チャート・マニア・ラボ (CML)

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アルバムチャートは純粋なセールス以外で勝負する時代? 【USアルバムチャートのここ4年の変化】

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☆現在USなどのアルバムチャートはセールス以外にもストリーミングなどを合わせて 集計されています。そのアルバムチャートを見ていると、「セールス」の比率が下がってきているな、と感じることが増えたので、それについてまとめました。

 

 2014年の末から、アメリカのアルバムチャートでは、セールス以外の項目が集計の対象となっています。具体的には……

シングルのダウンロード 10曲=1アルバムセールス

ストリーミング 1500回=1アルバムセールス 

(アルバム内の曲をどれでも1回再生すれば、カウント。つまり一つの曲だけ1500回再生されても1アルバムが売れたとカウントされる) 

 つまり、アルバムをシングル単位に分解して、アルバムチャートに反映させるということです。

 これらのセールス・シングルダウンロード・ストリーミングの3つを合計した数値を「総合値」 (Equivalent Sales)とし、アルバムチャートやディスク認定(プラチナ、ゴールド……などの)に使用されます。

 

↓(これがルール変更が実施されたときの記事です)

 シングルのダウンロードはもちろん、当時はストリーミングも「シングル消費思考」が強いと考えられていて、このルール実施当時は「シングルが強いアーティスト」がアルバムチャートで有利になると考察されていました。

 ビルボードはこの時、シングルヒットを飛ばしていたMaroon 5とHozier、Ariana Grandeを具体的な名前として挙げています。記事のサムネがAriana Grandeなのはそれが理由です。

 

 実は来週からこのルールに変更が加えられます。ストリーミングは今まで一律1500再生=1アルバム という換算でしたが、来週からは 「有料ユーザー」は1250再生=1アルバム 「無料ユーザー」は3750再生=1アルバムという計算に変わります! 

 ストリーミングの台頭に伴い、影響力が強くなったので、ストリーミングを細分化してより正確なチャートを目指そうという意気込みが伺えます。

 そのルール変更についての記事はこちら↓

 

 

 今回は、そのルール変更を前に、今までのルールを振り返りたいと思います。

 最近のアルバムチャートを見ていると、セールスの影響力あ小さい と感じることが増えたので、アルバムチャートでセールスが占める割合はどれくらいか? ということを調査していきます。

 調査は、2015年以降のUSの週間アルバム1位の、3つを合わせた「総合値」のうち、セールスが何割を占めているか?という方法で行いたいと思います。

 「総合セールス」や「純セールス」の数字はビルボードの記事に毎週記載されています。(その記事の例↓)

 

 

凡例

・アルバム名 [アーティスト] [同]はセルフタイトル

・トータル=純セールス、ストリーミング、シングルDLをすべて合わせた合計値

・セールス=純セールスの数字

・率=トータルのうち、「純セールス」が占める割合

・🎫=チケット付きCDを行ったアルバム (後述)

・色については↓

セールスの割合が95%を超えている
セールスの割合が50%を割っている

 

 

