チャート・マニア・ラボ (CML)

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Drakeがアルバム“Scorpion”で達成した記録まとめ + 考察・今後の予想

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 今週のUSチャートにはDrake旋風が吹き荒れています。アルバムの曲数が多いこともあり、アルバム曲がHot 100(シングルチャート)を占領しました。(参照↓)

 

曲名
1 Nice For What
2 Nonstop
4 God's Plan
6 In My Feelings
7 I'm Upset
8 Emotionless
9 Don't Matter To Me /ft. Michael Jackson
13 Mob Ties
14 Elevate
17 Survival
18 Can't Take A Joke
20 Talk Up /ft. Jay-Z
21 8 Out Of 10
27 Sandra's Rose
28 Summer Games
30 Blue Tint
32 Jaded
36 Is There More
37 That' How you Feel
38 Peak
41 After Dark /ft. Static Major & Ty Dolla $ign
42 Finesse
51 Ratchet Happy Birthday
56 Final Fantasy
57 March 14

(この週のHot 100すべての順位は こちら

 

 この週チャートから外れた曲が31曲もある、という点がこの今週のDrake旋風の凄まじさを物語ります。

 今回、Drakeはこのアルバムで様々なUSチャートの記録を成し遂げました!この記事ではそれらの記録をまとめました。最後に少し考察も付けています。

 

 主にビルボードによる記事↓を参考に書いています。 ほかHot 100のアーカイブなどを参考にこの記事を書いています。

 また、Billboard Hot 100の各種記録をまとめて見たい時はWikipediaのページが便利です。

List of Billboard Hot 100 chart achievements and milestones - Wikipedia

 

☆シングル(Hot 100関連)

 

ビートルズの記録を塗り替えた、史上初のトップ10に同時7曲

 

 一番衝撃的だったのはこの記録ではないでしょうか!上記のように、今週アルバムから7曲がトップ10入りし、The Beatlesが持っていた「同一アーティストによる、同時最多トップ10入り記録」を塗り替えました。

 The Beatlesは1964年の4月に1位~5位を独占し、同時最多トップ10=5曲を達成。ちなみにその時の並びは1位”Can’t Buy Me Love”、2位”Twist & Shout”、3位”She Loves You”、4位”I Want To Hold Your Hand”、5位”Please Please Me”でした。

 

 この「同時最多トップ10」はこの1964年からずっと(約54年間)破られてこなかったので、その記録を破ったインパクトは相当なものである、と言えると思います。

 

 ただし、The Beatlesの時代はいまと違ってシングルカット以外の曲、またはその場で店頭に置いていない曲は買うことができず、「アクセスできる曲に制限がかかっている」という点、また1位-5位をすべて独占していたという点を考慮するとThe Beatlesのほうが難度は高い記録だったのではないか?と考えています。

 Drakeの方も、様々な曲がアクセスしやすくなり、「ライバルが多い中成し遂げた記録」なので、こちらにももちろん価値はありますがね。

 

 

・Hot 100に合計27曲を送り込む(過去最多)

 “Scorpion”に収録された25曲のほか、Lil Babyとの”Yes Indeed”、BlocBoy JBとの“Look Alive”がチャートに残り、Drakeは今週計27曲をHot 100に送り込みました。

 この記録を前持っていたのも同じくDrake。“More Life”の時収録曲すべてと他2曲(計24曲)がHot 100入りしていました。

 ちなみにこの記録の「元祖」はThe Beatles。1964年4月(1位-5位独占を果たした時)に同時14曲がHot 100入りという偉業を成し遂げていました。この記録は50年以上破られなかったのですが、ストリーミングの台頭によって変化が。

 Justin Bieberが2015年のアルバムリリース時に計17曲をHot 100に送り込み、この記録を打ち破ったのです。その後は頻繁に記録が塗り替えられていっています。

(参考:10以上の曲をHot 100に送り込んだアルバムの記録 【+J. Cole が新記録!?】 - チャート・マニア・ラボ (CML)

 

 

・Drakeは通算で歴代最多のトップ40曲を記録したアーティストに

 今回のアルバム曲うち20曲がHot 100のトップ40入りを果たしました!うち17曲は新登場です。

 トップ40とはチャート業界ではよく「ヒットの基準」とされていて、「トップ40に入ったかどうか」はチャートにおいてそこそこな注目ポイントなのです!

