リリース日:6/22
★★★★☆
Fav Tracks: Ferrari、Shining Star、Don’t Get Any Closer、Grace
・アルバム情報
アメリカのポップシンガー・Bebe Rexhaによる「デビューアルバム」。彼女は今までに何回かEPはリリースしていましたが、アルバムは今回が初めてでした。
2015年にDavid Guettaらとの“Hey Mama”の客演でUSのトップ10入りして以降、”Me, Myself & I”、“In the Name of Love”など他人とのコラボを中心にヒットを連発。
2017年以降は”I Got You”や“Meant to Be”など自分がメインの曲もヒットするようになり、自身への注目度も向上。2018年初のアルバムリリースに至りました。
アルバムにはそのヒット“I Got You”と”Meant to Be”が収録されています。その“Meant to Be”の効果などもあって、USのアルバムチャートでは13位を記録しました。
このアルバムへの反応は「そこそこ」です。アルバム評論まとめサイト Album of the Year”によると、このアルバムへのメディア採点平均点は62点。
The Gurdianが20点をつけて平均点を大きく落とす一方、NMEが80点、Rolling Stoneは70点と大手メディアの採点は高めの点数をつけています。(ちなみにNMEとRolling StoneはGwen StefaniやNo Doubtとこのアルバムの関連性について触れています)
また、このサイトのユーザーによる平均点は52点と低め。
・レビュー
Bebe Rexhaからはすごい才能を感じています。 パワフルで特徴的なボーカルは唯一無二。ソングライティングも巧みにこなし、Eminemの“The Monster”をはじめとして多くの曲をヒットに導いています。2016年のUS年間19位と大ヒットだった“Me, Myself & I”は、もともとBebe Rexhaが作っていた曲をベースに作られている、という説もあるようですね(NME)
あとはビジュアル面もなかなか評判が良いのか?日本語Google検索では昔から何番目かに「Bebe Rexha かわいい」とサジェストされ続けているような気がします。
単なるシンガー&ソングライターとしてだけではなく、アイドル的素質も実はある?という見方もできると思います。
※個人的なお気に入り写真です
Someone caught me in my natural state. pic.twitter.com/okJFA5KcuY
— Bebe Rexha (@BebeRexha) February 16, 2017
そんな才能あふれるBebe Rexhaですが、そのキャリアは順風満帆とはいえないものだったと思います。上の項目で触れたように、客演や他人へのソングライトを中心にヒットの数は多かったものの、自身のヒットにはあまり恵まれませんでした。
何回かHot 100に接近し、101~125位相当のチャート=Bubbling Underに入るものの、Hot 100の壁はなかなか破れず。
しばらくして、“I Got You”という曲で念願の(自身の曲での)Hot 100デビューを果たしたものの、トップ40には届かない程度のヒットで、今まで客演してきた曲と比べると小規模のヒットでした。
その結果なのか、なかなかフルアルバムはリリースできず、EPのリリースがしばらく続きました。2015年以降、彼女はEPを3枚リリースしています。
2017年にEPを2つリリースしたのですが、それらの曲はR&B、ヒップホップ、カントリー、ダンスホール……などジャンルが多岐に渡っており、「ヒットを生み出すための苦労」のようなものが伺えました。
その苦労の末、Bebe Rexhaは自身の曲でヒットが生まれます。Florida Gerogia Lineを迎えたカントリー調の“Meant To Be”が大ヒットになったのです。新ジャンルに挑戦した効果が表れた、とも言えます。
この曲はHot 100(USシングル)で2位まで到達。さらに5週の間、全米のラジオで最もかかった曲となり、飛躍を遂げたのです。
この曲のヒットにより、Bebe Rexhaはついに念願のデビューアルバムのリリースを果たしました!
