チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 11/11 見どころ 【Young Thugにとって嬉しい週に?】

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Young Thugが今週初のシングルトップ10(客演)、そしてアルバムチャートでは自己最高の2位を記録!*1ほかTaylor Swiftが14回目のダウンロード1位など

 

 

98 Liam Payne – Bedroom Floor (New)

Liam PayneのBedroom Floorが98位で登場。全米トップ10入りなど、成功を収めたStrip That Downに次ぐシングル。Chalie Puthが制作に参加したエレポップ風の爽やかなトラック。彼は自分の曲はTygaのRack Cityみたいなヒップホップ系と語っていましたが、Strip That Downと違ってこのBedroom Floorにはヒップホップ感はあまりありません。この曲が例外なのか、それとも様々なジャンルにトライしているのか?今後の曲スタイルに注目が集まります。

 

96 Niall Horan – Too Much To Ask (Re)

Niall Horanのデビュー作が今週アルバムチャートで1位に。それに伴いToo Much To AskがHot 100に再登場。他にはSlow Handsが24位に。シングルのトップ10は逃したものの、アルバムチャートでは1位を獲得し元One Direction勢では3人目の1位に。一つのグループからソロでアルバムチャート1位を獲得したのが3人出るのはThe Beatlesと並んで最多タイ(George Harrison 2回、John Lennon 3回、Paul McCartney 6回※Wings含む)です。残るLiamかLouisがアルバム1位を獲得して「人数」でビートルズを上回ることはできるのでしょうか?まあ、「上回る」と言っても、ビートルズは3人で計11回アルバムチャートで1位取っているので、回数の面ではまだまだ大きく差を開けられています。*2 この件についてはビルボードが個別記事を書いています。(50 Centなどについて触れています)

※アメリカでは見事アルバム1位を獲得したNiallですが、母国イギリスではアルバム1位ならず……(その週のアルバム1位はGeorge Michael

 

88 Selena Gomez & Marshmello – Wolves (New)

Selena GomezとMarshmelloのWolvesが88位で登場。評論家に絶賛されたBad Liar、Fetishと「ささやき路線」を取ってきたSelena Gomezですが、それらのチャート成績が微妙*3だったことからか新シングルWolvesは2013年のアルバムStars Dance期を彷彿とさせるエレポップ路線に回帰。Silenceがイギリスやドイツでトップ10入り、さらにDJ人気投票でも2年目でトップ10入りするなど破竹の勢いで躍進するMarshmelloとタッグを組んでいます。Selena Gomez “&” Marshmello とどちらかが客演、という訳ではないですがMarshmello色が薄く、「Selena Gomezの曲をMarshmelloがプロデュースしている」のような感があります。

Selena Gomezの曲の割に88位は低くない?と思うかもしれませんが、これは通常の金曜日リリースと違ってこの曲は水曜リリースで集計が2日分しかないため。*42日分で88位は健闘です。7日分フルに集計される来週はジャンプアップが確実です。ポップ系ラジオでもMarshmelloの前シングルSilenceを抜く勢いで上昇中、さらにはSpotifyでも上位がキープしているので、来週以降の躍進が期待できそう。ある程度長い期間勢いをキープできれば「ささやき」からの路線変更が功を奏したといえるぐらいのチャート成績は記録できそうです。

 

84 Post Malone – Candy Paint (New)

Post MaloneのCandy Paintが84位で登場。Rockstar大ヒットの効果によって以前からPost Malone関連曲がストリーミングで浮上していましたが、今回のCandy PaintはI Fall Apart、Go FelxのようにアルバムStoneyからの曲ではなく、ワイルドスピードのサントラからの1曲。Post Maloneの曲の中でもなぜリリースが約半年前のサントラ曲が注目されたか?というと、理由はSpotifyにあると思います。

