チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 2/9 見どころ 【J. Coleがシングルで最高位 / カントリーの新風】

f:id:djk2:20190206231150j:plain

 今週のポイントはJ. Coleのシングルでの躍進、Dan + ShayやLuke Combsの活躍でしょうか!ほか”SICKO MODE"や”Girls Like You"のロングヒットなど。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・J. Coleのシングル“MIDDLE CHILD”が4位に。自己最高位を更新

・Ella Maiの新シングル“Shot Clock”が88位に登場

・グラミー新人候補のカントリーシンガー、Luke Combsの“Beautiful Crazy”がトップ40入り。彼はデビュー以来シングルが全てトップ40入り

・Billie Eilishの”bury a friend”が集計2日ながらも74位に登場

 

・今週のトップ10

      2月9日   R D S
- 1 Ariana Grande 7 rings 19 1 1
  2 Halsey Without Me 2 4 4
  3 Post Malone & Swae Lee Sunflower 7 3 3
4 J. Cole MIDDLE CHILD - 5 2
-   5 Travis Scott SICKO MODE 8 13 5
  6 Ariana Grande thank u, next 3 10 9
  7 Panic! At the Disco High Hopes 1 6 22
  8 Marshmello & Bastille Happier 4 11 11
9 Post Malone Wow. 24 7 6
  10 Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 6 22 24

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

☆98 Jon Pardi – Night Shift

 カントリーシンガー、Jon Pardiの“Night Shift”が98位に登場。今週カントリー系ラジオ17位の曲です。

 先週エントリーしていたFutureのアルバム曲の多くが今週Hot 100から外れたため、その空いた枠にいくつかのカントリー曲が再登場しています。(“Burn Out”、Here Tonight”、“Blue Tacoma”の3曲)

 

☆90 Daddy Yankee feat. Snow – Con Calma

 Daddy YankeeがSnow(カナダのラッパー)のヒット曲“Informer”をアレンジした”Con Calma”が90位に登場しています。“Informer”は1992年のヒット曲で、Hot 100でも首位に立っています。

 この曲は多くのDLを集めたほかラテン系ラジオでも人気があります。また、ジャケにもなっているキャラ(?)が登場するビデオもYouTubeで人気です。ビデオの再生回数が10億を超えた曲が4曲あるDaddy Yankee。この曲もいずれこのリストに載るでしょうか?

 

ビデオ再生回数10億超え曲数ランキング

 
1 7 Ozuna Criminal, Te Bote, El Farsante, Ahora Dice, Escápate Conmigo, Se Preparó, Taki Taki
2 6 Justin Bieber Sorry, Baby, What Do You Mean, Love Yourself, I'm the One, Where Are Ü Now
3 5 J Balvin Mi Gente, Ay Vamos, X, Ahora Dice, 6AM
3 5 Bruno Mars Uptown Funk, The Lazy Song, That's What I Like, Just the Way You Are, 24K Magic
3 5 Nicky Jam Te Bote, X, Hasta el Amanecer, El Perdón, El Amante
3 5 Maluma Chantaje, Vente Pa' Ca, Felices los 4, Corazón, El Perdedor
7 4 Nicki Minaj Side To Side, Bang Bang, Swalla, Hey Mama
7 4 Daddy Yankee Despacito, Andas En Mi Cabeza, Shaky Shaky, Dura
7 4 Katy Perry Roar, Dark Horse, Firework, T.G.I.F.
7 4 Taylor Swift Shake It Off, Blank Space, Bad Blood, Look What You Made Me Do
7 4 Sia Chandelier, Cheap Thrills, Dusk Till Dawn, Titanium
7 4 Shakira Chantaje, Waka Waka, La Bicicleta, La La La
7 4 Rihanna This Is What You Came For, Love the Way You Lie, Diamonds, Work

 ちなみに再生回数10億超えの曲数は現在のべ142曲です。

※”Despacito”、”Mi Gente”はいずれもオリジナルバージョンが10億超え

 

☆89 XXXTENTACION – Sauce!