 今回Drakeは通算トップ40の数を91曲に伸ばし、Elvis Presley (80曲)を抜いて歴代最多記録を更新しました。

 ※ソースは↓。この時点ではDrakeはまだ74曲ですが、今週トップ40に新登場17曲をあわせて計91曲になります。

  

 

・Hot 100総エントリー数は歴代2位、通算トップ10曲数は歴代4位

 通算のトップ40曲数では歴代の記録を更新したDrakeですが、Hot 100総エントリーと、通算トップ10入り曲数ではまだまだ上がいます。

 

 通算Hot 100エントリー数の首位はGlee Cast。さまざまな曲をカバーし、多くのダウンロードを記録しHot 100入りする……(しかしすぐチャートから外れてしまうことが多い)という動きを得意としていた彼らは、なんと今まで207曲をHot 100に送り込んでいます!

 Drakeは今回のアルバムを足しても通算186曲で、まだ少しGlee Castと差があります。とはいえGlee Castのリリースは近年無く、差はどんどん縮まっているのでそのうちDrakeが逆転しそうです。

 

 Drakeの通算トップ10入り曲数は31曲で、歴代4位の多さです。

 ちなみに1位はMadonna(38曲)、2位はElvis Presley(36曲)、3位はThe Beatles(34曲)。 そこに次ぐのはDrakeとRihanna(ともに31曲)。 

  また、今回のDrakeのアルバムに参加したMichael Jacksonがこの2人に次ぐ通算30曲のトップ10を記録しています。

 

 

・Hot 100の1位&2位を独占

 今週1位が“Nice For What”、2位が”Nonstop”で、Drakeはトップ2独占を達成。1位&2位を独占したアーティストは過去に19人(組)います。

 Drakeがこの記録を今年、“Nice For What”と”God’s Plan”の組み合わせでも達成しています。

 ちなみに「異なる組み合わせで」、複数回1位&2位を独占したことがあるのは、The BeatlesAkon・Justin BieberとDrakeの4人です。

 

・1アルバムから7曲のトップ10を輩出。最多タイと並ぶ

 一気にトップ10に7曲を送り込んだことにより、「1アルバムあたり」のトップ10曲数も歴代の記録と並びました。

 今までに7曲のトップ10を輩出したアルバムはMichael Jacksonの“Thriller”、Bruce Springsteenの”Born in the U.S.A.”、Janet Jacksonの“Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814”の3つです。

 これらはシングルが一つずつヒットしていき……のように順番にゆっくり(1年半程度)とトップ10曲数を増やしていきました。Drakeのように一気にトップ10が多く誕生するケースは非常に「現代風」です。

※参考↓ 歴代でトップ10に5曲以上を送り込んだアルバム一覧 

 

 

・最初の週からトップ10でデビュー!が過去最多

 今週トップ10圏内で「新」登場したDrakeの曲は4つ。今まで「トップ10にいきなり登場する曲」といえば、「勝負シングル」で、このような曲が1週間に複数生まれることはほとんど無かったのですが、ストリーミングの台頭によって昨年あたりから「いきなりトップ10」が増加。

 今週Drakeは「いきなりトップ10」が4曲もあり、1週間における「トップ10デビューが」の最多記録を樹立しました。(今までは今年のJ. Coleの3曲)

 またDrakeはこれで通算16曲の「いきなりトップ10」を記録したこととなり、こちらも歴代最多となりました。

 

☆アルバム(Billboard 200)関連

 

・史上最多のストリーミングを記録したアルバムに

 今週、アメリカだけでもこの“Scorpion”は計7億4590万再生(再生数の単位は1曲ごと、つまりアルバムが全て再生されれば25再生になる)を達成!Post Maloneが”Beerbongs & Bentleys”で記録した4億3130万再生という、アルバム・ストリーミングの記録を塗り替えました。

 純粋にDrakeの人気が高いだけではなく、アルバムの曲数が多いという点もこの大記録に寄与していますね。(アルバムの曲数が多ければ多いほど、ストリーミングの数字が増えるので)

 現在のアルバムチャートではストリーミングも集計の対象です。このアルバムの7億4590万再生は、55.1万枚の売上に相当すると計上され、アルバム1位の原動力となりました。