 2015

2015 アルバム名 トータル セールス
1/3 1989 [Taylor Swift] 375,000 331,000 88.3%
1/10 430,000 326,000 75.8%
1/17 244,000 172,000 70.5%
1/24 155,000 111,000 71.6%
1/31 Title [Meghan Trainor] 238,000 195,000 81.9%
2/7 American Beauty/American Psycho [Fall Out Boy] 218,000 192,000 88.1%
2/14 1989 [Taylor Swift] 101,000 71,000 70.3%
2/21 108,000 77000 71.3%
2/28 If You're Reading This It's Too Late [Drake] 535,000 495,000 92.5%
3/7 Smoke + Mirrors [Imagine Dragons] 195,000 172,000 88.2%
3/14 Dark Sky Paradise [Big Sean] 173,000 139,000 80.3%
3/21 Piece by Piece [Kelly Clarkson] 97,000 83,000 85.6%
3/28 Empire: Original Soundtrack from Season 1 [サントラ] 130,000 110,000 84.6%
4/4 To Pimp a Butterfly [Kendrick Lanar] 363,000 324,000 89.3%
4/11 123,000 107,000 87.0%
4/18 The Album About Nothing [Wale] 100,000 88,000 88.0%
4/25 Furious 7 [サントラ] 111,000 45,000 40.5%
5/2 Handwritten [Shawn Mendes] 119,000 106,000 89.1%
5/9 Sound & Color [Alabama Shakes] 97,000 91,000 93.8%
5/16 Jekyll + Hyde [Zac Brown Band] 228,000 214,000 93.9%
5/23 Wilder Mind [Mumford & Sons] 249,000 231,000 92.8%
5/30 Pitch Perfect 2 [サントラ] 107,000 92,000 86.0%
6/6 Blurryface [Twenty One Pilots] 147,000 134,000 91.2%
6/13 At. Long. Last. ASAP [A$AP Rocky] 146,000 117,000 80.1%
6/20 How Big, How Blue, How Beautiful [Florence + The Machine] 137,000 128,000 93.4%
6/27 Drones [Muse] 84,000 79,000 94.0%
7/4 Before This World [James Taylor] 97,000 96,000 99.0%
7/11 Dark Before Dawn [Breaking Benjamin] 141,000 135,000 95.7%
7/18 Dreams Worth More Than Money [Meek Mill] 246,000 215,000 87.4%
7/25 42,000 不明 不明
8/1 Black Rose [Tyrese] 86,000 83,000 96.5%
8/8 DS2 [Future] 151,000 126,000 83.4%
8/15 Woman [Jill Scott] 62,000 58,000 93.5%
8/22 Descendants [サントラ] 42,000 30,000 71.4%
8/29 Kill the Lights [Luke Bryan] 345,000 320,000 92.8%
9/5 99,000 83,000 83.8%
9/12 Immortalized [Disturbed] 98,000 93,000 94.9%
9/19 Beauty Behind the Madness [The Weeknd] 412,000 326,000 79.1%
9/26 145,000 77,000 53.1%
10/3 99,000 48,000 48.5%
10/10 What a Time to Be Alive [Drake & Future] 375,000 334,000 89.1%
10/17 Fetty Wap [同] 129,000 75,000 58.1%
10/24 Unbreakable [Janet Jackson] 116,000 109,000 94.0%
10/31 Revival [Selena Gomez] 117,000 85,000 72.6%
11/7 Pentatonix [同] 98,000 88,000 89.8%
11/14 Sounds Good Feels Good [5 Seconds of Summer] 192,000 179,000 93.2%
11/21 Traveller [Chris Stapleton] 177,000 153,000 86.4%
11/28 124,000 97,000 78.2%
12/5 Purpose [Justin Bieber] 649,000 522,000 80.4%
12/12 25 [Adele] 3,480,000 3,380,000 97.1%
12/19 1,160,000 1,110,000 95.7%
12/26 728,000 695,000 95.5%

(7/25は、音楽リリースが月曜日から金曜日に移る過程のチャートで、4日間集計という特殊なチャートになっている)

 

 2014年末にスタートされたアルバムチャートの「総合セールス」。その(ほぼ)初年度に当たる2015年は、セールスの比率が高いアルバムが1位になる傾向がありました。

 2015年はシングルヒットがあり、ダウンロードで強いアルバムが「セールス以外」の数値を伸ばす傾向にありました。

 シングルがバラ売りされる傾向が強い、サウンドトラックの"Furious 7"のセールス割合が一番低いことが特徴的です。(”See You Again"の人気に牽引されたのだと思われる)

 テイラーがシングルのDL人気によって(この時"1989"はストリーミングで解禁されておらず、ストリーミングのポイントは無し) アルバムセールス以外の数値をある程度稼ぐ一方、現在ではストリーミングでかなりの数字を稼ぐDrakeやKendrick Lamarが、アルバムセールスの割合が高いことが特徴的。(90%前後)

 2015年はまだアルバムチャートにおいてストリーミングの存在感は薄く、それよりも人気シングルのダウンロードがアルバムチャートに影響を及ぼしている、という印象です。

 ただし、年の後半にはFetty WapやThe Weekndなど、ストリーミングで数字をある程度稼ぐ新星の出現し始めています。

 

