今週チャートを支配したのはTravis Scott。圧倒的な成績でアルバムチャート1位を記録しただけでなく、アルバム全曲がHot 100に登場しました!ほか今週はプロデューサーのBlocBoy JBのプロデューサーとしてブレイクしたTay Keithなどについて触れています。Tay KeithはTravis Scottのアルバムにも参加しています。
↑はDJ Boothのインタビューを受けるTay Keith。 *1
☆今週のHot 100ハイライト☆
・Travis Scottが53.7万枚「相当」の売上を記録し、アルバム1位に!収録曲全てがHot 100入り。“SICKO MODE”・”STARGAZING”はトップ10入り
・BazziがCamila Cabelloを迎えた“Beautiful”が60位に登場
・“Boo’d Up”でブレイクしたElla Maiの新曲が79位で登場
・Travis Scottの影で多くの曲がHot 100から外れる。Foster the People、Kanye West、The Weeknd、“Look Alive”・“Freaky Friday”がチャート外に
・今週のトップ10
―1 Drake – In My Feelings
△2 Maroon 5 feat. Cardi B – Gilrs Like You
▽3 Cardi B, J Balvin & Bad Bunny – I Like It
▽5 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz – FEFE
―6 Post Malone – Better Now
―7 Juice WRLD – Lucid Dreams
☆8 Travis Scott – Stargazing
―9 Tyga feat. Offset – Taste
▽10 Ella Mai – Boo’d Up
1-100位の順位表は↓
曲の個別解説
☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降
☆87 Juice WRLD – Lean Wit Me
Juice WRLDの“Lean Wit Me”が87位で登場。自身5曲目のHot 100エントリー。彼はTravis Scottのアルバムの”No Bystanders”にも登場します。(feat.の表記は無し)
この曲は一応、アルバム“Goodbye & Good Riddance”の4曲目のシングル、という扱い*2になっていますが、そのほとんどがラジオであまりかかっていないので、シングルの体をなしているのは、ほぼ”Lucid Dreams”のみです。
この“Lean Wit Me”は、RapCaviar(Spotify)やHip-Hop A List(Apple Music)にも入っていないので、どこかで選ばれた「シングル」という認識なしに、リスナーがアルバムを聴いているうちに自然発生的に人気を得た曲、といえます。
最近はラジオであまりかからなくても、有力プレイリストに入ることでシングルの体をなすことがありますが、この曲はそのプレイリストにも入っていない、という点で珍しいです。
☆79 Ella Mai – Trip
“Boo’d Up”でブレイクを遂げたElla Maiの新曲、”Trip”が79位で登場。プロデューサーは“Boo’d Up”と同じく、恩師・DJ Mustard。
この曲は既にR&B / Hip-Hop系のラジオで人気が出始めています。Ella Maiはイギリス人ですが、DJ Mustardと契約を結び渡米し、成功を収めています。
☆76 H.E.R. feat. Bryson Tiller – Could’ve Been
R&Bシンガー、H.E.R.がEP“I Used to Know Her:The Prelude”をリリース。アルバムチャートで20位を記録しました。
収録曲のうち、Bryson Tillerを迎えた“Could’ve Been”が76位でHot 100に登場しています。キャリア3曲目のHot 100。
ちなみに“H.E.R. singer”で検索すると、ほかのシンガーの画像が多く出てきます。(○で囲ったのがH.E.R.の画像 約半分……)
☆60 Bazzi feat. Camila Cabello – Beautiful
今年“Mine”でブレイクを遂げたBazziの新シングル、“Beautiful”が60位で登場しました。Camila Cabelloを迎えたリミックスの効果でDLやストリーミングが伸びました。
Camila Cabelloは今まで9曲がHot 100入りしていますが、うち8曲が男性ボーカルとのコラボ曲です。(当てはまらないのは“Crying in the Club”のみ。”Never Be the Same”はトップ10入りの要因となったKane Brownリミックスを考慮)
そんな彼女の次シングルはSwae Leeを新たに迎えた“Real Friends”だそうです。
◇50 Travis Scott – Butterfly Effect
今週の1位アルバム、Travis Scottの“ASTROWORLD”は全曲がHot 100に登場。昨年ヒットし、既に22週チャート入りしていた”Butterfly Effect”も再登場しました。
既に22週チャート入りしていることから、ルール上50位以上にランクインする必要がありましたが、その基準をギリギリクリアしチャートに再登場しました。*3
△16 YG feat. 2 Chainz, Big Sean & Nicki Minaj – Big Bank
YGのアルバム“Stay Dangerous”がアルバムチャートで5位に登場。そのうち2曲がHot 100に入っています。”Handgun”が98位、そして“Big Bank”が16位に上昇しました。
YGはこの曲で“My Hitta”を越えて自身のキャリアピーク*4を更新しましたが、この成績にケチをつける人もいます。それは6ix9ine。
6ix9ineは以前、「YG???あいつ2004年ぐらいにヒット飛ばした昔の人間だろwww」とYGに挑発を仕掛けており、この”Big Bank”に関しても、
