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Hot 100 8/11 見どころ 【DJ Khaled新曲5位デビュー / ソングライター・Emily Warren】

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 今週は際立ったのはDJ Khaled新曲!”I'm the One"の面子を多く起用した”No Brainer"は5位デビューを果たしています。

 ほか、今週はThe Chainsmokersの客演で参加したシンガー、Emily Warrenや、現代シングル考察、YouTubeで10億に到達する曲?などについて書いています。

 画像はThe ChainsmokersのAndrew Taggart(左)と、Emily Warren(右) *1

 

今週のハイライト

・DJ Khaledの“No Brainer”が5位デビュー!

・The Chainsmokers新曲“Side Effects”が87位に登場。この曲はラジオで好調

・今年YouTubeの再生数が世界一の曲、Nicky JamとJ Balvinの“X”がチャートから外れる(ピーク41位/滞在21週)

・最初の週は8位で登場したDrakeの“Emotionless”、5週目でHot 100から外れる

 

☆今週のトップ10

ー1 Drake – In My Feelings

―2 Cardi B, J Balvin & Bad Bunny – I Like It

△3 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz – FEFE

▽4 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

☆5 DJ Khaled feat. Justin Bieber & Chance the Rapper & Quavo – No Brainer

▽6 Post Malone – Better Now

△7 Juice WRLD – Lucid Dreams

▽8 Ella Mai – Boo’d Up

△9 Tyga feat. Offset – Taste

▽10 Drake – Nice For What

 

11位以下の順位表は↓

 

曲の個別解説

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

☆100 Mitchell Tenpenny – Drunk Me

 カントリー系ラジオで浮上中の1曲、Mitchell Tenpennyの“Drunk Me”が100位で登場。彼にとって初のHot 100に。

 彼はナッシュビル出身のカントリー系シンガー&ソングライター。Granger Smithの“If the Boots Fits”など、他人の曲のソングライトに参加することも。

 

☆99 YG feat. A$AP Rocky – Handgun

 YGがアルバムリリースに先駆けてリリースしたA$AP Rockyとの“Handgun”が99位で登場。Apple Musicで主に人気と思われます。

 次の週のチャートでは、そのアルバムのリリースが反映されるので、この曲が上昇するかもしれないです。

 

☆92 Yella Beezy – That’s On Me

 新人ラッパーYella Beezyのシングル“That’s On Me”が92位で登場。この曲は主にR&B/Hip-Hop系のラジオやYouTube(今週27位)で人気。

 彼は複数回にわたり、Lil Babyとのコラボしたこともあるようです。

 

☆87 The Chainsmokers feat. Emily Warren – Side Effects

 The Chainsmokersの新曲“Side Effects”が87位で登場。DLを一定数集めた(今週22位)ほか、ポップ系ラジオでも好調です。

 客演に入ったEmily Warrenは以前からThe Chainsmokersのソングライターとして活躍していた女性SSW。大ヒット“Don’t Let Me Down”など、計11曲でThe Chainsmokersのソングライトを担当しています。

 今年リリースされた5曲では全てでソングライトに関与するなど、その関わりを強めています。

 彼女はThe Chainsmokersの曲以外でもソングライトを担うことがあり、代表作はDua Lipaの“New Rules”。ほかCharli XCXの”Boys”、Sigridの“High Five”などにも携わっています。

 Emily Warren自身がシンガーとしてHot 100にエントリーするのは、2016年のFrenshipとの“Capsize”に次いで2回目です。

 

☆80 Logic feat. Ryan Tedder – One Day

 LogicがOne RepulicのRyan Tedderを迎えたシングル、“One Day”が80位で登場しています。この曲は主にSpotifyで人気(今週34位)

 この2人は以前にも、One Republic feat. Logicの“Start Again”でもコラボしています。

 

△59 Ciara – Level Up

 Ciaraの“Level Up”が77位→59位と上昇。DLが先週よりも落ちた代わりに、YouTubeの再生数が伸びています(再生数24.6%増) Level Up Challengeが好評、ということでしょうか!