その“Meant To Be”を生み出したEP“All Your Fault pt.2”について以前の記事ですこし触れていました。 (Julia MichaelsのEPレビューで、「同じCash Cashのボーカルを務めた者同士」というくくりで触れました)
ちなみに文中に登場したBebe Rexhaも最近EPをリリースしたのですが、こちらはJulia Michaelsとは真逆でEP全曲ジャンルが違うのでは?と思うほどに様々なジャンルに挑戦しています(80年代ポップス、Murda Beatzによるラップ調、ダンスホール、Florida Georgia Lineを招いてのカントリーなど)
ここまで幅広いジャンルをこなす器用さはすごいと思いますし、実際Florida Georgia Lineとの曲がそこそこヒットするなど調子も良いみたいで、芸達者スタイルも面白いと思いますが、私は「アーティストのカラー」を見たいと思う人間なので、何か「Bebe Rexhaはどういう音楽をしたいのか?」のようなものを見たいとも思ってしまいます。
ポップスシンガーは「売れる」という命題もあるので、スタイル確立とのバランスの取り方が難しいですけどね……
Julia Michaelsの【ボーカル】に再注目! 【Nervous System (EP) レビュー/感想】 - チャート・マニア・ラボ (CML) より
今回のアルバムは、その「Bebe Rexhaはどういう音楽をしたいのか?」ということが見えて、個人的な「願い」が叶った作品、と感じています。
私は先行リリースされていた“Ferrari”がお気に入りでした。この曲はロックで壮大なサウンドに、Bebe Rexhaの力強いボーカルが映え、さらにメロディセンスが光る……といった曲で、彼女の才能が存分に発揮されていて 特にコーラスの持つパワーはすごいと思います。
“Expectations”は、この“Ferrari”の世界観をアルバムサイズに広げたものだと思います。アルバムを象徴する”Ferrari”を最初に配置。そこから ロックサウンドと哀愁のあるメロディを基本線としつつも、一部ラテンやダンスホールの要素を取り入れるなど個性的な曲が並んでいます。
このアルバムを聞いて、私はBebe Rexhaがついにスタイルを確立したのか!と勝手に嬉しくなりました。
アルバムの中で特に良かったのは“Ferrari”、”Shining Star” “Don’t Get Any Closer”と”Grace”
“Ferrari”は先行シングルにして、アルバムを象徴する1曲。Bebe Rexhaの恵まれたボーカルセンス、メロディセンスを活かした、ロックサウンドでスケールの大きい1曲です。
“Shining Star”は哀愁のあるメロディセンスが光る1曲です。個人的には先行シングル以外で、一番耳に残る曲と思っています。
“Don’t Get Any Closer”と”Grace”はセットだと思っています。メロディ展開があり、情熱的な“Don’t Get Any Closer”。そこからBebe Rexhaのパワフルな歌声が映えるバラード調の”Grace”。この流れはアルバムのハイライトの一つだと思います。
NMEもレビューでは、自身のスタイルを確立したことを評価していて、
「Bebe Rexhaは主に他のアーティストとのコラボレーションで知られている」とWikipediaに書かれているが、この記述は改める必要がある。このアルバムでBebe Rexhaは自身のスタイルを確立したのだ
とユニークな視点からこのアルバムを分析しています。(現在、Wikipediaのこの記述は訂正された)
“Ferrariスタイル”ではない、以前にヒットを飛ばしていた“I Got You”や”Meant To Be”もこのアルバムに入っていますが、正直ほかの曲との相性は微妙な気がします。
Hot 100で2位まで浮上し大ヒットだった“Meant To Be”を、ボートラ風にアルバムの最後に配置しているのは納得です。
しかし、ヒットとはいえHot 100のトップ40に届かなかった”I Got You”をアルバムに入れ、さらにアルバムのど真ん中に配置したのは少し驚きでした。
アルバム構成上はマイナスだと感じたのですが、今まで自身のヒットが出ず、ずっとアルバムをリリースできなかったBebe Rexhaの苦労のようなものが垣間見られるような気がして、良い味を出しているような感覚もあります。
“Expectations”は完全無欠!とまではいきませんが、それでもBebe Rexhaの才能、またはそれまでの苦労も感じる、名ポップアルバムだと感じました!
・プチ知識
☆Bebe RexhaはNicki Minaj・Cardi B・Iggy Azalea3人全てと仕事をしたことがある。(前者二人は客演、Iggy Azaleaは“Team”のソングライト) この女性ラッパーの代表格3人全てと仕事をした人はあまりいない(あとはQuavoくらい)
☆現行アルバムチャートは、ストリーミングやシングルDLを含むため、シングルヒットがあるとアルバムもチャートを同時に上昇する傾向にある。
その効果で“Meant To Be”が最初に収録されていたEP・”All Your Fault Pt.2”は長くアルバムチャートの40位前後を推移していたのですが、このアルバムリリースで、“Meant To Be”の「管轄」がアルバムの”Expectations”に「移行」したため、EPの方はアルバムチャートの圏外へ落ちてしまいました。
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