チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 (2017) 10/28 見どころ 【Feel It Still、ロック曲としては4年ぶりのラジオ1位!かかる期待は?】

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今週Portugal, The manのFeel It Stillがラジオ1位に。ロック曲としては珍しい躍進で、とある期待がかかっています。写真はCharli XCXのBoysのビデオに出演した時のPortugal, The ManのボーカルJohn Gourley。

※この週の1位~100位までの順位表↓

  

 

97 Quality Control feat. Quavo, Takeoff & Offset – Too Hotty (New)

レコードレーベルのQuality ControlとMigos3名によるシングルToo Hottyが97位で登場。なぜMigosの3名が分けて表記されているのか明らかにはされていませんが、おそらく全員のパートがあるということを強調したかったのでしょうか。Calvin HarrisとのSlide、またBig SeanとのSacrificesなど、feat. Migos表記ながらもTakeoffのパートが無い曲もあるのでこの表記だと全員が登場することが分かりやすいです。自身のBad and Boujeeでも実はTakeoffのパートが無かったです。

※Quality Controlが新たにリリースしたLil Yachty, Young ThugとのOn MeはYachtyの昨年のミックステープLil Boat時代のスタイルの1曲。

 

95 MAX feat. gnash – Lights Down Low (New)

優上がりの歌手MaxのLights Down LowがHot 100に登場。95位。ポップ系ラジオでゆっくりと数字を伸ばしています。客演は昨年i hate u, i love uでブレイクしたgnash。Maxは過去にLil Uzi Vertと共演したことも。別名Max Schneider。

Spotifyでのピークは約半年前で、さらにポップ系ラジオで40位圏内に入ってからも12週がすでに経過していて、「Hot 100入れそうで入れない」時期が長かった苦労人的な1曲です。

※2018年、ブレイク後客演で見かける機会が増えました。

 

91 Maren Morris feat. Vince Gill – Dear Hate (New)

ラスベガスのカントリー系フェスで発生した銃撃事件を受けて2週前の火曜日に緊急リリースされたMaren MorrisのDear Hateが91位で登場。客演は大ベテランカントリー歌手のVince Gill。火曜日リリースなので、集計システムの都合上チャートではやや不利です。(一番ポイントの入る期間はリリース直後ですが、その該当週ではチャートの集計が3日間のみだったため。※集計は金曜日~木曜日)

 

72 Kane Brown – Heaven (New)

Kane Brownがデビューアルバムをデラックス新装版としてリニューアルしてリリース。その新装版で追加されたHeavenが72位で登場。この曲は今週ダウンロード8位を記録しています。新装版リリースでセールスが伸びたこともあって、アルバムチャートでも56位 → 5位と急浮上しました。彼のブレイクのきっかけとなったシングル、What Ifsも今週カントリー系ラジオ1位、Hot 100でも27位と好調です。

 

60 Charlie Puth – How Long (New)

Charlie Puthの新曲How Longが60位で登場。来年リリース予定のアルバム、Voicenotesに前シングルのAttentionとともに収録予定です。

そのAttentionが先週までラジオ総合で1位だったなど、ラジオを得意とするCharlie Puth。早速ポップ系ラジオでは34位にランクインしていて、2曲連続のHot 100でのトップ10に向けて順調なスタートを切っています。

 

55 Sam Smith – Pray (New)

Sam SmithのTimbalandプロデュースの新シングル、Prayが55位で登場。Timbaland関連のバラードといえば、One RepublicとのApologizeですが、それを多少は意識しているのでしょうか。この曲とともにアルバム情報をリリース。タイトルはThe Thrill of It All、リリース日は11/3。リリース日がMaroon 5の新アルバムと重なっていて熾烈でハイレベルなアルバム1位争いが繰り広げられる予感がします。果たして……

※個人的にはアメリカ出身の地の利が生きてMaroon 5が勝つと予想しているのですがどうなるでしょうか……逆にイギリスではSam Smithが勝つでしょうね。

 

40 Halsey – Bad At Love (↑)

HalseyのBad At Loveがポップ系ラジオでの上昇などによりトップ40に到達。今週40位。これで4曲目のトップ40に。現在ツアーで同行しているCharli XCX(3曲)より多くのトップ40を記録したことに。ただ、Charliは3曲ともトップ10に行っているので、トップ10の数ならCharliのほうが多いです……

彼女の初のシングルヒット、New Americanaではオルタナティブ系ラジオから人気になったように、元はロックにも近いアーティストでしたが、Justin Bieber、The Chainsmokersとポップ系アクトの客演として活躍したことから、ここセカンドアルバムからのシングルはオルタナティブ系ラジオではかからず、ポップ系ラジオでの人気が際立つように。このラジオの系統変化によってHot 100での順位がファーストアルバムの頃と比べて上がっています。(オルタナティブ系ラジオよりもポップ系ラジオのほうの規模が大きいため)

 

