(ピーク9位)で客演を務めたときの自己最高位を更新しました。

 

60 Travis Scott – Butterfly Effect (↑)

先も述べたようにJay-Zの先週の大量エントリーがチャートから外れました。そのため今週は中位にいる曲の多くが順位を上げています。目立ったのはTravis ScottのButterfly Effect (97位 → 60位)、Cardi BのBodak Yellow (78位 → 49位)、J BalvinのMi Gente (53位 → 42位)、Yo GottiのRake It Up (68位 → 41位)など。なかでもButterfly EffectとMi Genteはヒットの”先物指数”と鳴り得るSpotifyで好調でそれぞれ現在11位と10位で期待を持てるのではないかと思います。

※ちなみにMi GenteはSpotifyの「グローバル」順位では2位で、1位のDespacitoと合わせてグローバル1位2位をスペイン語曲が支配しているという状況になっています。ラテンの躍進が本格的に進んでいます。

 

39 Dylan Scott – My Girl (↑)

カントリーシンガーDylan ScottのMy Girlがトップ40に入りました。彼にとって初のトップ40入りです。Brett Eldredge、Luke Combosなど新人カントリー歌手の躍進が今年は目立ちますかね。カントリー系ラジオで先週まで1位。

 

30 Selena Gomez – Bad Liar (↓)

32位のDavid GuettaとJustin Bieberの2U、31位のMiley CyrusのMalibu、30位のSelena GomezのBad Liarと期待値の高い曲が中位に留まっています。これらの曲に共通するチャートアクションは、リリース当初は大きな注目を集めて上位に入って大きくは下がらず中上位(25位程度)に残るものの、上がりきらないというもの。この3曲はいずれも現在ラジオの成績がやや落ち始めており、上位を目指すならここが踏ん張りどころかもしれません。評論家からかなりの高評価を得たBad Liarでしたが、ヒットチャートでは不完全燃焼で終わってしまう可能性も……?

 

23 Demi Lovato – Sorry Not Sorry (↑)

はじめての1週間分フルカウントとなったDemi LovatoのSorry Not Sorryが23位まで浮上。同じく先週はフルカウントでなかったSelena GomezのFetishは今週27位です。現在11位~20位はゆるやかに下降中の曲が多いので、そこを一気に抜き去って近いうちのトップ10入りの可能性は十分にありそうです。(特にSorry Not Sorryのほう)

 

11 Kendrick Lamar – HUMBLE. (↓)

数週前に圧倒的なストリーミング量で1位まで登りつめたHUMBLE.でしたが、今週トップ10から落ちてしまいました。トップ10の滞在週数は15週でした。昨年1位を獲得した曲の平均トップ10滞在週数は19.4週でやや短めなことが分かります。(まだトップ10に戻る可能性はありますが)ストリーミングでヒットした曲はラジオが伸び切らずにトップ10、またはチャート自体に残る期間が少なめな傾向がありますが、この曲もストリーミングではSpotifyの記録を更新するほどの数字を出す一方で、ラジオのピークが10位と上がりきっていないこともあって今週トップ10から落ちてしまいました。

※ほかにストリーミングで1位まで登りつめたBlack Beatles(ラジオ7位)、Bad and Boujee(ラジオ13位)以外の今年1位になった曲はラジオで少なくとも5位以上を記録しています。

アメリカでは他国と同様ストリーミングが流行する一方で、ラジオという文化が強く残っていて、ラジオとストリーミングという二つの別次元のヒット曲のフィールドが出来ているような気がします。そんな環境では、ラジオとストリーミングの両方を制圧できる曲が他を寄せ付けないような圧倒的ヒットになっているように思います。(Shape of You、Despacito、Closerなど)

 

10 Charlie Puth – Attention (↑)

先週に引き続きiTunes値下げによる多くのダウンロード、さらにラジオで大きく伸びたことからCharlie PuthのAttentionが10位とトップ10に突入。Wiz KhalifaとのSee You Again、Selena GomezとのWe Don’t Talk Anymoreに続いて自身3曲めのトップ10を記録し、男性シンガーソングライターの代表格としての地位を築きつつあります。

ちなみにこの曲はリミックス版もあって、Bingo PlayersとOliver Heldensによるものです。Charlie Puth(とLil Wayne)のNothing But Trobleを大きくサンプリングした“Trouble”で昨年ブレイクしたOffiahにお呼びの声はかからず……(?)