Spotifyは無料会員だと、曲を指定して聞くことができず、プレイリストやアルバムから「シャッフルプレイ」で聞くしかできないので、rockstarを聞きたい無料会員の人がプレイリストをシャッフルする過程でCandy Paintを聞いて再生数が伸びて注目されるようになったのでは?と考えています。実際SpotifyではCandy Paintは40位前後を推移しているのに対しApple Musicでは100位前後を推移していて、両サービスで違いが出ています。*5

ちなみに現状ではワイルドスピードのサントラからはG-EazyとKehlaniのGood Lifeの59位が最高位で、それを抜く所までCandy Paintが伸びるか?が注目にも注目です。

 (参考)


 

61 Bebe Rexha & Florida Georgia Line – Meant To Be (New)

Bebe RexhaがFlorida Georgia LineのMeant To Beが61位で登場。元々ストリーミングで好調でしたが、ビデオ登場+そのタイミングでiTunes値引きが効いてのHot 100登場。カントリーの疾走感をポップスにうまく落とし込んだ一曲です。David GuettaらとのHey Mamaではトラップ系、G-EazyとのMe, Myself & Iではヒップホップ系、Martin GarrixとのIn The Name of Loveではフューチャーベース系など幅広いジャンルのヒットでシンガーを務めてきたBebe Rexhaですが、同じようにカントリーとのタッグでも成功できるか?

 

50 Future & Young Thug feat. Offset – Patek Water (New)

今週ストリーミングを多く稼いだFuture & Young ThugのミックステープSuper Slimy。収録曲のうち6曲がHot 100に登場しています。最高位はOffsetとのPatek Waterの50位。予告プロモーションがほとんど無い緊急リリースでしたが、ストリーミングを多く獲得してアルバムチャート2位に入っています。仮にアルバムチャート1位ならばFutureはラッパーとしては初、かつ史上6人*6(組)目の「年に3回異なるアルバムでアルバム1位」と偉業を達成できていましたが、惜しくも届かず。

※Hot 100にギリギリ入れなかったようで、101位以下相当の曲を扱うBubbling Underチャートでは1位~5位がこのミックステープからの曲です。(=101位~105位相当が全てこのミックステープからの曲)

 

46 Taylor Swift - ...Ready For It? (↑)

Taylor Swiftの...Ready For It?がビデオのリリースで少し上昇。52位 → 46位。元々はアルバム宣伝用の「プロモーション・シングル」という立ち位置でしたが、ビデオリリースと共に正式シングルとして再出発。ラジオでも本格的にかかりはじめているようで、今後の巻き返しが期待されます。ちなみに”Look”は10位 → 25位と今週も史上稀に見るスピードで順位を落としています。

 

30 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B – No Limit (↑)

G-EazyのNo Limitが30位に浮上。現在大きな脚光を浴びるCardi Bが客演にいるとだけあって勢いが凄いです。Apple Musicでトップ10に入るなどストリーミングで好調なだけでなく、リズミック/アーバンなどラップ好きが集う系統のラジオ局でも人気です。あとはビデオリリースや今は少なめなダウンロードなどが加わればいずれはトップ10まで手が届くか?

※ちなみにG-Eazyが記録したトップ40は全部女性と組んでいます。(Me, Myself & IではBebe Rexha・Make Me...ではBritney Spears

 

13 Taylor Swift – Gorgeous (New)

Taylor Swiftが新たにリリースしたGorgeousが13位で登場。ダウンロードが今週1位で、これで通算14曲目のダウンロード1位曲に。Rihannaと並んで最多の記録で、テイラーがいかに「初動で注目を集めるか」を表す記録だと思います。要は曲をリリースするだけで大きく話題になるということです。


ただ、今年の”Look”など話題を集めるだけ集めて尻すぼみ気味になることも……1989期はロングヒットが多かったですが。

※当初の...Ready For It?と同じく現状では「プロモーション・シングル」扱いでそこまでラジオでガンガンかからないようです。ただ...Ready For It?も正式シングルになる前から少しだけポップ系ラジオでかかっていたので、こちらのGorgeousも同じく少しはラジオでかかると思います。

 

