チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100  3/3 見どころ 【現Fifth HarmonyメンバーNormani、ソロで躍進】

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 最近ソロでの活動も増えたFifth Harmonyですが、その中でメンバーのNormaniがチャートで結果を今週残しました。一方で旧メンバーのCamila Cabelloも”Havana"で珍しいラジオ記録を今週打ち立てています。

 

97 YBN Nahmir – Rubbin Off The Paint [Re]

 今週は新リリースが少なかったせいか、Hot 100の入れ替わりが6曲と少なめでした。(参考:昨年の1週間あたりのHot 100の入れ替わり曲数は11.3曲)

 さらにその6曲のうち4曲が再登場だったので、今週は新要素がかなり少ないHot 100という印象を受けました。YBN Nahmirは勢いづく新曲”Bounce Out With That” (今週106位相当)ではなく “Rubbin Off The Paint”のほうがHot 100に登場したのは意外でした。

  The Chainsmokersの新曲 “You Owe Me”は104位(相当)とわずかにHot 100に届かず。

 

93 Daniel Caesar feat. Kali Uchis – Get You [New]

 Daniel Caesar・Kali Uchisの”Get You”が93位で登場。両者とも初のHot 100です。アダルトR&B系ラジオ(今週2位)で主に人気のようです。甘美なR&Bトラックです。

 Daniel Caesarはカナダ出身のR&Bシンガーで、初のHot 100入りを果たした日に、来日公演のキャンセルが発表されました。(残念)

 Kali Uchisはコロンビア生まれ、アメリカ育ちのR&Bシンガーで、Tyler, The Creatorとの”See You Again”も113位とHot 100に接近していました。

 

81 P!nk – Beautiful Trauma [↑]

 P!nkのシングル”Beautiful Trauma”が81位と少し上昇。ラジオを少しずつ上げいます。(今週ラジオ総合42位) ラジオの中でも特にアダルトポップ*1は7位と好調で、ほかポップ系ラジオもそこそこ(27位)の順位につけています。

 また、ダウンロードもそれなり (今週47位)の数字を記録していますが、ストリーミングではSpotify / Apple Musicの両方で圏外などかなり低いため、Hot 100での順位はそこまで高くなっていません。

 ラジオの好調の割にストリーミングが上がらずHot 100で順位が伸び切らないのはポップ系の共通の悩みで、今週のポップ系ラジオの40位~25位にエントリーした曲の多くがHot 100に入れていません。

 ポップ系ラジオのチャートにエントリーした曲の中で、今週Hot 100に入れていない曲を並べると…… (左の数字はポップ系ラジオの順位)

40 Niall Horan – On The Loose

39 Why Don’t We – Trust Fund Baby

38 Alice Merton – No Roots (Hot 100の108位相当)

35 Clean Bandit feat. Julia Michaels – I Miss You

33 Kesha feat. The Dap-Kings Horns – Woman

32 Fall Out Boy – Hold Me Tight or Don’t

31 Thirty Seconds To Mars – Walk On Water

29 Jack & Jack feat. Olivia O’brien – Beg

24 Troye Sivan – My My My!

 

 と9曲が該当します。ポップ系ラジオに登場してもHot 100に入らないケース自体は以前からありましたが、ストリーミング時代は増えている気もします。例えば2012年の同時期(ストリーミング導入前)のこの時期 (2012年3/3付けのHot 100)では、これに該当するのは5曲でした。 (ただし時期によるズレがある可能性もあるので、もう少し調べていきたいテーマです💦)

 ポップ曲全部がストリーミングを苦手としているわけではなく、Clean Banditの”I Miss You”などストリーミングでそれなりに人気の曲もありますが、ストリーミングの導入でポップ系をはじめとしたラジオがチャートに与える影響力が相対的に低下しているのは事実だと思います。ラジオではポップ系の規模が一番大きいことから、ポップス曲はラジオが得点源なことが多いですが、近年の大物ポップスシンガーが振るわないのはラジオの「チャートに与える影響力」の低下が一つの理由なのかもしれません。(これもまたさらなる調査が必要そう)

 

 