 

9 Sam Hunt – Body Like A Back Road (↑)

今週”Hot Countory Songs”チャートで24週目の1位を記録し、その記録は歴代最長タイであるとビルボードのニュースにもなったBody Like A Back Road。ですが、Hot ○○(ジャンル) Songs系のチャートは 2012年後半に大きな変更*2がなされていて、つまりこの記録「この5年」といってもよいものです。ただ、カントリー曲として優秀な数字だということには変わりがなく、今回このBody Like A Back Roadとタイになっているのは2013年に(総合)年間9位のCruiseです。週のピークは4位ながらもリミックス版のリリースによるロングヒットで年間9位に食い込みました。この曲も4月にはじめてトップ10入りしたのち、つねに上位をキープして先週トップ10に舞い戻るという息の長い曲になっており、Cruiseのように年間トップ10入りの可能性もあるか。現在ポップ系ラジオで伸びを見せています。

 

× Calvin Harris feat. Frank Ocean & Migos – Slide (↓)

アルバムリリースの週にあたる2週間前は32位まで順位を上げていたSlideですが、今週チャートの外へ。ピーク25位 / 20週滞在と、2015年のHow Deep Is Your Love並みの成績です。Calvin Harrisの従来のリスナー以外の注目を大きく集めたという点で革命的な一曲でした。この曲で集めた注目を、現在26位のFeelsのさらなるヒットに繋げられるか。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Charlie Puth - Attention

今週最もダウンロードが上昇した曲 French Montana feat. Swae Lee - Unforgettable

今週最もストリーミングが伸びた曲 Demi Lovato – Sorry Not Sorry

最も高い順位で新登場した曲          French Montana feat. The Weeknd & Max B

 

 

今週チャートから外れた曲 (11曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位/チャート滞在週数)】

94 21 Savage – Famous (94位/1週)

91 Zedd & Liam Payne – Get Low (91位/1週)

90 Jay-Z – Mercy Me (90位/1週)

86 Jay-Z – Moonlight (86位/1週)

63 Jay-Z feat. Frank Ocean – Caught Their Eyes  (63位/1週)

56 Jay-Z feat. Gloria Carter – Smile  (56位/1週)

55 Jay-Z – Kill Jay-Z  (55位/1週)

51 Jay-Z feat. Beyoncé – Family Feud  (51位/1週)

50 Luke Combs – Hurricane  (31位/22週)

47 Jay-Z feat. Damian “Jr.Gang” Marley – Bam  (47位/1週)

45 Calvin Harris feat. Frank Ocean & Migos  (25位/20週)

 

 

近いうちのヒットが期待されるシングルたち

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲を集めました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora、Apple Music)

 

先週までは条件を満たす(○○で△位以上など)曲を全てリストアップしていましたが、今回からは注目の曲だけをピックアップして軽い説明をつけるスタイルをとります。

 

Meek Mill – Issues (Apple 3位)

Meek Mill – 1942 Flows (Apple 4位)

Meek Mill – Win & Losses (Apple 6位)

Meek Mill feat. Lil Uzi Vert – F**k That Check Up (Apple 9位)

※ほか複数曲が上位に入っていますが、トップ10に入った曲をピックアップしました。

 

Apple Musicは昨年DrakeやFrank Oceanの独占配信でユーザーを集めたこともあって、アーバン系リスナーが大多数を占めていて、特にラップ曲が上位に入る傾向があります。さらに、Spotifyとは違ってプレイリスト文化一辺倒というわけでもないので、シングル単体よりも新作アルバムの曲がまとめて上位に入る傾向があるようです。

そんなApple Musicでのこの週の人気アルバムはMeek Mill。Spotifyでは4番人気のアルバムだったのですが、Apple Musicで圧倒的な支持でストリーミングを伸ばして純セールスでは及ばないLana Del Reyとの次の週のアルバム1位レースを繰り広げています。

ちなみに、←受動的なリスナー Pandora<SpotifyApple Music 能動的なリスナー→ という傾向があるように思います。

 

Louis Tomlinson feat. Bebe Rexha & Digital Farm Animals (Spotify 43位)

ダウンロードも多く集めた注目のリリースです。元One Directionのメンバーで唯一まだアメリカのトップ40ヒットがない彼ですが、この曲でヒットの基準とされるトップ40を狙えそうな予感です。

 

The Chainsmokers – Honest (Shazam 52位)

最新シングルで、ポップ系ラジオ順調に上昇中。近いうちにHot 100に入って再び注目を集めるかどうか。

 

Dua Lipa – New Rules (Spotify 51位)

Spotifyを急上昇中。自身3曲めのHot 100が見えてきています。

 

Linkin Park feat. Kiiara – Heavy (Spotify 54位)

In the End、Numb、そしてこのHeavy、One More LightあたりがHot 100入りの可能性があります。

 

*1:最近Fifth HarmonyをSNSでアンフォローした

*2:2012年以前だとHot○○は「ラジオ」のみのチャートでしたが、2012年後半にHot 100と同じ「ラジオ」、「ダウンロード」、「ストリーミング」の合算に変更。つまり、Hot 100からカントリー等ジャンルをそのまま抜き出したチャートということです