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チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

thank u, next(アルバム)関連記録のまとめ + 「ポップス」としての意義など

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 2/23付けのUSアルバムチャートで、Ariana Grandeの”thank u, next”が見事アルバム1位を獲得。このアルバムで注目されたのは高いストリーミングの数字です。USでは1週間だけで3億700万ストリーミングを記録。これは女性アルバム、またはポップスのアルバムとしては歴代最高の数字です!

 また、このストリーミングの数字の効果もあって、この週のHot 100(USシングルチャート)の1位2位3位を独占することに成功!

 

 

 

・アルバム関連

 

 USのアルバムチャートは現在、アルバムの純セールス+シングルのDL+ストリーミングという3部門の合算で集計されています。“thank u, next”はセールス11.6万枚、シングルのDLは1.6万枚相当の数字、ストリーミングは22.8万枚相当の数字を記録し、合計36万枚を売り上げたと計上されました。

 この中で注目されたのはストリーミングで22.8万枚相当の売上を記録した、という点です。これを再生数に換算すると3億700万再生です。この数字がどのような数字かを手短に説明すると、

1 歴代で8番目の数字 (かぶりを除く場合)

2 女性のアルバムでは最多の数字

3 ポップスのアルバムでは最多の数字

 

……となります。まずはこのストリーミング数がどのようなものかを読み解いていきます。

 

    再生(M) 曲数
1 Drake / Scorpion 746 25
2 Lil Wayne / The Carter V 433 23
3 Post Malone / beerbongs & bentleys 431 18
4 Drake / Scorpion (2) 391 25
5 Drake / More Life 385 22
6 Travis Scott / Astroworld 349 17
7 Kendrick Lamar / DAMN. 341 14
8 J. Cole / KOD 323 12
9 Ariana Grande / thank u, next 307 12
10 Drake / Scorpion (3) 290 25
11 Drake / More Life (2) 254 22
12 Drake / Views 245 20
13 Post Malone / beerbongs & bentleys (2) 240 18
14 Meek Mill / Championships 235 19
15 Migos / Culture Ⅱ 226 24
16 Eminem / Kamikaze 226 13
17 Drake / Scorpion (4) 212 25
18 Kendrick Lamar / DAMN. (2) 204 14
19 Cardi B / Invasion of Privacy 202 13
20 Drake / Views (3) 186 20

 再生数はM=100万単位 (四捨五入)

アルバム名の横にある()内数字はリリース後何週目の数字か?ということです。特に表記が無いものは1週目の数字です。

 

 ↑の表は歴代のUSアルバムチャートにおいて最もストリーミングを集めたアルバムのランキングです。一部アルバムは2週目以降も高い再生数を記録しており、かぶりも見られます。“Scorpion”は2週目でも歴代4番目の再生数を記録しています。先に述べた歴代8番目の再生数(かぶりを除く)とは、この2週目の”Scorpion”を除いているという意味です

(ちなみに“Views”の再生数が3週目>2週目なのは、Spotifyなどでリリースされたのが3週目だからです。最初の2週はApple Music限定リリースでした)

 

 この表から分かることは、ここ近年ストリーミングで強いアルバム=ラップということです。それは多くの場合は男性ラッパーです。(Cardi Bは例外)

 その中でポップスに分類され、さらには女性アーティストのAriana Grandeが高いストリーミング数を記録されたから注目されたのです。ビルボードはこの数字について、「歴代で最もストリーミング数の多いアルバムトップ20のうち、唯一のラップ“ではない”アルバムだ」と説明しています。

 

 さらに注目したいのはアルバムの収録曲数についてです。現行のUSアルバムチャートでは曲数が多ければ多いほど再生数が伸びて、その分チャートで有利になるというシステムがあります。そのことから、昨今のアルバムでは曲数の多い作品が目立ちます。(曲数が15以下の作品は「曲数」の項目に色をつけました)