2016

2016 アルバム名 トータル セールス
1/2 25 [Adele] 825,000 790,000 95.8%
1/9 1,190,000 1,160,000 97.5%
1/16 363,000 307,000 84.6%
1/23 194,000 164,000 84.5%
1/30 Blackstar [David Bowie] 181,000 174,000 96.1%
2/6 Death of a Bachelor [Panic! At the Disco] 190,000 169,000 88.9%
2/13 25 [Adele] 116,000 97,000 83.6%
2/20 Anti [Rihanna] 166,000 124,000 74.7%
2/27 Evol [Future] 134,000 100,000 74.6%
3/5 25 [Adele] 151,000 125,000 82.8%
3/12 100,000 81,000 81.0%
3/19 I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It [The 1975] 108,000 98,000 90.7%
3/26 untitled unmastered. [Kendrick Lamar] 178,000 142,000 79.8%
4/2 Anti [Rihanna] 54,000 17,000 31.5%
4/9 This Is What the Truth Feels Like [Gwen Stefani] 84,000 76,000 90.5%
4/16 Mind of Mine [Zayn] 157,000 112,000 71.3%
4/23 The Life of Pablo [Kanye West] 94,000 28,000 29.8%
4/30 Cleopatra [The Lumineers] 125,000 108,000 86.4%
5/7 The Very Best of Prince [Prince] 179,000 100,000 55.9%
5/14 Lemonade [Beyoncé] 653,000 485,000 74.3%
5/21 Views [Drake] 1,040,000 852,000 81.9%
5/28 313,000 175,000 55.9%
6/4 239,000 83,000 34.7%
6/11 189,000 50,000 26.5%
6/18 152,000 37,000 24.3%
6/25 135,000 32,000 23.7%
7/2 121,000 27,000 22.3%
7/9 124,000 33,000 26.6%
7/16 111,000 25,000 22.5%
7/23 California [Blink-182] 186,000 172,000 92.5%
7/30 Views [Drake] 92,000 16,000 17.4%
8/6 89,000 16,000 18.0%
8/13 85,000 16,000 18.8%
8/20 Major Key [DJ Khaled] 95,000 59,000 62.1%
8/27 Suicide Squad: The Album [サントラ] 182,000 128,000 70.3%
9/3 93,000 50,000 53.8%
9/10 Blonde [Frank Ocean] 276,000 232,000 84.1%
9/17 Encore: Movie Partners Sing Broadway [Barbra Streisand] 149,000 148,000 99.3%
9/24 Birds in the Trap Sing McKnight [Travis Scott] 88,000 53,000 60.2%
10/1 They Don't Know [Jason Aldean] 138,000 131,000 94.9%
10/8 Views [Drake] 53,000 8,000 15.1%
10/15 Illuminate [Shawn Mendes] 145,000 121,000 83.4%
10/22 A Seat at the Table [Solange] 72,000 46,000 63.9%
10/29 Revolution Radio [Green Day] 95,000 90,000 94.7%
11/5 Walls [Kings of Leon] 77,000 68,000 88.3%
11/12 Joanne [Lady Gaga] 201,000 170,000 84.6%
11/19 Trap or Die 3 [Young Jeezy] 89,000 73,000 82.0%
11/26 This House Is Not for Sale [Bon Jovi] 129,000 128,000 99.2%
12/3 We Got It from Here... Thank You 4 Your Service [A Tribe Called Quest] 135,000 112,000 83.0%
12/10 Hardwired... to Self-Destruct [Metallica] 291,000 282,000 96.9%
12/17 Starboy [The Weeknd] 348,000 209,000 60.1%
12/24 The Hamilton Mixtape [サントラ] 187,000 169,000 90.4%
12/31 4 Your Eyez Only [J. Cole] 492,000 363,000 73.8%

 

 年の初期はAdeleがアルバムチャートを支配。100万を超える週もあり、圧倒的な「純セールス」でアルバムチャートを牽引しました。

 ほかのアルバムもセールスの割合が高い作品が多かったのですが。そこに一石を投じたのはKanye Westの”The Life Of Pablo"でした。

  この作品はiTunesでリリースされず、ダウンロードするにはカニエの公式サイトからのみ。また、カニエは「アルバムは生きている」などと主張し、アルバムに何かしらの変化を加えることを示唆。(実際に1曲アルバムに追加された) ストリーミング時代の新たな「アルバム像」を提示したのです。

 その結果、DLは低めながらも高いストリーミングを獲得し、初めてストリーミングに牽引されたアルバム1位が誕生したのです。(アルバム1位を獲得したのはApple MusicやSpotifyで開放されたタイミング。その以前はTidal「のみ」でリリースされていた)