10 Ed Sheeran – Perfect (↑)

Ed SheeranのPerfectが10位に上昇。シングル化以降ラジオの数字を順調に伸ばし、それに伴うダウンロード増などによってトップ10入りを果たしました。これで÷からのシングルは3連続トップ10入り。×の時もトップ10は3曲でした(Don’t、Thinking Out Loud、Photograph)この勢いだとCastle on the Hillで記録した6位を抜きそうな予感です。

 

※チャートマニアックな細かい点を考察します。「思った」で考察としては未完成ですが少し今後のヒットを考える上で参考になりそうなのでメモ書き程度に書いています。

いくらストリーミングが強くなったとはいえ、ラジオがチャートに集計されるという点、車と結びつくラジオ文化が強いアメリカではラジオでかかることが宣伝にもなるという点の2つにおいてラジオが強いアメリカで、ラジオが上昇したタイミングでトップ10入りするのは割りと順当なのですが、少し不思議だと思ったのはストリーミングを中心に集計するチャートになっている他の国のチャートでもこのタイミングでPerfectが軒並み上位に入ったということ。イギリスなど他国でもPerfectはラジオで上昇しているようなので、これが理由?かもしれません。例えばストリーミングがヒットを左右すると言われていますが、実はラジオの影響力は健在なのかもしれません。もしくは、アメリカのラジオが上昇する → アメリカで注目されてストリーミングが上昇 → Spotifyグローバル50に突入 → 他国でも注目されて再浮上???

 

7 Camila Cabello feat. Young Thug – Havana (↑)

Camila CabelloのHavanaが7位に浮上!ソロで2曲目のトップ10です。元からラジオとストリーミング・ダウンロード全てで上り調子でしたが、ビデオのリリースでさらに勢いがついてトップ10に入りました。次のチャートでアメリカでは3位・イギリスでは1位とFifth Harmony時代のWork From Homeを超える(アメリカ4位・イギリス2位だった)との予想もあるようです。

元々はプロモーション・シングル扱いで、シングルとして売り出す予定はなかったみたいですが、ストリーミングで上位に入りシングル化。そんな叩き上げシングルがどこまで行けるでしょうか。

※Work From Home以外の比較対象としてSelena GomezのSame Old Love(5位)が。このHavanaのピアノのメロディはSame Old Loveのものを利用したものでサンプリングなのでは?という話が出ていたこともあります。

※Young Thugは初のトップ10。アルバムチャートでも自己最高位の2位を記録し、嬉しい週に。

 

× Calvin Harris feat. Pharrell Williams, Katy Perry & Big Sean – Feels (↓)

Calvin HarrisのFeelsが今週圏外へ。イギリスで一時期首位に立つなど世界で幅広くヒット。アメリカでも20位とそれなりに伸びましたが、チャート滞在が18週と短いのが気がかりです。チャート成績を総合的にみると「まずまず」といったところでしょうか。Slideと同じような成績だと思います。

最近ラジオでかかり始めた次シングルFaking Itはどこまで行けるか。人気は拡大しているものの、シングルヒットはまだ無い(Suicide SquadからのGangsta 41位が最高位、チャート滞在が短い曲が多い)Kehlaniがトップ40に入るか?という期待をしています。

 

× James Arthur – Say You Won’t Let Go (↓)

James ArthurのSay You Won’t Let Goが驚異的な粘りを見せ、チャートに1年滞在しましたが今週ルールによりチャートから外れました。ここまでロングヒットとなったのはラジオでかなり長く持ったこと(入れ替わりが少ないアダルト○○系ラジオと相性が良い曲ということが大きい)、そしてストリーミングやダウンロードの数字がずっと大崩しなかったことが理由でしょうか。

ストリーミングがチャート成績を左右するとも言い、たしかにこの曲のピークも11位でトップ10に届かずそこはストリーミングの壁に阻まれた感もありますが、ロングヒットになるかどうかはラジオによって決まります。