79 Tank – When We [↑]

 Tankの”When We”が97位 → 79位と少し浮上。Ty Dolla $ign、Trey Songzを加えたリミックスをリリースした効果が現れました。アダルトR&B系ラジオで主に人気の一曲です。

 

65 SOB X RBE – Paramedic! [↑]

 先週に引き続きアルバム1位は”Black Panther”のサントラが獲得しています。リリース週と比べて、セールスもストリーミングも数字をそこまで落としていない(先週比 -15%)こと、ライバルがあまりいなかったことが大きいです。

 アルバムのストリーミングでの好調はHot 100にも反映されていて、先週サントラからHot 100にエントリーした8曲のうち、7曲が今週もHot 100に残っています。(アルバムリリース週、Hot 100に大量エントリーするも次週は1曲や0曲になっているケースもある)

 中でもSOB X RBEの”Paramedic!”は非シングルながらも先週よりも順位を上げています(ポイントも上昇しています) シングルの”King’s Dead”、”Pray For Me”、”All the Stars”は全て今週上昇しています。

 アルバムのシングルが全体的に順位をそこまで落とさずキープしているので、アルバムを「通し」で聞いている人が多いのかもしれないです。

※ほかアルバムチャートでは、4位にNipsey Hussleの”Victory Lap”が新たにエントリーしています。2位は”Culture Ⅱ”が再浮上、3位は”The Greatest Showman”と既存のアルバムが入っています。

 

43 Khalid & Normani – Love Lies [New]

 KhalidとNormaniによる”Love Lies”が43位で登場しています。映画”Love, Simon”のサントラからの1曲です。NormaniはFifth Harmonyの現行メンバーの一人です。

 今週ダウンロード13位を記録したほか、Spotifyでも時々トップ10に顔を出すなどストリーミングも好調です。複数媒体で好調な上、ラジオでも幅広い系統と相性が良さそうなので、今後ヒットになるかもしれないです。

 Halseyとの”Strangers”が100位だったLauren Jaureguiに次いで2人目の現行Fifth HarmonyメンバーのソロHot 100エントリーです。ちなみにLove Liesでの43位は、Fifth Harmonyを離脱したCamila Cabelloのデビュー曲 “Crying in the Club”(47位)をスタート順位で上回っています。

 

※”Love, Simon”のサントラは既存曲の収録が多めです。全体的にJack Antonoffがソロ、バンド(Bleachers)と頑張っている印象があります。ほかMØ、Troye Sivanなどが登場します ↓トラックリスト

 


 

42 Jason Aldean – You Make It Easy [↑]

 カントリー歌手・Jason Aldeanの”You Make It Easy”が48位 → 42位と好調をキープしています。純粋にカントリーのラジオで好調なだけではなく、SpotifyApple Musicで100位前後に入るなどカントリー曲としては珍しくストリーミングでもそれなりの数字を記録していることが特徴的です。

 ほかダウンロードも好調で、今年有数のカントリーヒットになるかもしれません。

 彼の曲は基本的にカントリー系ラジオのみでかかっているようですが、過去に1回だけKelly Clarksonとのコラボがアダルトポップ系ラジオで人気になったことがあります。

 

39 Maroon 5 – Wait [↑]

 Maroon 5の”Wait”が39位に浮上。トップ40入りしました。彼らにとって20曲目のトップ40。ラジオでの安定感が分かります。

 ポップ系をはじめとしたラジオで少しずつ浮上していること、iTunesで長いこと割引になっていることによるダウンロード増が順位上昇の要因です。

 ストリーミングもそこそこ (Apple Music / Spotifyの両方で100位前後)の数字を記録しているのですが、トップ10を目指すとすると少し物足りなく感じます。

 2011年 - 2015年には8シングル連続でトップ10エントリーを成し遂げた彼らですが、近年はややトップ10が減少気味です。この曲はどこまで順位を伸ばせるでしょうか。

 

15 Kendrick Lamar feat. Zacari – LOVE. [↓]

 Kendrick Lamarの”LOVE.”が13位 → 15位とやや下降。トップ10から少し遠ざかってしまいました。

 “LOVE.”はアルバム”DAMN.”の中で唯一ピークがアルバム発売時ではない曲で、ラジオの上昇に伴い、ストリーミングも再浮上したことによって、シングルカット以降にHot 100のピークを更新することに成功しました。