 しかしAriana Grandeのアルバムは曲数が12とそこまで多くありません。そこで、曲数あたりの再生数を計算すると以下のようになります。

    平均 再生(M) 曲数
1 Drake / Scorpion 29.8 746 25
2 J. Cole / KOD 26.9 323 12
3 Kanye West / ye 25.7 180 7
4 Ariana Grande / thank u, next 25.6 307 12
5 Kendrick Lamar / DAMN. 24.4 341 14

 

 破格の再生数の“Scorpion”、同じく12曲の”KOD”、そして7曲構成の”ye”に次ぐ4位にランクインしています。「収録曲数」という要素を考慮すると、”thank u, next”のストリーミング数はかなり優秀ということが分かります。

 

・女性、ポップスのアルバムとして最多のストリーミング 

 女性アーティスト、またポップアーティストとして歴代最多のストリーミング数を記録した”thank u, next”。これまではどのアルバムが優秀な数字を残してきたのかを振り返ります。

 

    再生(M)
1 Ariana Grande / thank u, next 307
2 Cardi B / Invasion of Privacy 202
3 Ariana Grande / thank u, next (2) 169
4 Nicki Minaj / Queen 128
5 Ariana Grande / Sweetener 126

 Honorable Mention

・Beyoncé / Lemonade ・The Carters(Beyoncé + Jay-Z) / EVERYTHING IS LOVE ・Ella Mai / Ella Mai ・Camila Cabello / Camila

 

 女性ラッパーの2大巨頭、そしてAriana Grandeの作品がランクインしています。”thank u, next”は2週目でも依然として高い数字をキープしており、3位にランクインしています。3週目以降も優秀な数字を残し続けそうです。6位以下にはR&Bシンガーが複数登場しています。

 

 次にポップアーティストのアルバムの歴代のストリーミング数を見ていきます。

 

    再生(M)
1 Ariana Grande / thank u, next 307
2 Ariana Grande / thank u, next (2) 169
3 Ed Sheeran / Divide 127
4 Ariana Grande / Sweetener 126
5 Justin Bieber / Purpose 77

 Honorable Mention (50M~60M再生程度)

・Camila Cabello / Camila ・Justin Timberlake / Man of the Woods ・Shawn Mendes / Shawn Mendes ・Lady Gaga & Bradley Cooper / A Star Is Born

 

 “thank u, next”は2週目でも他のポップアルバムよりも高い数値を記録しています!ポップアルバムとして、いかに高い数字を1週目に記録していたかが分かります。3週目以降もこの表を独占しそうな気配があります。

 5位はJustin Bieberの“Purpose”。2015年のリリース当時の感覚では破格のストリーミング数ですが、現在の感覚では「やや多い」程度の数字に収まっています。ストリーミングは年を経るごとに利用者が増加しているため、最近の記録であればあるほど数字が伸びる傾向にあります。

 ちなみにポップアーティストはアルバムをリリースすると、純セールスも高くなる傾向にあります。(アルバムを“丁寧”にリリース、ファンベースが強固などの理由が考えられる)そのことから、今までポップス作品がアルバムチャートで首位を獲得する場合は純セールスの割合が高いことが多かったのですが、”thank u, next”はポップスアルバムとしては初めて、「総売上」の半分以上をストリーミングから計上したアルバムとなりました。*1

 

 

・Ariana Grandeにとって初めて「2週目」のアルバム1位に。

 Ariana Grandeは過去に4回アルバム1位を獲得しています。(“Dangerous Woman”のみ1位を逃す。2週目以降もストリーミングを「爆稼ぎ」したDrakeの”Views”に1位を阻まれた*2) これは2010年代女性アーティストとしては最多タイの数字です。(Taylor Swiftと同数)

 そのアルバム1位を獲得した次の週はセールスなどを落とし他のアルバムに1位を取って代わられてきました。

 今回のアルバムでははじめて2週連続で1位を取ることに成功しました。基本的に一回しかしないアルバムの「購入」と比べて、ストリーミングは2回目以降も行われるので、ストリーミングの数字が高いアルバムは2週目以降も数字が安定する傾向にあります。

