チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Chart Data氏 音楽ファンのチャートへの関心向上を語る 【Pigeons and Planesインタビュー和訳】 

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TwitterアカウントのChart Data氏にインタビュー!」 by Pigeons and Planes

 

 チャートマニア的にあまりにもドンピシャな記事を見つけたので、和訳して紹介することにしました!最後には私のコメントも少し付けています

 

※日本語での意味が通りやすいように意訳をしている箇所もあります。ただし、読んでいて前後の繋がりがいまいちピンと来なかった箇所もあるため、余裕があれば、原文との併読を推奨しております。

 

※必要に応じてGoogle翻訳されたページも参考にしてください

https://translate.google.com/translate?sl=en&tl=ja&js=y&prev=_t&hl=ja&ie=UTF-8&u=https%3A%2F%2Fpigeonsandplanes.com%2Fin-depth%2F2018%2F08%2Fstory-of-chart-data-music-growing-fascination-with-numbers&edit-text=

 

 

~訳~

 

 Twitterアカウントの@Chart Dataは毎日、チャート順位、セールスの数字、RIAAアメリカレコード協会)の認定などについて、数十ものツイートをしている。

 音楽関連のソーシャルメディアの中でも、@Chartdataは「ナードさ」では屈指だろう。

 ここ2年で、このアカウントには驚くべきことが何度かあった。この統計データをまとめたアカウントのフォロワーは6桁に達し、Cardi Bなどの一流スターがこのアカウントのツイートをシェアするようになったのだ。Chart Dataのツイートは頻繁に数千ものリツイートを記録し、リプ欄にはボーイバンドのインスタグラムのコメント欄のようなツイートがたくさん見られる。

 また、「すごい。Chart Dataちゃんはクイーン」、「一生Stan(ファン)でいる」などアカウント主に対してコメントが付くことも。他にはBuy Me Coffeeというサイトを通じてコーヒーがアカウント主に送られたこともあるらしい。

 

 このアカウントは閲覧者を増やすために、ミームに頼り、SNS的なテクニックを用いることはない。全てのツイートは、ただ「データ」のみにフォーカスを当てているのだ。@Chartdataの「中の人」は、今までよりも音楽ファンがデータに興味を持っていることに気づいたのだ。頻繁にアップロードされるセールスの数字はレコードレーベルや上級オタクのためだけのものではない。カジュアルな音楽ファンもこれらの数字に興味を示しているのだ。

 「これらの関心の上昇はおそらく、多くの種類のチャートが登場し、アクセス可能になったことが関係しているでしょう」と中の人は語る。「現在はそれらのチャート情報を即時に、大量に手に入れることができます。ストリーミングサービスはそれぞれ自前のチャートを持っていますし、ジャンル別のチャートも増えてきており、またSNSを通じてアーティストと接触しやすくなったことによって、ファン達はアーティストの功績を共有することを今まで以上に「使命」と感じるようになったのではないでしょうか」。

 

 私たち(Pigeons and Planes)は「中の人」に、このアカウントの歴史、音楽業界におけるデータの役割の向上……などについて対談を行いました。以下がインタビューです。

 

ーー@Chart Dataはどのようにしてスタートしましたか?

 

Chart Data(以下C):Chart Dataは、シングル・アルバム・アーティストなどの特筆すべき情報を世界的に伝えることを理念に掲げ、ほぼ2年前の今頃、2016年の6月にスタートしました。私はチャートを構成する数字に興味があり、その数字を伝えることを目標としています。 *1

 数字は嘘をつかないと思っています。チャートの順位を裏付ける情報に触れることで、チャートシステムが機能していることを実感できます。

 私的な感情や意見はあまり表に出さないようにしています。それはこのアカウントの発展には必要ないと思っているので。でも、別の音楽アカはあるんです。チャートのみに焦点を当てたアカウントはこれが初ですが。

 

ーーアカウントを管理しているのは一人ですか?

