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1周年記念!Charli XCX "Pop 2"参加アーティストの今年の動向を振り返る

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 昨年の12/15にリリースされたポップの「傑作」アルバム、Charli XCXの“Pop 2”。この作品は多くのメディアで高い評価を受けており、また本人もこの出来栄えには満足していて、この作品のリリース後「私はもっと評価されるべき」「2017年には満足している。これで人生が終わりでも不満はないぐらい良かった1年だった」などと発言しており、自他ともに認める大傑作なのです。

 あとこんなのも

 

 そんな傑作には多くのゲストが参加しています。これには、アーティストの紹介をするという側面もあるというアルバム(ミックステープ)なのだと思います。

(Charli XCXはほぼ毎月 "The motherfucking future"と題したプレイリストを更新して、新しいアーティストを多く紹介しています。今月は1999特集で自身とTroye Sivanの曲しかない特殊な回になっていますが……)

 

 今回の記事では、このアルバムの1周年を祝いつつ、参加したアーティストの1年の動向を振り返ってみたいと思います。

 

”Pop2"のトラックリストは……

1 Backseat (feat. Carly Rae Jepsen)

2 Out of My Head (feat. ALMA & Tove Lo)

3 Lucky

4 Tears (feat. Caroline Polachek)

5 I Got It (feat. Brooke Candy, CupcakKe & Pabllo Vitter)

6 Femmebot (feat. Droian Electra & Mykki Blanco)

7 Delicious (feat. TOMM¥ €A$H)

8 Unlock It (feat. Jay Park & Kim Petras)

9 Porsche (feat. MØ)

10 Track 10

 

 

・Charli XCX 当人

シングル→ 5 in the Morning、Focus / No Angel、Girls Night Out、1999

客演      → Don't Delete the Kisses(Wolf Alice)、Girls (Rita Ora)、Bitches(Tove Lo)、Moonlight(Lil Xan)、100 Bad (Tommy Genesis)、If It’s Over (MØ)、Playboy Style (Clean Bandit)

 

 アルバムは無かったものの、本人のRolling Stoneのインタビューで「シングルをなるべく多くリリースしたい」と語っており、その言葉を実現するかのように、活発に活動していました。ちなみにこれはCharli XCXが尊敬するAriana Grandeも「女性ポップシンガーは曲のリリースペースが慎重すぎるので、ラッパーみたいにポンポン曲をリリースしたい」と、似たような意見を述べています。

 

 その中で、Troye Sivanとの”1999”は久しぶりにチャートで躍動。イギリスで13位*1まで到達した際には「この曲が10位まで到達したら来年アルバムリリースをする!」としましたが、クリスマス曲に押されるなどして、次週以降は大きく順位を落としました。果たしてどうなるでしょうか。

 

 客演でも活発に活動。「自身が好きなアーティストと組んでいる」という印象があります。(Clean Banditの“Playboy Style”では以前好みだとしていたBhad Bhabieとコラボしている) Lil Xan以外はほとんど女性とのコラボレーションです。

 

・Carly Rae Jepsen

シングル→ Party For One

 

 おそらくこのミックステープで一番の大物。Pop 2リリース直後、まず注目を受けたのはこの曲だったように思います。今年の終盤になって新シングル“Party For One”をリリース。”E・Mo・Tion”で成功を収めた80年代風路線を踏襲しています。今後の動向に注目が集まります。

 

ALMA

アルバム→ Heavy Rules Mixtape

シングル→ Cowboy

客演      → Bitches (Tove Lo)、Black Car(Miriam Bryant)、In Us I Believe (Clean Bandit)

 

 フィンランド出身のシンガー。代表的なシングルは“Chasing Highs”。この曲は昨年のイギリスのシングルチャートで年間96位に入っています。母国フィンランドでは複数のトップ10を記録しています。

 ほか昨年のシングル”Phases”ではソングライト、ビデオ監修をCharli XCXが担当しています。またFelix Jaehnの”Bonfire”もドイツ3位など、客演でも活躍してきました。

 

 今年は“Heavy Rules Mixtape”というミックステープ(EP)をリリース。客演にはMØ、Tove Styrke、Kiiaraなど女性シンガーが参加しています。2016年の”Dye My Hair”に次ぐEPで、アルバムはまだリリースされていません。

 客演関連では、Pop 2でタッグを組んだTove Loと再びコラボ。ほかCharli XCXも参加したClean Banditのアルバムにも参加しています。

 

・Tove Lo

シングル→ Bitches Remix

客演    → Colorblind(Karma Fields)、Blow That Smoke(Major Lazer)、Heart Attack(Phoebe Ryan)