(2週目以降が安定する?については…… BROCKHAMPTON、アルバム1位から3週後に圏外へ? アルバム1位の「その後」 - チャート・マニア・ラボ

 

・短いスパンで複数アルバムが1位に

 前作の“Sweeterner”のアルバム1位から5ヶ月と22日で再びアルバム1位を獲得したAriana Grande。これはOlivia Newton-Johnが1974年~1975年に異なるアルバムで1位を獲得した時以来、女性アーティストとしては最短のスパンで異なるアルバムを首位に送り込んだ、ということになります。

 ちなみに男性アーティストではBTSが昨年、Love Yourselfシリーズ(“Tear”→”Answer”)が両方とも3ヶ月のスパンでアルバム1位になりました。また、2017年にはFutureが“Future”と”Hndrxx”を2週連続で1位にしています。

 

・シングル関連

 

・史上2回目のHot 100トップ3支配

 

1位 7 rings

2位 break up with your girlfriend, i’m bored

3位 thank u, next

14位 needy

17位 NASA

21位 imagine

22位 bloodline

25位 ghostin

26位 fake smile

27位 bad idea

38位 in my head

48位 make up

 

 

 アルバム全曲がチャート入りし、この週(2/23付け)のHot 100を制圧したAriana Grande。この中で大きく注目されたのは1位2位3位を同時に支配したことです。

 Hot 100の歴史を紐解くと、1位と2位までの同時支配は過去に20回以上ありましたが、1位2位「3位」までの支配となるとかなりレアで、1964年のThe Beatles以来、史上2回目の偉業ということになります!(The Beatlesはこの時1位-5位までを独占していた)

 

(ここからマニアックで少し難しい内容)

 この記録を達成したのはもちろん各曲が高いストリーミングを記録したということが大きいのですが、それ以外にも「ラジオ」が影なる要因として効いていると私は考えました。

 「アルバム」の項目で説明しましたが、アルバム”thank u, next”のストリーミング数は高いとはいえど、歴代で1番というわけではありません。曲数ごとの平均で割っても1番にはなりません。

そのことから、他のアルバムでもっと高いストリーミングを記録していた曲が存在するということが分かり、今回以上のストリーミング数の高さによってHot 100上位を独占できるアルバムがあったのではないか?ということが考えられます。

 しかしHot 100の集計対象はストリーミングだけではありません。ラジオやDLも集計対象です。この週Hot 100で3位に入り込んだシングルの”thank u, next”はラジオで5位でした。これに対し、同じようにアルバムリリース週に複数曲がトップ10に入ったラッパーの曲はここまでラジオが高いことがあまり無いのです。(先行シングルをリリースして……と丁寧にプロモーションしたDrakeの“God’s Plan”はその週にラジオ13位だった。他のラッパーは先行シングルをあまり用意しないのでラジオ順位がより低いことが多い)

これをさらに詳しく解説すると、アルバムリリース時、順位が高くなる曲は主に3種類 ①大ヒットだった先行シングル ②今勢いのある先行シングル ③アルバムと同時にリリースされた曲の一番人気 です。そのうち①はリリースから時間が経過し、ラジオが落ちているが、アルバムのリリースによってストリーミング数が蘇り再浮上します。しかし新規でDLを稼げないことやラジオが②と比べて足りないことにより②や③ほどのヒットにならない場合があります。今回の”thank u, next”は①にあたりますが、このポジションの曲の割にはラジオが多かった、ということです。 *3

 

 ではなぜラップと比べてAriana Grandeのほうがラジオの数値が高いのか?それはポップ系ラジオのほうがラップ系統のラジオよりも規模が大きいことが主な理由だと思います。そして、ラジオが落ちきる前にアルバムリリースを敢行したということも大きいと思います。

(マニアック終わり)

 

