この記事では今年のHot 100(USシングルチャート)に登場した、日本に関連する曲を紹介したいと思います。日本に「関連」するものとして、以下のような曲をピックアップしました。
1 日本人、または日系人が参加した曲
2 日本関連のワードが曲名に入っている曲
3 日本関連のワードが歌詞に入っている曲
4 ビデオが日本に関連するもの
5 日本の曲がサンプリングされたもの
6 その他(ジャケットなど)
※文章中、曲名の横に()付きで書かれている順位は、その曲のピーク順位です
1 日本人、または日系人が参加した曲
・植野有砂
8人目、9曲目の日本人Hot 100エントリー。そんな歴史的な快挙を遂げたのはモデル/シンガーの植野有砂さんでした!以下が日本人によるHot 100エントリー一覧です
(🗻ピーク順位・⏰チャート滞在週数)
1963年 坂本九 – Sukiyaki (🗻1位・⏰14週)
1963年 坂本九 – China Nights (🗻58位・⏰3週)
1979年 ピンクレディー – Kiss in the Dark (🗻37位・⏰11週)
1980年 YMO – Computer Game Theme from The Circus (🗻60位・⏰9週)
1981年 横倉裕 feat. Patti Austin – Love Light (🗻81位・⏰3週)
1981年 オノ・ヨーコ – Walking On Thin Ice (🗻58位・⏰10週)
1990年 松田聖子 feat. Donnie Wahlberg – The Right Combination (🗻54位・⏰13週)
2016年 ピコ太郎 – PPAP (🗻77位・⏰4週)
2018年 Sofi Tukker feat. Nervo, The Knocks & 植野有砂 – Best Friend (🗻81位・⏰5週)
2018年 John & Yoko/The Plastic Ono Band With The Harlem Community Choir - Happy Xmas (War Is Over) (🗻42位・⏰2週) *1
2019年 宇多田ヒカル & Skrillex - Face My Fears (🗻98位・⏰1週)
※ Happy XmasとFace My Fearsはこの記事の後にHot 100に登場
PPAPに次ぐ、2010年代2回目の日本人Hot 100エントリー!さぞかし盛り上がるんだろうな、と考えていたのですがメディアでの報道はほとんど見かけませんでした。PPAPと違って客演であったことが理由なのかもしれませんが、それを差し引いても報道が少なすぎるように感じました。
かつては日本人歌手でもアメリカで活動する場合は英語で歌うことが基本でしたが、この曲はガッツリ日本語の歌詞も登場。(植野有砂が担当する箇所はほぼ日本語)
だってバレバレ we’re in love
Ain’t nobody loved me like you’ve done
I might have first 大恋愛 最初で最後 in my life
アリサ from 東京
I’m so addictive like some ポケモン
曖昧なんていらないない
Like 一、二、三でバイバイバイ
日本語「歌詞」のHot 100デビューは坂本九以来です。(YMOはインスト曲、その他の5曲は英語と思われる) この点でもかなり快挙だと思います。
この曲が主に人気だったのはラジオ(ポップ、アダルトポップ、オルタナティブ系など)ですが、他の媒体でも一定の人気。「日本語歌詞を含む曲」としては初めてアメリカのSpotifyランキング(再生数)に登場しました。ほか、USのiTunesでも一時期30-40位程度まで上昇していました。
・(惜しい Joji)
日本人とオーストラリア人の両親の間に生まれたR&Bシンガー。88rising所属です。「日本人シンガー」と表記されることもあれば、「日系オーストリア人シンガー」と表記されることもあります。
かつてはFilthy Frank名義でYouTubeのコメディアンとして活動しており、そこでは日本語で話すシーンも多く見られます。コテコテの関西弁で鋭いツッコミを入れています。
そんな彼は2017年ごろからJojiとして再出発。音楽家としての彼への注目度は高く、昨年のEP”In Tongues”はUSアルバムチャートの58位にランクインしました。そして、さらに今年のデビューアルバム“BALLADS 1”はなんとアルバムチャート3位にランクイン!坂本九を超えて日本人最高位を記録したのです!(これも植野有砂のケースと同じく、あまり報じられていない印象)
そのアルバムの収録曲、“SLOW DANCING IN THE DARK”も躍進。惜しくも101位(相当)と、ギリギリでHot 100入りを逃しましたが、大躍進を遂げたことには違いないと思います。
(2019年に入ってからHot 100入りを成し遂げたので来年ver. で紹介予定です!)