年間チャートではピークが高い曲よりもロングヒットになっている曲のほうが強く出ることが多いので、アメリカで総合的にヒット度を高くするためには(現状では)ラジオが大切だと思います。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Portugal. The Man – Feel It Still

今週最もダウンロードが上昇した曲 Camila Cabello feat. Young Thug - Havana

今週最もストリーミングが伸びた曲 Lil Pump – Gucci Gang

最も高い順位で新登場した曲          Taylor Swift - Gorgeous

 

 

今週チャートから外れた曲 (12曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Billy Currington – Do I Make You Wanna (🗻47位 /⏰19週)

99 Jason Aldean – They Don’t Know (🗻67位 /⏰12週)

98 Garth Brooks – Ask Me How I Know (🗻98位 /⏰1週)

97 Becky G feat. Bad Bunny – Mayores (🗻97位 /⏰1週)

96 Walker Hayes – You Broke Up With Me (🗻96位 /⏰1週)

95 Gucci Mane feat. Slim Jxmmi & Young Dolph – Stunting Ain’t Nuthin (🗻95位 /⏰1週)

94 Calvin Harris feat. Pharrell Williams, Katy Perry & Big Sean – Feels (🗻20位 /⏰18週)

82 Chris Brown feat. Future & Young Thug – High End (🗻72位 /⏰1週)

71 Gucci Mane feat. The Weeknd – The Curve (🗻67位 /⏰3週)

53 Dustin Lynch – Small Town Boy (🗻36位 /20週)

49 Cheat Codes feat. Demi Lovato – No Promises (🗻38 /23)

46 James Arthur – Say You Won’t Let Go (🗻11位 /52週)

 

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲をピックアップしました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora、Apple Music、各種ラジオなど)

Metro Boomin, 21 Savage & Offset feat. Travis Scott – Ghostfacekiller (Spotify3位)

Metro Boomin & Offset – Ric Flaire Drip (Spotify 11位)

Metro Boomin, 21 Savage & Offset feat. Quavo – Rap Saved Me (Spotify 13位)

 

10/31・ハロウィンにリリースされたMetro Boomin・21 Savage・Offsetのミックステープがストリーミングで絶好調。火曜リリースで集計が3日分なので、チャートに入るのは再来週か?ただしGhostfacekillersは格段に調子が良いので来週のチャートでもうエントリーするかも。

 

Michael Jackson – Thriller

Ray Parker, Jr. - Ghostbusters

Bobby "Boris" Pickett & The Crypt-Kickers - Monstar Mash

「ハロウィン特需」で毎年再浮上する曲たち。Hot 100に入るのは例年Thrillerのみですが、昨年のクリスマスにストリーミング効果もあって例年よりも多くクリスマス曲がHot 100に入ったので、ハロウィンにでも同じように多めにエントリーするかもしれません。ただ昨年はThrillerすら入らなかったので、どちらに転ぶかは不明。

 

 

*1:しかし自身の前ミックステープからのシングルRelationshipは順位を落としています……

*2:あとは、Destiny’s Childからソロでアルバム1位になったのはBeyoncéのみなものの、彼女が一人で6枚(スタジオアルバムではないサウンドトラックも入れると7?)稼いでいるので、「回数」ではやっぱりまだまだですね。Beyoncéのようにグループのブランドが薄れた後でもソロで活躍できるメンバーがOne Directionにもいるか?という点も注目ですかね。

*3:2015年のアルバムRevivalはその路線のGood For You、Hands to Myselfがいずれもトップ10入りしており成功していたのですが……

*4:なぜかSelena Gomezの今年の曲は週半ばリリースが多い

*5:もっと真面目な話をすると、じゃあなんでシャッフルも無いのにApple Musicで100位まで来れるのか?というと、こちらにはHip-Hop:A List というプレイリストが存在し、Apple Musicで一番人気のプレイリストとの証言が。Candy Paintはそこに入って注目されたのでは?と推測しています

*6:The Monkees(1年に4枚)、Elvis Presley、The Kingston Trio、The BeatlesGlee Castに次ぐ