今年のベストトラックを発表します!ランキングの前にまず、どのような基準で曲を選んだかを説明します。
・対象期間は「およそ」2019年。昨年まではカチカチに期間を定めていたのですが、そこを固く縛る必要もないかな、と考えて辞めました。(2018年の曲も一部入っています)
・自分の好み7:3世間的な流れ くらいのバランスです。 音楽のベストはこの2つの軸があると思っています。私は自分の好みをベースに選曲をしつつ、チャート研究者として一年間見てきたものも一部ランキングに落とし込みました。
・サウンド重視で選んでいます。一方、普段あまり歌詞を丁寧に聴く習慣があまり無いので、歌詞に基づくセレクトはあまり無いです💦
・メッセージは主にシンプルに「聞いてもらえたら嬉しいです」なので、コメントは短めにしました。(シングルだけでは語れることが少ないという面もある。あと知識があんまり無いけど曲としてリストに入れたいみたいなケースもある)
ただ、小難しいことを語りたくて、コメントが長くなりそうな場合は曲名の背景を黄色にしています。表の後に補足という形でその解説を行います。
・プレイリストは最後にあります
まずは101位~51位
位 | アーティスト | 曲 | ひとことコメント |
101 | 米津玄師 | パプリカ | 原曲とは違う雰囲気。主に日本での人気だが、YouTubeグローバルで53位まで到達 |
100 | Kim Petras | Death By Sex | ハロウィンミックステープの代表 |
99 | Ariana Grande | fake smile | アリアナその3 |
98 | Tyloné Laurent | Lonely | TikTok発。外部でのヒットにはならなかったが、そうなるポテンシャルはありそうな曲 |
97 | Ashley Tisdale | Looking Glass | 一部で密かに好評だった、彼女10年ぶりの新作 |
96 | ミツメ | ディレイ | 日本のバンド。染み渡るアルバムのオープニングトラック |
95 | Ashley O | On a Roll | Miley Cyrusのオルターエゴによるダンストラック。”Old Town Road"と同様にNine Inch Nailsを参照 |
94 | Doja Cat | Bottom Bitch | I took her out♪ It was a Friday night♪ |
93 | Julia Michaels feat. Niall Horan | What a Time | 彼女のソングライトセンスは健在 |
92 | Melanie Martinez | The Principal | 4年ぶりの新作はストリーミングでも一定の人気 |
91 | MGMT | In the Afternoon | ダークな雰囲気が増した新曲 |
90 | Loredana feat. MERO | Kein Plan | Juju(後述)と共にドイツを牽引した女性ラッパー。ドイツで1位獲得 |
89 | Joji | Sanctuary | 昨年のアルバム、そしてこの新曲の人気でUSでの地位を着実に高めるJoji |
88 | Sky Ferreira | Downhill Lullaby | 5年ぶりの新曲。長尺で重い曲。Charli XCXとの”Cross You Out"も良かったです |
87 | Anuel AA, Daddy Yankee & KAROL G feat. J Balvin & Ozuna | China | ラテン界の特大ヒット。豪華な布陣を組んで再生数を伸ばし、ジャンル自体の規模をどんどん伸ばす動きが好きです |
86 | PNL | Au DD | フランスを熱狂のラップデュオ。かなりの再生数を記録(ほぼフランスのみの人気ながらSpotifyのグローバルトップ50入り) |
85 | Blueface | Thotiana | そのスカしたラップスタイルでブレイクを遂げたBlueface |
84 | THE 1975 | People | これまで1975は自分から遠い存在という「偏見」があったのですが、この曲で考え直そうと思いました |
83 | HAIM | Hallelujah | Vampire WeekendやCharli XCXのアルバムで客演仕事もこなしたHAIM。優しいメロディー。 |
82 | Zara Larsson | All the Time | 隠れ名ポップ。Hot 100には入らなかったが、そこそこラジオで人気だった |
81 | Maggie Lindemann feat. Travis Barker | Friends Go (Remix) | 10年くらい前のポップパンク・バイブスを体現した1曲 |
80 | Sech, J Quiles & Maluma feat. Nicky Jam, Farruko & Dalex | Qué Más Pues | "Otro Trago"が大ヒットのパナマ人シンガーSech。ただこっちの方がよりお気に入り。レトロゲーム調のビデオも好きです |
79 | Post Malone | Myself | アルバムラスト2曲はボートラで、この曲が真のラストトラックと勝手に思っている。Father John Mistyがソングライトに参加 |
78 | Phoebe Ryan | A Thousand Ways | サウンドが以前よりインディーポップ化 |
77 | LOONA | Butterfly | K-Popの中でもややオルタナティブな音楽を志向するグループ |