このアルバムはセールスだけでなく、ストリーミングでも成果を上げました。特にSpotifyでは好調で、アルバムの収録曲全てがランキング入り(リリース日)。アルバムが全体的に多く聴かれている、ということを表しています。
Katy PerryやP!nk、Maroon 5などシングルヒットを連発するアーティストでもアルバムの収録曲のうち半数以下しかランキングに入らない場合もあるので、このJojiの実績はなかなかのものだと思います。
・Steve Aoki
父親が日本人。アメリカで活動していたプロレスラー、ロッキーアオキ。以前からコンビを組んでいるBTSとの“Waste It On Me”で今年89位でHot 100入りしました。キャリアで通算4曲がHot 100に入っています。
・Jhené Aiko
祖父が日本人のR&Bシンガー。Rae Sremmurdを迎えたシングル、“Sativa”が74位で今年Hot 100入り。キャリア通算で6曲がHot 100に入っています
2 日本関連のワードが曲名に入っている曲
・Shawn Mendes – Lost in Japan (48位)
・Famous Dex - Japan (28位)
今年2つもJapanがタイトルにつく曲がHot 100に登場。ビルボードはこれに関して“Japan”がタイトルにつく曲の歴代Hot 100エントリーをまとめています。今まで5曲の”Japan”曲がHot 100に登場したようです。(参考:Cardi B's 'I Like It' Earns Her Fifth Top 10 Song on Hot 100 | Billboard)
歴代で5曲とかなりレアな”Japan"曲ですが、今年は2曲も出ました。
1964年 Bobby Goldsboro – Me Japanese Boy I Love You (74位)
1980年 The Vapors – Turning Japanese (36位)
1985年 Alphaville – Big in Japan (66位)
2018年 Famous Dex – Japan (28位)
2018年 Shawn Mendes – Lost In Japan (48位)
・Eminem - Kamikaze (16位)
・Lil Mosey - Kamikaze (97位)
カミカゼも今年よく聞いたワードです。EminemはアルバムのタイトルもKamikazeでした。ほか若手ラッパーLil MoseyもKamikazeという曲をリリースしています。
・Nicki Minaj - Chun-Li (10位)
カプコンが発売したストリートファイターシリーズに登場するキャラクター、春麗。Nicki Minajは今年自身をChun-Liになぞらえることが何回かありました。
・Drake - Final Fantasy (56位)
ゲームシリーズ
・YoungBoy Never Broke Again - Diamond Teeth Samurai (59位)
金歯のサムライ、とは意外な組み合わせ
3 日本関連のワードが歌詞に入っている曲
これに関してはかなり多くが該当していました。単語ごとにその該当曲をまとめました。ちなみに植野有砂が歌う“Best Friend”のヴァースは、日本語が歌詞に「入る」というよりは、ほぼ全部が日本語なので別扱いにしています。
曲を聞いて気づいた単語、または関連する登場しそうな単語をひたすら検索して探しています。ソースは全て歌詞検索サイトGeniusです。
☆Japan
・Tiësto & Dzeko feat. Preme & Post Malone – Jackie Chan (52位)
・Metro Boomin feat. Gunna – Space Cadet (51位)
・Logic feat. Big Sean – Wassup (83位)
・Tyler, the Creator – OKRA (89位)
・Famous Dex – Japan (28位)
・Shawn Mendes – Lost in Japan (48位)
・Migos feat. Gucci Mane – CC (96位)
日本関連の単語で一番話題に挙がりやすいのは“Japan”のようです。なんというか、すごく明快ですね。ちなみに”Japan”を挙げた場合、前後に再び日本関連のワードが登場するケースもあります。“Jackie Chan”では I just ordered sushi from Japan とサビで歌っています。
ちなみに“OKRA”も響きが日本語っぽいですが、”OKRA”はれっきとした英単語の意味のようです。意味は日本と同じく野菜のオクラです
☆Tokyo
・Metro Boomin feat. Gunna – Space Cadet (51位)
・Post Malone feat. Nicki Minaj – Ball For Me (16位)
日本で一番有名であろう都市、Tokyo。一部で取り上げられていますね。“Space Cadet”でGunnaは東京で買い物を、”Ball For Me”では着物を来て東京へ飛行しています。
