チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 6/15 見どころ 【Katy Perryの新曲が15位スタート / 新ヒット候補Lil Teccaの”Ran$om"】

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 こんばんは!昔はよく傘を無くしていましたが、最近はちゃんとキープできるようになってきました(=最近雨がよく降りますね)

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

Katy Perryの“Never Really Over”が15位に登場

・Cardi Bの“Press”は16位デビュー

・Miley Cyrusの”Mother’s Daughter”が54位に登場。EPはアルバムチャートで5位

・アルバム1位はThomas Rhett

・新バイラルヒット候補!Lil Teccaの“Ran$om”が93位に登場

 

・今週のトップ10

      6月15日   R D S
- 1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🚩 2 1 1
- 2 Billie Eilish bad guy ✅ 14 5 2
- 3 Khalid Talk 3 14 6
- 4 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care  7 4 8
- 5 Jonas Brothers Sucker  1 8 21
  6 Post Malone Wow. 5 22 11
  7 Post Malone & Swae Lee Sunflower  15 23 4
  8 DaBaby Suge 38 - 3
  9 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 4 28 31
-   10 Ava Max Sweet but Psycho 6 17 27

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

🍎=“The London”です。 ”Old Town Road”は今週1.16億ストリーミング

 

◎ は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆99 SHAED – Trampoline

 SHAEDの“Trampoline”が99位に登場。ポップ系バンドSHAEDにとってキャリア初のHot 100入り。(ジャケから女性ソロシンガーと思っていたのですが、バンドです)

 この曲は複数系統のラジオで好調。オルタナティブ系統で今週1位を獲得したほか、アダルトポップ系でも15位にランクイン。ポップ系ラジオでも38位と複数系統に人気が飛火しています。

 AppleのCMにも採用されていたこの曲はSpotifyの有力プレイリストToday’s Top Hitsにも入ったことがあり、1月頃にはSpotifyではトップ100まで到達していました。

 

☆94 Trippie Redd – Under Enemy Arms

 Trippie Reddの新曲“Under Enemy Arms”が94位に登場。Trippie Redd10回目のHot 100エントリー。Apple Music、SpotifyYouTubeの3つで50位前後にランクインと、各サービスで満遍なく人気を得たことがHot 100入りの要因です。

 

☆93 Lil Tecca – Ran$om

 Lil Teccaの“Ran$om”が93位に登場。キャリア初のHot 100エントリー。現在主要ストリーミング(AppleSpotifyYouTube)の全てで勢いよく順位を伸ばしており、来週以降の大きなジャンプアップが有望です。ビデオは有名チャンネルLyrical Lemonadeからアップロードされています。

 ちなみにビルボードはRan”$”omと表記していますが、他の媒体ではRan”s”omと普通に表記されることが多いです。サムネ画像にあるようにジャケでは"$"表記です。

 

☆92 Bryce Vine feat. YG – La La Land

 Bryce VineがYGを迎えた“La La Land”が92位に登場。Bryce Vineは昨年のラジオヒット”Drew Barrymore”に続いて2回目のHot 100入り。

 この曲はリズミック系ラジオで21位に入ったほか、Spotifyでも今週圏外から126位にランクインしています。(Today’s Top Hitsに入った効果と思われる)ラジオでの再生数は下り坂ですが、Spotifyで伸びを見せたためHot 100入りを果たしました。

 

☆91 John Rich feat. The Five – Shut Up About Politics

 Foxニュースのメンバー(The Five)を迎え、Foxニュースで公開されたJohn Richの“Shut Up About Politics”が91位に登場しました。この曲はDLがかなり高い(今週2位)ですが、他のポイントが低いためHot 100では91位止まりに。

 John RichはカントリーデュオBig & Richの一員で、ソロとしてのHot 100エントリーはこれで2回目です。デュオとしては8曲Hot 100にエントリーしています。

 この曲の収益はすべて奨学金の機関に寄付されるようです。ビルボードはこの曲のHot 100エントリーに関して単独記事を作成しています。

 

☆70 NF – The Search

 NFの“The Search”が70位に登場。彼は2017年にHot 100未登場ながらアルバム1位を獲得して話題を呼び、以降シングルもヒットするようになりました。