 上記の内容をまとめると、ポップアーティストであるAriana Grandeが好タイミングでアルバムをリリースしたことによって、チャート上でラジオの恩恵を受けることができた、というものです。

 つまり今回の1位―3位同時支配は、「ポップアーティストがラッパーのようにアルバムをリリースする」という珍しいミッションに挑戦したからこそ達成できた記録と私は考えています。もちろん、それを成し遂げるだけのAriana Grandeへの注目度、そして的確なタイミングにアルバムをリリースしたことも重要な要素です。

 

 また1位&2位同時支配だけでも女性アーティストでは珍しく、両方とも自身の曲で達成するのは2005年のMariah Careyに次いで2回目です。(客演を含む記録をカウントすると4人目です。2014年のIggy Azaleaの記録にはAriana Grande自身も貢献しています)

 

2002 Ashanti 1:Foolish 2:What’s Luv?(客演)

2005 Mariah Carey 1:We Belong Together 2:Shake It Off

2014 Iggy Azalea 1:Fancy 2:Problem(客演)

2019 Ariana Grande 1:7 rings 2:break up with your girlfriend, i’m bored

 

・トップ10に同時に3曲がランクイン! (自身2回目)

 1位-3位に同時にランクインした、ということはトップ10に同時に3曲がランクインしているということにもなります。この記録は歴代で22回あったのですが、その中でAriana Grandeがレアなのはこの記録を「2回達成した」という点です。

 Ariana Grandeが以前トップ10に3曲を送り込んだのは2014/8/30付けのチャートです。

4位 Ariana Grande feat. Zedd – Break Free

7位 Ariana Grande feat. Iggy Azalea – Problem

10位 Jessie J, Ariana Grande & Nicki Minaj – Bang Bang

(その週のHot 100 → https://www.billboard.com/charts/hot-100/2014-08-30 この週にはIggy Azaleaもトップ10に3曲入っている)

 

 このように「トップ10に3曲が同時ランクイン」を違う年に「複数」達成したアーティストは珍しいです。これらの記録は多くラッパーによって達成されています。*4

 

50 Cent (2003年・2005年)

・Lil Wayne (2008年・2018年)

・Drake (2018年の4月・7月)

・Ariana Grande (2014年・2019年)

 

 この記録が表しているのは、「非常に注目を集めた時期」が複数回ある、ということだと思います。

 

・全曲がHot 100にエントリー

 アルバム全曲がHot 100にエントリー!”make up”以外は(ヒットの目安とされる)トップ40圏内に入っており、順位も高めです。

 「アルバム全曲がHot 100にエントリー」という事象はストリーミング時代にはよく見られる現象ですが、女性ポップアルバムでこのような記録を成し遂げるのは初めてです。(この記録に最も近づいていたのは自身の前作”Sweetener”です。このアルバムは収録曲15のうち9曲がHot 100に入りました。)

 

参考 ストリーミング時代に全曲がHot 100に入ったアルバム

 

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 ※上記の表には載せませんでしたが、Justin Bieberの“Purpose”、Ed Sheeranの”÷“はボーナストラックを除けば全曲がHot 100にエントリーしています。

※同じく載せませんでしたが、Eminemの“Kamikaze”もSkit曲を除けば全曲がエントリーしています。(再生数は十分だったので、ビルボードがルール上除外した可能性も?)

 

・このアルバムのシングルがきっかけでポップス復権

 昨年の にかけてラップ曲が Hot 100首位を独占しつづけるということがありました。この記録は“Girls Like You”が首位に立ったことによって途切れました。その後23週のHot 100で首位を獲得したのは以下の曲です

 

Maroon 5 feat. Cardi B - Girls Like You (計7週)

・Ariana Grande - thank u, next (計7週)

Travis Scott - SICKO MODE (計1週)

・Halsey - Without Me (計2週)

・Post Malone & Swae Lee – Sunfower (計1週)

・Ariana Grande - 7 rings (計5週)

 

