チャート・マニア・ラボ (CML)

音楽チャート/ポップス研究家 (自称) 未来のチャートマニア・音楽マニアがニヤッとする記事を作ることが目標! 引用、コメントなどお待ちしております。

Apple Musicがチャートを拡大! グローバルチャートなどを追加 見どころは?

 

f:id:djk2:20180910232001j:plain

  Apple Musicがチャート機能を強化し、グローバルチャートなどを新たに追加したので、見どころ等について少し説明しようと思います!

 

 

 

 Apple Musicは先週の金曜日(9/7)ごろ、新たなチャートを複数追加しました。今までは自分の住んでいる地域以外のランキングは基本的に閲覧することが出来ませんでしたが、このアップデートによって115の国と地域+グローバルチャート(全世界のApple Musicユーザーの合算)を見ることが出来るようになりました。

 「見つける」のタブ→ランキング→デイリートップ100の順番にタップするとこのランキングを見ることができます。

 それぞれのチャートはプレイリスト形式で、太平洋標準時0時(=日本時間の午後4時)にリリースされます。ランキングは1日ごとに更新されます。

 ちなみに、日曜の午後4時の更新で新リリース(=金曜リリース)がチャートに反映されているようです。(この日の更新が一番変化が大きいと思われる)

↑ 次の週の更新では土曜日のランキングで新リリースが反映されていました。Spotifyのランキング更新がおよそ5時~7時なので、Apple Musicの土曜日のランキングを見ることで、いち早く新曲のストリーミング動向をチェックできます。

 

 このランキングは現在iOSのユーザーのみ公開中で、Androidのユーザーはまだこのランキングを閲覧できないようです。

  この件に関して、Rolling Stoneは「近年重要性が増しているストリーミングに新しいチャートが誕生した」と述べています。*1

 

・このチャートの新しい点は何か

 このチャートにおいては新しい点が3つあると思います。まず、公式に他国のランキングを見ることができるようになったこと。そして、グローバルチャートが出来たことです。これが一番大きな変化なのではないでしょうか。あと一つは複数バージョンが合算して計算されたことです。これはすごく地味な変化点です。

 Apple Musicのアプリ内では今まで他国のランキングを見ることができませんでした。ランキングを積極的に公開し、他国の流行も取り入れやすいSpotifyとは違って、今までは他国の動向が表向きに分からなかったのですが、これでApple Musicでも他国の動向を追いやすくなりました。

 ちなみに「公式」に見ることができるようになった、と書いたのは実は今までもチャートマニア御用達サイト・Kworb.comで海外のランキングを見ることができたからです!こちらのランキングは各国のランキング200位まで閲覧することができます。また、アプリ内ではわからないアルバムのランキングも掲載されています。

 

 あとは超絶非・効率的ですが、他国の人がアプリ内のランキングをスクショしてSNSに上げるのをひたすら待つという方法も一応あります(笑)私はKworb.comを知る前はこの方法を取るしかありませんでした。

 また、Apple Musicは多くの国で使用可能なので、Spotifyのランキングでは見ることのできない国の動向も追うことが可能です。比較的規模の大きい国では韓国、ロシア、インドあたりでしょうか。

 逆にSpotifyのチャートでは表示されている再生数はApple Musicのランキングでは表示されません。また、Spotifyのランキングと違ってApple Musicのランキングは日時をさかのぼって過去のデータを見ることができません。過去のデータを参照したい人は、逐次ランキングをどこかにメモしておく必要があります。

 

 そして、一番の変化だと思うのが「グローバルチャート」の登場です。Apple Musicのチャートは再生数 を出していないので、世界全体の再生数を合算したら何の曲が人気か?ということが全く分からなかったのですが、このチャートの登場で「Apple Music全体で何が人気か?」ということが分かるようになりました。

 このチャートは、Spotifyのグローバルチャートと合わせて、「世界的に何が流行しているのか」という重要な参考材料になると思います。また、Spotifyのチャートと比較して、それぞれの特徴をあぶり出すのも面白いと思います。

 

 最後に、地味な変化「複数バージョンが一つにまとまる」についてです。これは同じ曲が複数バージョンでチャート入りしている場合、それを1曲として集計するということです。例えば9/10のデータで、BTSの”FAKE LOVE”は日本のランキングで2つのバージョンがランクインしています。Tear轉(黒いジャケット)に収録されたバージョンが45位、Answer結(ピンクのジャケット)に収録されたバージョンが93位と別々にランクインしていますが、このプレイリスト形式のランキングでは16位にランクインしています。

 

 

・グローバルチャートの傾向

 

 今回の更新での一番大きな変化、グローバルチャートを調査しました。データは9/9(この週のリリースが反映された日)のものです。曲の隣の「○」はそれぞれの国のトップ100にその曲が入っていたかどうか、を指しています。 

 ちなみになぜこの国のセレクトなのか、というとUS、UK、ドイツ、日本は音楽市場の規模が大きいという理由、韓国とタイはアプリ内で優先的に見やすい位置に配置されていたという理由です。

