チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 9/21 見どころ 【Post Maloneアルバム全曲Hot 100上陸】

こんばんは。まだPCが使えないため今週もノロノロ更新となりました。母親に今年は厄年だよ~~と言われて、なるほどね~~と思いました!

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

 

・今週のトップ10

1 Lizzo – Truth Hurts

2 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

3◎Post Malone feat. Young Thug – Goodbyes

4◎Post Malone – Circles ✅

5 Billie Eilish – bad guy

6 Lil Tecca - Ransom

7 Chris Brown feat. Drake – No Guidance

8◎Post Malone feat. Ozzy Osbourne & Travis Scott – Take What You Want

9◎Lewis Capaldi – Someone You Loved

10◎Post Malone & Swae Lee - Sunflower

 

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

※🍎=”Enemies”(16位) 🚩=”Panini”(14位)

 

 

1~100位までの順位表は↓

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2019-09-21

 

曲の個別解説

 

☆87 YNW Melly & 9lokknine – 223’s

 今年の前半に”Murder On My Mind”がヒットとなったYNW Mellyの”223’s”が87位に登場。9lokknineは初のHot 100入り。Spotify = Apple > YouTubeの順で人気。

 ビデオなど特に新要素があったわけではないですが、ストリーミングでじわじわ浸透して次第に浮上しています。

 

☆82 Kelsea Ballerini – homecoming queen?

 Kelsea Balleriniの”homecoming queen?”が82位に登場。カントリー曲にありがちなラジオで次第に上昇してHot 100入り……というパターンではなく、新曲です。DLが7位(自身最高位)でランクイン。ラジオでもオンエアが既に開始しています。

 Apple MusicとYouTubeではランク外ですが、Spotifyでは199位とギリギリランクイン。

 

☆68 YoungBoy Never Broke Again – Self Control

 YoungBoy Never Broke Againの“Self Control”が68位に登場。彼の楽曲はYouTube人気「だけ」が高いこともあり、その偏りから(YouTube順位の割に)Hot 100に登場しないこともあるのですが、今回は他の媒体でも人気があったため登場。

 YouTubeで5位とかなり高い順位にランクインしたほか、Appleでも25位前後に登場。Spotifyでは114位でした。

 

☆58 Post Malone – Internet

 Post Maloneのアルバムがストリーミングでの絶大な人気によって全曲がHot 100入り。前作に引き続く快挙です。ストリーミング時代に複数アルバムで全曲をHot 100に送り込んだことがあるのは、Drake、J. Cole、Kanye Westと今回のPost Maloneが挙げられます。(EPもカウントするとThe Weekndも。Taylor SwiftはDL時代とストリーミング時代に1回ずつこれを達成しています*1

 

・前作と今作の登場曲の順位比較

 

  beerbongs & benteys   Hollywood's Bleeding
2 Psycho /ft. Ty Dolla $ign 3 Goodbyes /ft. Young Thug
7 Better Now 4 Circles
8 rockstar /ft. 21 Savage 8 Take What You Want /ft. Ozzy Osbourne & Travis Scott
11 Paranoid 10 Sunflower /w Swae Lee
14 Rich & Sad 15 Hollywood's Bleeding
15 Spoil My Night /ft. Swae Lee 16 Enemies /ft. DaBaby
16 Ball For Me /ft. Nicki Minaj 17 Wow.
17 Stay 18 Saint-Tropez
20 Same Bitches /ft. G-Eazy & YG 20 Die For Me /ft. Future & Halsey
23 Zack And Codeine 22 On The Road /ft. Meek Mill & Lil Baby
24 Over Now 29 A Thousand Bad Times
29 Takin' Shots 33 I'm Gonna Be
34 Candy Paint 34 Staring At the Sun /ft. SZA
40 92 Explorer 37 Allergic
46 Otherside 52 Myself
47 Blame It On Me 53 I Know
57 Sugar Wraith 58 Internet
73 Jonestown (Interlude)    

 

 

 このアルバムの売上は前作を少し上回る 。チケット戦略やグッズ戦略を活用してセールスを前作よりも伸ばしました。ストリーミングは やや減少。ただアルバムチャートでのストリーミングの計算方法が変わったことから、枚数換算での減少はわずかです。

 

※2018年6月まで:一律 1500再生 = 1枚

※2018年7月から:有料会員:1250再生=1枚 無料会員:3750再生 = 1枚

アルバムを細部まで聞くような熱心なユーザーは有料会員であることが多く、ほとんどの場合で従来よりもストリーミングの枚数換算が増加しています。(だいたい1300前後 = 1枚くらいのイメージです)

 

 

☆56 Camila Cabello – Liar

 Camila Cabelloがダブルシングルをリリース。”Liar”が56位、”Shameless”が60位にランクイン。どちらが人気かは媒体によって割れており、2曲とも均等に人気になっています。ストリーミングのプレイリストでは“Liar”が上部に配置される傾向があります。(SpotifyのToday’s Top Hitsでは直近のリスト*2で1番に配置)