 ストリーミングの隆盛はさらに続きます。アルバムチャートがストリーミングによって左右される、その印象が決定的となったのはDrakeの”Views"です。

 リリース最初の週は852,000とセールスも圧倒的で、一般的なアルバム1位と比率は大差無かったですが、真の姿を現したのは3週目以降。

 圧倒的なストリーミングによってアルバム1位の座をなかなか譲りませんでした。リリースから9週連続1位と、圧倒的な強さを発揮したのです。

 途中の週にはAriana Grandeなど有名どころもアルバムをリリースしましたが、セールスの差をひっくり返す圧倒的なストリーミングで1位をキープし続けました。

 ビルボードはアルバムチャートに関する記事で、今までは「純セールス」の数値しか明言してきませんでしたが、”Views"がストリーミングの強さでアルバムチャートを制し続けたことを受け、6/18からストリーミングの数値も明言するようになりました。

  

 この”Views"の圧倒的なアルバムチャート制圧によって、「ストリーミングはアルバムチャートを動かす」という印象を決定づけました。

 1位ラストの週では「総合セールス」のうち「純セールス」の占める割合が15.1%まで落ちています。

 ”Views"はDrakeがストリーミングで人気のアーティスト、というだけでなく「曲数が多い」という点でもアルバムチャートで有利でした。

 アルバムチャートでは、「アルバムの曲数にかかわらず」 1500ストリーミング=1枚セールス なので、曲数が多ければ多いほど、アルバムチャートでは有利ということになります。 この”Views"は20曲収録、と大所帯アルバムのです。

 この点に目をつけて、The Weekndの”Starboy"、同じくDrakeの”More Life"など曲数の多いアルバムが”Views"以降にいくつか見られるようになりました。

 Pitchforkはこの「チャート戦略を意識した曲数の多いアルバム」について考察記事を2016年に書いています。

 

 2017

2017 アルバム名 トータル セールス
1/7 A Pentatonix Christmas [Pentatonix] 206,000 185,000 89.8%
1/14 101,000 82,000 81.2%
1/21 Starboy [The Weeknd] 69,000 18,000 26.1%
1/28 63,000 14,000 22.2%
2/4 61,000 13,000 21.3%
2/11 56,000 8,000 14.3%
2/18 Culture [Migos] 131,000 44,000 33.6%
2/25 I Decided. [Big Sean] 151,000 65,000 43.0%
3/4 Fifty Shades Darker: Original Motion Picture Soundtrack 123,000 72,000 58.5%
3/11 Future [同] 140,000 60,000 42.9%
3/18 Hndrxx [Future] 121,000 48,000 39.7%
3/25 ÷ [Ed Sheeran] 451,000 322,000 71.4%
4/1 180,000 87,000 48.3%
4/8 More Life [Drake] 505,000 225,000 44.6%
4/15 226,000 43,000 19.0%
4/22 136,000 16,000 11.8%
4/29 Memories...Do Not Open [The Chainsmokers] 🎫 221,000 166,000 75.1%
5/6 DAMN. [Kendrick Lamar] 603,000 353,000 58.5%
5/13 239,000 89,000 37.2%
5/20 173,000 57,000 32.9%
5/27 Everybody [Logic] 247,000 196,000 79.4%
6/3 Harry Styles [同] 230,000 193,000 83.9%
6/10 One More Light [Linkin Park] 🎫 111,000 100,000 90.1%
6/17 True to Self [Bryson Tiller] 107,000 47,000 43.9%
6/24 Hopeless Fountain Kingdom [Halsey] 106,000 76,000 71.7%
7/1 Witness [Katy Perry] 180,000 162,000 90.0%
7/8 Melodrama [Lorde] 109,000 82,000 75.2%
7/15 Grateful [DJ Khaled] 149,000 50,000 33.6%
7/22 70,000 16,000 22.9%
7/29 4:44 [Jay-Z] 262,000 174,000 66.4%
8/5 87,000 61,000 70.1%
8/12 Lust for Life [Lana Del Rey] 107,000 80,000 74.8%
8/19 Everything Now [Arcade Fire] 🎫 100,000 94,000 94.0%
8/26 DAMN. [Kendrick Lamar] 47,000 11,000 23.4%
9/2 Rainbow [Kesha] 🎫 117,000 90,000 76.9%
9/9 Science Fiction [Brand New] 🎫 58,000 55,000 94.8%
9/16 Luv Is Rage 2 [Lil Uzi Vert] 135,000 28,000 20.7%
9/23 American Dream [LCD Soundsystem] 🎫 85,000 81,000 95.3%
9/30 Life Changes [Thomas Rhett] 123,000 94,000 76.4%
10/7 Concrete and Gold [Foo Fighters] 127,000 120,000 94.5%
10/14 Wonderful Wonderful [The Killers] 🎫 118,000 111,000 94.1%
10/21 Now [Shania Twain] 🎫 137,000 134,000 97.8%
10/28 Perception [NF] 55,000 38,000 69.1%
11/4 Beautiful Trauma [P!nk] 🎫 408,000 384,000 94.1%
11/11 Flicker [Niall Horan] 🎫 152,000 128,000 84.2%
11/18 Live in No Shoes Nation [Kenny Chesney] 🎫 219,000 217,000 99.1%
11/25 The Thrill of It All [Sam Smith] 237,000 185,000 78.1%
12/2 Reputation [Taylor Swift] 1,238,000 1,216,000 98.2%
12/9 256,000 232,000 90.6%
12/16 147,000 131,000 89.1%
12/23 Songs of Experience [U2] 186,000 180,000 96.8%
12/30 What Makes You Country [Luke Bryan] 108,000 99,000 91.7%