 ラジオでは”HUMBLE.”並の数字を記録し、トップ10入りも届きそうだった”LOVE”でしたが、ここ最近ラジオが下がってきたため、トップ10には届かないまま落ちそうです。

 

4 Camila Cabello feat. Young Thug – Havana [→]

 Camila Cabelloの”Havana”が今週も4位。今週18週目のトップ10で、ロングヒットになっています。ラジオで幅広い系統でかかることにより、落ちがゆるやかなことが一つの理由だと思います。

 今週アダルトポップ系ラジオ*2で1位を獲得し、リズミック・ポップ・アダルトポップと3種類のラジオを制したこととなりました。

 女性シンガーがリズミック+ポップ+アダルトポップの3種類のラジオを制するのは 1996年のMariah Carey・Boyz Ⅱ Menの”One Sweet Day” *3以来だそうです。

 リズミック+ポップの両方で1位を獲得する曲は多いのですが、そのような曲だとノリノリな曲が多く、アダルトポップとは相性が悪くなってしまいがちです。”Havana”はその点を克服したという点で珍しいのだと思われます。 *4 

 ちなみに「女性」に限らなければ、この3ラジオ制覇はそこまで珍しくないことのようですね。(歴代で9曲ある) 参考↓


 

1 Drake – God’s Plan [→]

 Drakeの”God’s Plan”が余裕の1位キープ。ビデオ公開によって、ダウンロード・ラジオ・ストリーミングの全てが今週伸びています。今後の調子次第ではありますが、年間1位も見えてきたかもしれません。

 1位の曲が3項目を伸ばしたならば、今後も独走状態が続くのか?と思いきや、Post Maloneの”Psycho”という強力なライバルが登場しました。

 ”God’s Plan”はSpotifyで記録を塗り替えるような再生数を稼ぎ出し、アメリカSpotifyの首位を独走していたのですが、今週半ばに”Psycho”に抜かれてしまいました。(ただし”God’s Plan”にはビデオがあるので、総合的なストリーミング数では”God’s Plan”のほうが上)

 ラジオでは大きく”God’s Plan”がリードしていますが、ダウンロードでは”Psycho”のほうが上なので、そのうちに(4週間後あたり?)ダウンロードの指数次第では抜かされてしまうかも?この”Psycho”は年間1位を狙う上でもライバルになりそうな1曲です。

 

※年間1位は “Finesse” かも?と以前声高に何回か書いていた私ですが、”God’s Plan”を打ち破るビジョンがあまり浮かばないので、ここで白旗を挙げます。1週間ぐらいは1位になるかもしれませんが、やはりアルバムから4曲目のシングルとだけあって爆発力が無いので年間1位はさすがに厳しいのかな、と思います。”That’s What I Like”みたいに長く上位に留まって年間チャートで良い位置につける気はしますが。 

早とちりしすぎましたね💦 (精進します)

 

~以下マニアックな疑問です~

 ”God’s Plan”は1週間で1億以上のストリーミング再生を記録した史上2曲目の曲に。ただし前例は 2013年の”Harlem Shake”で、本当に1億以上のストリーミング再生を記録したのか?と個人的に疑っています、本当にあくまで個人的な推測に過ぎないのですが……

 当時はSpotifyなどの規模が小さく、このストリーミング数は”Harlem Shake”のムーブメントを考慮するとYouTubeから来ているものと考えるのが自然ですが、YouTubeの再生数は元音源のビデオが現時点で3200万程度、一番再生が多いダンス動画 (34秒)は現時点で1億2000万と微妙な数値。この数字を見るあたり、パロディ動画全ての再生数を合算してようやく1億ストリーミングくらいのレベルでは?という気もします。つまり、”Harlem Shake”のストリーミング数は過剰評価されているのでは?と私は考えているのです……

 当時はストリーミング導入当初、さらに”Harlem Shake”の最初の週は、YouTube導入最初の週だったので、基準がうまく定まらず「試行錯誤」の段階だったので、ミスが出る可能性もあったのかもしれません。仮にこの時期に”PPAP”が流行っていたら、YouTubeのポイントを活かしてトップ10とかに入ったかも???