 ラジオにかからないプロモシングルとしてスタートした”OMG”と”Havana”とは違い、今回は両方ともラジオでオンエアされています。

 

△14 Lil Nas X – Panini

 ビデオリリースで注目される”Panini”が14位へ浮上。YouTubeランキングでは首位に立ち、それまで23週連続で1位だった“Old Town Road”を自らストップしました。

 これに伴い、他の媒体での注目度も向上。今後さらなる上昇も望めそうです。Post Maloneのアルバム曲の勢いが落ち着き、さらにDaBabyのリミックスが追加される来週にはトップ10に届くかも。

 

 

△10 Post Malone & Swae Lee – Sunflower

 アルバムリリースに伴うストリーミング増加で”Sunflower”がトップ10に返り咲き。これでトップ10滞在数週を33まで伸ばし、歴代最長タイになりました。(“Shape of You”、”Girls Like You”と並ぶ)

 アルバム効果が薄れる来週はおそらくトップ10から外れるでしょうが、もしかしたら53週目以降もチャートに残るかもしれません。(ルールにより53週目以降の曲はほぼ外れる、しかし25位以上に入れば残留)

 この超絶ロングヒットにより、”Without Me”を抜いて今年の年間チャート2位に入ることが濃厚です。

 

9 Lewis Capaldi – Someone You Loved

 ここ数週ラジオを猛烈に伸ばしていた”Someone You Loved”がついにトップ10入り!母国UKでは既に抜群の人気(今年計3曲がトップ10入り)がありますが、USでも成功を収めています。

 ポップ&アダルトポップ系で絶大な支持を受けているほか、ストリーミングでの人気も上々。Post Maloneのアルバム曲大量登場にも関わらず、全ての媒体でトップ50には入っており、海外産ポップスとしては珍しいヒットになっています。

 ラジオの伸びしろはまだ残っており、今後もう少し順位を伸ばしそうです。

 

☆8 Post Malone feat. Ozzy Osbourne & Travis Scott – Take What You Want

 アルバムリリース効果で既存曲3つがトップ10入り。さらにアルバム内で最も注目を集めた”Take What You Want”も8位に入り、Post Maloneは今週4つの曲が同時にトップ10入りしました。4曲以上が同時にトップ10入りするのは6人(組)目の快挙です。

 

1964:The Beatles 

2005:50 Cent (客演含む)

2008:T-Pain (客演含む)

2008:Lil Wayne (客演含む)

2018:Drake (客演含む)

2018:Drake (アルバムリリース時) ※7曲トップ10入り、史上最多

2018:Lil Wayne (アルバムリリース時)

2019:Post Malone (アルバムリリース時)

 

(DrakeとLil Wayneは複数期間で同記録を達成)

 

 この”Take What You Want”はストリーミングがどの媒体でも満遍なく高く、DLも優秀だっためHot 100で上位に入りました。この曲で客演のOzzy Osbourneは”Close My Eyes Forever”以来30年ぶりのトップ10。

 

×× Taylor Swift feat. Brendon Urie – ME! 

 Taylor Swiftの”ME!”がチャートから外れました。ピークは2位、滞在は20週に。勢いよく登場し、次第に尻すぼみになり20週きっかりでチャートから外れるという流れは“Look What You Made Me Do”と似ています。

 アルバムリリース週に11位まで浮上し、一気に巻き返したもののそれも長くは続かず。

 

×× NLE Choppa – Shotta Flow

 NLE Choppaの”Shotta Flow”が外れました。ピーク36位、滞在20週に。ビルボードは客演などの表記をしていませんが、この曲はBluefaceのリミックスの効果が大きかったです。リミックス登場以降、原曲を上回る人気がありました。

 このリミックスの人気を支えていたのはミームです。Bluefaceが登場するタイミングのフレーズ、”Blueface Baby, Yeah Yeah Aight!”が人気を集めました。ビデオのコメント欄を見てもこのフレーズの話が多くされています。

 これはTikTokでかなり利用されています。このフレーズの部分で何かを登場させる、という「ネタ」のパターンが確立されていて、アレンジもかなり効くことから幅広いユーザーに利用されています。この曲が使用された Like 100K越えの動画は134個存在します。

 

TikTokでヒットしている!ということを数字で表す方法は色々考えられますが、私は幅広く浸透していることを測るには一定のLike数以上の動画の数をカウントするのが良いと考えました。純粋に曲として人気だとしても、使い方が確立していないとLike 100Kまで到達する動画数はあまり増えず、これは「曲が人気なだけで、TikTokで特段人気とはいえない」状態です。この手法については今後もっと考えていきたいです。)*3

 

 

×× Morgan Wallen – Whiskey Glasses

 ストリーミングでも異例の躍進を遂げたカントリー曲2つ、”Whiskey Glasses”と”God’s Country”がチャートから外れました。それぞれピーク/滞在が、17位/27週、17位/23週でした。

 カントリー曲は主にラジオ、そしてDLからそこそこポイントを得ています。そしてピークが35位程度まで達し、ちょうど20週で外れるというパターンが多いですが、この2曲はストリーミングでの+分が大きく、ピークも滞在期間も他のカントリー曲よりも優秀な数字を残しました。

