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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 3/31 見どころ 【Foster the People、6年ぶりのHot 100入り! / Freaky Fridayが9位スタート】

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 今週個人的に目をつけたのはFoster the Peopleの久々のHot 100エントリー!ほかFreaky Fridayのロケットスタート、XXXTENTACIONのアルバムなど

 

今週のハイライト

 

今週のHot 100まとめ

・アルバム1位のXXXTENTACION、7曲がHot 100に。”Sad!”は7位にまで浮上、彼にとって初のトップ10に。

・”Freaky Friday”が9位で登場。Lil Dickyは初のトップ10

・1日の集計ながらもShawn Mendes新曲が登場

・Foster the People、6年ぶりのHot 100エントリー

Eminem & Ed Sheeranの”River”、アメリカにそこまでハマらずチャートから11週で外れる。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Zedd, Maren Morris & Grey – The Middle

今週最もダウンロードが上昇した曲 N*E*R*D & Rihanna - Lemon

今週最もストリーミングが伸びた曲 Migos feat. Drake – Walk It Talk It

最も高い順位で新登場した曲          Lil Dicky feat. Chris Brown – Freaky Friday

 

 

曲の個別解説

 

[New] 100 The Chainsmokers – Everybody Hates Me

 The Chainsmokersの”Everybody Hates Me”が100位で登場。前曲”You Owe Me”は104位相当でHot 100入りを逃していて、その時よりは良い成績を記録したということに。“Sick Boy”、”You Owe Me”とリリースを連発していますが、現在ラジオでかかっている(シングル)のは”Everybody Hates Me”のようです。

 ラジオではそれなりに調子が良いようですが、ストリーミングでは奮わないので今回もまたすぐにチャートから消えてしまうかも。”Roses”~ “Something Just Like This”あたりまではストリーミングで強かったThe Chainsmokersでしたが、アルバム以降くらいのタイミングから奮わないですね。

 

[New] 86 Foster The People – Sit Next To Me

 Foster the Peopleの”Sit Next To Me”が86位で登場!2012年以来、6年ぶりのHot 100に。通算3曲目のHot 100です。(大ヒット“Pumped Up Kicks”、2012年の”Don’t Stop”に次ぐ)

 久々のHot 100エントリーの主な要因はラジオ。今週、オルタナティブ系ラジオ(ロック系ラジオの最大系統)で3位のほか、ポップ系ラジオ33位、アダルトポップ系ラジオ19位を記録。オルタナティブ系ラジオでは人気をキープしていた彼ら*1ですが、今回はポップ系にまで人気が飛び火したことが大きかったです。

 少し前にHot 100にエントリーしていたWalk the Moonの”One Foot”と少し似ているチャートアクションを取っています。

 この曲にはBruno Marsのアルバムプロデュースで名を馳せたThe Stereotypes*2によるリミックスもあり、ストリーミングではそのバージョンが人気のようですね。

 

[New] 84 Luke Combs – One Number Away

 Luke Combsの”One Number Away”が84位で登場。カントリー系ラジオでの好調(この系統で15位)が効いてのエントリーです。昨年のアルバム“This One’s for You”から3曲目のシングル。

 ほかカントリー界からはDan + Shayの“Tequilla”が87位で再登場。この曲はカントリー系ラジオだけではなく、ストリーミングでもそこそこポイントを稼いでいるのが特徴。SpotifyでもApple Musicでも100位前後にエントリーしています。カントリーの曲としてはかなりの数字です。

 

[New] 72 Shawn Mendes – In My Blood

 Shawn Mendesの”In My Blood”が72位で登場。木曜日リリース、DLとストリーミングの集計は1日ながらも今週Hot 100に登場しました。

 ラジオでかなり数字を伸ばしていること、またダウンロードやストリーミングで数字をそこまで落とさずキープしていることから、来週はトップ10まで順位を上げそうです。

 彼の曲はロングヒットになる傾向がありますが、それは彼のサウンドがアダルト系ラジオと相性が良いからだと思います。アダルト系ラジオはアダルトポップ系(HAC)、アダルトコンテンポラリー系(AC)を指し、この系統は一度ヒットすると上位が変わりにくいという傾向があります。またロック~ギターサウンドとの親和性が高いです。