☆Harajuku
・Nicki Minaj feat. Lil Wayne - Good Form (60位)
リミックスのみに登場します。"Nicki the ninja, Nicki the boss, Nicki the harajuku"と曲の最後に自己紹介?をしています。
☆Kawasaki
・Lil Skies feat. London Cube – Red Roses (69位)
・DJ Snake, Selena Gomez, Ozuna & Cardi B – Taki Taki (11位)
こちらは地名ではなくバイクメーカーのKawasaki。ラップの定番アイテムとして、この単語は他でもよく見られます。
”Taki Taki”ではKawasaki以外にも他の日本関連のワードがありました。しかし、その使われ方が良くなかったです。この歌のこの部分を担当したOzunaはもともと
Booty explota como Nagasaki (-aki)
Prende los motores Kawasaki (Kawasaki)
と歌っていました。これの意味するところは、「長崎のようにケツが爆発する エンジンをつけるぜカワサキ」といった感じです。
後に日本の担当者からの意見で、長崎の部分は「サキサキ」に訂正されました。(ただし音源によってはまだ長崎かも)
・Travis Scott – STARGAZING (4位)
他のメーカーも何かあるかな?とサーチしてみたらこの曲が該当しました。
☆Honda
・Migos - Narcos (36位)
☆Pikachu
・Lil Baby & Drake – Yes Indeed (6位)
・Lil Skies – Lust (87位)
次にアニメ・ゲーム関連。2016年にリリースされたPokémon Goの大ヒット*2に見られるようにポケモンは北米でも人気があるようです。他にも、今までアメリカで公開された日本の映画のうち、1位と2位はポケモン映画だったようです。(ミュウツーとルギア)
Geniusは2016年、Pokémon Goが大ヒットだった時期あたりに「ラップにおけるポケモン」という動画を出しています。
またHot 100には登場しませんでしたが、今年リリースされたラップ曲のうちDenzel Curryはライチュウ、Sabaはフシギバナ(Venusaur)を歌詞に登場させています。
☆Anpanman
・BTS – IDOL (11位)
前アルバムの収録曲“Anpanaman”を受けた歌詞。BTSは今年、日本に関連する残念なニュースがありましたが、日本のカルチャーに対する愛はこの歌詞から垣間見えます。
☆Goku
・YG feat. A$AP Rocky – Handgun (98位)
ポケモンだけでなく、ドラゴンボールも人気があるようです。以前Geniusはドラゴンボールが登場するラップ特集を行ったことがあります
☆Mario
・Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It (1位)
・KIDS SEE GHOSTS – Reborn (39位)
・Ski Mask The Slump God feat. Juice WRLD - Nuketown (63位)
Marioというと、2004-2005年に“Let Me Love You”をヒットさせたMarioなど、人名を指している場合もあるのかもしれませんが、この3曲はあのゲームのマリオだと推定されます。
“I Like It”ではコインが登場し、”Reborn”ではそれはゲームだ、と語られています。
☆Chun-Li
・Nicki Minaj - Chun-Li (10位)
・Ariana Grande feat. Nicki Minaj - the light is coming (89位)
・Quavo - Huncho Dreams (93位)
・BTS feat. Nicki Minaj - IDOL (11位) ※リミックスのみ
元々はストリートファイターのキャラクターですが、今年はNicki Minajの代名詞的な使われ方が多かったです。
・J. Cole – Album of the Year (87位)
ゲーム関連では、ゲーム機のハードも歌詞に登場しています。
☆Karate
・Kanye West – Violent Crimes (27位)
・Travis Scott & Quavo – Black & Chinese (71位)
今度はスポーツ。カラテ。“Black & Chinese”では、歌詞の前後に「テコンドー」も登場し、アジアのスポーツの一種として取り扱われています。
☆Judo
・Meek Mill feat. Anuel AA & Fabolous – Uptown Vibes (39位)
“Kick It Like It’s Judo”という歌詞で柔道が登場するのですが、柔道って蹴り技の印象が強いのですかね?