 

C:現在ツイートをしているのは一人ですが、情報をより良く伝えるために様々な人の助けを借りています。彼らなしではこのアカウントは成り立たないでしょう。

 

ーーアカウントのスタート時と比べて、どのような変化を感じますか?

 

C:設立当初は、あまりHot 100以外の情報を取り扱おうと思っていませんでした。しかし定期的な更新が重要であることに気づき、それはアカウントの成長に大きく寄与しました。不幸か幸いか、更新に組み込むことにした大量のツイートによって、私の扱う範囲はかなり広がりました。

 

ーーどのようにして、フォロワー数や信頼を築き上げましたか?

 

C:信頼は簡単に得ることはできません。実は、現時点でも「そのツイートは正しいかどうか?」のようなメッセージや質問をもらうことがあるんです。あんまり声を大にして言うことでもないのですが、私は信頼できるソースか、情報は正しいか、ということを投稿前に丁重にチェックしています。フォロワーを増やすコツは、なるべく早く大きな事象を報じることですかね。あとはシンプルにフォロワーの意見を聞いてみるのも良いかもしれないです。

 

ーーアーティストがツイートを見ていることもありますが、その中でも最も驚いた出来事は何ですか?

 

C:一番大きな出来事だったのはCardi Bが“Bodak Yellow”のHot 100首位を報告したツイートへの反応をInstagramにアップロードしたことです。実は、この事には数週間の間気づいていなかったんですよ。 私は全てのアーティストのシェアに対して感謝していますが、そのツイートへの反応を文字通り「見る」のはこれが初めてでした。

 

 

 私がツイートしたMigosの“Bad and Bojee”のHot 100首位獲得や、Drakeの400週連続Hot 100滞在、Taylor Swiftの”Look What You Made Me Do”のリリースはいくつかのメディアにも取り上げられ、アカウントの成長につながりました。何人かのアーティストともリプライしたことがありますし、質問に答え、交流することは楽しかったです。

 

ーービルボードを含む他のメディアよりもいち早く情報をツイートしていますよね。どのようにして、どこで情報を集めているのでしょうか。

 

C:実はツイートをスタンバイしているんで。チャートに関する情報は部分的に、前もってリリースされています。それに加え、くまなく新しいリリースをチェックし、次のチャートでどのような順位で登場するかを予想しておくんです。時には5~6パターンのツイートを下書きに準備していることもあります。

 

ーー既に確定した事項に加え、よくセールスやチャート順位の予想もしていますよね?そしてその予想はだいたい当たっているのですが、どのようにして予想しているのですか?

 

C:アルバムのセールス予想に関してはほぼ他力です。Hits Daily Doubleというサイトの数字を引用しています。シングルチャートの順位予想については、個別にチャートマニアの予想を見つつ、自分でも数字をチェックしています。私の投稿では、高い確実性を確保するため、あまり積極的にはシングルチャートの予想は掲示しません。

 

ーーファンやアーティストは今まで以上に数字や統計を気にするようになったと感じるのですが、その点についてはどう思われますか?

 

C:それは間違いないですね。その要因として、チャートの種類の増加やチャートへのアクセス向上が理由として挙げられると思います。すぐにチェックできる情報もたくさんありますよね。ストリーミングサービスは独自のチャートを持っていますし、ジャンルに基づくチャートも増えている。そして、SNSによってファンがアーティストと接触できるようになったことにより、ファンはその「実績」を伝えることを今まで以上に使命と感じるようになったのではないでしょうか。

 

ーーここ数年で音楽に関するデータはどのような変化を見せたでしょうか?最も大きな変化は何でしたか?

 

C:難しい質問ですが、一つ答えるとしたら、ストリーミングの台頭で人々が興味を示すデータの種類が変化したことでしょうか。私はYouTubeSpotifyApple Musicなどのデータを多く扱うようになり、シングルやアルバムを「ユニット」(※)で換算して計算する機会も増えました。しかし一方で、純粋なセールスこそが至高!と考えている人々も一定数います。しばらくは、私は両方の事象を幅広くカバーしようと考えています。

 

(※)「ユニット」とは、例えばストリーミングをDLに換算すると、100~150ストリーミング=1DLと扱われる(国やチャートによって微妙に異なる) DLとストリーミング換算値を合算したものをその曲の「売上」とみなし、「ユニット」と称している

 

 

ーーあなたは「チャート漬け」の日々を送っていますが、その中で最近見つけた興味深いデータ、または最近の傾向などはありますか?