 

[New] 49 Lin-Manuel Miranda & Ben Platt – Found / Tonight

 銃規制を掲げるデモ、“March for Our Lives”のテーマ曲になった”Found / Tonight”が49位で登場。週の途中にリリースされ、今週1番多いダウンロードを記録しました。ただし、ポイントがダウンロードに傾きすぎているため、来週もチャートに残っているかは微妙。デモの当日3/24が集計に入るのは来週のチャートですが。(当日少しダウンロードが上昇していた)

 

[New] 35 XXXTENTACION – Moonlight

 XXXTENTACIONの”?”が今週アルバム1位に!その中から7曲がHot 100に。前回のアルバム”17”もHot 100への登場曲数は7曲でしたが、”?”はアルバムの曲数が多いことから、アルバム全体のストリーミング数は大きくアップしています。ほか純セールスなども伸ばし、見事初のアルバム1位を獲得しました。

 後述の”Sad”が7位で一番人気。次いで35位の“Moonlight”。ほか37位に”Changes”、67位に“The Remedy for A Broken Heart”、82位に”Numb”、83位に”Infinity”、95位の“Going Down”がHot 100に入りました。ほか101位以下相当の曲を扱うBubbling Under Chartでは、”Hope”(101位相当)、”$$$”(102位相当)、”Alone, Part 3” (106位相当)、”I Don’t Even Speak Spanish LOL “(113位相当)、”Smash!” (124位相当) が登場しました

 ”Infinity”で客演をつとめたJoey Badassは初のHot 100エントリーを達成。実はJoey Badass、アメリカよりも先にイギリスのシングルチャートに入った経験がありました。昨年にSnakehipsとの”Either Way”がイギリス47位を記録しています。

 また今週のアルバム「セールス」1位はメタリカです。最近定番の「チケット付きCD」戦略による浮上です。過去にも何回か「チケット付き」で浮上していたようです。

 

[↑] 28 Marshmello & Anne-Marie – FRIENDS

 MarshmelloとAnne-Marieの”FRIENDS”が28位に浮上。Marshmelloにとっては4曲目、Anne-Marieにとっては2曲目のトップ40に。

 ストリーミング&ラジオの両方で調子が良く、このペースならトップ10にも手が届くかもしれないです。ストリーミングの好調の割にHot 100で順位が伸びなかったMarshmelloの“Silence”と比べると、ストリーミングとラジオが同じタイミングで調子を上げている点が大きいです。

 Anne-Marieは上で説明したSnakehipsの”Either Way”に参加していました。*3

 

[↑] 20 Migos feat. Drake – Walk It Talk It

 Migosの”Walk It Talk It”が69位→20位と大きく上昇。ビデオ公開で大きくストリーミングがアップしました。

 ビデオ自体に注目が集まっただけでなく、その影響で他のストリーミングにも伸びが見られます。(例:Apple Musicでトップ10入り)

 このタイミングでシングル化してヒップホップ系ラジオでかかり始めているようです。近いうちにトップ10にも手が届きそうか?

 前シングル、”Stir Fry”は最近ポップ系ラジオにも飛び火していて、今後調子が上がればMigosにとっては珍しいポップ系ラジオのヒットになるかも?(Migosはポップ系ラジオと相性が悪く、”Bad and Boujee”でもこの系統では31位までしか到達しない)

 また”Narcos”はシングルではないですが、ストリーミングの成績などで今週もHot 100に残っています。(88位)

 

 ※ほかDrakeが客演の曲がもう一つジャンプアップ。新たにDrakeリミックスがリリースされたN*E*R*DとRihannaの”Lemon”が61位 → 40位。

 

[New] 9 Lil Dicky feat. Chris Brown – Freaky Friday

 ”Freaky Friday”が9位で登場。Lil Dickyは初の、Chris Brownは”Loyal”以来3年ぶりのトップ10に!

