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Hot 100 3/30 見どころ 【Jojiの”SLOW DANCING IN THE DARK"がついにHot 100デビュー】

 

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 こんばんは!今週最大のトピックはJojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”がついにHot 100に入ったことでしょうか!

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Jojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”がついにHot 100に登場!(96位)彼にとって初のHot 100、88risingメンバーがHot 100入りするのも初

・Iggy Azaleaの“Sally Walker”が62位に登場

・“Old Town Road”が好調(52位→31位)

・アルバム1位は引き続きJuice WRLD

 

・今週のトップ10

      3月30日   R D S
-   1 Ariana Grande 7 rings 2 6 1
  2 Halsey Without Me 1 7 8
  3 Post Malone & Swae Lee Sunflower 10 4 2
4 Post Malone Wow. 7 2 4
  5 Cardi B & Bruno Mars Please Me  8 9 7
  6 Marshmello & Bastille Happier 6 17 11
  7 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 12 1 24
8 Jonas Brothers Sucker  19 3 12
  9 J. Cole MIDDLE CHILD 🍎✅ 34 24 6
10 Meek Mill feat. Drake Going Bad 18 32 10

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

(※🚩の“Murder On My Mind”は今週Hot 100でトップ10に入っていない)

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

(※ラジオで伸びが大きいと曲自体のポイントはマイナスでも◎がつくことがあります。今週の“Sucker”はそれに該当します)

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆96 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK

 Jojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”が96位に登場!リリースから約半年が経過。100位に近づいたことはありましたが、Hot 100デビューは今週が初です!彼にとって初のHot 100、また88risingメンバー内でも初のHot 100入りです。

 電子レンジのように低速で回転するというムーブメント、#microwavechallenge の効果によるストリーミング増がHot 100入りの理由と思われます。また、このムーブメントが無くとも元から一定のストリーミングは記録しており、リリース以降アメリカのSpotifyランキング圏内に入り続けています。(ただしクリスマス曲にストリーミングが集中するクリスマス期は除く)つまり、元からの曲への支持に加えミームがプラスされ、Hot 100に入るような規模の再生を記録した、ということでしょうか。

 

 日本のアーティストとしては歴代で12回目のHot 100入り。2016年にピコ太郎が久々にHot 100入りして以降は比較的ハイペースで日本人シンガーがHot 100入りを果たしています。(そしてピコ太郎以来の日本人男性シンガーのHot 100入り)

(彼の出身は大阪ですが、音楽キャリアを始めたのはアメリカです。)

 

☆歴代の日本人Hot 100エントリー

1963年 坂本九Sukiyaki (🗻1位・⏰14週)

1963年 坂本九 – China Nights (🗻58位・⏰3週)

1979年 ピンクレディー – Kiss in the Dark (🗻37位・⏰11週)

1980年 YMO – Computer Game Theme from The Circus (🗻60位・⏰9週)

1981年 横倉裕 feat. Patti Austin – Love Light (🗻81位・⏰3週)

1981年 オノ・ヨーコ – Walking On Thin Ice  (🗻58位・⏰10週)

1990年 松田聖子 feat. Donnie Wahlberg – The Right Combination (🗻54位・⏰13週)

2016年 ピコ太郎 – PPAP (🗻77位・⏰4週)

2018年 Sofi Tukker feat. Nervo, The Knocks & 植野有砂 – Best Friend (🗻81位・⏰5週)

2018年 John & Yoko/The Plastic Ono Band With The Harlem Community Choir - Happy Xmas (War Is Over) (🗻42位・⏰2週) 

2019年 宇多田ヒカル & Skrillex - Face My Fears (🗻98位・⏰1週)

2019年 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK (🗻96位・⏰1週)

 

🗻ピーク順位 ⏰チャート滞在週数

※ただしビルボードはこのコラムで、“Happy Xmas”を日本人のHot 100エントリーとみなしていなかった(宇多田ヒカルのHot 100エントリーを「植野有砂以来の日本人によるHot 100入り」と表記)

 

☆62 Iggy Azalea – Sally Walker

 Iggy Azaleaの“Sally Walker”が62位に登場。SpotifyApple Musicでは注目が薄いですが、ダウンロードとYouTubeで高い数値を記録してHot 100入りを果たしました。彼女の昨年のシングル、”Kream”と似たようなチャートアクションですが、今回はその時よりもDLが高めです。