 日本と他国のチャートを比較する際は、チャートの知名度もあってかよくアメリカが持ち出される印象ですが、ある程度似た傾向を持つアジア各国との比較をすれば「日本」の特徴がより浮き出ると私は考えているので、そういった考えからも韓国とタイを調べています。

 

 

      US UK 日本 韓国 タイ ドイツ
1 Travis Scott SICKO MODE      
2 Eminem feat. Joyner Lucas Lucky You      
3 Eminem The Ringer      
4 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz FEFE      
5 Drake In My Feelings
6 Eminem feat. Royce da 5'9 Not Alike      
7 Drake Nonstop        
8 Eminem Greatest      
9 Juice WRLD Lucid Dreams      
10 Eminem Fall      
11 Tyga feat. Offset Taste      
12 Eminem Kamikaze      
13 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin I Like It      
14 Lil Baby & Drake Yes Indeed          
15 Ariana Grande God is a woman
16 Travis Scott STARGAZING      
17 Post Malone Better Now    
18 Travis Scott Yosemite          
19 Eminem Normal      
20 Benny Blanco, Halsey & Khalid Eastside  
21 Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You  
22 Ella Mai Trip          
23 DJ Khaled feat. Justin Bieber, Chance the Rapper & Quavo No Brainer
24 Eminem Stepping Stone      
25 Ariana Grande breathin
26 Drake God's Plan        
27 Mac Miller Self Care          
28 XXXTENTACION SAD!        
29 YG feat. 2 Chainz, Nicki Minaj & Big Sean Big Bank          
30 Mac Miller Hurt Feelings          
31 Kanye West & Lil Pump I Love It          
32 Sheck Was Mo Bamba          
33 Paul Rosenberg Paul (Skit)        
34 Ariana Grande no tears left to cry
35 Calvin Harris & Sam Smith Promises    
36 Mac Miller feat. Miguel Weekend          
37 Young Thug feat. Lil Baby & Gunna Chanel (Go Get It)          
38 Drake Nice For What        
39 Drake Mob Ties          
40 Eminem feat. Jessie Reyez Good Guy        
41 Eminem Venom        
42 Marshmello & Bastille Happier  
43 YoungBoy Never Broke Again feat. Kevin Gates and Quando Rondo I Am Who They Say I AM          
44 Eminem & Jessie Reyez Nice Guy        
45 Travis Scott CAN'T SAY          
46 5 Seconds of Summer Youngblood      
47 6ix9ine feat. Anuel AA BEBE        
48 Drake I'm Upset          
49 Ella Mai Boo'd Up        
50 Post Malone feat. Ty Dolla $ign Psycho      
51 XXXTENTACION Moonlight          
52 Calvin Harris & Dua Lipa One Kiss    
53 Eminem Em Calls Paul (Skit)        
54 Loud Luxury feat. Brando Body        
55 Travis Scott Butterfly Effect          
56 Tiesto & Dzeko feat. Preme & Post Malone Jackie Chan        
57 Post Malone feat. 21 Savage rockstar        
58 Quavo W O R K I N M E          
59 Mac Miller Come Back to Earth          
60 Travis Scott R.I.P. SCREW          
61 Dynoro & Gigi D'Agostino In My Mind        
62 Travis Scott NO BYSTANDERS          
63 Mac Miller Donald Trump          
64 Mac Miller What's the Use?          
65 Travis Scott WAKE UP          
66 Khalid & Normani Love Lies        
67 A$AP Rocky feat. Skepta Praise the Lord          
68 Travis Scott STOP TRYING TO BE GOD          
69 Clean Bandit feat. Demi Lovato Solo  
70 The Carters APESHIT          
71 Travis Scott 5% TINT          
72 Juice WRLD All Girls Are the Same          
73 Silk City & Dua Lipa Electricity    
74 Ed Sheeran Shape of You    
75 Travis Scott WHO? WHAT!          
76 Travis Scott CAROUSEL          
77 Kanye West All Mine          
78 Juice WRLD Lean Wit Me          
79 Nio Garcia, Casper Magico & Bad Bunny feat. Darell, Ozuna & Nicky Jam Te Bote (Remix)          
80 Drake & Michael Jackson Don't Matter To Me          
81 Russ The Flute Song          
82 BlocBoy JB feat. Drake Look Alive          
83 Panic! At the Disco High Hopes        
84 Jonas Blue feat. Jack & Jack Rise    
85 Trippie Redd Taking A Walk          
86 XXXTENTACION changes          
87 XXXTENTACION Jocelyn Flores          
88 Travis Scott NC-17          
89 Drake Can't Take A Joke          
90 YoungBoy Never Broke Again feat, Quando Rondo This for the          
91 Selena Gomez Back to You  
92 Travis Scott ASTROTHUNDER          
93 XXXTENTACION feat. Trippie Redd F**k Love          
94 Young Dolph feat. Key Glock Major          
95 Post Malone feat. Nicki Minaj Ball For Me          
96 Post Malone I Fall Apart          
97 Travis Scott HOUSTONFORNICATION          
98 Imagine Dragons Natural            
99 Bazzi feat. Camila Cabello Beautiful        
100 Dennis Lloyd Nevermind        
    ランクイン数 84 52 13 16 12 36