 

 昨年からの「ストリーミング旋風」は続行。リリースから2ヶ月経ってもThe Weekndの”Starboy"がストリーミングの人気によってアルバム1位を支配し続けていることが特徴的です。

 2月・3月になってもMigosやBig Sean、Drakeなどがストリーミング人気によってアルバムチャートを牽引し、この傾向は続いていきます。

 "More Life"の3週目は、「総合セールス」における「純セールス」の割合が11.8%と驚異的な数字を記録しています。そのうち純セールスの割合が10%を下回る1位アルバムも誕生するのでしょうか??

 しかし、そんな「ストリーミング強し」の時代に新しい潮流が誕生します。それは「チケット付きCD」です。 ライブのチケットにCDを付けることで、アルバムチャートの成績を伸ばそう!という戦略です。

 これを最初に使ったのはThe Chainsmokers。チケット付きCDが無くてもアルバム1位を獲得できそうな彼らがこの戦略を使ったのは意外でしたが、チケット付きCDは2017年後半になるとかなり流行します。

 特にこれを利用したのは、ストリーミングの数字があまり期待のできないベテランのアーティスト(主にロック系統)で、9人(組)のアーティストが2017年の後半に、チケット付きCDによってアルバム1位を獲得しました。

 LCD SoundsystemやBrand Newなどは、この「チケット付きCD」によって初のアルバム1位を獲得しています。

 チケット付きCDで、今までアルバムチャートでスポットライトの当たらなかったLCD Soundsystemなどのインディーアクトが上位に躍り出ることは、意義深いのですが、チケット付きCDを使ったアルバムは、初週の反動で2週目にガクッと数字を落とす傾向にあります。

 アルバム1位とは言っても、結局最終的にはどれくらいのヒットだったのか?ということを年間チャートなどで再確認する必要もあるかもしれません。

 

 このようにアルバムチャートにおける戦略が多様化した2017年。アルバムチャートでは29週で「ストリーミングでセールス1位を抜いたアルバム」か「チケット付きCDのアルバム」が 「総合セールス」でアルバム首位に躍り出ています。

 つまり、半分以上の週で、「純粋な」セールス1位がアルバムチャートの1位に立てていない、ということになります。

 いかに「聴かれている」かのストリーミング、いかに「熱心なファンが多いか」のチケット付きCD……アルバムチャートは「アーティストの総合力」が問われる時代になってきたと感じます。

 

 2018

2018 アルバム名 トータル セールス
1/3 Revival [Eminem] 267,000 197,000 73.8%
1/6 Reputation [Taylor Swift] 107,000 79,000 73.8%
1/13 The Greatest Showman [サントラ] 106,000 78,000 73.6%
1/20 104,000 70,000 67.3%
1/27 Camila [Camila Cabello] 119,000 65,000 54.6%
2/3 Mania [Fall Out Boy] 130,000 117,000 90.0%
2/10 Culture II [Migos] 199,000 38,000 19.1%
2/17 Man of the Woods [Justin Timberlake] 293,000 242,000 82.6%
2/24 Black Panther: The Album [サントラ] 154,000 52,000 33.8%
3/3 131,000 40,000 30.5%
3/10 This House Is Not for Sale [Bon Jovi] 🎫 120,000 120,000 100.0%
3/17 Black Panther: The Album [サントラ] 76,000 15,000 19.7%
3/24 Bobby Tarantino II [Logic] 119,000 32,000 26.9%
3/31 ? [XXXTENTACION] 131,000 20,000 15.3%
4/7 Boarding House Reach [Jack White] 🎫 124,000 121,000 97.6%
4/14 My Dear Melancholy, [The Weeknd] 169,000 68,000 40.2%
4/21 Invasion of Privacy [Cardi B] 255,000 103,000 40.4%
4/28 Rearview Town [Jason Aldean] 🎫 183,000 162,000 88.5%
5/5 KOD [J. Cole] 397,000 174,000 43.8%
5/12 Beerbongs & Bentleys [Post Malone] 461,000 153,000 33.2%
5/19 193,000 24,000 12.4%
5/26 147,000 18,000 12.2%
6/2 Love Yourself: Tear [BTS] 135,000 100,000 74.1%
6/9 Shawn Mendes [同] 182,000 142,000 78.0%
6/16 Ye [Kanye West] 208,000 85,000 40.9%
6/23 Come Tomorrow [Dave Matthews Band] 🎫 292,000 285,000 97.6%
6/30 Youngblood [5 Seconds of Summer] 🎫 142,000 117,000 82.4%
7/7 Pray for the Wicked [Panic! At the Disco] 🎫 180,000 151,000 83.9%