 今週ダウンロード3位+ストリーミング4位と各項目で高ポイント。DLとストリーミングを両立すると強いですね。ビデオも今のところ好調で、1日あたりの再生数が2018年のビデオのうち7番目に高いようです(英語曲だと2番目に高い)

 ほかSpotifyApple Musicなどでも数字が伸びてきていて今後もチャートでの上昇が期待できそうです。Chris Brownが久々にヒットに恵まれそうですかね!一つ気がかりなのはラジオの数字がイマイチまだ伸びていない所ですかね。

 

[↑] 7 XXXTENTACION – Sad!

 XXXTENTACIONの”Sad!”が7位にまで浮上!自身初のトップ10に。アルバムリリースによってストリーミング、ダウンロードが上向きました。特にストリーミングでは好調で、Apple Musicで一瞬だけDrakeの“God’s Plan”を抜いていました。

 自身の曲ではHip-Hop/R&B系ラジオへの登場歴が無い*4など、彼のシングルはほとんどラジオでかからない傾向が今までありましたが、トップ10に入るような大ヒットともなれば、ラジオ局もこの曲をかけ始めるでしょうか?チャートで上位を今後キープするにはある程度のラジオのポイントがほしいですかね。

 Apple Musicではこのアルバムを「ポップ」と分類していているなど、この”Sad!”はポップ系リスナーともそこそこ相性が良さそうに思うのですが、果たして……??

 

[↓] × Eminem feat. Ed Sheeran – River

 Eminem、Ed Sheeranの”River”がアメリカでそこまでハマらずピーク11位 / 滞在13週という成績でチャートを後に。年間チャートに入らなさそうです。

 リリース初週DLとストリーミングで大きな注目を集め、Hot 100で11位デビューを果たしたこの曲ですが、その後失速。ストリーミングの数字が早めに落ちてしまった上に、ラジオでそこまで人気にならなかった点が痛かったですね。Eminemは昨年のアルバムで大物ゲストを迎え、リリース時こそは注目を集めましたが、最終的にはそこまでヒットとなりませんでした。

 ただしアメリカ以外ではヒットしていて、Ed Sheeranの母国イギリスではシングルチャート1位で、トップ10滞在も長めでした。ほかオーストラリア2位、ドイツ2位などを記録しています。アメリカではヒップホップの層が厚すぎて、大物でも苦戦するケースがある、ということでしょうか?(そもそもUSヒップホップのリスナーになじまないタイプの曲だったという気もします)

 

[↓] × Demi Lovato – Sorry Not Sorry

 Demi Lovatoの自身最高のヒット、”Sorry Not Sorry”が今週チャートを後に。ピーク6位・チャート滞在36週とかなりの好成績を残しました。2017の年間チャートで47位に入ったこの曲ですが、ロングヒットということもあって2018の年間チャートにも入りそうです。

 ストリーミング+ラジオの両方でポイントをうまく稼いだ昨年のポップスの成功例の一つだと思います。アルバムも比較的評判が良かったということもあり、Demi Lovatoのステータスが上昇したような感覚もあります。

 個人的に、このパワフルな歌声はヒップホップリスナーにも響く気がします。今後のキャリアに密かに期待しています。*5

 

[↓] × A$AP Ferg – Plain Jane

 A$AP Fergの”Plain Jane”がチャートから今週外れました。ピーク26位、25週滞在とそれなりの成績を記録。Nicki Minajのリミックス効果による「延命」も効いて、2018の年間チャートに入れそうです。

 “No Limit”、”King’s Dead”と並んで“Slob On My Knob”ブームの火付け役の1曲です。

 自身初のトップ40ヒットに恵まれたA$AP Fergは今後どのようなキャリアを歩むでしょうか!

