チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 9/22 見どころ 【Usherを超えた「最も支配的」なDrake / 肩幅I Love It】

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 今週のテーマは2004年のUsherを超えたDrake、不思議なビデオのKanye West+Lil Pumpの”I Love It"ですかね! *1

 

☆今週のHot 100 ハイライト

・KanyeとLil Pumpの“I Love It”が6位デビュー

・“In My Feelings”が10週目の1位。これでDrakeは2018年の1位滞在週数を29まで伸ばし、2004年のUsher(28週)を抜いた

・MGKによるEminemへの反撃曲“Rap Devil”は13位で登場

Mac Millerの訃報を受けて3曲がHot 100入り

・アルバム1位はPaul McCartney

 

・今週のトップ10

―1 Drake – In My Feelings

-2 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

―3 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It

△4 Post Malone – Better Now

△5 Juice WRLD – Lucid Dreams 

☆6 Kanye West & Lil Pump – I Love It 

▽7 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz – FEFE

△8 Travis Scott – SICKO MODE

△9 Tyga feat. Offset – Taste

△10 Khalid & Normani – Love Lies 

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

◇99 Khalid, Ty Dolla $ign & 6LACK – OTW

 粘りの1曲、“OTW”。99位で再登場。これで3回目の再登場です。アルバムリリースによって特定のアーティストの曲がHot 100に大量登場すると、この曲はよくチャートから外れてしまうのですが、それでも粘り強く復活します。

 

☆96 Silk City & Dua Lipa – Electricity

 Mark RonsonとDiploのユニット、Silk CityがDua Lipaを迎えたシングル、“Electricity”が96位で登場。

 この曲は主にSpotifyで人気。他にはダウンロードなどでポイントを得ています。今後Hot 100で順位を伸ばせるかどうかは、ポップ系ラジオで人気を得られるかにかかっていると思います。

 この曲にはThe xxのRomyがソングライターとして参加。また、Florence Welchもこの曲のソングライターとして参加している、との噂がありますがThe Timesがこれを否定している、とビルボードは報じています。(Geniusなど、ソースによってFlorence Welchが載っていることもあります。) 

Mark Ronson Talks New Silk City Song 'Electricity' with Dua Lipa | Billboard

 

 “Electricity”はDua Lipaの昨年のアルバムのリイシュー、”Dua Lipa Complete The Complete Edition”に収録される予定です。このリイシューは10/18にリリース予定です。

 

☆95 Dan + Shay – Speechless

 カントリーデュオ、Dan + Shayのシングル“Speechless”が95位で登場。他のカントリー曲と同様にラジオで強さを発揮しているほか、この曲はカントリー曲としては比較的ストリーミングでも人気を得ています。(カントリー曲はストリーミングを苦手とするケースが多い)

 彼らの前シングル、“Tequila”は現在ロングヒット中。多くのカントリー曲は、カントリー系以外のラジオではほぼかからないのですが、この曲は他の系統にも人気が飛び火し、それによってロングヒットに。現在アダルトポップ系ラジオで好調です!(Hot 100では37位)

 

☆94 Ozuna & Manuel Turizo – Vaina Loca

 OzunaとManuel Turizoのシングル“Vaina Loca”が94位で登場。ラテン系ラジオや、YouTubeで好調の1曲です。

 客演のManuel Turizo(Manuel Tと表記されることも)はHot 100初登場。2000年生まれ、18歳のコロンビア出身シンガーです。

 

△45 Nicki Minaj – Barbie Dreams

 Nicki Minajの“Barbie Dreams”がビデオ効果で再浮上。63位→45位と順位を上げています。ビデオは先週の月曜日(9/10)に公開され、アメリカで今週19番目に多い再生数を記録しています。

 ビデオは大きく数字を伸ばしましたが、SpotifyApple Musicの両方で100位圏外など、ほかのストリーミングでは不調。ラジオも伸び悩んでいて、今後もこの順位をキープできるかは怪しいです。

 