 この週にはFatman Scoop、Missy Elliottを迎えたリミックスもリリース。このリミックスも、順位上昇の理由の一つなのかもしれないです。

 このリミックスは、2005年にHot 100最高3位とヒットだった“Lose Control”の面々を再び集結させたものです。(ただし、”Lose Control”はCiaraメインの曲ではなく、Missy Elliottメインのもの)

 

△54 Queen Naija – Medicine

 気鋭のR&Bシンガー、Queen NaijaがデビューEPをリリース。アルバムチャートでは26位でした。

 そのEPからは2曲がHot 100に入りました。“Karma”が98位で再登場、”Medicine”が54位へと浮上しました。また、“Butterflies”は110位相当にランクイン。

 Queen Naijaは主にYouTubeApple Musicで人気。しかしSpotifyではあまり人気が無く、これらの曲は全て今週圏外でした。

 

△39 Jason Aldean feat. Miranda Lambert – Drowns the Whiskey

 カントリー界の人気者が共演したシングル、“Drowns the Whiskey”が39位へ浮上し、トップ40入り。

 Jason Aldeanのアルバム”Rearview Town”からのシングルは2曲連続でトップ40入りを果たしています。

 

△22 Kenny Chesney – Get Along

 カントリー界のベテラン、Kenny Chesneyがキャリア17枚目のアルバム“Songs for the Saints”をリリース。アルバムチャートではDrakeに及ばず2位。

 その効果でシングルの“Get Along”が22位まで浮上しました。彼にとってキャリアで3番目に高いHot 100順位です。(2曲でトップ20に入ったことがある。トップ10入りの経験は無し)

 

▽13 Taylor Swift – Delicate

 Taylor Swiftの“Delicate”が12位→13位と一つランクダウン。トップ10に接近も、わずかに手が届きません。

 この“Delicate”はラジオのポイントでは2位まで到達し、アルバム”reputation”の中では最もラジオで成功したシングルとなりました。(”Look~”はラジオ最高5位だった)

 ラジオの好調を活かし、Hot 100のトップ10に到達したいところですが、ここ数週ラジオが落ち始めてきたので、少し難しいかもしれないです。

 とはいえ、「尻すぼみシングル」が多かった”reputation”のシングルの中では唯一期待を上回った曲で、テイラーが最後に意地を見せたと言えそうです。

 

☆5 DJ Khaled feat. Justin Bieber, Chance The Rapper & Quavo – No Brainer

 DJ Khaledの豪華な新曲、“No Brainer”が5位デビュー。昨年の”I’m the One”からLil Wayne以外を「続投」しています。

 この曲はDL、ストリーミングが高いことに加え、ラジオでも既に大人気。今週ラジオのポイントが28位で、リリース直後の週の数字としては今年一番高いようです。

 このラジオ、ストリーミングの数字を今後もキープできれば“I’m the One”のような大ヒットになりそうです。

 この曲はDJ Khaledにとっては4曲目、Justin Bieberにとっては14曲目、Chance the Rapperにとっては2曲目のトップ10です。QuavoはMigosでの実績も合わせると9曲目のトップ10。

 

▽× Drake – Emotionless

 Drakeの”Emotionless”が今週圏外に。最初の週は8位で登場したものの、登場から5週目で圏外へ。アルバム全体のストリーミングが好調で、仮に最初はHot 100で高い順位で登場しても、「シングル」として成立する曲は数に限りがあるということを表していると思います。

 Drakeのアルバム、“Scorpion”からは既存シングル3つ( “God’s Plan”、”Nice For What”、”I’m Upset”)に加え、”In My Feelings”、“Nonstop”、”Don’t Matter To Me”、“Mob Ties”あたりが人気曲として定着しつつあります。

 この中にはシングルとしてラジオにかからなかった曲(”I’m Upset”*2や“Mob Ties”)もありますが、これらの曲は代わりにストリーミングサービスの有力プレイリスト(RapCaviarやHip-Hop A List)には入っています。

 現代では「シングル」を選定する手段として、ラジオ以外にもプレイリストが台頭してきていますが、それでも全部の曲をシングルには出来ないので、リリース当初にあった人気をあまりキープできない曲もある、というわけです。

 このように最初の順位の割に尻すぼみですぐチャートから外れてしまう曲が最近は増えているので、少し長い目でチャートを見ることが大切なのかもしれません。

 

▽× Nicky Jam & J Balvin - X

 今年の曲でYouTube再生数が世界一の曲、Nicky JamとJ Balvinの“X”が今週チャートから外れました。ピークは41位・チャート滞在21週と、ラテン曲としてはかなりのヒットでした! 世界的なラテンの隆盛がUSのチャートにも、それなりに反映されています。ただし、年間チャートトップ100に手が届くかは微妙です。

 この曲は今年の曲の中では最速でYouTube再生回数が10億に到達。最近ではDaddy Yankeeの“Dura”も10億に到達しました

 

☆おまけ

 以下の表は今年の曲で、年内にYouTubeの再生回数が10億に到達しそうな曲のリストです。

 現時点での再生数のペース(1日あたりの再生数)が続くとして、あと何日で10億再生に達するか?を表しています。(“In My Feelings”や“FEFE”はビデオがリリース直後で、今後もこのハイペースが続くかは微妙)