 この曲で話題になっているのは、Cardi Bの“Money”と似ているという点です。私も聴いてみて、出だしのサウンドで「マジか~~」と思いました。

 興味深いのはこの2曲は同じプロデューサーが担当しているということです。この2曲を担当したJ. Whiteは以前からCardi Bとタッグを組むことが多く、彼女がHot 100で首位を取った“Bodak Yellow”、”I Like It”はいずれも彼がプロデュースを担当しています。

 これに対しては一般人も多くこのことをツイートしています。プロデューサーのJ. Whiteは一般人のツイートのひとつを引用リツイートする形でこの説を否定しています。

 

☆55 ScHoolboy Q – Numb Numb Juice

 ScHoolboy Qの“Numb Numb Juice”が55位に登場。昨年のBlack Pantherのサントラに収録されていた”X”の時以来、約1年ぶりのHot 100です。この曲は主にApple MusicとSpotifyで人気です。

 

▽35 Juice WRLD – Robbery

 先週に引き続き、Juice WRLDがアルバム1位の座を確保しています。トータル売上は7.4万で、その多くをストリーミングから記録しています。うち純セールスは4000程度でした。(Hits Daily Double調べ)

 Hot 100には収録曲4つが今週はランクイン。順位が高いのは先行リリースされていた“Robbery”と”Hear Me Calling”の2曲です。

 次の週も目立ったアルバムリリースが無かったため、このアルバムは次週もアルバム1位になる可能性あり。今週2位の”thank u, next”と次週のアルバム1位の座を争っています。

 

△32 Lil Nas X – Old Town Road

 Lil Nas Xの“Old Town Road”が52位→31位と浮上。ストリーミング・DLを大きく伸ばしています。

 現在Apple Musicの1位まで到達(今週のチャートの集計期間内ではない)しており、今後もストリーミングでの好調は続きそうです。あとはラジオもある程度伸びてくれば、トップ10入りの可能性が高そうです。

 

 そして、今週この曲が「ビルボードスタッフが答える」シリーズのテーマに。質問項目は①このヒットの何が興味深いか? ②どこまでヒットするか? ③彼は今後も成功が続くか? ④この曲が彷彿とさせるのは? ⑤純粋に「曲」としては何点か?

 ビルボードが最近毎週リリースしている「スタッフに聞いてみた」シリーズ、純粋に内容が参考になるだけではなく、「ビルボードが今週のチャートで何を重要と考えているのか」が垣間見えて面白いです。(特に今週のような目立ったテーマが無い週は、「何を選ぶか」に個性が表れるかも……?)

 

△27 Post Malone – Better Now

 ここ数週、Hot 100はダイナミックな動きが少なく、変化があまり無い印象です。そのことから、気づいたらロングヒットになっている曲が多くHot 100に残っています。今週、Hot 100滞在が40週を超えている曲は6つありました。

 

22位 Girls Like You 43週目

27位 Better Now 47週目

33位 Youngblood 42週目

38位 Tequila 46週目

40位 Lucid Dreams 45週目

44位 I Like It 50週目

 

 これらの曲は今後Hot 100滞在が1年=52週まで到達する可能性がありそうです。(53週を越えると、25位以上でなければチャートから外れてしまうため、52週以上チャートに残るのは一気にハードルが上がるため、厳しい)

 特に47週目ながらも比較的上位にいる“Better Now”はチャート滞在1年に最も近い存在と言えそうです。ストリーミングを稼ぎつつ、ラジオでも人気が出たことがロングヒットの要因でしょうか。この曲はラジオ再生が一時期2位まで到達しており、これは昨年Spotify(US)で週間1位になった曲の中では最も高いです。(参考

 また、30週目を超えて上位に残っている曲もいくつかいます。これらの曲もこのペースを保てれば滞在が52週まで到達しそうです。

 

6位 Happier 31週目

12位 Eastside 36週目

13位 SICKO MODE 33週目

14位 High Hopes 33週目

 

 うち“High Hopes”はラジオでロングヒットとなっており、今週アダルトポップ系統で15週目の1位を記録しています。これは2010年代では最長、歴代では7番目の長さです。この系統で最も長く1位を記録していた曲はSantanaの”Smooth”(25週)です。

 

△16 YNW Melly – Murder On My Mind

 少し前に殺人の容疑が浮上したYNW Melly。その結果、容疑とクロスオーバーする曲名の“Murder On My Mind”がストリーミングでヒット。4週前にHot 100で14位まで到達していました。