△44 Lauren Daigle – You Say

 クリスチャン系のシンガーのLauren Daigleがアルバム“Look Up Child”をリリース。キャリアハイのアルバム3位を記録しています。

 先行シングルの“You Say”がこのタイミングでダウンロードを伸ばしてHot 100で72位→44位と順位を伸ばしています。

 元々彼女が人気のクリスチャン系ラジオのほか、なぜかラテン系ラジオでも少しかかっているようです。

 

 今週のアルバム1位はPaul McCartney!ソロでは1982年以来、36年以来のアルバム1位獲得となりました! (The Beatles名義だと2000年に”1“がアルバム1位を獲得している)

 Paul McCartneyが最初にソロでアルバム1位を獲得したのは1970年のこと。彼のキャリアの長さを物語っています。最初のアルバム1位~直近のアルバム1位の期間が最も空いているのはBarbra Streisandで、Paul McCartneyはそれに次いでその期間が長いです。(下記を参照してください)

 

Barbra Streisand 最初のアルバム1位:People (1964年) ~ 直近のアルバム1位:Encore Movie Partners Sing Broadway (2016年) =51年と9ヶ月20日の「ギャップ」

 

Paul McCartney 最初のアルバム1位:McCartney (1970年) ~ 直近のアルバム1位:Egypt Station (2018年) =48年と3ヶ月16日の「ギャップ」

 

 Paul McCartneyはチケットの権利にCDを絡めた いわゆる「チケット付きCD」(=バンドル)で数字を伸ばしました。今週アルバムチャートのトップ10に新登場したアルバム4つ(Paul McCartney、Lauren Daigle、Russ、$uicideboy$)は全員この「チケット付きCD」によって数字を伸ばしたとビルボードは報じています。

 このチケット付きCDの「バンドル」、むしろやらないアーティストのほうが少数派になっていくのかもしれませんね……!

 

△35 Marshmello & Bastille – Happier

 MarshmelloとBastilleの“Happier”が35位に浮上!好調をキープしています。Bastilleは”Pompeii”以来のトップ40です。

 Marshmelloは“Silence”以降5シングル連続でトップ40入りを果たしています。

“Silence” / Khalid – 30位

“Wolves” / Selena Gomez – 20位

“Everyday” / Logic – 29位

“FRIENDS” / Anne-Marie – 11位

“Happier” / Bastille – 35位

 

 この曲は主にSpotifyで絶好調。今週11位で、ラップ以外の曲では最も順位が高いです。ラジオでも急浮上中で今後も好調をキープしそうです。いずれトップ10にも手が届くか!?

 

☆33 Mac Miller – Self Care

 Mac Millerの訃報を受けて、彼の楽曲のストリーミングやDLが伸びました。特に約1ヶ月前にリリースされたアルバム“Swimming”は注目を集め、アルバムチャートで71位→6位と浮上しました。

 Hot 100には3曲が登場しました。“Self Care”が33位、”Hurt Feelings”が70位、”Come Back to Earth”が91位にエントリーしました。また、101位~125位相当の曲を扱うBubbling Underチャートには3曲が入りました。(”2009”・”Ladders”・“What’s the Use”)

※これらの計6曲はすべて直近のアルバム“Swimming”の収録曲です。

 

※今週のアルバムチャートに入ったMac Millerの作品

6 Swimming 

26 Best Day Ever (新)

32 GO:OD AM (再)

49 Blue Slide Park (再)

50 The Divine Feminine (再)

59 Watching Movies With The Sound Off (新)

106 Macadelic (新)

 

 

△15 Imagine Dragons – Natural

 最近はトップ10の動きが少ないという印象がありますが、11位以下には虎視眈々とトップ10の座を狙う曲がいくつかあります。

 まずは5 Seconds of Summerの“Youngblood”。この曲は今週11位につけていて、トップ10入りが間近です。ポップ系を中心にラジオで人気を得ています。彼らにとって初のトップ10入りを成し遂げ、再ブレイクなるか?既に”Amnesia”(16位)を越えてキャリアピークは更新しています。