 今までは一律1500再生=1アルバムセールス相当、と換算されていましたが、今週からルールが変更され「有料会員」ならば1250再生=1アルバム、「無料会員」ならば3750再生=1アルバム、という複雑なオペレーションに変更されました。

 これはおそらくSpotifyの無料会員が順番通りにアルバムが聴けないことなどを考慮しているのだと思います。またYouTubeなどの「アルバムとしての再生」が考慮されていない媒体は、もとからアルバムチャートの対象「外」です。

 

 ちなみに、今回のアルバムは7億4590万再生で、55.1万枚相当と換算されたので、平均約1354再生で1アルバムと換算されたことになります。有料会員の再生の割合が高く、このルールによってアルバムチャートのストリーミング比率が少し上がった、ということになります。

 

・Drakeは8「連続」でアルバム1位を記録。歴代最長タイと並ぶ

 Drakeはデビュー作“Thanks Me Later”でUSのアルバム1位を獲得以降、8連続でアルバム1位を達成。「連続」の1位としてはEminemThe Beatlesと並んで最長記録です。

 ただしDrakeは「通算」のアルバム1位はまだ8つで、最多記録を持つThe Beatles(通算19枚でアルバム1位を記録)とまだ水を開けられています。

 

・今年最大規模のアルバムに

 ストリーミングの換算(55.1万枚相当)、純セールス(16万枚)、シングルDLの換算*1(2.1万枚相当) をすべて合わせて、“Scorpion”は「合計」で今週73.2万枚売れたと「計上」されました。

 73,2万枚は今年のアルバムでは最大の規模です。ただし、「純セールス」は今年最大の規模ではなく、Justin TimberlakeDave Matthews Bandがセールス「だけ」で20万を超えています。ただし、彼らはストリーミングでそこまで数字を稼がないので、「合計」のセールスでは控えめな数字になります。

※ただし、“Scorpion”はまだCDがリリースされていないので、CDによってセールスが伸びる可能性も一応あります

 

☆ストリーミング関連

 

Apple Music、Spotifyの両方で史上最多の再生数を記録したアルバムに

 “Scorpion”は、全世界のSpotifyで初日に約1億3200万再生、全世界のApple Musicでは約1億7000万再生を記録し、それぞれのアルバムストリーミング数の最高記録を塗り替えています。

 ちなみに、Apple Musicのスタッフは今回の記録に対し、「すべてのストリーミングサービスにおける最高記録を樹立した!」と述べています。

 Apple Musicは“Views”の時に独占先行配信を行い、その時にDrakeファンを多く獲得していたことが、今回の記録樹立 & Spotifyより多い再生数 につながったのかもしれません。

 

・”Nonstop”がアメリカのSpotify再生数の記録を塗り替える

 “Nonstop”はリリース初日、アメリカのSpotifyで約575万再生を記録。これは自身の”God’s Plan”で記録(約474万)を抜かして、1日の再生数としては最多の記録となりました。

 USでは記録を更新しましたが、「世界合計」の再生数では記録樹立ならず。今年XXXTENTACIONの“SAD!”が記録した数字を越えることはできませんでした。(参考↓)*2

 

 

 

・はじめて1週間で10億ストリーミング(全世界で)を記録したアルバムに

 ビルボードによると、世界合算で“Scorpion”は1週間で10億再生に達したそうです。桁違いの再生数に圧倒されます。

 

 

☆今後達成するかもしれない?記録

 

・1アルバムから最多のHot 100首位曲を輩出する???

 現在、“God’s Plan”、”Nice For What”と2曲のシングル1位曲を輩出している“Scorpion”。さらに現在”In My Feelings”がDLとストリーミングの首位を独走中で、来週Hot 100で1位を獲得できるかも。ストリーミングのパワーを活かして、さらなる記録達成なるか? Drakeはラジオでそこまで強くないことが、さらなるシングル1位獲得への懸念材料です。

 ちなみにシングル1位を最も多く輩出したアルバムはMichael Jacksonの“Bad”とKaty Perryの”Teenage Dream”で、それぞれ5曲。

 

・史上初めて、純セールスの比率が10%を下回るアルバム1位に???