 

 Charli XCXが“Boom Clap”をヒットさせた2014年に、同じく世界的ヒットを飛ばしたTove Lo。2016年、2017年と2年連続でアルバムをリリースしていましたが、今年はアルバムを出しませんでした。

 その中で目玉となったのは“Bitches”のリミックス。Charli XCX、ALMAというPop 2における“Out of My Head”トリオに加え、Tove Loと同じ高校出身のIcona Pop、そして同胞のElliphantを加えたガールズ・リミックス。冴えないカップル(?)を指導するビデオもなかなか見ものです。

 

 客演では数件活動。Major Lazerとのコラボほか、個人的な琴線に触れたのはPhoebe Ryanとの“Heart Attack”。彼女は長いことTove Loと行動を共にしてきたシンガーで、ツアーに同行していたこともありますが、コラボは意外と初めて。個人的には長らく待った念願のコラボという感じでした。

 

・Caroline Polachek

客演  → Marzipan(Felicita)、Do You Think About Us?(The Night Game)

 

 シンセポップバンドChairliftのメンバー、Caroline Polachek。今年は客演でいくつか活動。MarzipanのFelicitaはPC Music所属のプロデューサーです。

 

・Brooke Candy

シングル→ War、My Sex、Nuts、For Free

 

 Charli XCXの2013年のアルバム“True Romance”にも参加していたアメリカ出身のラッパーBrooke Candy。代表曲はSiaを迎えたポップな1曲、”Living Out Loud”ですかね。

 今年はシングルリリースを中心に活動。注目は”My Sex”。タイトルも強烈なこの曲には、客演としてPop 2にも参加したMykki Blanco、エレポップ系シンガーMNDR、そしてメンバーに毒が盛られたという噂が出回ったロシアのバンドPussy Riot。(後に回復したようです )

 そしてこの曲ではCharli XCXがソングライトに参加しています。

 

・CupcakKe

アルバム→ Ephorize、Eden

シングル→ Hot Pocket

客演  → Iced Out Dick(LIL PHAG)、Falling Fast(Tucker William)、LMK(Kelela)

 

 “Number One Angel”に引き続き2連続でミックステープに参加するなど、Charli XCXの大のお気に入り、シカゴ出身のラッパーCupcakKe。

 高いスキルと独自のキャラを併せ持つ彼女は、今年特に批評家から高い評価を受け注目度が向上しました。特にPitchforkは彼女を高く評価しており、アルバム“Ephorize”を今年のアルバム12位その収録シングル”Duck Duck Goose”を今年の10位シングルとしています。

 このアルバムだけでなく、今年2枚目のアルバム“Eden”も11月にリリース。キャリア通算で4枚目のアルバムと、多作です。

 

 ちなみに今年CupcakKeで面白かったのは、Dua Lipaのことを知らなかったらしく、それで聞いてみたところ「良いカントリーシンガーだね」と言ったことです。(Dua Lipaを知らないこと自体も意外ですが)

 

 

 

 

・Pabllo Vittar

アルバム→ Não Para Não

 

 ブラジルのシンガー、Pabllo Vittar。ブラジルのSpotifyでは複数の曲でトップ10に入るなど人気が高いです。今年はセカンドアルバム、Não Para Nãoをリリースしました。

 Charli XCXがPabllo Vittarにインタビューするという記事も今年ありました

  

・Dorian Electra

シングル→ Career Boy、V.I.P.、Man to Man

 

 シングルをいくつかリリース。個人的に目を引いた活動はCharli XCX、Allie Xとともにヘッドライナーを務めたイベント。LAで行われたフェスなのですが、めちゃめちゃ羨ましいですね……!(しかも入場料は35$らしい) ほかにはDaya、Liz、Phoebe Ryanなども参加しています。

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・Mykki Blanco

客演  → My Sex

 

 個人的にスタイルがBusta Rhymesに似ていると思っているラッパー。前述の“My Sex”に客演として参加しています。

 

・TOMM¥ €A$H

アルバム→ ¥€$

シングル→ Follow Me

 

 北ヨーロッパエストニアのラッパー。今年の11月にリリースしたアルバム“¥€$”では一風変わったビートを披露しています。プロデューサーには“Pop2”でも多くの曲を担当したA.G. Cook、そしてPC MusicのDanny L Harleなどが参加しています。

 そしてアルバム9曲目の“COOL 3D WORLD”という曲にはCharli XCXが参加!客演で表記されていなかったので、最初聞いた時ビックリしました

 

・Jay Park

アルバム→ Ask About Me

シングル→ Upside Down、V(2曲入りシングル)