32 Lil Pump – Gucci Gang (↑)

今週アルバムチャートで台風の目となった2000年生まれのラッパーLil Pump。純セールスは24位ながらもストリーミングで数字を稼いでアルバムチャート3位で登場。そのアルバムからの代表シングルGucci Gangも32位に順位を上げ自身初のトップ40を記録しています。2番人気のBossは今週101位相当で惜しくもHot 100入りならず。

今週のアルバムチャートの1位は白人ラッパーのNFが獲得。Hot 100へのエントリーが今まで無くシングルヒットには恵まれないものの、目立ったライバルのいない週のアルバムリリースだったため、アルバム1位を獲得。

Hot 100へのエントリー歴が無いにも関わらずアルバム1位を獲得するケースは、LCD Soundsystem、Brand Newに次いで今年3例目。2015,2016年はそのようなケースは無し。2014年はLecraeがこれに該当。彼は現在Tori KellyとのI’ll Find YouでHot 100に接近中です。

 

20 Lin-Manuel Miranda feat. Artists For Puerto Rico – Almost Like Praying (New)

プエルトリコでのハリケーン災害へのチャリティソング、Almost Like Prayingが今週1番のダウンロードを記録して20位で登場。指揮者Lin-Manuel MirandaのもとLuis Fonsi、Camila Cabello、Jennifer Lopez、Marc Anthonyなど総勢20名のラテン系スターが歌っています。

 

7 Sam Smith – Too Good At Goodbyes (↑)

Sam SmithのToo Good At Goodbyesが7位に浮上でトップ10に復帰。もともとラジオの順調な上昇によって追い風が吹いていたこの曲でしたが、Saturday Night Live(SNL)でのパフォーマンスによってダウンロードが上向いたことがトップ10復帰につながりました。

2014年末以降、アルバムチャートにはシングルのダウンロードも集計されるようになったので、代表シングルがアルバムリリース時にどこまでダウンロードを稼げるかもアルバムチャート1位争いの密かな焦点だったりもします。

 

5 Portugal. The Man – Feel It Still (↑)

今週5位まで浮上したPortugal. The ManのFeel It Still。特にラジオでの好調が際立ち、今週ラジオで1番聞かれた曲となっています!ビルボードが「ロック」と分類した曲としては4年ぶりのラジオ1位に!ラジオではまだまだ伸びているので、Hot 100でもさらなる上昇が見込めそうです。

※「ロック」と分類された曲*1で、2010年代でラジオ1位を獲得しているのはGotyeのSomebody That I Used to KnowとFunのWe Are YoungとLordeのRoylas。この2曲はいずれもHot 100でも1位を獲得しているので、このFeel It Stillもそれに続けるか?という期待がかかりますね!ストリーミングの拡大で相対的にラジオの比率が落ちているので、以前のようにどこまでうまくいくかは分かりませんがロック曲がどこまでHot 100で躍進するのか、同じく好調*2Imagine DragonsのThunderと合わせて注目です。

 

※※ちなみに、2014年にラジオ1位に到達したTove LoのHabitsも途中までは「ロック」扱いでした。ただ主流のラジオ局がポップ系へ移行したため途中でHot Rock Songsから外れ「ロック」曲ではなくなりました。(ラジオ1位を取ったタイミングではロック曲ではない) このHabitsのHot 100でのピークは3位でした。

※※LordeもMelodrama期のシングルからは「ロック」扱いではなくなりました。主流の局はロック系なので、なぜ「ロック」から外したかはよく分かりませんが……というよりもそもそもLordeやTove Loが「ロック」なのかは疑問…………

Lorde のHomemade DynamiteにはLorde当人とTove Lo、そして上記のFunのメンバーJack Antonoffという3人の「ロック王」がソングライターとして集合していています。リミックス版では今週”rockstar”でHot 100の1位になったPost Maloneが加わります。

 

1 Post Malone feat. 21 Savage – rockstar (↑)

3週の2位を経て、ついにHot 100の頂に登りつめたPost Maloneと21 Savageのrockstar。両者にとって初の1位。ストリーミングとダウンロードは元から好調ですが、ラジオ*3の数字が増えてきた(今週はじめてラジオ50位圏内に登場)ことが1位奪取の要因だと思います。UKやカナダでも現在1位を記録しています。

現在Spotifyではアメリカ・グローバルともに2位に大差をつけて1位についているrockstar。アメリカや他国でどこまで大規模のヒットになるか?今後も注目です。

これで今年ラップがHot 100で1位になるのは5曲めで、これは史上最多タイの多さ(2006年と並ぶ)。今年のチャートはあと4回ですが、それまでに1-800-273-8255またはその他のラップが1位を取れば記録を更新できますが、rockstarが強すぎるのでそれは難しいか……?今年はラップが躍進を遂げた1年というのは確かです。

またこのrockstarのヒットを受けてストリーミングやセールスが上昇していた彼のアルバムStoneyがついに今週ピークを更新!今週アルバムチャート4位に。ストリーミング主体による44週目でのピーク更新は「ストリーミングと音楽のセールス」というテーマの話題を語る上で記念碑的な重要な出来事ではないでしょうか!一部では、来週アルバムチャート3位とまたピークを更新するのでは?との予想も。

 

ここでPost Malone関連の小ネタを二つ。

 

✫その1 穴?を埋める?1995年生まれ初の1位!