 

C:最も大きな傾向といえば、市場に対応すべく、チャートが細かいルール変更を重ねていることです。チャートの記録の中には、もはや破ることが不能なものもあれば、簡単に破ることができるようになったものもあります。

 例えば、ストリーミングが台頭したことによって、アルバムの「純セールス」に関する歴代記録は、しばらく破られなくなっていくでしょう。同様に、イギリスのチャートを扱うOfficial Charts Companyは1アーティストのチャートに入る曲数を制限したため、Ed Sheeranが“÷”で打ち立てた記録は今後も長く塗り替えられないでしょう(※) 一方で、アメリカのチャートHot 100ではストリーミングの隆盛によって、Drakeなどによって数十年守り続けられていた記録が破られる、または並ばれる、ようなことが多発しています。

 

 それと「伸び」や「長期滞在」にフォーカスするのも面白いですね。今週(8/4)面白かったのは、Kendrick Lamarの“good kid m.A.A.d city”がアルバムチャートで滞在300週を迎え、女性のアルバムで最も長くアルバムチャートに滞在しているAdeleの”21”がチャートに舞い戻ったことですかね。

 

 あとは、先週のHot 100で“Ocean”という曲が2連続で並んだのも面白かったですね。

 

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(※) Official Charts CompanyはEd Sheeranの“÷”のアルバム曲全てがシングルチャートのトップ20に入ったことを受けて、「同一アーティストの曲はシングルチャートに3曲までしか入ることができない」というルールを制定。これにより、“÷”のようにアルバムの全てがトップ20に入るような作品が今後は出ないだろう、ということを言っている。

 

 

ーーTwitterのアカウント以外にも最近ブログを開設しましたよね。そして何か新しいことを始めようとしているようにも見受けられます。今後、ブログをどのように使い、どのようなことを発信していきたいと考えていますか?

 

C:もともと、ブログは私がよく受ける質問への答えを書く場所として作りました。Twitterのフォロワーが10万に行ったくらいの時に、ブログへのアクセスをチェックしてみたら、記事数はまだ少ないのにも関わらず、既に何千ものアクセスがあったのです。そこで、1つや2つのツイートで説明しきれない複雑な事象をブログで説明する、というアイデアを思いつきました。

 

 今の所、ブログに関する明確な目標はありません。チャートの動向や記録に関する分析に加え、歴代ベストセールス一覧やSpotifyカレンダーなど、データベースのような記事も作りたいと考えています。そして、さらに詳しい情報を伝えるため、何人かの熱心なチャートマニアと協力して記事を作ることもあります。メインになるのはTwitterですが、ブログにも伸びしろを感じています。

(↓そのブログ)

 

ーーChart Dataのさらなる発展に向けて、他に計画していることはありますか?

 

C:今は多くの人がチャートに興味を持っているようですが、今後はどうなるか分かりません。たまにフォロワーがどんなことに興味を持っているのか試してみることもあります。反応が良ければ、定期的な更新に組み込むこともあります。自分としてはこのアカウントを長く続けたいと考えていますが、フォロワーの反応が続くかどうかに、このアカウントの未来がかかっている部分もありますかね。

 

 

ーーChart Dataを応援するにはどうしたら良いですか?

 

C:私はこのChart Dataを、利益のためにやってはいませんが、フォロワーを増やせたら良いな、とは考えています。多くのリツイートやメディアの引用(※)には感謝しています。この場を借りて、いつも応援してくれるフォロワーに対して感謝の気持ちを述べたいと思います。私が楽しみながら発信をしていることを皆が楽しんでくれるのは、この上ない喜びです!

