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Hot 100 12/23 見どころ 【新年に向けた「掃除!?」クリスマス曲大量登場について!】

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12/25に向けて、今週はクリスマス曲が大量にHot 100に登場!まだ12月も序盤なのに、今後どこまで増えるのか!?

その大量登場について理由や意味合いを少し考察しています。「掃除」の意味合いも後に説明します。

写真はその大量登場の煽りを受けて今週Hot 100から外れたLiam Payne(のStrip That Down)

 

 

 

 

99 Natti Natasha & Ozuna – Criminal (New)

ドミニカ出身のNatti Natasha、プエルトリコ出身のOzunaによるCriminalが99位で登場。前者は初のHot 100入りです。以前からのYouTubeでの好調(今週YouTube3位)に加え、ラテン系ラジオが加わったこと(今週からラテン系ラジオチャートに登場)がHot 100入りの要因でしょうか。スペインでは1位を獲得済みです。

Ozunaは躍進が次ぐラテン系アーバン曲で、歌パートを担当することの多いシンガーで音域が高いボーカルが特徴です。以前Wisinの客演を務めたEscapate ConmigoでHot 100に入ったこともあります。(今回で2曲目)

またラテン界隈から今週Romeo Santos、Nicky Jam、Daddy YankeeのBella y SensualもHot 100に登場しています(95位)Criminalと比べると、こちらはYouTubeの数字が少し低い代わりにダウンロードとラテン系ラジオの成績が上回っているみたいですね。

 

97 Thomas Rhett – Marry Me (New)

Thomas RhettのMarry Meが97位で登場。カントリー系ラジオで上昇中。(ダウンロードでも今週31位と上々)今年のLife Changesで自身初のアルバム1位を獲得、またそれがカントリーとしては今年初のアルバム1位に。*1今年並に乗っている彼ですが その他、カントリー歌手としては珍しくSpotifyでの再生が多め(アルバムの半数以上がSpotify上位200位に登場)など広い層へのリーチが伺えます。もしかしたらアルバムからBody Like A Back Roadなどカントリーのリスナー以外にも人気が出る曲が輩出されるかもしれません。

※個人的にポップ要素が強い前シングルUnforgettableに期待していたのですが、そこまでポップ層には広がらずトップ40には入らず。しかしカントリー系ラジオではしっかり1位を獲得しました。

※同じくカントリー系ラジオで好調・Scotty McCreeryのFive More MinutesもHot 100の98位に登場。

 

93 Yo Gotti – Juice (New)

今年Rake It Upで自身初のトップ10入りを記録したYo Gottiの次シングルJuiceが93位でHot 100入り。ラップ曲といえばストリーミング!という印象が強いですが、この曲はラジオのポイントが強め。Hip Hop / R&B系ラジオで24位の一方、SpotifyAppleの両方で200位圏外などストリーミングではまだ数字が出てきていないです。Rake It Upの時もラジオとストリーミングでの規模拡大がおおよそ同時進行でした。

ラップ曲はリリース時からストリーミングで人気になり、数週後に遅れてラジオでようやくかかり始める……というパターンが多いのでこのパターンは珍しい気がします。

各地にHip Hop / R&B系ラジオが少なめ・またはそもそもシングルチャートでラジオがカウントされていないなどの理由から、ラジオ発ラップヒットはアメリカ以外で順位が上がりづらいです。(例*2:Rake It Up:アメリカ8位・カナダ49位・ほか主要国は圏外)

一方ストリーミングで人気に火がついた場合、プレイリストに入る、またはグローバルのランキングで上がる(※Spotifyで顕著。アメリカが全体の再生数の約1/3を占めているので、アメリカで上昇した曲は自然とグローバルのランキングでも上がり多くの人の目につく。グローバルトップ50はSpotifyのトップ画面に固定されている有力プレイリスト)ので、ラジオ発と比較すると海外に伝わりやすいです。 (例:Conrtatulations:アメリカ8位、カナダ14位、オーストラリア30位、イギリス26位)

 

61 6ix9ine – KOODA(New)

話題のラッパー6ix9ineの次なるシングルKOODAが61位で登場。乱高下の末GUMMOも今週なんと13位まで上昇しており*3 かなり勢いがあります。来年の主役候補の一人ですが、ポイントがかなりストリーミングに偏っていて、トップ10以上を維持するにはこのバランス改善が求められます。