 それぞれ1週ずつ1位を獲得した“SICKO MODE”、”Sunflower“を除けばそれ以外は全てポップ曲です。それまではラップ最強状態が続いていたHot 100の流れが変わり、ポップ曲の活躍が際立っているのです。

 そのうちの約半数の週で1位を獲得しているのはAriana Grandeの今作のシングル2曲です。ほか“Girls Like You”で客演のCardi B、”Without Me”のHalseyなど女性アーティストによる首位獲得も目立っています。

 この半年程度ポップス&女性アーティストの活躍が際立っており、そのムーブメントを主導しているのはAriana Grande、またはこのアルバムなのでは?ということです。

 

 

・各ストリーミングサービスでの記録 

 

・”7 rings”がSpotify上で最もグローバル週間再生数が多い曲に

 収録曲の”7 rings”はリリースされたその週、全世界のSpotifyで71,467,874再生を記録し歴代の記録を更新しました。

  1日あたりの再生数だと歴代3位なのですが、"7 rings"は1週間通して高い再生数をキープしたため、週間の再生数で歴代のトップに立ちました。(1日の再生数がこれよりも多い"All I Want for Christmas Is You"、"SAD!"はそれぞれクリスマス、訃報というイレギュラーの出来事によって発生した一時増加のため)

 また、この曲はSpotifyの最大手国アメリカで週間再生数歴代1位にはなっていない(3位)のですが、この記録で1位2位のDrakeと比較すると、Ariana Grandeはより世界的に満遍なく人気なので、全世界の週間再生数1位を獲得できたのかもしれません。

 (参考:https://kworb.net/spotify/

 

Apple Musicでも活躍

 このアルバムリリース当日、収録曲(12曲)がアメリカのApple Musicランキングで1位~13位にかけてランクインしました。12位にJ. Coleの“MIDDLE CHILD”があったため「完全なる制圧」ではないですが十分ランキングを支配していると言える成績です。

 一般的にUSのストリーミングではラップ+R&Bがかなり強いとされていて、Apple Musicではそのような傾向がさらに際立ちます。週によってはトップ100のうち9割以上がラップまたはR&Bによって独占されている週もあります。

 このApple Musicでの活躍は今回のアルバムでAriana Grandeがポップスアーティストとしては異例の活躍を見せた、ということの証左の一つでもあると思います。

 

YouTubeグローバル週間再生数で3曲が1位に

 アルバムからのシングル3曲、”thank u, next”、”7 rings”、”break up with your girlfriend, i’m bored”は全てYouTubeのグローバル週間再生数ランキングで首位に立ちました!このランキングは2016年~閲覧できるようになっていますが、3曲にわたって1位を獲得したアーティストは今のところいないようです。(2曲で1位は多い) これはYouTubeが多くの国でオープンになっており、世界的な人気アーティストがバラけやすいことが理由と思われます。

 それぞれのグローバル首位期間は1週で終わっており、長きに渡って圧倒的な再生数を記録したというわけではありませんが、それでも新曲のビデオがリリースされるたびに世界的に注目を集めた、ということが分かります。

 

YouTube週間グローバルランキングで2曲が首位に立ったアーティスト

Rihanna、Drake、Camila Cabello(グループ時代含む)、Ed Sheeran、Daddy Yankee、Nicky Jam、Ozuna 、BTS、Cardi B、Neha Kakkar、Anuel AA

※客演を含む Neha Kakkarはインドのシンガー、ジャンルは「ボリウッド

 

 

・意義など

 この記事で何回も触れましたが、USのストリーミングで覇権を握ったのはラッパーたちでした。彼らはリリースのたびに注目を集め、アルバム単位で爆発的な再生数を記録。そのたびにHot 100を「ジャック」し大きな存在感を示しました。

 さらには昨年のHot 100での34週連続ラップ首位に代表されるように、ラップ曲はストリーミングの勢いからチャート上位を支配するようになり、USのチャートは「ラップ1強」とも言える状態が訪れつつありました。