 

(※) ラップ系音楽サイト、ComplexはAccording to Chart Dataと、このTwitterアカウントの情報をもとに記事を作ることが多い。Complexは同様にTwitterアカウントのPopCrave(ポップスファン向け情報発信アカウント)を情報ソースとして使う機会もある。

  

 以上がChart Data氏に対するインタビューです!日々チャートのデータを操り、人々と交流している人物とだけあって、チャートに関する深い知見を持っていることが伺えました。

 氏がインタビューで述べている「人々のチャートへの興味が増している」という部分は嬉しいですね!この発言で自分もやる気になりますね!

 

 個人的にはChart Dataは「コミュニティ」としての役割を果たしている点が面白いと思います。インタビューの序文に「Chart Dataのコメント欄はボーイバンドのInstagramのコメント欄と似ている」という描写がありますが、Chart Dataのツイートは単にデータを述べているだけのアカウントながらも、多くのリプライが届いています。

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 同じ内容を伝えていますが、リプライの数はChart Data > Billboard公式です。Billboard公式にはChart Dataの約50倍フォロワーがいることを考慮すると、Chart Dataの「コメントされ力」は相当なものですね!

現在のフォロワー数

Billboard公式:6,863,649人

Chart Data:131,367人

 

 コメント欄では様々な会話がされています。例えば、「えーなんでこの曲がチャートで上昇するの?」というリプライが届けば、その曲のアーティストのファンから「オイ」のようなリプライが届くこともありますし、Chart Dataに「巻き込みリプライ」をして文句を言うと、本人からメッセージが届くこともあります。

 

 

 

 また、リプライだけでなくこのアカウントを引用リツイートしてコメントを書く人が多く、Chart Dataというアカウントを通して、チャートの情報が音楽ファン、特にポップファン共通の話題になっていることがよく分かります。

 Chart Data氏はインタビューの中で「SNSの台頭」や「ファンの使命感」などをチャートへの興味関心向上の理由に挙げていますが、Chart Data氏自身も、ツイートでの発信を通して、チャートがポップファンの中で共通の話題となったことに貢献していると思います!

 

 そんな多くの役割を果たしているChart Dataですが、最近思わぬライバルが登場しました。それはBillboard公式による、@Billboardchartsです。このアカウントはChart Dataのように、チャートの動向のツイートを定期的に行っています。

 

 

 この@Billboardchartsの発足を伝えるツイートにはChart Data関連のリプライもいくつか付いています。「Chart Dataの方が良い!」や「Chart Dataの方が早い」などChart Dataに対して肯定的な意見もあれば、「これChart Data終了のお知らせだね」や「Chart Dataに対する直接的な反応だね」など、@BillboardchartsがChart Dataのライバルになり得ると分析しているものもありました。

 

 現状、@Billboardchartsのフォロワーは7,248人で、Chart Dataのフォロワー131,367人と比べると大きく水を開けられています。このフォロワー数を見る限り、まだまだ「ライバル」といえる関係ではなさそうですが、今後@BillboardChartsがChart Dataと並ぶ規模になることはあるのでしょうか。

 

 多種多様なリプ欄、新しく登場したライバル……など注目トピックも多いChart Data。今後も同じチャートマニアとして陰ながら応援しています!

 

 

※後日談 ビルボードがChart Dataを公認?

 

 ビルボード公式は、Cardi Bが”Girls Like You"で3回目のHot 100首位を獲得したことに際し、モーメント(ツイートのまとめ)を作成!

 そこにはCardi Bのツイートのほか、Chart Dataのツイートも含まれていました!公式が作るモーメントに入った、ということは少なくともChart Dataが公式によって排除される可能性は無さそうですね!(Cardi B当人がChart Dataのスクショを貼っているということが大きいのかも)

 

 ビルボード公式による@BillboardChartsが出来たとき、@Chartdataが消えるのでは?と個人的に少し心配していたのですが、それは杞憂に終わりそうです。

 

 

*1:以前、@Chartnewsという似たようなアカウントがあったのですが、そのアカウントが更新を停止したので、その代わりとしてアカウントを作ったのだと思われる