 

53 Demi Lovato – Tell Me You Love Me (Re)

今年Sorry Not Sorryが自己最高ヒットとなり、またアルバムもPitchfork7.2点と高く評価され*4、順調な一年を過ごしたDemi Lovato。そのアルバムと同名の2曲目のシングル、Tell Me You Love Meが53位で再登場。先週リリースされたビデオの効果で、ダウンロードが20位・ストリーミングが48位に。これが再登場の要因でしょう。

 

39 Taylor Swift feat. Ed Sheeran & Future – End Game (↑)

ラジオで順調に伸びていること、そしてラジオでの宣伝効果によるダウンロード快調。さらに今週はストリーミングでも解禁されたため、一気にトップ40までジャンプアップしたTaylor SwiftのEnd Game。この時期上昇している曲は最も年間チャートで有利(年の切れ目の関係で効率よくポイントが入るため)なので、もしかしたら年間1位を狙っているかも!?(トップ40の段階ではまだ気が早いですが)面子の豪華さからすると、トップ10はノルマ、Hot 100の1位取りが目標でしょうか。ラジオでは順調に伸びそうなので、ストリーミングの伸び・適切なタイミングでの割引 / ビデオリリースがカギでしょうか。ちなみに仮にこれが2018年の年間1位ならば、Ed Sheeranは3年連続アメリカのシングル1位に(2016年:Love Yourselfでソングライト、2017年:自身のShape of You。2018年客演のEnd Game??? *5

しかし、本当にこれは1位になるでしょうか?そう思う理由は他の曲が尻すぼみになっていることです。今週はテイラーのreputationが全曲ストリーミングで解禁されたため、それに伴う上昇があって然るべき週なのですが、..Ready For It? は31位 → 43位、Look What You Made Me Doは60位 → 72位とむしろ急落!新規登場した曲も無く、ストリーミングの隆盛とともに「○○祭り」=特定アーティストの曲がアルバムリリースとともにHot 100に大量登場する現象 が大量発生する近年において物足りない成績です。ちなみにEnd Gameの客演Ed Sheeranはアルバムリリース時に一挙13曲をHot 100に登場させています。

このようなチャートアクションから、テイラーはやや「停滞気味」とも言え、以前のようにいとも簡単にトップ10をポンポン出すことは出来ない可能性も。

 

 

37 Brenda Lee - Rockin' Around The Christmas Tree (Re)

12/25が近づき、クリスマス曲がHot 100に増加。37位にBrenda LeeのRockin’ Around The Christmas Tree、42位にNat King ColeのThe Christmas Song、45位にAndy WilliamsのIt’s The Most Wonderful Time Of The Year、47位にBurl IvesのA Holly Jolly Christmasがそれぞれ再登場。この週の集計は12/1~12/7なので、まだまだクリスマス当日に向けて増えていきそうな予感。

去年の同時期はHot 100にクリスマス曲は4曲でしたが、今年は5曲。さらにクリスマスのエースAll I Want For Christmas Is Youは昨年の同時期17位でしたが、今年はトップ10目前の11位!

過去最高クラスにクリスマス曲が多かった昨年にも増して、今年はクリスマス曲がHot 100に大量登場する予感!ピークは2週間後(12/15-12/22)でしょうか。クリスマス当日が入ることよりも、1週間フルにクリスマス雰囲気でいることが重要と思われるので。(クリスマスムードが終わって集計が一気に落ち込む期間によってチャートで不利になる)

クリスマス曲はストリーミングで人気があるので、密かにラップのようにストリーミングによって発掘されたジャンルという解釈もできます。そもそもクリスマス曲がHot 100に入れるようになったのは2012年以降ですが。

 

35 Miguel feat. Travis Scott – Sky Walker (↑)

アルバムリリースのタイミングでトップ40まで到達したMiguelのSky Walker。今週35位。自身6曲目のトップ40。客演のTravis Scottは通算5曲目のトップ40。

前アルバムには無かったトップ40シングルを記録したMiguelですが、アルバムチャートでは数字を落としており、前作の2位に対して今回は9位に。最近話題の「ライブチケット付きCD」もリリースしたのですが、そこまで大きな効果が無かったといえますかね……

