今週の見どころはストリーミングの人気によって2年前のシングルが登場したBillie Eilish、そしてクリスマスの女王Mariah CareyのHot 100再登場です!これ以外では見どころが少なめだったので、今週が2019年間チャート集計の最初の週である、などマニアックな視点も盛り込んでいます。
☆今週のHot 100 ショートハイライト
・クリスマス到来!Mariah Careyの“All I Want for Christmas Is You”が29位に再登場
・Billie Eilishが2年前にリリースしたシングル“Ocean Eyes”がこのタイミングでHot 100に登場(97位)今年の印象的なリリースによって彼女への注目度が向上し、ストリーミングが増えたことが要因です。昨年のPost Maloneのような現象
・Mumford & Sonsがアルバム1位(チケット戦略の恩恵を受けた)
・今週のトップ10
―1 Ariana Grande – thank u, next
―2 Travis Scott – SICKO MODE ◎
―3 Marshmello & Bastille – Happier ◎
―4 Halsey – Without Me ◎
△5 Juice WRLD – Lucid Dreams
△6 Panic! At the Disco – High Hopes ◎
―7 Sheck Wes – Mo Bamba ◎
▽8 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You
△9 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard ◎
▽10 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE ◎
☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降
◎ は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す
1~100位までの順位表は↓
曲の個別解説
☆100 AJR – Burn The House Down
インディーポップ系兄弟トリオ、AJRの“Burn The House Down”が100位に登場。”I’m Ready”、“Weak”に次いで3曲目のHot 100入り。
この曲は主にオルタナティブ系ラジオ、アダルトポップ系ラジオなどで人気。AJRのシングルはSpotifyでも人気を集めることも多かったですが、この曲はそうではないです。
☆99 Jason Aldean – Girl Like You
Jason Aldeanのシングル“Girl Like You”が99位に登場。今年のアルバムから3曲目のシングル。Girl”s” Like Youではないです。
他のカントリー曲と同様、ラジオで人気を集めてのHot 100エントリーです。この曲は今週カントリー系ラジオ17位です。
☆98 Ellie Goulding & Diplo feat. Swae Lee – Close To Me
Ellie Gouldingのシングル“Close To Me”が98位に登場。Ellie GouldingにとってKygoとの”First Time”以来約1年半ぶり、13回目のHot 100登場です。
リリース時からSpotifyの再生数が一貫して高いことに加え、ここ数週でラジオが伸びたことによってHot 100入りしました。
☆97 Billie Eilish – Ocean Eyes
Billie Eilishの“Ocean Eyes”が97位に登場!この曲のリリースは2年前だったのですが、今年のシングルで印象を残したことにより関連曲への注目度が上がり、過去曲もHot 100に入るほどストリーミングを記録するようになったのです。
彼女は今週あわせて3曲がHot 100入り。その“Ocean Eyes”ほか、Khalidとの”Lovely”が80位に再登場、“when the party’s over”が59位→52位と順位を上げています。
ほか彼女の昨年のEP”dont smile at me"に収録されていた ”idontwannabeyouanymore” 、”bellyache”、”Copycat”などもBubbling Under=101位~125位相当に登場しています。来週以降はさらに多くの曲が「発掘」され、Hot 100に登場するかもしれません。
この現象は昨年Post Maloneでも起こったものと似ています。シングルが注目を集める → もっとその人の曲を聞きたい! → 過去曲に注目が集まる。 Post Maloneはこの流れで当時は「非シングル」だった”I Fall Apart”という曲がHot 100に登場し、最終的にはラジオにもかかる、というストリーミングがラジオを動かすような現象も起きました。
これらは過去曲も平等にアクセスができるストリーミングの強みが生きている現象で、新たなヒットの現象として研究のしがいがあると思います。
また、今年の映画“Bohemian Rhapsody”のヒットでQueenの過去曲がストリーミングで人気を得るなど、外的要因によって過去曲へ注目が向かうケースも今年は発生。このストリーミングの強みである「過去曲も平等にアクセスできる」というポイントを活かせる戦略が今の時代有効かもしれません。
USのものと比べると規模は小さいですが、日本のあいみょんにも同様の現象が起こっています。(今年の「マリーゴールド」や「今夜このまま」がヒット、それから昨年のアルバム「青春のエキサイトメント」の収録曲の過半数がSpotifyのランキング入り)