 XXXTENTACIONの“Sauce!”が89位に登場。彼によるミックステープシリーズ、Members Onlyシリーズの4弾からの楽曲です。

 主にストリーミングで人気を集めてのランクイン。このミックステープは本来XXXTENTACIONが21歳の誕生日を迎えるはずだった日にリリースされました。

 

☆88 Ella Mai – Shot Clock

 Ella Maiの新シングル“Shot Clock”が88位に登場。主にHip-Hop / R&B系ラジオで人気を集めてのランクインです。ストリーミングでの人気はまだ発展途上です。YouTubeでは44位と上昇を見せるものの、Apple Musicでは120位前後、Spotifyでは圏外とまだまだ上昇の余地があります

SpotifyではElla Maiはあまり人気ではない

 

☆86 Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...

 LauvとTroye Sivanの“i’m so tired...”が86位に登場。この曲は高いDLを記録したほか、Spotifyでも人気です。

 Lauvにとっては2曲目、Troye Sivanにとっては5曲目のHot 100登場。この二人はいずれもポップ系ラジオで人気を集めており、LauvはJulia Michaelsとの“There’s No Way”が、Troye SivanはCharli XCXとの”1999”が現在この系統でオンエア中です。(しかし両方ともまだHot 100には登場していない)

 

☆74 Billie Eilish – bury a friend

 Billie Eilishの“bury a friend”が74位に登場。リリースからわずかで2日でのチャート登場です。DLとストリーミングの両方で高い数値を記録しています。

 Billie Eilishはストリーミングで高い期待を受けており、Spotifyの直近のランキングでは11曲が200位圏内にランクインしています。昨年のヒットを受けて過去曲の再生数が伸びたことも特徴的です。Apple Musicでも現在7曲が200位圏内に入っています。

 

 

☆65 Yo Gotti feat. Lil Baby – Put A Date On It

 Yo GottiがLil Babyを迎えた“Put A Date On It”が65位に登場。リリース初日あたりは注目が薄かったものの、徐々にストリーミング再生数を伸ばしてHot 100入りを成し遂げました。

 Yo Gottiの曲は以前から人気がApple Music>>Spotifyになる傾向があり、この曲もそうなっています。Apple MusicとSpotifyは両方とも「ラップが人気」という大まかな傾向は似ていますが、それぞれで好むラッパーは微妙に違うこともあります。

 この曲に関しては、先にプレイリストに入れたのはSpotifyの方でしたが、(のちにApple Musicのプレイリストもこの曲を追加)結局Spotifyではあまり人気が出ませんでした。

 

△38 Luke Combs – Beautiful Crazy

 今年のグラミー新人候補、巨漢のカントリーシンガーLuke Combsの“Beautiful Crazy”が38位に浮上!これで彼はデビューからシングルが全てトップ40入り(計5曲)ということになりました。

 この曲はカントリー系ラジオで今週4位。1位ではない、ということまだ伸びしろがあるということでもあると思います。

 主要なポイント源は他のカントリーシンガーと同じくカントリー系のラジオですが、この曲はApple Musicでもトップ100に食い込むなどストリーミングでも健闘を見せています。

 

◇29 Dan + Shay – Tequila

 カントリーデュオDan + Shayの“Tequila”が29位に再登場!これは驚きのチャート動向です。先週私は 

昨年にHot 100から外れてしまった曲ですが、現在ポップ系のラジオに人気が飛び火しており人気をキープ。Hot Country Songsでは自身の”Speechless"を上回っており、これは”Speechless"(Hot 100で32位)よりも高いポイントを記録していることを表します。来週以降、まさかの再登場の可能性もあるかも……? 

述べたのですが、まさか次の週に再登場するとは思っていませんでした。

 21週目以降51位以下に落ちたらチャートに落ちるというルールに則り昨年末にチャートから外れた“Tequila”。この時はクリスマス曲がチャートに多くランクインしており、それらに押し出される形でチャートを外れていました。

 このルールは「今後ピークを更新しそうな見込みのある曲」には特例で適用されないのですが、この曲は当時「もう伸びない」と判定されていました。この時点から既に従来のカントリー系ラジオの他にも、アダルトポップ系やポップ系など他系統のラジオでも少しずつかかり始めており、一応ヒットの兆しはありましたが、「元のヒットを上回ることはない」と判定され特例は適用されませんでした。

 しかしここ最近はラジオでの再生数増が際立ち、もはや無視できない存在になったことから今週ついにHot 100に再登場を果たしました。今週ラジオ?位とかなり優秀な数字を残しています。そのラジオでの好調をキープし、もともとのピーク(21位)を更新できるでしょうか!