 ※1/3→1/6は、ビルボードのチャートの日付変更の過程で、少し特殊な日程になっていますが、集計は1週間分されています(12/15 ~ 12/21=1/3付けのチャート、12/22~12/28 = 1/6付けのチャート)

 

  昨年からの「ストリーミング」と「チケット付きCD」という2大潮流は変わらず。今年のアルバム1位のうち、半数くらいが総合セールスにおける純セールスの割合が半分を下回っています。

  ちなみに、チケット付きCDの効果でアルバム1位に返り咲いたBon Joviは「セールスほぼ100%」という珍しい記録を達成。ただし前述のように、チケット付きCDでは次週に息が続かない傾向があり、Bon Joviはこの週、「アルバム1位から、次週最もアルバムチャートの順位を落としたアルバム」という珍しい記録を作りました。

 

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↑アルバム1位の次週、順位を最も落としたアルバムのランキング。1位-5位がすべてチケット付きCDを利用したアルバムに。(https://en.wikipedia.org/wiki/Billboard_200#Largest_drops_from_number_one より)

 

  来週からのアルバムチャートのルール変更で、どのような変化が起こるでしょうか。ややディープな音楽チャート系のサイト、Hit Daily Doubleはこの有料 / 無料を判別するルール変更で5%-10%ストリーミングによるアルバムセールスの数字が伸びる、と試算しています。

 ↓の記事によると、Apple MusicとSpotifyのストリーミング数を合計した時、Spotifyの「無料」ユーザーによる再生数は全体の23%で、残りの77%は「有料ユーザー」だそう。この有料:1250 無料:3750のルールでは、「無料」ユーザーが25%を上回ると従来よりもストリーミングによるアルバムセールスが落ちることになるので、現状の比率だとアルバムチャートにおけるストリーミングが強くなる、という試算のようです。

 (ちなみに有料ユーザーの77%のうち、Spotifyが48%、Apple Musicが29%の再生数を占めている模様)

 

 

 

 このように複雑化していくアルバムチャートを今後も観察して、これからも変化を追っていきたいと思います!

 

 

おまけ

週間のストリーミングが多いアルバム・ベスト5 (2018/7/6時点)

※ストリーミングだけでアルバム何枚相当の売上に相当するか?というランキングです

※この数字を1500倍すれば、アルバムのストリーム数がだいたいわかります

 

1 Post Malone / Beerbongs & Bentleys  288,000枚相当

2 Drake / More Life 257,000枚相当

3 Kendrick Lamar / DAMN. 227,000枚相当

4 J. Cole / KOD 215,000枚相当

5 Migos / Culture Ⅱ 150,000枚相当

(ちなみに”Culture Ⅱ"の1週目よりも、”More Life"2週目のストリーミングのほうが多い =169,000枚相当)

 

・ストリーミングが多い「女性」のアルバムベスト5 (週間)

※上の記録の女性版

 

1 Cardi B / Invasion of Privacy 135,000枚相当 (↑のランキングでは6位)

2 Beyoncé / Lemonade 77,000枚相当

3 Camila Cabello / Camila 38,000枚相当

4 SZA / Ctrl 33,000枚相当

5 Solange / A Seat at the Table 24,000枚相当

(Cardi Bは2週目以降でも、”Lemonade"のストリーミングを超えている可能性が高いです)

ビルボードは具体的なストリーミングの数値を公表していないのですが、Ariana Grande、Halsey、Lorde、Lana Del ReyはSolangeよりも高いストリーミングを記録している可能性があります