 

 

今週チャートから外れた曲 (17曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 Logic feat. Young Sinatra – Warm It Up (🗻98位 /⏰1週)

97 Logic – BoomTrap Protocol (🗻97位 /⏰1週)

93 ScHoolboy Q, 2 Chainz & Saudi – X (🗻49位 /⏰5週)

91 Keala Settle – This Is Me (🗻58位 /⏰11週)

88 Lil Yachty feat. Ugly God – Boom! (🗻88位 /⏰1週)

87 Logic – Yuck (🗻87位 /⏰1週)

85 Eminem feat. Ed Sheeran – River (🗻11位 /⏰13週)

83 Logic feat. Big Sean – Wassup (🗻83位 /⏰1週)

74 Logic – Midnight (🗻74位 /⏰1週)

73 Lil Yachty feat. Trippie Redd – 66 (🗻73位 /⏰1週)

68 Logic – Overnight (🗻68位 /⏰1週)

60 Logic - Contra (🗻60位 /⏰1週)

56 Logic feat. Wiz Khalifa – Indica Badu (🗻56位 /⏰1週)

48 Demi Lovato – Sorry Not Sorry (🗻6位 /36週)

47 A$AP Ferg – Plain Jane (🗻26位 /25週)

 

 

来週以降の動向 / 過去チャートの振り返り・プレイリスト

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲を特集

 

Keith Urban feat. Julia Michaels – Coming Home

 先週の記事で触れた「ポップとカントリーの融合」に当たる曲。この融合はラジオの2大系統を抑えられる点で強いのですが、この曲はリリースから1週間でカントリー系ラジオ23位と、早々に人気を得ているようです。ポップ系リスナーにも飛び火、”Meant to Be”のようなヒットになり得るか?

 

David Guetta, Martin Garrix & Brooks – Like I Do

David Guetta & Sean Paul feat. Becky G – Mad Love

 Spotifyで調子を上げている2曲。”Mad Love”のほうがポップ系・リズミック系などラジオでもかかり始めているようです。David Guettaは他国でヒットに恵まれていますが、アメリカでは最近ヒットに恵まれていませんね。

 

Echosmith – Over My Head

 アダルトポップ系統で少しずつ浮上中。Hot 100にはまだ遠そうですが、ラジオがじわじわ伸びてしばらく後のHot 100入りの可能性があるかも。

 

 

・その他の新曲情報はこちらを参照してください!

 

 

✫半年前のHot 100

後に伸びる”No Limit"、”Gucci Gang"が登場

 

✫1年前のHot 100

 

Frank OceanとLordeの曲がHot 100に登場

 

・プレイリスト

 

「Hot 100 見どころ 3/31」をApple Musicで

*1:2014年の“Coming of Age”はオルタナティブ系ラジオで4位まで到達

*2:彼らは日本のアクトとも関連があり、三浦大知やジェロのプロデュースを最近行ったようです。ほかRed Velvet、EXOなどK-Popアクトのプロデュースも行っています。

*3:Joey Badass と Anne-Marieを今週のサムネ画像にしてみようかなとも思ったのですが、二人が一緒にいる写真は見当たりませんでした💦

*4:客演の“Roll in Peace”はHip-Hop/R&B系ラジオやリズミック系ラジオチャートの下位に登場したことがある

*5:高山マミ著、『ブラック・カルチャー観察日記』によると、黒人の間では“Sang”という概念があり、これは単に「歌が上手い」というだけでなく、もっと「魂の入った」「コブシを効かした」みたいな意味だそう。黒人はこの”Sanger”の曲を聞くと顔をゆがめて喜ぶそうですが、Demi Lovatoのパワフルボイスはこの概念に該当するのではないか?と個人的に考えたのです。最近Demi LovatoはDJ KhaledやQ-Tipと組んでいるので、この路線を取る可能性があるかも? あと他に個人的に“Sanger”っぽいと思っているのはSam Smithです。