 この曲はYouTube(今週41位)とSpotify(今週56位)で主に人気。YouTubeではビデオが最初の週から公開されていたことが有効に働いたと思われます。一方Apple Musicでは200位程度と振るわず。ほかDLが今週17位です。

 NFはヒップホップ方面よりもポップリスナーに人気のある*1タイプのラッパーなので、濃いヒップホップリスナーが際立つApple Musicであまり人気が出ないのは以前からの傾向です。

 

☆67 The Chainsmokers & Bebe Rexha – Call You Mine

 The ChainsmokersとBebe Rexhaの“Call You Mine”が67位に登場。この曲は主にSpotifyで人気があり、今週28位にランクインしています。Apple MusicやYouTubeでは101位以下です。初週からビデオがありましたが、あまり注目を集めませんでした。ほかDLでも今週13位に入っています。

 The Chainsmokersは今年も1ヶ月ごとに曲をリリースして、その度にEPに曲を一つずつ追加……そして年末にアルバムが完成するというリリース形態をとっており、今週“World War Joy EP”がアルバムチャートで48位に登場しています。

 そのEPにも収録された前シングル“Who Do You Love”は今週チャート圏外に。中位にいた期間も長く調子は悪くなかったですが、結局チャート滞在16週と20週(ヒット曲の目安週数)には届きませんでした。

 2018年以降のThe Chainsmokersのシングルで滞在が20週まで達したのは“This Feelings”のみです。

 

☆54 Miley Cyrus – Mother’s Daughter

 Miley CyrusがEPをリリース。ストリーミングで人気を集め、アルバムチャートでは5位に登場しました。(セールスも5位)

 収録曲のうち“Mother’s Daughter”がHot 100で54位に登場しています。ほかBubbling Under(101-125位相当)には”D.R.E.A.M.”や”Unholy”が登場しています。

 

△32 Thomas Rhett – Look What God Gave Her

 Thomas Rhettが2作連続でアルバム1位を獲得。総合売上は7.6万とあまり高くはありませんが、競合があまりいなかったのでアルバム1位になりました。 (2017年の前作"Life Changes"は総合売上12.7万だった)

 このアルバムは今週3359万ストリーミングを記録し、カントリーアルバムの「デビュー週」としては最高の数字のようです。

 ただ「デビュー週」という指定があるので、それ以外の週にもっと高いストリーミングを記録しているカントリーアルバムがある可能性もあります。それに該当するかもしれないのはLuke Combsの”This One’s For You”です。

 このアルバムはデラックス版がリリースされたタイミングでアルバムチャート4位に“浮上”(=デビュー週ではない)。この時の総合売上5.5万で、セールスが2.5万程度とChartDataは報じており、シングルDL次第では今週のThomas Rhett以上の再生数を記録していたという可能性も考えられます。残念ながらビルボードが詳細の数字を公表しなかったので、詳細は分かりませんが……

 

※セールス以外で記録した5.5-2.5=3.0万相当の売上のうち、2.24万*2がストリーミング由来のものであればThomas Rhettの今週の再生数を上回ります。

 

 このアルバムリリース効果で収録曲のストリーミングが上向き“Look What God Gave Her”は32位とトップ40圏内に突入。この曲はStreaming Songsにも49位でエントリーしています。(彼がこのチャートに入るのは4年ぶり)

 この曲はカントリー系のほか、アダルトポップ系統でもオンエアされており、他のカントリー曲とはひと味違った方面からポイントを得ています。

 

 ほかカントリー系ラジオで数字を伸ばすLee Briceの“Rumor”が37位でトップ40入り。この曲はラジオでの好調のほかYouTubeでも59位にランクインしています。

 

☆16 Cardi B – Press

 Cardi Bの“Press”が16位に登場。ストリーミングで高い注目を集めておりApple MusicとYouTubeではトップ10入り。Spotifyでは惜しくも今週15位でした。(Cardi Bの曲は以前から他の媒体と比較して若干Spotifyでの成績が低くなる傾向がある)

 ストリーミングでの人気のほか、DLも今週7位にランクイン。既にリズミック&アーバン系ラジオでのオンエアも始まっています。

 