☆92 City Girls feat. Cardi B – Twerk
Drakeの“In My Feelings”で一部分を歌った(”Two Bad Bitches And We Kissin’ in the Wraith”のところ)女性ラップ・デュオCity Girlsの“Twerk”が92位に登場。City GirlsはHot 100初登場を成し遂げました。 (”In My Feelings”では feat.などの表記になっていない)
City Girlsはこの週にアルバムもリリース。Apple Musicで一定の人気を集め、アルバムチャートの63位に登場しました。
☆81 Kodak Black – Take One
Kodak Blackの“Take One”が81位に登場。主にSpotify、Apple Musicで人気です。この週は新曲リリースが少なかったですが、その中で一番注目を集めていました。
△57 Lil Baby – Close Friends
Lil Babyの“Close Friends”が58位→57位と少しだけ浮上。この曲はLil Baby + Gunnaの2人によるミックステープ”Drip Harder”からの1曲。
この曲の何が特徴的かというと、「非シングルが生き残っている」ということ。この“Close Friends”はラジオにもかからず、さらには各ストリーミングのプレイリスト(The A-List:Hiphop、もしくはRapCaviar)にも入っていないのですが、それでも人気を保ち、アルバムリリースから少し経過した(今週7週目)でもHot 100に残っています。
このように「非シングル」がHot 100に残り続けているアーティストは「アルバムで強い」というようなことが言えると思います。
今週ならばラジオシングル無しながらも3曲がHot 100に残っているMetro Boominがこれに当てはまります。ただし、Metro Boominの3曲は全てRapCaviarに入っており、“Close Friends”のようにプレイリストにも入らずHot 100に残る曲はレアです。
△49 XXXTENTACION, Lil Pump feat. Swae Lee & Maluma – Arms Around You
“Arms Around You”が60位→49位と浮上。今週ビデオがリリースされた効果でストリーミングが伸びました。
この曲はあまりラジオで再生されていません。XXXTENTACIONは他のラッパーと比べても、以前からあまりラジオかからない傾向にあります。
◇29 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You
Mariah Careyの“All I Want for Chrstmas Is You”が29位に再登場。クリスマスは1ヶ月程度先のことですが、ストリーミングやDLで人気を集め、「女王」がチャートに帰ってきました。
2012年以降毎年チャートに再登場しているこの曲ですが、いつもの成績と比べてみると……
2018 再登場:12/1 ピーク:?
2017 再登場:12/16 ピーク:10位
2016 再登場:12/17 ピーク:16位
2015 再登場:12/18 ピーク:11位
2014 再登場:12/20 ピーク:35位
2013 再登場:12/21 ピーク:27位
2012 再登場:12/22 ピーク:21位
など、今年の再登場が例年よりも早いことが伺えます。日付を見ると、今年は例年よりも再登場が2週早いように見えますが、チャートの日付調整(参考)の都合上、例年よりも【1週早い】が正解です。*2
このように例年よりも早い登場=例年よりも勢いがある、ということになり、ピークの更新にも期待がかかります。
また、Mariah Careyはこの週に自身15枚目のアルバムもリリース。アルバムチャートでは5位でした。“All I Want for Christmas Is You”はこのアルバムには収録されていません。
今週のアルバム1位はイギリスのフォークロックバンドMumford & Sons。ツアーチケット割引権をアルバムにつけるなどの戦略によって数字を稼いでアルバム1位の座を確保しました。
アルバム2位はMichael Bublé、アルバム3位はThe Greatest Showmanのカバーアルバムです。今週のアルバム1位~3位はいずれも(そのアルバムからの)Hot 100エントリーがありません。
▽8 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You
12月に入ったことによって、今週から「年間チャートにおける集計の年度」が2019年に。2018年の年間チャートも発表されていませんが、2019年の年間チャートの展望をしていこうと思います。
年間チャート集計最初の週にトップ10に入っていた曲は基本的にその年間チャートに入りますが、時折年間チャート入りを逃す曲もいます。(例外は2013年の“We Are Never Ever Getting Back Together”など、2018年の“Mi Gente”も年間チャートに入るか微妙)
ここ数週1位→2位→5位→8位と地味に順位を落としている“Girls Like You”はこの調子が続くと2019の年間チャート入りを逃す可能性もありそうです。
それ以外の今週トップ10入りしている曲は2019の年間チャート入り確実だと思います。(ただしストリーミングの影響が強まり、来年のチャートがさらに入れ替わりが激しくなればこの限りでないかも……?)