ここまでで1990年~1994年生まれ、その下の1996年と1997年生まれのミュージシャンがHot 100で1位を獲得していましたが、今回は1995年生まれのPost Maloneが1位を獲得しその穴?を埋めています。1998年はまだですが、Shawn Mendesというエースがいるので将来有望です。彼はStitchesで記録した4位が最高位ですが、同じ1998年生まれのSilento(Watch Me)、Daya(Don’t Let Me Down)はそれを上回る3位を記録しています。

ちなみに…… 1990年生まれ=The Weekndなど 1991年生まれ=Ed Sheeranなど 1992年生まれ=Miley Cyrusなど 1993年生まれ=Zaynなど 1994年生まれ=Justin Bieberなど 1996年生まれ=Lorde 1997年生まれ=Desiigner です。

 

その2 100本のギターを壊したいPost Malone

Post Maloneは先日、宅配サービスPostmatesにTwitterでこのようなリプを送りました。

 

 

https://twitter.com/PostMalone/status/920102183000883202

「Postmateさん、ツアーで破壊するために100本のギターを注文したんだけど、上限が10本でできなかった。注文できる?」

真のrockstarを目指すべく?大量のギターをツアーで破壊する予定があるらしいPost Malone。先日NirvanaをカバーするPost Maloneの動画が話題となりましたが、今後はギター破壊も導入するようで、彼のライブにはギターが欠かせませんね。

 

× Childish Gambino – Redbone (↓)

44週という非常に長い期間のチャート滞在を記録したChildish GambinoのRedbone。今週チャートを後に。見事なロングヒットでした。ピークは12位。このロングヒットの理由はストリーミング → アーバン系ラジオ → ポップ系ラジオ と少しずつ規模を拡げていったことにあると思います。また、規模が拡大していく間もストリーミングでのポイント減少がゆるやかだったことも大きいです。

ビデオが無く大きなプロモーションも行われていなかったながらも、ストリーミングをじわじわ稼いでラジオで次第に拡大しロングヒット、というこの曲のプロセスはストリーミング時代の理想的な形の一つだと思います。

知名度の高いアーティストならリリース時からダウンロード・ストリーミング両方を抜群に稼ぎラジオでもロングヒットという形がチャート上では最強(CloserやShape of Youなど)。知名度がそこまで高くなくても、上記のような形を取れば優秀なロングヒットになります。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Imagine Dragons – Thunder

今週最もダウンロードが上昇した曲 Sam Smith – Too Good At Goodbyes

今週最もストリーミングが伸びた曲 Lil Pump – Gucci Gang

最も高い順位で新登場した曲          Lin-Manuel Miranda feat. Artists For Puerto Rico – Almost Like Praying

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Meek Mill feat. Chris Brown & Ty Dolla $ign – Whatever You Need (🗻51位 /⏰13週)

92 Old Dominion – No Such Thing As A Broken Heart (🗻46位 /⏰19週)

88 Brothers Osbore – It Ain’t My Fault (🗻79位 /⏰16週)

86 A Boogie Wit da Hoodie feat. PnB Rock & YoungBoy Never Broke Again – Beast Mode (🗻86位 /⏰1週)

84 A Boogie Wit da Hoodie feat. 21 Savage – Undefeated (🗻84位 /⏰1週)

68 Bhad Bhabie – Hi Bich (🗻68位 /⏰1週)

50 Childish Gambino – Redbone (🗻12位 /44週)

 

 

 

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲をピックアップしました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora、Apple Music、各種ラジオなど)

Gucci Mane feat. Migos – I Get the Bag (Apple2位)

Gucci Mane feat. The Weeknd – The Curve (Apple 7位)

Gucci Mane feat. Slim Jxmmi & Young Dolph – Stunting Ain’t Nuthin (Apple 9位)

 

個人的な感覚で、火曜日あたりにApple Musicでトップ10に入るくらいのストリーミングを稼いでいると、Spotifyでのポイントが低めでもHot 100に入る印象があります。

なので、今週のストリーミング王Gucci Maneのアルバムからは上記3曲が来週のHot 100に入るのでは?と予想

 

P!nk feat. Eminem – Revenge (iTunes など)

P!nkのアルバムの中で、Hot 100に登場しそうな有力候補です。ストリーミングはほぼ無いですがダウンロードをそれなりに記録しています。来週のチャートでは今年屈指の数字でP!nkがアルバム1位の見込み。

 

Kris Wu feat. Travis Scott – Deserve (iTunes など)

登場するなら来週ですが、少し数値が足りない気もします……果たして……

 

 

 


 

 

*1:ビルボードMaroon 5やOne Republicをロックとしていない。ロック系のラジオよりもポップ系のラジオでかかることが理由として考えられる

*2:ラジオの上昇幅が最大。自身はポイントが上昇したものの、他の曲の一時的な急上昇があったのでHot 100では順位を落としています

*3:どんな曲でもラジオは一気には上がらず、弧を描くような軌道のチャートアクションをとる