 現在のアルバムチャートではストリーミングが集計されるため、セールスはかなり低いながらもストリーミングによってアルバムチャートに食い込むアルバムも増えてきました。

 ただし、ストリーミングの数字だけではある程度限界があり、アルバムチャートで首位に立つにはある程度の「純セールス」も必要でした。

 今回の“Scorpion”はかなりのストリーミングを今後も記録しそうで、「純セールス」がかなり低いにも関わらずアルバム1位をキープし続けるかもしれないです。

 

 ちなみにアルバム1位で「純セールス」の割合が今までで最も低かったのは、Drakeの“More Life”(3週目)の11.8%。

 「純セールス」の実数値が今までで最も低かったのはDrakeの”Views”(13週目)とThe Weekndの“Starboy”(5週目)の8000枚です。

 個人的には、このアルバムはいつか、純セールスが10%を割っているにも関わらず、アルバム1位を取るのでは?と予想しています。

(参考: アルバムチャートは純粋なセールス以外で勝負する時代? 【USアルバムチャートのここ4年の変化】 - チャート・マニア・ラボ (CML)

 

☆軽い考察

 今回のストリーミングによるDrake記録ラッシュで「チャートが壊れた!」という人をちらほら見かけます。Hot 100のマネージャーであるGary TrustさんにTwitterで直接リプライを送って抗議している人も見かけました。

 

 

 この1件について、私は「悪くはないが、改善の必要もある」と考えています。

 まず、最近「ストリーミングが強すぎる!」という点に関しては、仕方がないと考えています。ストリーミングでは実際に「再生」されていて*3、さらに収益も上げているので、これを否定する要素は無いと思います。

 また、「ストリーミングで、曲をアルバム単位で聴く」というのはストリーミング全体の潮流なので、「音楽チャートは今の音楽の聞き方を反映させるもの」という観点から、1アルバムからの「曲数制限」なども、する必要は無いと私は考えています。

 

 ですが、今のシングルチャートのバランスが悪いのは確かで、一つのアーティストが独占していると、チャートがつまらなく感じ、「萎える」人が一定数いるのは事実でしょう。

 その「萎え」がシングルチャートへの興味や信頼性の低下に繋がることも考えられるので、この「萎え」を生み出さない工夫は必要だと考えています。

 

 個人的にはその対策としては、「ラジオ重視」が良いと考えています。ラジオはシングルを、アーティストごとにバランスよくかけるので、これを重視すれば自然と上位に多様性が出ると思います。

 ラジオは伝統と影響力を両立したメディアで、多くの人の「納得」を得ることも可能だと思います。ラジオは今でも若者も含めて人気が高いメディアのようです。

 

 また、「アルバムとストリーミング」についてですが、ストリーミングでアルバム「全体」に人気が出るという潮流は今後も続くように思います。人々は最適な聞き心地を求め、なんだかんだ「アルバム」というフォーマットを愛し続けるように思います。

 また、現在もメディアも音楽の話をする時に「アルバム」という単位をベースに報じることが多い、ということも大きいと思います。

 

 このような理由から、今後も「アルバム」という単位に力を入れるアーティストは強いと思います。

 

 ただし、今回の“Scorpion”のような曲が大量にあるアルバムがこれからも人気か?と言われると微妙です。人々がいつまで毎週のアルバムラッシュに付いてこられるかは不明で、このように時間を「取りすぎる」アルバムはだんだん疑問符を付けられるようになるかもしれません。あくまで推測の粋ですがね……

 ストリーミングのポイントを稼げるからアルバム曲数増やしてしまえ!ではなく、純粋にアルバムとしての「まとまり」を追求してほしい、というのが個人的な願いですね。(まあ別にアルバムを長くしているのは、チャートのため「だけ」では無いと思いますが……)

 

 あとストリーミング全体についてなのですが、現在はいわば経済用語の「人口ボーナス期」で、ユーザー増加に伴い高い成長率を記録していますが、人口には限界があるので、いつか頭打ちになるはずです。その時にどうするか?ということを今のうちから模索していくのも大切かもしれません。 

 まあ、この“Scorpion”はある種「ストリーミングの象徴」のようなアルバムなので、「ストリーミング」について議論するときには、今後10年も20年も言及され続けるようなアルバムになるかもしれませんね。

 

 

*1:これも現在アルバムチャートに集計されている

*2:この表の真の見どころはMariah Careyだと思っています、笑

*3:ただし、再生したまま「放置」をしている人も0では無いとは思う