 次にトップ10に近いのはImagine Dragonsの“Natural”です。これまでのシングルと同様に、ラジオで盤石の強さを発揮しており着実にトップ10に近づいています。この曲はラジオ以外に、DLでも強いです。(今週DL2位)

 ほかシングル化されたDrakeの“Nonstop”(今週17位)、ポップ系ラジオの数字を大きく伸ばしているSelena Gomezの”Back to You”(今週19位)、R&Bヒップホップ系ラジオやApple Musicで強いElla Maiの“Trip”(今週23位) あたりがネクスト・トップ10の候補でしょうか。

 

 

☆13 Machine Gun Kelly – Rap Devil

 MGKによるEminemへのアンサー(ディスに対する返答)曲、“Rap Devil”が13位に登場!今週最もダウンロードを集めています。(36,000)また、YouTubeでも今週2位の1810万再生を記録し、人気です。

 MGKは4位まで到達したCamila Cabelloとの“Bad Things”をはじめとして、今まではHailee Steinfeldとの”At My Best”、Bebe Rexha・X Ambassadorsとの“Home”などポップ系アクトとのコラボでヒットを飛ばしてきましたが、ラップ成分の強い曲でのHot 100エントリーは久しぶり。(2012年のWaka Flocka Flameとの”Wild Boy”=98位以来)。 

 客演無しのソロでは初のHot 100入りです。

 

※“Home”で共演したBebe Rexhaは、Eminemとも仕事をしたことがあります。(”The Monster”のソングライト) 彼女は、現在絶賛対立中の2人、Nicki Minaj、Cardi Bの両方とも仕事をしたことがあり、かつての仕事仲間同士?のビーフが相次いでいます

 

△6 Kanye West & Lil Pump – I Love It

 Kanye WestとLil Pumpの“I Love It”が6位に登場!YouTubeSpotifyで今週再生数1位になるなど、圧倒的なストリーミングがヒットの理由です。

 Kanye Westにとっては歴代17曲目の、Lil Pumpにとっては“Gucci Gang”に次いで2曲目のトップ10。

 “Gucci Gang”(2:04)と同様に、この曲も2:08とかなり短めの1曲です。"Gucci Gang"の時よりもアメリカ以外でのヒット度が上がっている印象です。(最近この”I Love It"はイギリスでもSpotifyの首位に立った)

 

※先週紹介したRonny Jがこの曲のプロデューサーを務めています。

 

―1 Drake – In My Feelings

 Drakeの“In My Feelings”が今週も首位をキープ。Drakeはこれで2018年の通算1位獲得週数を29週まで伸ばして、2004年のUsher(28週)を抜きました!2018年のDrakeは歴代の誰よりもHot 100を支配していた、ということが言えます。

 

1 Drake – 29週(2018)

2 Usher – 28週 (2004)

3 The Black Eyed Peas – 26週 (2009)

 

 またこの“In My Feelings”は今週で10週目の1位に。10週以上の1位はかなりレアなのですが、Drakeは1つの年に2曲もの10週以上1位を支配した曲を生み出しました。

 10週以上1位を支配した曲を同じ年に2曲生み出したのは2009年のThe Black Eyed Peas(“Boom Boom Pow”=12週、”I Gotta Feeling”=14週)に次いで歴代で2人目の偉業です。

 また、Drakeは2016年の“One Dance”と合わせて10週以上1位を支配した曲を通算で3曲生み出しており、Boyz Ⅱ Men(”End of the Road”=13週、”I’ll Make Love to You”=14週、”One Sweet Day”=16週)と並んで、これも歴代最多です。

 Boyz Ⅱ Menはポップ~R&Bと複数のラジオ系統で人気を得たことが1位長期支配の理由と考察されることが多いですが、一方Drakeはストリーミングの高さが首位に立った主な理由。Drakeは今年の2曲ではラジオで首位に立っておらず、時代の違いを感じます。