客演  → Money Bag(Jarren Benton)、NOAH(HAON)

 

 K-Popグループ、2PMのメンバーだったJay Park。今年は全編英語のミックステープ“Ask About Me”をリリースしました。ゲストもRich the Kid、2 Chainzなどアメリカの人気者たちを招いています。

 彼は2017年からRoc Nationに所属。このミックステープはレーベル下では初のリリースとなります。

 

・Kim Petras

アルバム→ Turn Off the Lights Pt.1

シングル→ Heart to Break、Can’t Do Better、All the Way

客演  → Anymore(Lil Aaron)、The Drugs Don’t Work(Baby E)、Feeling of Falling(Cheat Codes)

 

 ドイツ出身のポップシンガー。このアルバムにおける「紹介」のなかでは個人的な一番の発見でした。本格的なメインストリームでのヒットはまだありませんが、昨年の“I Don’t Wanna It All”や、今年の”Heart to Break”あたりはSpotifyで一定の再生数(1000万以上)を記録しており、一部で注目を集めています。ビルボードのランキングまでは到達しませんでしたが、アメリカのラジオでもある程度人気があったようです。(規模の大きいポップ系ラジオで50位程度の再生数を得ていた)

 

 シングル全てが光り輝くポップス、といった印象で、「音楽を聴いて感動する」という音楽を聞き始めたころの初心を思い出させてくれる、そんな曲が多い印象です。

 

 デビューアルバムのリリースはまだですが、今年ハロウィンをテーマにしたミックステープ“Turn Off the Lights Pt.1”をリリース。Kim Petrasらしいポップバンガーだけではなく、Justiceを彷彿とさせるインストの曲を途中に挟むなど多芸なアルバム。Kim Petrasの予想外の引き出しの広さに驚かされました。

 

 客演ではLil Aaron、Cheat Codesなどの作品に参加、またTWICEの“Young & Wild”という曲のソングライトを担当するなど他人とのコラボも多様に行っています。

 

 彼女のデビューアルバムは来年リリース予定と言われています。今のところ、来年のアルバムの中で一番楽しみです。(先行シングル?が多いので、既発曲中心の構成になるかもしれませんが💦)

 

 ここ半年ぐらいでKim Petrasがめちゃくちゃ好きになりました、好きすぎて一時期このポーズを家でよく真似していた時期がありました。

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・MØ

アルバム→ Forever Neverland

客演  → We Are…(Noah Cyrus) Stay Open(ZTAO)、Your Luvin(Steel Bangles

z)、Dance For Me(ALMA)、Never Fall in Love(Jack Antonoff)

 

 CupcakKeと同様、“Number One Angel”、”Pop 2”とCharli XCXのミックステープに2連続で参加したデンマークのシンガーMØ。そんな彼女は今年?年ぶりにアルバムをリリースしています。

 自身の“Kamikaze”や“Final Song”、そして客演の”Lean On”や“Cold Water”などポップでキャッチーなヒットが多いですが、アルバムでは前アルバムに引き続きオルタナティブサウンドを追求。アルバムのシングル”Blur”ではFoster the Peopleを迎え*2ロック系のラジオにもかかっていたようです。

 

 客演での人気も高く、中国ポップスのZTAO、イギリスのラップ系プロデューサーSteel Banglesなど幅広いフィールドで客演に参加。Noah Cyrusとは、この“We Are…” がきっかけで2人の対談も行っていました。

 

 「コーチェラが楽しかった」「アーティストを貶めるサイトやコメントは嫌だ」「MØって29歳だったの!?20歳くらいかと思ってた……」 などを話しています。

 

・Sophie

アルバム→ OIL OF EVERY PEARL’S UN-INSIDES

 

 客演としての参加ではないですが、アルバムでプロデュースを担当したSophieが今年アルバムをリリースしたので紹介したいと思います。

 

 今までは主にプロデューサーとして注目を集めてきたSophieですが、ついに今年自身名義でのアルバムをリリース。Sophieの特徴的なバキバキビート、そしてメロディアスな部分も融合したアルバムは非常に高い評価を受けました。評論まとめサイトAlbum of the Yearによると、このアルバムは28の評論サイトのリストに入り、今年11番目に高い評価を受けたアルバムとされています。

 

 Sophieはこれまであまり自身の姿を見せてきませんでしたが、今回のアルバムで自身をジャケに載せたように、今年からは自身の写真をよく公開するようになりました。

 

 この影響なのか、今までは“He”と表記されていましたが、今年あたりからは”She”と表記されるようになりました。

 

 

・関連

 

*1:Rita Oraとの”Girls"より高い

*2:シングル版でのみ参加