☆15 Katy Perry – Never Really Over

 Katy Perryの“Never Really Over”が15位に登場。この曲はストリーミングでの健闘が光り、SpotifyYouTubeで10位と好成績を記録。Apple Musicでも悪くない順位につけていました。(トップ50圏内に入っている期間が長かった)

 この曲はポップ&アダルトポップ系統のラジオで既に人気を確立しており、リリース初週ながらもラジオで42位にランクインしています。ほかDLも今週3位に入っています。

 ラジオ&DLの高さは従来とあまり代わりませんが、苦手だったストリーミングで良い数字を出せたことが好スタートの要因だと思います。来週以降もこのストリーミングでの好調は続くか……?

 

 この曲はメロディラインの「参照元」としてDagnyというノルウェーのシンガーがクレジットに載っています。サンプリングとは違う珍しいクレジットの載せ方だと感じます。

 プロデュースは前シングル”365”に引き続きZeddが担当しています。そのZeddですが、今週様々な疑惑が浮上しています。

 

 発信元は複数曲でZeddの曲のソングライターを務めたMatthew Komaです。彼はZeddがMatthew Komaのボーカルやソングライトを正当に扱わなかったと主張。さらに共同で作った曲を“Zedd名義でリリースしろ”と迫られてなかなかリリース出来ていないことや、ソングライターなのに“Clarity”のグラミー受賞セレモニーに招待されなかったことを述べています。

 この投稿に対してはTiësto、Nicky Romero、The Knocks、Bebe Rexha (あとのHillary Duffも)が賛同。

 Zeddもこれに対して声明で意見を述べていますが、果たしてこれが今後のキャリアにどのような影響が出るのか……

 ともかく、新曲のタイミングでこのような騒動が出てしまったKaty Perryは不運ですね。

 

×× Blueface – Thotiana

 Bluefaceの“Thotiana”が今週チャートから外れました。ピークは8位、チャート滞在は20週でした。

 初のHot 100エントリーでトップ10まで到達した要因はストリーミングでの強さです。どの媒体でも上位に入りましたが、特に強かったのはYouTubeです。3月には1週YouTube再生数(US)で1位に立っています。バージョンが複数あることもストリーミングの数字増加に一役買っています。(YGのリミックス、Cardi Bのリミックス、2名両方が参加したリミックス)

 ストリーミング以外にも、リズミック系で最高9位、Hip-Hop/R&B系で最高7位とラジオでも一定の成績を残しました。

 今のところBluefaceのHot 100エントリーはこの曲とFrench Montanaの“Slide”の2曲。”Bleedin’”、“Stop Cappin”、G-Eazyらとの”West Coast”などもHot 100には接近したものの、エントリーはならず。

 

×× 21 Savage (feat. J. Cole) – a lot

 21 Savageの”a lot”が今週チャートから外れました。ピークは12位、チャート滞在は23週でした。

 この曲はアルバム1位を獲得した“i am > i was”の主要曲として多くのストリーミングを記録しましたが、リリースがクリスマス真っ只中の激戦区だったため、登場時は37位とそこまで高順位ではありませんでした。

 この曲がピークを迎えたのは21 Savageに「逮捕騒動」が出た時です。アトランタ出身とされてきた21 Savageでしたが、実はイギリス出身で不正入国と判定されて逮捕されるという騒動が発生しました。(既に釈放)

 しかしこれに対して今までの21 Savageの功績から多くの媒体で#free21 の動きが見られ、ストリーミングでも彼の関連曲の再生数が伸びました。

(その動向はこの週:Hot 100 2/16 見どころ 【ハーフタイムショーよりもゲーム内DJの効果?】 - チャート・マニア・ラボ

 

 このような経緯でストリーミングが伸びた後は、ラジオでも結果を残しました。リズミック系では1位、Hip-Hop/R&Bでは系2位まで到達しました。彼の2017年のシングル”Bank Acount”ではそれぞれ15位、10位がピークだったので、以前よりもラジオで伸びを見せています。

 

 ほか今週外れたのは豪華ゲストのLil Dickyの“Earth”やイギリスにベースを置くR&Bシンガー、Mabelの”Don’t Call Me Up”などです。