 次に10億に到達しそうな”Te Bote"、”El Farsante"、”Sin Pijama"はいずれもラテン系の曲で、YouTubeにおけるラテン系の強さが際立っています。

 Hot 100においても、ラテン系は主にYouTubeでのポイントが高い傾向にあります。

※データは8/7時点 (参考:YouTube - Most Viewed Music Videos Published in 2018

 

曲名 今の再生回数 1日平均再生 あと何日
Nicky Jam x J. Balvin - X (EQUIS) | Video Oficial | Prod. Afro Bros & Jeon 1,126,976,687 3,268,844  
Daddy Yankee - Dura (Video Oficial) 1,000,695,711 2,450,040  
Te Bote Remix - Casper, Nio García, Darell, Nicky Jam, Bad Bunny, Ozuna | Video Oficial 988,645,083 5,993,289 1.9
Ozuna x Romeo Santos - El Farsante Remix 876,875,223 3,011,531 40.9
Becky G, Natti Natasha - Sin Pijama (Official Video) 643,451,881 5,975,960 59.7
Maroon 5 - Girls Like You ft. Cardi B 536,200,096 7,713,388 60.1
Drake - In My Feelings 44,654,597 11,322,678 84.4
El Chombo - Dame Tu Cosita feat. Cutty Ranks (Official Video) [Ultra Music] 686,433,244 3,392,874 92.4
Cardi B, Bad Bunny & J Balvin - I Like It [Official Music Video] 377,666,126 6,361,581 97.8
Drake - God's Plan 761,738,724 2,118,153 112.5
6ix9ine, Nicki Minaj, Murda Beatz - “FEFE” (Official Music Video) 131,648,956 7,013,447 123.8
Vaina Loca - Ozuna x Manuel Turizo ( Video Oficial ) 194,331,090 5,568,628 144.7

  

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Drake – Can’t Take A Joke (🗻18位 /⏰4週)

99 Drake – Emotionless (🗻8位 /⏰4週)

95 Wiz Khalifa feat. Swae Lee – Hopeless Romantic (🗻72位 /⏰2週)

93 Billie Eilish – You Should See Me in a Crown (🗻93位 /⏰1週)

88 twenty one pilots - Jumpsuit (🗻50位 /⏰3週)

60 Chance the Rapper – I Might Need Security (🗻60位 /⏰1週)

47 Nicky Jam & J Balvin – X (🗻41位 /21週)

 

・アルバムチャートの上位に新登場した作品

※アルバムチャート(Billboard 200)で50位以上に新登場した作品です

 

2 Kenny Chesney – Songs For The Saints

8 Halestorm – Vicious

10 Daughtry – Cage To Rattle

11 Cody Jinks – Lifers

15 G Herbo & Southside – Swervo

26 Queen Naija – Queen Naija (EP)

28 Denzel Curry – TA13OO

29 Grateful Dead – Dave’s Picks Volume 27

41 Dave East – Karma 2

 

 先週のチャートとは違い、今週は新登場が多めです。トップ10には3つのアルバムが登場しています。批評家からの評価が高いDenzel Curryのデビュー作はアルバムチャート28位に登場。

 

来週以降の動向・プレイリストなど

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲を特集

 

Travis Scott – SICKO MODE

Travis Scott – STARGAZING

 来週のチャートの大本命・Travis Scottのアルバム。ほぼ全曲がHot 100に登場する見込み。上記2曲はトップ10デビューを果たす可能性も!

 

・YG feat. Jay 305 – Bulletproof

Mac Miller – Hurt Feelings

 Travis Scottに次ぐ規模のストリーミングを記録した2つのアルバム。彼らのアルバム曲も一部Hot 100に登場するかもしれません。

 

・Red Velvet – Bad Boy

 韓国のガールズグループ・Red VelvetがEPをリリース。そのうち“Bad Boy”の英語バージョンがiTunes下位に登場しましたが、Hot 100に入る可能性は無さそう。

 チャートに入るとしたら、シングルではなくアルバムチャートのほう可能性はありそうです。

 

・Kim Petras – Heart to Break

 ドイツのシンガー・Kim Petrasの“Heart to Break”がポップ系ラジオのランキング50位前後*3に登場。Hot 100入りはまだまだ遠いですが、ラジオの再生数がじわじわ伸びれば、いずれはHot 100に入れるかも???

 この曲は「ビルボードの評論家が選ぶ、2018前期ベストソング」の12位に入っています。いま最も期待されているポップシンガーと言ってもよいかもしれません

 

・プレイリスト

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

*1:Emily Warren Talks Working With The Chainsmokers, Singing on 'Paris' | Billboard より

*2:ウィキペディアではシングル扱いになっているものの、ラジオにかかった形跡があまり無い

*3:kworb.net のデータを参考にしている