 

 

× Kodak Black feat. XXXTENTACION – Roll in Peace [↓]

 Kodak Blackの”Roll in Peace”が今週圏外へ。ピーク31位 / チャート滞在26週という良い成績でチャートを後にしました。彼のヒット”Tunnel Vision”は20週きっかりでチャートから外れてしまったので、その時よりもロングヒットだったといえます。 SpotifyApple Musicなどでポイントを確保した後、YouTubeにビデオが公開されたタイミングでトップ40入りを成し遂げました。

 (ちなみに彼の”Too Many Years”は 101位-125位相当の曲を扱うBubbling Underに24週も滞在したという変わったチャートアクションを取っていました)

 

× Logic feat. Alessia Cara & Khalid – 1-800-273-8255 [↓]

 Logicの”1-800-273-8255”がチャートを後に。ピーク3位・42週というかなりの成績を残しました。元々はストリーミング・ラジオ(ポップ系・リズミック系)で地道に数字をキープしていたこの曲ですが、ビデオの公開・VMAでのパフォーマンスなどを受けて急浮上。ダウンロードやストリーミングを大きく伸ばしてトップ10に突入しました。

 最近はビデオの公開 / 大きい場所でのパフォーマンスを行ってもチャートで成果が出ない曲も多いですが、この曲はビデオ・パフォーマンスの恩恵を昨年一番受けた曲だったと思います。それだけ、自殺防止を謳うビデオやパフォーマンスのメッセージ性がリスナーに伝わったということでしょうか。

 

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Drake – God’s Plan

今週最もダウンロードが上昇した曲 Drake – God’s Plan

今週最もストリーミングが伸びた曲 Drake – God’s Plan

最も高い順位で新登場した曲          Khalid & Normani – Love Lies

 

 

今週チャートから外れた曲 (6曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Zac Efron & Zendaya – Rewrite the Stars (🗻70位 /⏰7週)

98 Natti Natasha & Ozuna – Criminal (🗻95位 /⏰3週)

91 Kendrick Lamar – Black Panther (🗻91位 /⏰1週)

90 Justin Timberlake – Filthy (🗻9位 /⏰6週)

50 Kodak Black feat. XXXTENTACION – Roll in Peace (🗻31位 /26週)

45 Logic feat. Alessia Cara & Khalid – 1-800-273-8255 (🗻3位 /42週)

 

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲を特集

 

・Rudimental feat. Macklemore, Jess Glynne & Dan Caplen – These Days

 今週113位相当にランクインした”These Days”。 Spotifyではグローバル12位と好調の1曲で、Rudimentalの本拠イギリスのシングルチャートでは2位まで浮上している1曲です。アメリカのSpotifyでも38位まで上昇しています。

 このようなSpotifyで人気の海外発のポップスは軒並みアメリカ(Hot 100)で順位が上がらない傾向にあるのですが、この曲はどうなるでしょうか。

 ※Spotifyでヒットからラジオでかかるまで時間がかかり、Spotifyのピーク時期とラジオのピーク時期が合わないことが理由です。ただ、”Rockabye”のようにこの問題をクリアしている曲もあります。

 

・Niall Horan - On The Loose

5 Seconds of Summer - Want You Back

 ポップ系ラジオを勢いよく上昇している2曲。Niallの方はまだラジオ以外のポイントが伸びていないので、今週説明したポップ系ラジオだけ伸びても、Hot 100に入れない現象が起きるかも。

 

 

・半年前の記事

今週も"Love Lies"で実績を残したKhalidですが、ちょうど半年前のチャートでも活躍していました。

 

・1年前の記事

グラミーや”Fifty Shades Darker"などの週

 

 

 

 

*1:別名アダルトトップ40、HACなど

*2:HAC、Adult Top 40と呼ばれることもある

*3:この曲は”Despacito”と並んでHot 100で1位滞在が歴代で最も長い (16週)曲でもある

*4:ちなみにKaty Perryの”Dark Horse”や Donna Lewisの”I Love You Always Forever”がこの記録にニアミスだったみたいです。