△6 Panic! At The Disco – High Hopes
Panic! At The Discoの“High Hopes”が好調をキープ。ラジオ再生数が今週1位になり、Hot 100の順位も8位→6位と伸びました。2006年の”I Write Sins, Not Tragedies”(7位)を上回りキャリア最高位を更新しています。
現在“Happier”と”High Hopes”の2曲がラジオ首位を争っています。この2曲の共通点は「オルタナティブロック系ラジオ」でかかっているという点。オルタナティブ系ラジオでかかった曲のうち、ラジオ再生数首位を獲得したのは (ここ数年)
2013 Macklemore & Ryan Lewis feat. Wanz – Thrift Shop
2013 Lorde – Royals
2013 Avicii – Wake Me Up
2014 Magic! – Rude
2014 Tove Lo – Habits
2016 Lukas Graham – 7 Years
2017 Portugal. The Man – Feel It Still
2017 Imagine Dragons – Thunder
2018 Marshmello & Bastille – Happier
2018 Panic! At The Disco – High Hopes
比較的ポップな曲でもオルタナティブ系ラジオでかかっているようですね。ほか“Something Just Like This”、”Get Lucky”などがクロスオーバーの中では印象的です。*3オルタナティブ系ラジオはそこまで規模が大きくないですが、他のジャンルのラジオと組み合わせることで、ロングヒットにつながります。
※ちなみに各ラジオの規模はおおよそ
ポップ系>>カントリー>>アダルトポップ、リズミック、アーバン>アダルトR&B、オルタナティブ、ラテン といった印象です。ほかジャンルのラジオでも人気になると、Hot 100でもロングヒットになる傾向があります。
▽× Tiesto & Dzeko feat. Preme & Post Malone – Jackie Chan
PremeとPost Maloneの楽曲をTiestoとDzekoがリミックスした“Jackie Chan”が今週チャートから外れました。ピークは52位、チャート滞在は19週という成績でした。
この曲はイギリスで5位・カナダで7位など、世界で広くヒットしていました。Premeはカナダ出身のラッパーです。ラップのリスナーにはあまりリーチせず、ポップスのリスナーに人気だった印象です。
▽× YG feat. 2 Chainz, Big Sean & Nicki Minaj – Big Bank
YGと豪華ゲストによる“Big Bank”が今週チャートから外れました。ピークは16位、滞在は24週でした。YG自身の曲では、My Hitta(19位)を上回りキャリア最高位です。(客演も入れるとJeremihとの”Don’t Tell’em=6位が最高位)
キャリア最高位を更新するヒットなので十分好成績だった、と評価できます。しかし、以前6ix9ineは「豪華ゲストがいてその順位?」とケチをつけていました。(6ix9ineとNicki Minajの“FEFE”は3位まで到達)
ちなみに年間チャートの観点から今週はチャートから外れるにはベストのタイミングです。曲のポイントを一つの年にまとめることができます。例年、年の変わり目にヒットしたが故に、前の年と次の年でポイントが割れて、いずれの年間チャートにも入れない曲がいくつかあります。
今週チャートから外れた曲 (9曲)
【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】
100 Tiesto & Dzeko feat. Preme & Post Malone – Jackie Chan (🗻52位 /⏰19週)
99 Bryce Vine – Drew Barrymore (🗻46位 /⏰14週)
98 Trippie Redd – Toxic Waste (🗻98位 /⏰1週)
97 Lady Gaga – I’ll Never Love Again (🗻36位 /⏰6週)
89 Trippie Redd feat. Kodie Shane – Negative Energy (🗻89位 /⏰1週)
85 Lady Gaga – Always Remember Us This Way (🗻41位 /⏰6週)
79 Imagine Dragons – Bad Liar (🗻79位 /⏰1週)
73 Trippie Redd – Love Scars 3 (🗻73位 /⏰1週)
49 YG feat. 2 Chainz, Big Sean & Nicki Minaj – Big Bank (🗻16位 /⏰24週)
・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品
1 Mumford & Sons – Delta 🎫
2 Michael Buble – Love
3 サウンドトラック – The Greatest Showman: Reimagined
5 Mariah Carey – Caution
11 Anderson .Paak – Oxnard
15 Mark Knopfier – Down The Road Wherever
40 Little Mmix – LM5
42 Casting Crowns – Only Jesus
49 Mike WiLL Made-It – Creed Ⅱ: The Album (Soundtrack)
54 The Smashing Pumpkins – Shiny And Oh So Bright, Vol.1
63 City Girls – Girl Code
65 Fleetwood Mac – 50 Years: Don’t Stop
67 Chris Cornell – Chris Cornell (4 CD)
76 Yella Beezy – Ain’t No Goin’ Bacc
112 NEEDTOBREATHE – Acoustic Live, Vol.1
116 Conan Gray – Sunset Season (EP)
117 Jaden Smith – The Sunset Tapes: A Cool Tape Story
123 Nita Strauss – Controlled Chaos
169 Andew McMahon In The Wilderness – Upside Down Flowers
185 Birdman & Jacquees
192 Chris Cornell – Chris Cornell
・Anderson .Paak 前作の“Malibu”での79位から大きく飛躍し、アルバムチャートでの自己最高位を更新
・Little Mix アメリカ以外のガールズグループ、という点でライバル?ともいえるBLACKPINKの今年のEP、“SQUARE UP”と同じ順位
来週以降の動向など
・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲
・Billie Eilish – come out and play
過去曲にも注目が集まるBillie Eilish。それとは別に新曲“come out and play”も来週Hot 100に入りそうです
・Zara Larsson – Ruin My Life
リリース時は注目が薄かったですが、ポップ系ラジオでの再生数が伸びるにつれ、Spotifyなどでも人気に。現在119位相当。
・6ix9ine feat. Kanye West & Nicki Minaj – MAMA
紆余曲折を経てアルバムを火曜日の夜頃リリースした6ix9ine。Kanye West、Nicki Minajを迎えた“MAMA”がDLとストリーミングで高い数字を記録しており、来週のHot 100に登場見込み。アルバムのその他の曲も再来週のHot 100に登場しそう。
・JID & J.Cole – Off Deez
同じく週の途中にリリースされ、ストリーミングで人気を集めたJIDのアルバム。アルバムのうちレーベルの長J. Coleと組んだ “Off Deez”が特に人気です。アルバムには他にもA$AP FergやElla Maiなどが参加。
・ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)