☆Sushi
・Tiësto & Dzeko feat. Preme & Post Malone – Jackie Chan (52位)
・Lil Uzi Vert feat. Oh Wonder & Nicki Minaj – The Way Life Goes (24位)
食べ物。スシはポピュラーでもあり、発音しやすそうなので、歌詞にも乗せやすいのかもしれないです。
☆Teriyaki
・Migos feat. Drake – Walk It Talk It (10位)
・Future – Wifi Lit (53位)
テリヤキが注目されるのは個人的に意外でした。
☆Kimono
・Post Malone feat. Nicki Minaj – Ball For Me (16位)
Nicki Minajのヴァースに登場。Nicki Minaj的には、着物で連想されるのは東京らしい
☆Ninja
・Nicki Minaj feat. Lil Wayne - Good Form (60位)
・Eminem - Greatest (23位)
海外で人気があるとされている忍者シリーズ
☆Kamikaze
・Eminem - Kamikaze (16位)
・Lil Mosey - Kamikaze (97位)
・Machine Gun Kelly - Rap Devil (13位)
・Lil Wayne - Let It All Work Out (75位)
Eminemがアルバムタイトルに採用するなど、今年多く見られたワード、Kamikaze。Machine Gun Kellyが使うKamikazeはエミネムのアルバムのことを指しています(ディス曲なので)
☆Murakami
・Meek Mill feat. Drake - Going Bad (6位)
村上隆のことを指しています。
☆Benihana
・ScHoolboy Q, 2 Chainz & Saudi – X (49位)
☆Saké
・Travis Scott - CAROUSEL (24位)
・Quavo feat. Drake - Flip the Switch (48位)
☆Sumo
・Eminem feat. Joyner Lucas - Lucky You (6位)
・Meek Mill feat. Anuel AA & Fabolous - Uptown Vibes (39位)
・Lil Wayne - Hittas (59位)
4 ビデオが日本に関連するもの
・5 Seconds of Summer – Youngblood (7位)
ビデオの舞台が終始日本。かつてムーブメントが起こったロカビリーをテーマにしており、ビデオ中には代々木公園も登場します。5 Seconds of Summerのメンバーはビデオに出ていないようです。
・Logic – Overnight (68位)
Logicがスクランブル交差点などを歩きながら踊っているビデオです。
・Famous Dex – Japan (28位)
曲名がJapanなだけあって、日本で撮影。
この曲はリリックビデオもかなり日本を意識したものでした。
(ちょっとカオスなビデオ。ちなみにリリックビデオのほうが圧倒的に再生数が多いです)
・Shawn Mendes – Lost in Japan (48位)
日本の風景を写している「風」のビデオです。
・Taylor Swift feat. Ed Sheeran & Future (18位)
舞台が東京「風」
・Childish Gambino – This Is America (1位)
ビデオが大きな注目を浴び、Hot 100の首位にも立ったChildish Gambinoの“This Is America”。そんな論争を呼び、衝撃を与えたビデオの監督を務めたのは、日本人の映像作家、Hiro Muraiでした。
・(?) Post Malone feat. Ty Dolla $ign – Psycho (1位)
Geniusが「戦車の車体の側面に座っている」という点でガルパンとの比較動画を以前出していたのですが、現在は削除?されています。
共通点は戦車の車体の側面に座ったくらいなので、本当にガルパンの影響?か少し疑問ですが、Post Maloneは以前このようなツイート↓をしており、日本のカルチャーへの興味がありそうなので、少しは可能性がありそうです
miku is a legend💕 pic.twitter.com/1byw6lsk1Y
— Beerbongs & Bentleys (@PostMalone) June 30, 2018
5 日本の曲がサンプリングされたもの
・Lil Uzi Vert - New Patek (24位)
アニメに造詣の深いといわれるLil Uzi Vert。Death Paradeというアニメ作品のタイトルトラックをサンプリングに使用しています。
・Logic - Boom Trap Protocol (94位)
森園勝敏という作曲家の“Space Traveller”という曲をサンプリングしています。
・J.Cole feat. Kill Edward - The Cut Off (46位)
日本のジャズピアニスト、本田竹広の“Dark And Mello”をサンプリング。
サンプリングされた曲、については以下の動画からいくつか発見しました。ありがとうございます。
6 その他(ジャケットなど)
・Kids See Ghosts – Kids See Ghosts
Kanye WestとKid Cudiによるコラボプロジェクト・Kids See Ghosts。このアルバムはストリーミングで高い人気を誇り、アルバムに収録された7曲全てがHot 100入りを果たしました。このアルバムのジャケットを担当したのは、日本人デザイナーの村上隆です。
まとめ
このように探してみると、意外と日本に関連する曲がアメリカでヒットしていることが分かります。他に「この曲にも日本関連のワードがありますよー」など、私が見逃しているものがあれば、お伝え下さい。
・2019年版↓