76 | Mustard feat. Roddy Ricch | Ballin' | Dojo Like A Sensei。この曲のヒットがRoddy Ricchのアルバム1位にもつながる |
75 | Angel Olsen | Lark | 力強さも感じるアートポップ |
74 | CHAI | THIS IS CHAI | 海外からの評価を高めるCHAIが贈るバキバキダンストラック |
73 | Shindy | Nautilus | Aaliyahと50 Centをサンプリングし、十数年前の名曲を現代に蘇らせる。それがドイツでヒットするのが興味深い |
72 | Shura | flyin' | サビ部分のサウンドが気持ちいい |
71 | Ashnikko feat Yung Baby Tate | Stupid | TikTok発。個性ある二人の女性ラッパーにスポットライトを当てる |
70 | Allie X | Fresh Laundry | アルバムの先行曲は粒ぞろいです |
69 | Madonna feat. Anitta | Faz Gostoso | スペイン語圏とのコラボは少しずつ増加しているが、Madonnaはポルトガル語でも歌う *1 |
68 | Stephanie Poetri | I Love You 3000 | インドネシアで大ヒットしたバラード。プレイリスト等のサポートがあれば世界的ヒットになったかも!? *2 |
67 | Kali Uchis | Solita | 年の末にリリースされたシングル。歌詞の半分くらいがスペイン語 |
66 | KAROL G | Punto G | ラテンアーバンのシンガー。プロダクションと彼女のラップがナイスです |
65 | The Chemical Brothers (feat. NENE) | Eve of Destruction | 日本のラッパーNENE(ゆるふわギャング)が強烈なラップを披露 |
64 | Lil Uzi Vert | Futsal Shuffle 2020 | ダンスを取り入れた少し奇抜なサウンドながらもヒット。いつ出るか分かりませんがアルバム楽しみです |
63 | Kim Petras | All I Do Is Cry | Kim Petrasのアルバムからの3枠目。曲の充実でセレクトが迷いました |
62 | Lauv & Troye Sivan | i'm so tired.. | ストリーミングのプレイリスト中心に人気を得る、新世代ポップの中での傑作だと思います |
61 | Caroline Polachek | So Hot You're Hurting My Feeling | サビのメロディーラインが良いです |
60 | Little Simz feat. Chronixx | Wounds | UKの女性ラッパー。個人的には「ラップ」よりも「R&B」に近いと感じました |
59 | Khalid | Talk | 複数ジャンルに渡るラジオでの大ヒット。プロデューサーはDisclosure |
58 | Grimes | 4ÆM | カナダの鬼才によるドラムンベース調の新曲 |
57 | Uffie | Drugs | かつてEd Bangerレコードにも所属したシンガー。日系で、日本で注目されていたこともあるらしい |
56 | Rico Nasty & Kenny Beats feat. Baauer | Cheat Code | アルバムの収録曲は軒並み短いが、その間に明確なインパクトを残す |
55 | Nasty Cherry | Live Forever | ジャケが裸がちで破天荒なのかな?と思いきや音楽性はオシャレ度高めなガールズバンド |
54 | JPEGMAFIA | Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind | アルバムでは個性的な曲が揃っています。所々歌うのが好きです |
53 | Saweetie feat. City Girls & Jhené Aiko | My Type | 女性ラッパーの躍進を象徴。リミックスリリースでピークに到達 Becky GとMeliiが参加したラテンリミックスも |
52 | Kanye West | Everything We Need | KanyeとTy Dolla $ignのコラボアルバムを密かに期待しています |
51 | Taylor Swift | Lover | Taylor Swiftが偉大なソングライターであることを思い出す、地力や意地を感じたシングル |
はい、続いて50位~1位です。上位では少し補足のある曲もあります。
位 | アーティスト | 曲 | ひとことコメント |
50 | Juice WRLD | Fast | 彼のスタイルをポップに進化させた1曲。亡くなったのが悔やまれます。(補足) |
49 | Aly & AJ | Star Maps | インディーの立場からシンセポップを試みる 元ディズニーアイドル |
48 | Denzel Curry feat. Rick Ross | BIRDZ | 前作よりもアグレッシブなビートを展開 |
47 | Kero Kero Bonito | Battle Lines | 昨年からのローファイ系ポップバンド路線を継続。後半の展開が魅力的 |
46 | King Princess | Trust Nobody | サビのところの声質とメロディーの融合が好き |
45 | Kim Petras | Got My Number | Petras②。電話番号直読みもインパクトを残した、リズミカルなボップ |
44 | Megan Thee Stallion feat. DaBaby | Cash S**t | 今年大きな飛躍を遂げた2人のラッパーのスタイルをシンプルなビートで味わう |