「こんな豪華な客演がいてこのチャート成績かよwwwもっと行くだろwww」と煽っています。
この“Big Bank”はゴールド認定を受けており、チャートも16位とそれなりに好成績を記録していますが、”FEFE”で3位を記録した6ix9ineにとっては弱く感じる成績だったのでしょうか??? 6ix9ineは至るところでビーフしまくっているので、どこまで本気かは分かりませんが……
今週の主役、Travis Scott。アルバムチャートを53.7万枚(相当)という圧倒的な成績で制し、収録曲の全てがHot 100に登場しました!ちなみに53.7万枚はDrakeの“Scorpion”に次いで今年2番目の規模。
53.7万枚の売上のうち、26.1万枚(相当)はストリーミングから、27万枚はセールスから、0.6万枚はシングルのDLから記録しています。
ここまでセールスが多いのは、自身の公式サイトでグッズと音源を組み合わせる戦略を行ったからです。他のミュージシャンは「チケットの値段割引」という形でCDや音源と組み合わせることが多いですが、Travis Scottはグッズ + そしてチケット購入の優先権などと共に音源を提供しています。
この「チケット付きCD」は、ストリーミングを苦手とするロック系のミュージシャンがアルバムチャートの成績を良くするために行うことが多く、ラッパーがこれをやるのは珍しいです。
(ラッパーはストリーミングをかなり得意とするため、セールスを伸ばさなくてもストリーミングのポイントによってアルバムチャートで有利に立つことができる)
アルバムの純セールス27万枚は、Dave Matthews Bandの28.5万枚に次いで、今年2番目に多い数字です。(Dave Matthews Bandもこの”バンドル”)
このアルバムはストリーミングの数字も莫大で、歴代で5番目に多い約3億4943万再生を記録しています。
1 Drake / Scorpion 7億4592万
2 Post Malone / Beerbongs & Bentleys 4億3130万
3 Drake / Scorpion (2週目) 3億9098万
4 Drake / More Life 3億8484万
5 Travis Scott / Astroworld 3億4943万
※特に断りが無い場合は、リリース最初の週の成績
この高いストリーミング数字により、アルバム全17曲がHot 100入り。“SICKO MODE”、”STARGAZING”の2曲はトップ10に入りました!アルバムの半数以上がトップ40圏内に入っています。
このアルバムの曲はfeat.の表記が無いですが、Drake・Frank Ocean・The Weeknd・Swae Lee・Quavoなどが客演として参加しています。
▽× Kanye West – All Mine
Kanye Westの“All Mine”が今週チャートから外れました。これでアルバム”ye”からの曲は全てチャートから外れました。
この曲のピークは11位・チャート滞在は9週とかなり短命ですが、近年のカニエは”Runaway”のチャート滞在が13週、“Bound 2”が6週のみ、 “Famous”が14週、などもともと短命シングルが多いので、「従来どおり」のチャートアクションといった印象です。
いつもアルバムで独自の世界観を見せるカニエの曲は、「シングル」という単位に解体するのが難しいのだと思われます。
▽× The Weeknd – Call Out My Name
The Weekndの“Call Out My Name”が今週圏外へ。ピーク4位、チャート滞在18週という成績でした。
リリース時は4位と大きく注目を集めましたが、次第に注目度が落ちていき、下位を彷徨う期間が長かったです。チャート滞在も18週と短めでした。
上記のカニエのように、「アルバムの一部のシングルがたまたまヒットした」のような状況ならばこの尻すぼみは気になりませんが、この曲はiTunesで割引されるなど、「シングルを売るための努力」が伺えたので、この尻すぼみはもしかしたら不本意かもしれません。
▽× Post Malone faet. Nicki Minaj – Ball For Me
Post Maloneの「影なるシングル」“Ball For Me”も今週圏外へ。ピークは16位、チャート滞在14週。
現在、Post Maloneは“Better Now”をメインのシングルとして運用していますが、ラップ系*5のラジオに対しては”Ball For Me“をシングルとして流しています。これはラップ系のリスナーは”Ball For Me”の方を好む、との予想でシングルを「区別」したのだと思われますが、こちらはそこまで大ヒットにはならず、14週と短めのチャート滞在となりました。
これからはラップ系のラジオでも“Better Now”をかけて、シングルを一本化する見込みです。
▽× Lil Dicky feat. Chris Brown – Freaky Friday
春頃に高い存在感を発揮した“Freaky Friday”が今週圏外へ。ピークは8位、チャート滞在は20週でした。
ストーリー仕立てのビデオ、Lil DickyがEd Sheeran・DJ Khaled・Kendall Jennerに化けるという設定が受けて大ヒットになったこの曲。イギリスでは1位を獲得するなど、リリース時は勢いがすごかったですが、やや失速気味でチャート滞在を終えました。
思ったよりもヒットしなかったのは意外とラジオでかからなかった点です。特にポップ系のラジオとかなり相性が良さそうな1曲でしたが、リズミック系で9位に到達した以外は際立った成績をラジオで残せませんでした。(ラジオ総合では最高48位)
▽× Foster The People – Sit Next To Me
今年久々にHot 100入りし、奮闘していたFoster The Peopleもチャートから外れました。ピークは42位と惜しくもトップ40に届かず。チャート滞在は20週でした。
彼らが再びチャートに返り咲いた要因はラジオでの幅広い支持。オルタナティブロック、ポップ、アダルトポップ、など幅広い系統でこの曲はかかっていました。