 一回チャートを外れたものの、ヒットを見込まれてHot 100再登場を果たした曲は過去にいくつかあります。Imagine Dragonsの“Demons”は再登場したのちロングヒットになり、6位まで到達しました。

 ほかKeith Urbanの”The Fighter”は浮上を見込まれて47位に再登場したものの、次の週にラジオが大きく落ちたため、特例適用からわずか1週間でチャートから外れてしまいました。この「伸びそうな曲を外すかどうか」の判断はチャートで難しい作業の一つだと思います。

 

△28 Blueface – Thotiana

 キャッシュマネー所属の新人ラッパー、Bluefaceの“Thotiana”が絶好調。66位→28位と大きく順位を伸ばし、ヒットの目安とされるトップ40まで到達しました。この曲は彼にとって初のHot 100だったので、トップ40も自身初。

 この曲はApple Music、Spotify両方での絶好調に加えて、YouTubeで公開されたYGを迎えたリミックスがヒットしたことが順位上昇の要因だと思います。

 

―5 Travis Scott – SICKO MODE

 ロングヒット中になっているTravis Scottの“SICKO MODE”。登場週から4位に登場し、今週トップ10滞在が26週に到達しました。ラップ曲としてはDrakeの”God’s Plan”と並んでトップ10滞在が最長です。ラップ曲はポップスと比べると、関連系統も含めてラジオの規模が小さいため従来はロングヒットしづらいジャンルでしたが、ストリーミングの台頭によってロングヒットしやすくなりました。

 ほか今週10位の“Girls Like You”は今週トップ10滞在が歴代で2番目に長い32週目を迎えています。この2曲はいずれも先日のスーパーボウルのハーフタイムショーで披露されており、その効果が来週のチャートに反映される見込みです。

 

※トップ10滞在週が長い曲ランキング

週数      
33 Ed Sheeran Shape of You 2017
32 LeAnn Rimes How Do I Live 1997–98
The Chainsmokers feat. Halsey Closer 2016–17
Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 2018–19
31 Mark Ronson feat. Bruno Mars Uptown Funk 2014–15
30 Santana feat. Rob Thomas Smooth 1999–2000
29 LMFAO feat. Lauren Bennett and GoonRock Party Rock Anthem 2011–12
28 Jewel Foolish Games / You Were Meant for Me 1997–98
Bruno Mars That's What I Like 2017
27 Ed Sheeran Perfect 2017–18
26 Savage Garden Truly Madly Deeply 1997–98
Drake God's Plan 2018
Travis Scott Sicko Mode 2018-19

 

  YouTubeで異常な「低評価」がついている今年のハーフタイムショーですが、一定の宣伝効果はあったようで、関連楽曲がストリーミングで一定の伸びを見せいています。(例:Apple Musicでは200位付近だった“Girls Like You”がトップ100に入るなど) 

f:id:djk2:20190206232154j:plain

↑低評価の多い今年のパフォーマンスのビデオ。昨年のJustin Timberlakeは4/3以上は高評価だった。(それ以前の動画にはほとんど低評価がついていないことが多い)

 

△4 J. Cole – MIDDLE CHILD

 J. Coleの“MIDDLE CHILD”がキャリア最高位の4位へ浮上!(これまでは”ATM”の6位が最高位) 先週は集計が1.5日程度でしたが、今週は7日分フルに集計されたため、大きく順位を伸ばしました。

 今週DL5位、ストリーミング2位と大きな注目を集めています。この曲はSpotifyApple Musicの両方で今週1位でしたが、YouTube再生数(この曲にビデオは無い)で”7 rings”を下回っています。