 その環境の中で、ポップスのアルバムがここまで結果を残したということは意義があることだと思います。

 ここで重要だったのはアルバム単位で成功を収めたということだと思います。ストリーミングではシングルでも非シングルでも別け隔てなく再生できるので、超人気アーティストはアルバムが「丸ごと」再生され、非シングルも含めて収録曲がストリーミングのランキングを席巻します。

 特にUSのストリーミングでは「アルバムを丸ごと聞く」という習慣が強く、アルバム単位で注目を受けるラッパーたちがシングル、アルバムの両方をここ2年くらい支配しました。一方、ポップスアーティストはこれまでラジオをうまく利用したシングルヒット戦略を採用していた影響か、ストリーミングでアルバムが丸ごと聞かれるケースは比較的少なかったです。

 

 ストリーミングでアルバムが丸ごと人気を確保すれば、シングル&アルバムチャートを両取りできるだけでなく、2週目以降も数字を高くキープできる傾向にあります(購入は基本1回だが、ストリーミングは何度もできるため) また非シングル曲もシングルと遜色ない再生数を得ることもあります。(Cardi Bの“Invasion of Privacy”はアルバム収録曲全てがRIAAでゴールド以上の認定を受けた

 このことから、現在ストリーミングにおける最大級の成功とはアルバムが「丸ごと」注目を受けるケースであると考えています。今回の”thank u, next”は今まででは珍しい「女性・ポップス」のアルバムで大注目を集めたことに意味がありそうです。そしてそれに至るまでのイメージ戦略(アルバムを丸ごと聞いてもらうためには「人」への興味も重要かと思われる)、そしてリリース戦略が見事でした。

 

 この流れを受けて期待したいのはBillie Eilishです。”bury a friend”はHot 100で14位まで到達していますが、その他のシングルではトップ40入りの経験が無く、チャート成績ではまだ不足感もあるように思われる彼女ですが、ストリーミングでは現在熱狂的な支持を受けており、ラジオでかかっていないシングルが複数Hot 100に登場しています。

 Billie Eilishは2017年にEPをリリースした当初はアルバムチャートで圏外になるなど注目度が低かったですが、新曲リリースなどで徐々に注目度を高めてストリーミング数が浮上。リリースから約1年半が経過した現在、アルバムチャートで15位前後まで到達しています。

 そんなストリーミングで熱を高めたBillie Eilishが、注目度MAXの状態で3/29にリリースするアルバム"WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?"でどこまで結果を残すかが楽しみです。

 

 

・参考&関連記事

 

ビルボードがこの週のシングルチャート、アルバムチャートについてまとめた記事です(ここに記録等が一部載っています)

 

 

 

・「成功の要因は何か?」「次に大成功するポップアクトは誰か?」など、このアルバムに関する問いにビルボードのスタッフが答える記事です

 

 

・thank u, next(シングル)の動向をまとめた記事です

 

 

・Hot 100に収録曲が大量登場したアルバムについてです

 

ビルボードがアルバムチャートにシングルDL、ストリーミングを導入した時の記事(この時はシングルヒット(主にDL)の数字がチャートを左右すると考えられていて、シングルが強いAriana Grandeがこの記事のサムネになっている) 

 

ウィキペディアビルボード関連記録一覧ページ

 

 

*1:ちなみに2週目の“÷”も純セールスの割合が50%を下回っているが、シングルDLの数字も考慮すると「ストリーミングがポイントの過半数」にはならない Ed Sheeran's 'Divide' Spends Second Week at No. 1 on Billboard 200, 'Beauty and the Beast' Debuts at No. 3 | Billboard

*2:でも実はセールスもBlake Sheltonに負けて1位じゃない

*3:例えばDrakeの“Scorpion”では①が“God’s Plan”、②が”Nice For What”、③が“Nonstop”または”In My Feelings” Post Maloneの“beerbongs & bentleys”では①が”rockstar”、②が”Psycho“、③が”Better Now”

*4: ウィキペディアリストを見るとわかりやすいと思います