※今週のアルバム1位はU2。これで8回目のアルバム1位で、Kenny Chesney・Madonnaと並んで8番目(タイ)に多いです。(1位:The Beatlesの19回、2位:Jay-Zの14回、3位:Bruce SpringsteenBarbra Streisandの11回、5位:Elvis Presleyの10回

、6位:Garth BrooksThe Rolling Stonesの9回)。また、1980年代・1990年代・2000年代・2010年代の全てでアルバム1位を記録した4人(組)のうちの一つです(他はJanet JacksonBruce SpringsteenBarbra Streisand)。


 

U2はシングルでも今年に記録を残しています。Kendrick LamarのXXX.で客演を務め、それがトップ40に入り、1980年代、1990年代、2000年代、2010年代と連続でトップ40に入るという記録も今年打ち立てています(ほか複数名も同記録を達成)


 

アルバムではそのKendrick Lamarほか、Lady Gaga、The ChainsmokersのAndrew Taggart、HAIMなどが参加しています。(feat.で表記はされていませんが)

 

21 G-Eazy & Halsey – Him & I (New)

現在トップ10に名を連ねるカップルによるタッグ、G-EazyとHalseyのHim & Iが21位で登場。ダウンロード3位・ストリーミング28位により最初の週から高い順位での登場を成し遂げました。前シングルNo Limitはヒップホップ層人気が先行しましたが、こちらはポップ系ラジオでガンガンかかっていて(今週既にポップ系ラジオ29位)、ラジオのパワーも今後期待できそう。ダウンロード・ストリーミングの数字がよほど落ちない限りは、いずれかのトップ10入りが期待できそう。

 

8 Halsey – Bad At Love (↑)

快調にラジオを伸ばしていたHalseyのBad At Loveが今週トップ10入り。11位から8位に上昇。客演以外では初のトップ10に。ダウンロード6位、ラジオ8位、ストリーミング26位とバランスよくポイントを得ています。自身初のアルバム1位、Now or Neverのヒット(ピーク17位)に引き続き、さらにシングルでもトップ10を成し遂げ充実した年に。

Justin Bieber、The Chainsmokersの客演を経て、オルタナ志向女子からポップスターへの転換を成功さえたといえます。

 

1 Ed Sheeran Duet With Beyoncé – Perfect (↑)

Ed SheeranのPerfectがHot 100の首位を獲得。Beyoncéバージョンのリリースによってダウンロードが伸びたことが最大の要因でしょう。原曲もDuet版もかなりの人気を誇っていて、2曲のヒット曲をまとめて1曲扱いにしてチャートに入っているのでかなりの成績で1位になっていると思われます。ダウンロードは圧倒的な1位、ラジオ・ストリーミングも3位と全てで高水準の成績を記録しています。

※もちろん、Beyoncéバージョンの追加が首位獲りに結びついたのですが、実はBeyoncéバージョンが無くても1位を取った可能性も?Duet版リリースと同時に原曲のPerfectのほうも値引きを敢行し、iTunesの2位に(その後逆転)。つまりBeyoncéバージョンが無くてもこの曲はおそらくこの週のダウンロード1位でしょう。

先週の時点で3位だった曲のラジオ・ダウンロードが伸びるのでも可能性はあると考えています。少しストリーミングが足りなかったかもしれませんが。

※この結果Camila CabelloのHavanaの今後の1位取りの可能性が大きく下がることに(今週3位)、因縁あり??ですがCamila Cabelloの来月リリース予定のアルバムにEd Sheeranが参加するという噂があるようです。かつてHot 100の首位を争ったライバルと共に来年はHot 100の1位を目指すのでしょうか!?

 

※見事2017年シングル年間チャート1位に輝いたEd SheeranのShape of You。彼の強さはラジオ・ダウンロードで高い支持を誇る上に、ストリーミングでも強い「全取り」をするところにあると思います。そのShape of You、今週は25位なのですが、年間チャートで1位を争っていたDespacitoをなんと今週抜きました。驚異的な粘りですね……!