 

×× Ariana Grande – 7 rings

 先週40位だった”7 rings”がPost Maloneのアルバム曲に押し出される形で外れました。やや不運な形の最後に。

 “thank u, next”に引き続き1位を獲得したこの曲は、より長い8週の1位を記録。その後”thank”が成し遂げられなかったラジオ1位も達成しています。33週の滞在は”Bang Bang”を上回り、彼女にとって最長の数字です。

 

※Ariana Grandeがピークの順位の割にチャート滞在が短めなのは、アダルトポップ系での人気の低さが理由だと思います。アダルトポップ系は他のラジオ系統よりも若干ヒット周期が遅い傾向にあり、この系統の人気がロングヒットの鍵を握ることが多いです。しかし彼女はこの系統であまり人気がないため、主要系統ポップ系の人気が終わるとそのままHot 100でも落ちてしまうことが多いです。

 

 

今週チャートから外れた曲 (21曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

100 Lunay, Daddy Yankee & Bad Bunny - Soltera (🗻66位 /⏰17週)

99 Keith Urban – We Were (🗻80位 /⏰4週)

98 J Balvin & Bad Bunny – LA CANCIÓN (🗻98位 /⏰1週)

97 Lil Tecca – Love Me (🗻97位 /⏰1週)

96 Maren Morris – The Bones (🗻96位 /⏰1週)

95 DJ Khaled feat. Cardi B & 21 Savage – Wish Wish (🗻19位 /⏰9週)

94 for KING & COUNTRY – God Only Knows (🗻94位 /⏰1週)

93 Kygo & Whitney Houston – Higher Love (🗻63位 /⏰2週)

89 Big Sean feat. A$AP Ferg & Hit-Boy – Berzerk (🗻89位 /⏰1週)

86 Lizzo – Juice (🗻82位 /⏰4週)

84 Lil Tecca – Shots (🗻84位 /⏰1週)

80 Lil Tecca – Out of Luck (🗻80位 /⏰1週)

76 The Chainsmokers & Bebe Rexha – Call You Mine (🗻56位 /⏰14週)

74 Taylor Swift – I Forgot That You Existed (🗻28位 /⏰2週)

71 Taylor Swift – Cruel Summer (🗻29位 /⏰2週)

69 A$AP Rocky – Babushka Boi (🗻69位 /⏰1週)

54 Taylor Swift feat. Brendon Urie – ME!  (🗻2位 /20週)

46 NLE Choppa – Shotta Flow (🗻36位 /20週)

44 Blake Shelton – God’s Country (🗻17位 /23週)

43 Morgan Wallen – Whiskey Glasses (🗻17位 /27週)

40 Ariana Grande – 7 rings (🗻1位 /33週)

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Post Malone – Hollywood’s Bleeding 🎫👕

3 Melanie Martinez – K-12 (Soundtrack)

10 The Highwomen – The Highwomen 

22 Lindsey Stirling – Artemis

40 EARTHGANG – Mirrorland

44 Home Free – Dive Bar Saints

61 Shoreline Mafia – Party Pack, Vol. 2

92 Sleeping With Sirens – How It Feels To Be Lost

 

・Melanie MartinezはPost Maloneには及ばないものの、ストリーミングで一定の人気。アルバムの大半がSpotifyのランキング圏内に入った。またアルバムトップ10のうち8つが女性のアルバムで、これは 以来のことだそうです。

 

 

◇アルバムチャート長期滞在

 

 

キリ番ではないですが、Kendrick Lamarの が滞在 を迎え、 を抜かしてヒップホップのアルバムとしてBillboard 200滞在最長になりました。

 

その他

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Young Thug feat. Lil Uzi Vert – What’s Move (今週43位程度)

✅ blackbear – hot girl bummer (今週36位)

🚩 YoungBoy Never Broke Again – SLIME MENTALITY (今週13位) 

 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

https://www.billboard.com/amp/articles/business/chart-beat/8530073/lizzo-truth-hurts-number-one-hot-100-three-weeks

 

https://www.billboard.com/amp/articles/business/chart-beat/8530004/post-malone-hollywoods-bleeding-No1-debut-billboard-200-chart

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

https://www.billboard.com/amp/articles/business/chart-beat/8530194/post-malone-hollywoods-bleeding-five-burning-questions

 

 今週のテーマはPost Maloneです。

 

①二連続で50万弱の売り上げ。彼がまだ手にしていない栄光はある?

②Sunflower以外で一位になりそうな曲は?

③他のベテランロックスターでラップの客演に参加してヒットを飛ばしそうなのは?

④今後期待したコラボやサウンドは?

⑤いつまで彼の成功は続くと思うか

 

*1:DL時代の"Speak Now"では一部シングルがリカレント済みだった

*2:これが反映されるのは2週間後のチャート

*3:ちなみにビデオの総数ではI Don’t Care > Shotta Flowですが、100K越えのビデオ数だと逆転します。