 その後もApple Musicで1位になり、今週もYouTubeで1位を記録するなど高いストリーミングをキープしていますが、トップ10には届かない状況が続いています。これはストリーミング以外のポイントがあまり無いからです。

 DLの数字もあまり高くないですが、もっと低いのはラジオ。ストリーミングで人気を集めHot 100でも上位に入る曲ながらもラジオでかかっている形跡があまり確認されません。これは殺人容疑のかかった人物の、さらにそれを彷彿させる曲をかけたくないという倫理的な理由からかかっていないのだと思われます。SpotifyApple Musicのプレイリストも同じくこの曲をプレイリストに入れていません。

 Hot 100では複数の分野からバランスよくポイントを得ている曲が評価されやすいので、ポイントに偏りがあるこの曲は上位に入ることができないのです。

 Hot 100の複合的な集計システムが、図らずも倫理的に問題のある曲の上位進出を阻むことになりました。(いくら状況にマッチしているとはいえども、殺人容疑が再生数増につながる、という点がそもそも個人的にかなり不思議でしたが……)

 

 

△10 Meek Mill feat. Drake – Going Bad

 Meek MillとDrakeの“Going Bad”が10位へ浮上。アルバムのリリース時に6位で登場して以来のトップ10入りです。リリース以降、ストリーミングで高い数値をキープしたままある程度ラジオが伸びてきたことが要因です。今週リズミック系統で1位になっています。

 また、今週のトップ10が若干「デフレ」だったのも理由かもしれません。今週のトップ10のうち「登り調子」なのは2曲のみ(“Going Bad”と”Wow.”)で、それ以外の曲は下がり調子です。先のLil Nas Xの記事でもビルボードのスタッフが「現在のトップ10は弱め」と発言しています。(それを理由に”Old Town Road"の将来的なトップ10入りを示唆している)

 

 アルバムリリースのタイミングでストリーミングを集め、高い順位で登場するものの、その後は勢いをキープできず尻すぼみに終わってしまうシングルもありますが、この曲は「アルバムの曲」としても「ラジオのシングル」としても2回ピークを迎え、どちらでも成功を収めました。

(ストリーミングではアルバムがリリースされるタイミングで再生数のピークが来る場合が多い。ラジオでシングルカットされていても、あまりストリーミングの再生数に影響を及ぼさない場合も多いです。例えばDrakeの“Mob Ties”はアルバムリリースから時間が経ってからシングルカットされたが、アルバムリリース時の再生数に及ばないどころか、ストリーミングのランキング圏内にもあまり入らなかった)

 

▽8 Jonas Brothers - Sucker

 2週連続でラジオ再生数の伸び幅が最大となったJonas Brothersの“Sucker”。しかしストリーミングの数値が落ちていることからHot 100では1位→6位→8位と少しずつ順位を落としています。

 Spotifyでは現在もトップ10を保っているものの、Apple Musicでは20位前後。むしろリリース時のストリーミング成績(SpotifyAppleYouTubeすべてで1位)が出来過ぎだったので、このストリーミング数でもポップスとしては十分好成績だと思います。

 ストリーミングが落ち着いてきた以上、1位への再浮上は厳しいかもしれませんが、ラジオで好調な以上ある程度は上位に留まりそうです。そろそろ順位の下降も止まりそうです。

 

△4 Post Malone – Wow.

 Post Maloneの“Wow.”が5位→4位と少し浮上でピーク更新。Roddy RicchとTygaが参加したリミックスや、火曜日にリリースされたビデオなどの効果です。

 Roddy Ricchはコンプトン出身のラッパー。昨年12月にMeek Millの客演としてHot 100に初登場。自身の曲ではHot 100に登場したことがないものの、“Die Young”、”Every Season”、“Project Dreams”など複数曲がストリーミングで結果を残しています。この曲ではリミックスではなく、オリジナルの方がメインと判定されHot 100でfeat.などのクレジットはされていません。

 この曲は現在ストリーミング、ラジオ共に「脂が乗っている」まさにピークといった状況。現在ポップス系ラジオでの再生数は増加、リズミック&アーバン系では減少、トータルで見ると若干ラジオ再生数が減っているようですが、規模が大きいポップス系で伸びている以上、まだラジオの伸びしろはあります。ラジオ次第ではHot 100首位の可能性も……?