 

× Post Malone – Go Flex (↓)

rockstarのヒットをきっかけにPost Maloneの複数曲が最注目され、Spotifyのシステムなどの恩恵を受けて再びヒットに!その先陣をI Fall Apartと共に切ったGo Flexが、10週*6の「2回目のチャート人生」今週Hot 100を後に。

その後もCandy Paintが入れ替わるようにして再浮上しHot 100に登場。アーティストやレーベル側が「これがシングル!」と指定せずとも、ストリーミングのリスナー内で勝手にシングルが生まれ、入れ替わっていく新たなヒットの形を見せています。

このGo Flexの再登場は今後のヒットを考える上で重要な事例になると考えています。

 

× Liam Payne feat. Quavo – Strip That Down (↓)

50位~30位辺りにクリスマス曲が4曲登場、さらに新たに2曲がトップ40に浮上したこともあり、従来その前後の順位にいた曲が今週一掃されました。

先週34位・Yo GottiのRake It Up、35位・KeshaのPraying、41位・Liam PayneのStrip That Down、44位・blackbearのdo re mi、50位・Niall HoranのSlow Handsが該当。先週の順位が高かったRake It Up、Prayingはやや不運と言えますね。とはいってもこの時期に消えるのは年間チャートに影響が無いので、そこまで気にすることではないかも。

Strip That Down、Slow Handsはピークがそれぞれ10位、11位と特筆すべきほどは高くないものの、ラジオを中心にロングヒットとなり年間チャートでは高めの順位を記録しています。(Strip That Downが36位、Slow Handsが32位) チャート成績から見て、この2人のソロはそれなりに成功を収めたといえます。

blackbearのdo re miは50位前後を粘り(ピーク40位)、年間チャートに滑り込みました。(年間98位)その粘りも今週尽きました。

※クリスマス曲が大量に再登場することによって、落ち始めた既存の曲がチャート圏外に落ち一掃される。クリスマス曲が「大掃除」をして新年に向けて新しい曲の枠を空けるのは面白い現象ですね。(新年になればそのクリスマス曲も圏外になるので)

ビルボードはこれを意図しているかは分かりませんが、チャートシステム上かなり理にかなった「美しい」現象と少し思いました。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Ed Sheeran Duet With Beyoncé – Perfect

今週最もダウンロードが上昇した曲 Ed Sheeran Duet With Beyoncé – Perfect

今週最もストリーミングが伸びた曲 6ix9ine - Gummo

最も高い順位で新登場した曲          G-Eazy & Halsey – Him & I

 

 

今週チャートから外れた曲 (13曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

 

100 Shakira feat. Nicky Jam – Perro Fiel (🗻100位 /⏰1週)

99 Chloe Kohanski – Total Eclipse Of The Heart (🗻99位 /⏰1週)

98 Kelsea Ballerini – Legends (🗻98位 /⏰1週)

97 P!nk – Beautiful Trauma (🗻95位 /⏰2週)

95 Post Malone – Go Flex (🗻76位 /⏰11週)

91 Jake Paul feat. Team 10 – It’s Everyday Bro (🗻91位 /⏰2週)

90 Chris Janson – Fix A Drink (🗻67位 /⏰14週)

79 Eminem – Beyoncé – Walk On Water (🗻14位 /⏰3週)

50 Niall Horan – Slow Hands (🗻11位 /⏰31週)

44 blackbear – do re mi (🗻40位 /25週)

41 Liam Payne feat. Quavo – Strip That Down (🗻10位 /28週)

35 Kesha – Praying (🗻22位 /⏰21週)

34 Yo Gotti feat. Nicki Minaj – Rake It Up (🗻8位 /22週)

 

 

 

来週以降にHot 100に入るポテンシャルを持った曲をピックアップしました

 

Chloe Kohanski - I Want to Know What Love Is

Addison Agen - Both Sides Now

Chloe Kohanski & Noah Mac - Wicked Game

Red Marlow - Go Rest High on That Mountain

 

これらはThe Voice出場者の曲。iTunesで上位を占めています。来週いくつかの曲が登場しそうです。有力候補は上の4曲あたりです。

*1:その後1位になったカントリーアルバムはKenny Chesneyのライブアルバムのみ。スタジオアルバムでは依然今年唯一のカントリーの1位アルバムですが、来週のアルバムチャートではカントリー界屈指の人気者Luke Bryanが1位見込み

*2:週の順位

*3:チャートアクションが予測不能!

*4:アルバム1位は逃しましたが

*5:2015年の年間2位もThinking Out Loud

*6:最初のチャート滞在1週はリリース時に記録