 2016年の”4 Your Eyez Only”、そして2018年の“KOD”と2つのアルバムがストリーミングで莫大な再生数を記録し、シングルチャートをも席巻。彼がシングルチャートで高い順位を記録した曲はアルバムリリース時にピークを迎えており、「アルバムの一部」として再生された曲がそのままシングル上位に入ったということが分かります。

 このようにアルバムアーティストであったJ. Coleでしたが、そのアルバムでの注目度向上もあってか、今回はシングルリリースでも成功を収めました。

 ストリーミングではシングルと非シングルの区別があまりつかないため、今後はシングルメインで活躍するアーティストよりも、多くの曲(時間)でリスナーを魅了できるアルバムアーティストの時代が来るのでは?と個人的には考えています。

 

▽× Imagine Dragons – Natural

 Imagine Dragonsの“Natural”が今週チャートから外れました。ピークは13位、チャート滞在は27週でした。悪くはないですが、以前のシングルと比較するとやや見劣りします。

 2017年のアルバム“Evolve”から、“Believer”、”Thunder”と2つのシングルがHot 100に1年間も滞在した超ロングヒットが記憶に新しいImagine Dragonsですが、今回のアルバム“Origins”からの最初のシングルはその半分程度の滞在に終わってしまいました。

 次シングル“Bad Liar”は現在オルタナティブ系やポップ系のラジオでかかり始めており、そろそろHot 100に入ってくると思います。この曲はSpotifyでも人気です。

 

今週チャートから外れた曲 (14曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Future – Call The Corner (🗻100位 /⏰1週)

99 Ariana Grande – imagine (🗻24位 /⏰5週)

98 宇多田ヒカル & Skrillex – Face My Fears (🗻98位 /⏰1週)

96 Maren Morris – GIRL (🗻96位 /⏰1週)

91 Cody Johnson – On My Way To You (🗻91位 /⏰1週)

90 Silk City & Dua Lipa – Electricity (🗻62位 /⏰10週)

83 Future – F&N (🗻83位 /⏰1週)

81 Mustard & Migos – Pure Water (🗻81位 /⏰1週)

79 Future – Rocket Ship (🗻79位 /⏰1週)

75 Future – Tempatation (🗻75位 /⏰1週)

72 Camila Cabello – Consequences (🗻51位 /⏰12週)

65 Future – Never Stop (🗻65位 /⏰1週)

57 Future – Jumpin On A Jet (🗻57位 /⏰2週)

50 Imagine Dragons – Natural (🗻13位 /27週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Backstreet Boys – DNA 🎫

5 WeezerWeezer (Teal Album) ※

14 Bring Me The Horizon – amo

18 Various Artists – XXXTENTACION Present: Members Only, IV ※

28 Boogie - Everything Is For Sale

56 Bethel Music – Vicotry: Recorded Live

62 Michael Franti & Spearhead – Stay Human, Vol. Ⅱ

78 Various Artists – Grammy Nominees 2019

99 Julia Michaels – Inner Monologue, Part 1 (EP)

139 Rival Sons – Feral Roots

 

※先週は短い集計だったアルバム (=はじめて1週間フルに集計されるのが今週のアルバム)

🎫 Backstreet Boysはセールスのかなりの割合をチケット戦略からゲット。

 

その他

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ariana Grande - 7 rings

・benny blanco, Halsey & Khalid - Eastside

・Sam Smith & Normani - Dancing With A Stranger

・Luke Combs - Beautiful Crazy

・Post Malone - Wow.

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

Mashmello – Alone

 ゲームのフォートナイト内で「仮想」DJイベントを行ったMarshmelloの楽曲がDLやストリーミングで再注目。一番人気は現在ヒット中の“Happier”ですが、それに次ぐ人気だったのは”Alone”。来週Hot 100再登場の可能性も考えられます。

 

21 Savage – can’t leave without it

 実はイギリス出身ということが判明し、不法入国疑惑で逮捕騒動が巻き起こった21 Savage。それに伴い関連曲のストリーミングが少し伸びたので、再登場もあり得るかも。

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)