 かつてはHot 100を支配するためにはラジオでの活躍が必要不可欠でしたが、今は視聴手段の拡大でラジオを支配せずとも、Hot 100で首位を取れるようになったということですね

 

※このように歴代にまたがる大きな記録が樹立された場合は、それぞれの時代のチャートの違いなどが分かると面白いです。

 

▽× Eminem – Normal

 先週はSkitを除くアルバム全11曲がHot 100に登場したEminem。今週はそのうち6曲がHot 100に残り、ほか5曲がHot 100から外れました。

 リリースされた最初の週は大きな注目が集まり、アルバム全体がストリーミングされますが、2週目以降は次第に淘汰され、人気曲 / 不人気曲で差がついてきます。さらに、毎週多くの曲がリリースされていくので、次第に興味も新しい曲に移っていきます。

 このように、アルバムリリース時にはストリーミングで大人気だったアルバムでもシングルを選定しておかないと、人気が落ちていってしまうのですが、まだEminemのこのアルバムからはシングルが選定されていません!

 このアルバムから何をシングルに選ぶのか?または、MGKとのビーフで話題作りをしておけば自然とアルバムに注目が集まる、という考えもあるのでしょうか? (MGKへのアンサー曲をシングルにする可能性もありますかね)

 

 

今週チャートから外れた曲 (9曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Childish Gambino – Summertime Magic (🗻44位 /⏰5週)

96 G-Eazy feat. Yo Gotti & YBN Nahmir – 1942 (🗻70位 /⏰8週)

90 Young Thug feat. Gunna & Lil Baby – Chanel (Go Get It) (🗻78位 /⏰3週)

87 YoungBoy Never Broke Again feat. Kevin Gates & Quando Rondo – I Am Who They Say I Am (🗻69位 /⏰2週)

67 Eminem feat. Jessie Reyez – Good Guy (🗻67位 /⏰1週)

65 Eminem & Jessie Reyez – Nice Guy (🗻65位 /⏰1週)

49 Eminem – Venom (🗻49位 /⏰1週)

42 Eminem – Stepping Stone (🗻42位 /⏰1週)

39 Eminem – Normal (🗻39位 /⏰1週)

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Paul McCartney – Egypt Station (ソロで36年ぶり1位+チケット付きCD)

3 Lauren Daigle – Look Up Child (チケット付きCD)

4 Russ – Zoo (チケット付きCD)

9 $uicideBoy$ - I Want To Die In New Orleans (チケット付きCD)

16 Clutch – Book Of Bad Decisions

21 YBN Nahmir, YBN Almighty Jay & YBN Cordae – YBN: The Mixtape

26 Mac Miller – Best Day Ever

43 Lenny Kravitz – Raise Vibration

56 St. Paul & The Broken Bones – Young Sick Camellia

59 Mac Miller – Watching Movies With The Sound Off

60 Hozier – Nina Cried Power (EP)

70 Paul Simon – In The Blue Light

71 Upchurch – Supernatural

88 Grateful Dead – Pacific Northwest ’73-’74: The Complete Collection

97 YoungBoy Never Broke Again – 4Loyalty (EP)

106 Mac Miller – Macadelic

127 Led Zeppelin – The Song Remains The Same (Soundtrack)

145 Tamia – Passion Like Fire

 

 

来週以降の動向など

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Lil Uzi Vert – New Patek

 Lil Uzi Vertが火曜日(9/18)に新曲“New Patek”をリリース。直近のデータではSpotify2位、Apple Music1位とストリーミングで圧倒的な成績を残しています。4日分しか集計されない週途中のリリースながらも、来週のHot 100で上位に登場しそうです。

 

・Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard

 ストリーミングで圧倒的な成績を残している1曲。現在Apple Musicで2位、Spotifyで19位。“New Patek”同様、来週Hot 100で上位に入りそうです。

 

・Joji – SLOW DANCING IN THE DARK

 日系R&Bシンガー、Jojiの新曲が脚光を浴びています。特にSpotifyでは好調で、リリース以来30位前後を推移しています。来週Hot 100入りの可能性もありそうです。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)