▽× BlocBoy JB feat. Drake – Look Alive
Drakeを迎え大ヒットした、BlocBoy JBの“Look Alive” がチャートから外れました。ピークは5位、チャート25週。
この曲がきっかけとなり、BlocBoy JBの名前を客演で見る機会が増えたように感じますが、それ以上に仕事が増えていると感じたのは、この曲のプロデューサー・Tay Keithです。
この曲のブレイク以降に、Drakeの“Nonstop”、Travis Scottの”Sicko Mode”のプロデュースを担当し、複数のトップ10曲に寄与しています!他にもLil Yachty、Wiz Khalifaなどの曲のプロデューサーも務めています。
この曲のヒットにより、BlocBoy JB本人だけでなく、プロデューサーのTay Keith、さらにはシュートダンスまでもが大きく飛躍。様々なムーブメントを起こした曲として、今年を象徴する1曲かと思います。
ちなみに、この曲は「年間」のトップ10に入ると個人的に予想していましたが、このタイミングでチャートから外れてしまったので、それは厳しくなったと思います。代わりに“In My Feelings”が年間トップ10に入りそうです。*6
これらの曲以外にもImagine Dragonsの“Whatever It Takes”、Luke Combsの”One Number Away”、DrakeとMichael Jacksonの“Don’t Matter To Me”などがチャートから外れました。
今週チャートから外れた曲 (21曲)
【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】
100 Mitchell Tenpenny – Drunk Me (🗻100位 /⏰1週)
98 Queen Naija – Karma (🗻98位 /⏰1週)
97 Martin Garrix feat. Khalid – Ocean (🗻78位 /⏰5週)
96 Kanye West – All Mine (🗻11位 /⏰9週)
95 The Weeknd – Call Out My Name (🗻4位 /⏰18週)
93 Eric Church – Desperate Man (🗻71位 /⏰3週)
91 Migos – Narcos (🗻36位 /⏰12週)
90 NF – Lie (🗻90位 /⏰2週)
89 Post Malone feat. Nicki Minaj – Ball For Me (🗻16位 /⏰14週)
88 Khalid, Ty Dolla $ign & 6LACK – OTW (🗻57位 /⏰14週)
87 The Chainsmokers feat. Emily Warren – Side Effects (🗻87位 /⏰1週)
84 A$AP Rocky feat. Skepta – Praise the Lord (🗻45位 /⏰8週)
83 Lil Dicky feat. Chris Brown – Freaky Friday (🗻8位 /⏰20週)
80 Logic feat. Ryan Tedder – One Day (🗻80位 /⏰1週)
76 TK Kravitz feat. Jacquees – Ocean (🗻76位 /⏰3週)
66 Drake feat. Michael Jackson – Don’t Mattaer To Me (🗻9位 /⏰5週)
49 Luke Combs – One Number Away (🗻34位 /⏰20週)
48 Foster the People – Sit Next To Me (🗻42位 /⏰20週)
47 Demi Lovato – Sober (🗻47位 /⏰3週)
40 BlocBoy JB feat. Drake – Look Alive (🗻5位 /⏰25週)
37 Imagine Dragons – Whatever It Takes (🗻12位 /⏰27週)
・アルバムチャートに新登場した作品
1 Travis Scott – Astroworld
3 Mac Miller – Swimming
5 YG – Stay Dangerous
11 Moneybagg Yo – Bet On Me
19 VA – Now That’s What I Call 67
20 H.E.R. – I Used To Know Her: The Prelude (EP)
108 Phil Wickham – Living Hope
116 Lucero – Among The Ghosts
144 Iggy Azalea – Survive The Summer (EP)
168 lovelytheband – finding it hard to smile
来週以降の動向・プレイリストなど
・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲を特集
・Nicki Minaj – Barbie Dreams
来週のチャートで一番大きなリリースの、Nicki Minajのアルバム。その中で抜群の注目を集める“Barbie Dreams”がHot 100の上位に登場見込み。
アルバム1位の座をかけて、2週目のTravis Scottと熾烈な争いを繰り広げています。ビルボードの中間予想では「両方とも16万枚前後で互角」とのこと。果たして……
・Trippie Redd – Taling A Walk
この週リリースされたTrippie Reddのアルバムにも注目が集まっています。Apple MusicとSpotifyの両方でトップ10入りを果たした“Taking A Walk”がHot 100に登場見込み
・(G)I-Dle – Hann (Alone)
iTunes下位(90位前後)に登場。USのiTunesチャートにK-Pop勢が入ることがかなり増えてきています。ただし、iTunesのこの順位ではHot 100に入る可能性はほぼ無いです。
・プレイリスト
・ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)