43 | Rina Sawayama | STFU! | Rinaさんの澄んだ声とメタルサウンドの融合は新境地。人種差別などへの怒りを表現 |
42 | Tove Lo feat. ALMA | Bad as the Boys | ややリズミカルになったTove Loの今作。友人ALMAとともに |
41 | J Balvin & Bad Bunny | YO LE LLEGO | コラボ作は曲数少なめながらも、多様な顔を見せています |
40 | Charli XCX | White Mercedes | 珍しいAndrew Wattとのコラボ。純ポップスを書いても一流 ちょっと”Issues"っぽさもある |
39 | MACHETE, Dani Fav & tha Supreme feat. Fabri Fibra | YOSHI | イタリアで1位のラップ曲。US方面とは違う雰囲気を持つ。曲名は任天堂の緑のヨッシー |
38 | Flume & HWLS feat. Slowthai | High Beams | ミックステープで復活を遂げたFlumeの魔術的なビート |
37 | Carly Rae Jepsen | Julien | しっとり系BOP |
36 | Dorian Electra | Flamboyant | アルバム表題曲なだけあって、構成上の核といえる曲 |
35 | Poppy | The Holy Mountain | メタル路線のメインシングルも良いけど、ラストの感傷的なこれも好きです |
34 | Lizzo | Crybaby | ヒットシングルとは違い、アルバムでは重厚なR&Bサウンドを披露 |
33 | Sigrid | Don't Feel Like Crying | きらびやかなポップが並ぶアルバムの中でも存在感を発揮する名シングル |
32 | Ariana Grande | bad idea | アリアナその2。「偽アルバム曲」のような立場 (補足) |
31 | Rich Brian feat. Bekon | Yellow | "DAMN."で一部ボーカルを担当するBekonを迎えた 荘厳な1曲 |
30 | FKA twigs | cellophane | プロダクションはシンプルだが、アルバムラストに強い印象を残す |
29 | Hannah Diamond | Concrete angel | 後半に歪な展開を見せる |
28 | Kehlani feat. Ty Dolla $ign | Nights Like This | 大正義R&Bソングですかね!US以外でもそれなりにヒットしたのもナイス |
27 | Ava Max | So am I | 今は珍しいゴリゴリのダンスポップで再びヒット(US以外で) ビデオも印象的 |
26 | Dave feat. J Hus | Disaster | アルバム単位でUKを席巻したDaveが、同様にUKラップのエース格J Husを迎える |
25 | Billie Eilish | bad guy | 最大限まで高まった期待度に応え、批評とセールスを両立させたBillie Eilish。特にセールス面で巨大な役割を果たしたこの1曲 |
24 | TWICE | FANCY | TWICE初のSpotifyグローバルランク入り。飛躍を証明する好ポップ曲です |
23 | Hatchie | Obsessed | アルバムの隅々までが「染みる」ドリームポップ・ガール |
22 | Dua Lipa | Don't Start Now | 現在珍しいダンスポップを試み、それを大ヒットさせる彼女のカリスマ性 |
21 | Harry Styles | Sunflower, Vol. 6 | One Direction時代の印象が抜けない人に現在の彼を紹介するのに使いたい曲 |
20 | おとぼけビ~バ~ | 脱・日陰の女 | 一部の批評界隈でかなり高く評価された、京都のガールズバンド |
19 | Slayyyter | Alone | ポップシンガー。ギラギラ具合はアルバムでも屈指 |
18 | Vampire Weekend | Harmony Hall | 美しいハーモニー ロック系ラジオではバンド屈指の再生数を獲得 |
17 | JUJU | Intro | ドイツのラッパーが自身のスキルを証明する1曲 (補足) |
16 | Solange | Almeda | とろけるようなサウンド。この曲、そして下記の曲の2つでPlayboi Cartiが活躍 |
15 | Tyler, the Creator | EARFQUAKE | 再生数的な面でも大活躍。シングルではなくアルバムで評価されて人気になる、というストリーミング的な現象 |
14 | DaBaby | Suge | 今年Hot 100エントリー最多はDaBaby。彼が主役に上り詰めた名刺代わりの1曲 |
13 | LIZ | Intuition |
待望のアルバムで格別のポップセンスを披露。お気に入りはブリトニー・バイブスのこれ *3 |
12 | Bad Bunny | Caro | 昨年の曲だけど入れた アルバムの一つ一つがカラフル (補足) |
11 | Young Thug feat. Gunna (& Travis Scott) | Hot | Young Thug帝国の完成形。GunnaがメインでThugが客演の"3 Headed Snake"やリミックスで参加したTravis Scottとの”Hop Off a Jet"も好き |