 Mabelはこのタイミングで新曲“Mad Love”をリリースし、再びヒットを狙います。(Hot 100にはまだ登場しなさそう)

 

今週チャートから外れた曲 (11曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

100 Jhené Aiko – Triggered (freestyle) (🗻51位 /⏰3週)

99 Bazzi – Paradise (🗻91位 /⏰3週)

98 YNW Melly feat. Kanye West – Mixed Personalities (🗻42位 /⏰18週)

96 Maluma – HP (🗻96位 /⏰1週)

93 Lizzo – Juice (🗻93位 /⏰2週)

91 Lil Dicky – Earth (🗻17位 /⏰6週)

90 Mabel – Don’t Call Me Up (🗻66位 /⏰10週)

89 The Chainsmokers feat. 5 Seconds Of Summer – Who Do You Love (🗻52位 /⏰16週)

77 DJ Khaled feat. Nipsey Hussle & John Legend – Higher (🗻21位 /⏰2週)

50 Blueface – Thotiana (🗻8位 /⏰20週)

49 21 Savage – a lot (🗻12位 /⏰23週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Thomas Rhett – Center Point Road

5 Miley Cyrus – SHE IS COMING (EP)

18 Kevin Gates – Only The Generals Gon Understand (EP)

20 Kirk Franklin – Long Live Love

30 Calboy – Wildboy

32 Denzel Curry – ZUU

48 The Chainsmokers – World War Joy (EP)

52 Yung Gravy – Sensational

86 Avicii – TIM ※フルで集計されるのは来週

103 The Kenny Wayne Shepherd Band – The Traveler

114 Jim Jones – El Capo

126 Gabbie Hanna – 2WAYMIRROR

170 NoCap – The Backend Child

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:Playboi Carti – Die Lit (今週118位)

収録曲のHot 100エントリーは“Shoota”の1曲のみで、その曲のチャート滞在は4週とシングル単位でのヒットはあまり無かったですが、ストリーミングの強さでアルバムチャート一周年を達成しました。

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Khalid – Talk

・Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care

・Ed Sheeran feat. Chance the Rapper & PnB Rock – Cross Me

Katy Perry – Never Really Over

Panic! At the Disco – Hey Look Ma, I Made It

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

Chris Brown feat. Drake – No Guidance

 土曜日頃にリリースされた曲。元々は仲違いが噂されていた2人のタッグということもあり注目を集めています。直近のデータでApple Musicでは1位、Spotifyでは8位に入っています。さらにラジオでもかなり数字を伸ばしています。(リズミック系など)

 ただDLの数値がそこまで高くないことや、YouTubeが未知数なことからトップ10に入るかどうかは微妙です。

 

・Future – Please Tell Me

・Luke Combs – Even Though I’m Leaving

 ストリーミングで注目を集めたEP2つです。これらの収録曲がいくつかHot 100に登場しそうです。

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Bad Bunny & Tainy - Callaita (今週20位程度)

✅ Bazzi - Paradise (今週32位)

🚩 Quando Rondo – Imperfect Flower (今週26位) 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

関連 / 参考記事

 

“○○で??位” のような数字はどこから引っ張ってきているの?ということを説明した記事を新しく作成しました。

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

 

 今週のテーマは……Katy Perryの新曲です。質問項目は……

① 15位デビューは予想以上か?以下か?

② “Witness”から路線変更し原点回帰したように思われるが、それに関しては?

③ ここ2年の出来事で彼女にプラスに働いたものは?

④ この曲でクレジットされたDagny以外にKaty Perryと合いそうな新進シンガーは?

⑤ 今週登場したこの曲、Cardi B、Miley Cyrusの新曲のうちヒットするのはどれか?

 

 ①は私にとっては「予想以上」でした。特にストリーミングでの健闘が予想以上でした。③などの項目で“Con Calma”の話がよく挙がっていますが、Katy Perryリミックス > オリジナルになっているのはUSのラジオくらいで、ほかは大体オリジナルの方が圧倒的に人気なので、「リミックスの効果」は”限定的“と考えています。

 あとは④の項目でKim Petrasの名前が挙がっていたのが個人的サプライズです。

 

 

*1:ラジオの成績から伺える

*2:当時は一律1500再生=1アルバムだった