 

×× Kehlani feat. Ty Dolla $ign – Nights Like This

 Kehlaniの“Nights Like This”が今週チャートから外れました。ピークは67位、チャート滞在は9週でした。Kehlani自身の曲では、映画Suicide Squadのサントラに収録されていた”Gangsta”に次いで2番目に長いチャート滞在です。(客演だとCardi Bとの“Ring”が20週目まで滞在していた)

 この曲は海外でもヒットし、イギリスでは自己最高位を記録しています。(25位)また、Hot 100での順位が落ち始めたタイミングからラジオでかかり始めています。(現在リズミック系ラジオで23位) もしかしたらそのラジオの伸びによってHot 100に再登場するかもしれません。

 

Kehlaniは先日、初の子どもを授かりました。

 

×× Billie Eilish – when the party’s over

 Billie Eilishの”when the party’s over”が今週チャートから外れました。ピークは52位、チャート滞在は20週です。

 ラジオでのオンエアはあまり無かったものの、ストリーミングの熱狂的な支持に支えられチャート滞在20週に到達。この曲だけでなく、過去曲を含む他の曲もストリーミングで人気を得ており、Billie Eilishというアーティストに対しての熱意が大きな要因だと思います。(Chartdataのブログに寄稿するAlexander氏は「ストリーミングではどのアーティストが人気を集めているのかが浮かびやすい」と分析

 そんなストリーミングの熱狂に支えられたこの曲ですが、20週と「満期」を迎えたためチャートから外れました。今週末に彼女のデビューアルバムがリリースされるのですが、そのストリーミング数次第ではチャートへの再登場の可能性(=50位以上の成績を記録)もありそうです。このアルバムがチャートに反映されるのは2週間後です。30万程度のトータル売上でのアルバムチャート首位デビューが予想されています。

 

 ちなみにこの曲はこのタイミングでようやくポップ系ラジオのチャートに登場しました。(せっかくラジオでかかり始めたのにHot 100であまり恩恵を受けられず……)今まで彼女の曲はオルタナティブロック系ラジオでかかっていたのですが、ポップ系ラジオに登場するのはこれが初です。

 

×× Gucci Mane, Bruno Mars & Kodak Black – Wake Up in the Sky

 Gucci ManeがBruno Mars、Kodak Blackとタッグを組んだ“Wake Up in the Sky”がチャートから外れました。ピークは11位、チャート滞在は26週でした。

 リリース時からストリーミングで好調。さらにリズミック、アーバンなどのラジオで注目を集めて上位へ浮上。Bruno Mars効果か、ある程度ポップ系ラジオでもかかっていました。しかしトップ10にはわずかに及ばず11位止まりでした。

 11位はGucci Mane自身の曲としては”I Get the Bag”と並んで最高位。客演ではRae Sremmurdの“Black Beatles”で1位に立っています。

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Lady Gaga – Always Remember Us This Way (🗻41位 /⏰9週)

95 Kehlani feat. Ty Dolla $ign – Nights Like This (🗻67位 /⏰9週)

94 Billie Eilish – when the party’s over (🗻52位 /20週)

91 Juice WRLD – Flaws And Sins (🗻91位 /⏰1週)

90 Luke Bryan – What Makes You Country (🗻54位 /⏰11週)

65 Juice WRLD – Maze (🗻65位 /⏰1週)

48 Gucci Mane, Bruno Mars & Kodak Black – Wake Up in the Sky (🗻11位 /⏰26週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

153 Chief Keef & Zaytoven – Glotoven

154 Jerry Garcia Band – Electric On The Eel

 

 新登場がとても少ない週です。今週は長期滞在関連の節目を迎えた作品もありあませんでした。

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

 

総合:Jonas Brothers – Sucker

ポップ:Jonas Brothers – Sucker

アダルトポップ:Jonas Brothers – Sucker

リズミック:2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule the World

アーバン:2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule the World

カントリー:Chris Stapleton - Millionaire

 

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

Polo G feat. Lil Tjay – Pop Out

 現在ストリーミングで支持を得ている曲。ラジオでもかかり始めており、今後のHot 100入りに大きな期待が。 

 

・NAV feat. Meek Mill – Tap

・Rich the Kid feat. Young Thug & Gunna – Fall Threw

 今週ストリーミングで人気を集めたアルバム曲。NAVのアルバムからは複数曲がHot 100に登場しそうです。

 

・Bebe Rexha – Last Hurrah

・David Guetta feat. Bebe Rxha & J Balvin – Say My Name

 101位~125位相当のチャート、Bubbling Underに複数曲が登場したBebe Rexha。前者はポップ系ラジオとSpotify、後者はYouTubeで人気。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

あと今週はHits Daily Doubleというサイトも多く参照しました