 赤背景:調査した6カ国全てでトップ100入りしている曲

青背景:アメリカのみでランクインしている曲

 

 まず、このグローバルチャートを見て感じたことは「アメリカが濃い」ということです。アメリカ1国でしかトップ100に入っていない曲でも、グローバルチャートにかなり入っています。グローバルトップ100のうち、46曲はアメリカでしかトップ100入りしていないようです。"Yes Indeed"や"YOSEMITE"などはアメリカでしかランクインしていないのに、グローバルチャートで高い順位を記録しています。

 次いでイギリス、ドイツがぼちぼちの数共通していて、アジア圏はあまりグローバルチャートと共通点が少ない、といった印象です。

 アメリカの影響でグローバルチャートにかなりラップ曲が多いので、「その国がラップを聞くかどうか」でグローバルチャートとどこまで似通うか、が決まるという印象があります。

 

 では、なぜここまでApple Musicのグローバルチャートでアメリカの色が濃く表れているかを考えていきます。まず1つ目は、ユーザー数が影響していると思われます。

 今年のはじめの時点で全世界のSpotify有料会員は約7000万、Apple Musicは全世界で約3800万と倍に近い差があるのですが、USに限ると有料会員数は逆にApple Music > Spotifyと言われているので、Apple MusicはSpotifyと比べるとアメリカの占める割合がかなり大きいと推測できます。*2

※有料会員がApple Music>Spotifyというのは正式な報道ではなく、それまでの伸び率から推測したものです。

 

 そして、サービスの特徴も影響しているのではないか、と私は考えました。同様の調査(グローバルトップ100とその国のトップ100は何曲同じか?)をSpotifyで行ったところ、以下のようになりました。データは上記のものと同じ日を扱っていると思われる9/7のものです。

62 66 21 20 49
US UK 日本 タイ ドイツ

 

 Apple Musicのケースと比べるとアメリカの比率が下がっている一方、それ以外の国ではグローバルチャートと共通の曲が増加しています。特にイギリスはアメリカよりもグローバルチャートに近い、ということが分かります。

 これは純粋にSpotifyではアメリカの割合が低い、というだけではなくサービスの特徴が表れていると思います。

 Spotifyではプレイリスト文化が発展しています。このことから、世界で流行している音楽を取り入れやすいという面があります。それとなくプレイリストを聴いているだけで、そこに入っているグローバルヒットが自然と耳に入るということです。

 アメリカは世界とは一味違う音楽視聴傾向があり、ヨーロッパ等で流行しているポップスがあまり流入しない傾向があるのですが、Spotifyではそのような曲でもランキング上位に入る傾向があります 

例:Silk City & Dua Lipa - Electricity → Spotify:25位、Apple Music:158位

 :Calvin Harris & Sam Smith - Promises → Spotify:20位。Apple Music:163位

(いずれもUSの順位、執筆時のデータ Apple MusicはKworb.Com 参照)

 

 このような傾向から、Spotifyでは各国にヒットが伝搬し、流行の傾向が似ていく印象があります。

 それと比べるとApple Musicはそのように他国のヒットを伝える手段があまり多くないので、自国の視聴傾向がそのままランキングに反映される、という傾向があるように思います。その傾向がランキングで表れたように思いました。

 この新しく出来た、海外の動向が分かるプレイリストがランキングに影響を与えることはあるのか?ということが今後の注目テーマでしょうか!

 

☆おまけ 各国の1位

 上記の表で各国のチャートを調べた時点での1位です。

アメリカ:Travis Scott - SICKO MODE

イギリス:benny blanco, Halsey & Khalid - Eastside

日本:Da Pump - U.S.A.

韓国:Shaun - Way Back Home

タイ:BLACKPINK - DDU-DU DDU-DU

ドイツ:Dynoro & Gigi D'Agostino - In My Mind

 

*1:また、Digital Music Newsというサイトはこれを期に”Chart Wars"が起こるだろう!と考察しています。

Chart Wars: Apple Music Unveils 116 Global Music Charts

 この記事で”Do we need Billboard anymore?"と大風呂敷を広げていますが、これに関しては言い過ぎという印象です。アメリカはストリーミングサービスが多様なうえ、ラジオが現在もかなり影響力を持っている。さらに、それぞれの曲の好みの傾向がかなり違うため、「全体的に」どの曲が人気か?という指標はまだまだ重要だと個人的には考えています。他にもHot 100の長所は多いと私は考えています。ただし、US以外の国ではSpotifyのランキングとシングルチャートがかなり似通っている場合もあり、ストリーミングチャートとの「差別化」が必要な国がある、というのもまた事実だと思います。 このDigital Music Newsというサイト、着眼点は面白いこともあるのですが、やや極論に走ることもあるので読む時は注意が必要ですね。 この記事自体は正直微妙な部分もありますが、この記事を起点に新たなアイデアを浮かべる、という点では良いと感じたので、注釈の形でリンクを貼っておきました

*2:※それぞれの有料会員数はStaticsのデータを参照しています。

• Apple Music subscribers 2018 | Statistic

• Spotify users - subscribers in 2018 | Statista