10 | Charli XCX & Christine and the Queens | Gone | アルバムの「シングル系」の曲の中では一番。アルバムの中で飛び抜けた評価(Pitchforkはソングで4位、アルバムは圏外) |
9 | Clairo | Sofia | Clairoは他の曲が推されることが多いけど私は断然これです。あとは”Closer To You" |
8 | 100 gecs, Dylan Brady & Laura Les | 745 sticky | PC Music「界隈」の超ベスト新人。(所属はしていないが、関わりは強い)1曲の中で複雑で多様な顔を見せる |
7 | Tame Impala | Posthumous Forgiveness | チャート調査の都合で今年はTame Impalaを意識。そんな中で繰り出されたこの曲に心掴まれました |
6 | Ariana Grande | ghostin | 彼女のボーカルを活かした1曲。アルバムの流れでのピークだと思います |
5 | ROSALÌA & J Balvin feat. El Guincho | Con Altura | ROSALÌAさん昨年はごめんなさい! (補足) |
4 | Kim Petras | Do Me | 昨年からの方向転換によって一部のファンは離れたっぽいですが、その人たちはこの曲を聴いて考え直してほしい |
3 | Lana Del Rey | the greatest | 美しすぎる |
2 | Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus | Old Town Road | 感動のチャートアクション (補足) |
1 | Charli XCX feat. Kim Petras & Tommy Cash or Slayyyter | Click | 好きな音楽は何ですか?の質問に対して、これ一つで説明できる気がする 自分の理想が詰まったみたいな曲です |
~補足~
・50 Juice WRLD – Fast
彼はよく「エモラップ」の代表格として扱われていますが、彼はポップスにも影響を与えていると思います。この曲のプロデューサーのLouis BellやFrank Dukesは、ポップスでもこのような作風の曲を作ることがあります。
彼はポップ方面(benny blancoやEllie Goulding)へのコラボもあり、ポップ&ラップ両方に影響を与えられる屈指のタレントだっただけに、亡くなったことが悔やまれます。
・32 Ariana Grande – bad idea
ここで説明する「偽アルバム曲」とは、伝統的にアルバム曲の立ち位置ながらシングルのような存在感を発揮する曲のことです。
伝統的なシングルとはラジオでオンエアされる、またビデオが制作されて、重点的にプロモーションされます。一般的にこのような曲が人気になりますが、昨今はストリーミングでのアルバム志向が強いため、超人気アーティストはアルバム曲でも他人のシングル以上の存在感を放つケースも多いです。Ariana Grandeの場合、アルバムは全ての曲がシングルチャートで50位以上に入り、全てのアルバム曲がシングル並の存在感を発揮しました。
この”bad idea”の「偽アルバム曲」ぶりは、機能面でもより強く見られます。Max Martinプロデュースのこの曲は前半部分がリズミカルなポップソングの顔を見せ、後半部分はボーカル無しでアルバム次曲への橋渡しをこなす……シングル曲の役割もアルバム曲の役割もこなせる、マルチな1曲です。
ちなみに伝統的なシングルにはならなかったものの、SpotifyのToday’s Top Hitsには入っていました。
・17 Juju – Intro
ドイツの女性ラッパー。昨年はCapital Braとの“Melodien”で、今年は自身の”Vermissen”でドイツ1位を獲得。いずれもストリーミングで抜群の人気を誇り、後者は今年年間4位にランクインしています。
暗い雰囲気をまとったヒットの“Vermissen”も良い曲だとは思うのですが、彼女のラップテクニックを大きく見せるアルバム曲の”Intro”がベストトラックにふさわしいと考えました。
ドイツは再生数の規模が大きく、ドイツ圏の人気のみでSpotifyのグローバルトップ100まで到達することも多いです。これはここまで取り上げてきたラテン圏の曲、フランス、イタリアなどにも当てはまることです。
ドイツ、フランス、イタリアの曲はまだ他へのクロスオーバーは見られませんが、再生数上では、(主にSpotifyで)世界的に上位に入る成績を収めていたので、ベストトラックの選考に含みました。
・12 Bad Bunny – Caro
昨年の選考期間がほとんど終わったタイミング(12/24)、でアルバムリリース。良かったので、トラックの方には昨年の選考にねじ込みました(“Tenemos Que Hablar”)
昨年のアルバムには選考時期的に入れられなかったのですが、やはりベストアルバムに取り上げたい、と考えて今年のベストアルバムに取り上げました。それに際し、シングルも再び選び直そうと考えてこの曲をチョイスしました。 アルバムどの曲をとっても彩り豊かですが、際立つのはやはりこの曲でしょうか。
・5 ROSALÍA & J Balvin feat. El Guincho – Con Altura
なぜROSALÍAに謝るのか。それは昨年のベストトラック・アルバムで入れなかったからです。昨年の時点でも彼女はアルバム・シングルともに大きく評価されており、昨年のメディアのベストでも上位に入っていました。
しかし私がこれを入れなかったのは主に2つ理由があります。1つは純粋に作風がハマらなかったです。2つ目は、コメントで時折付けられる「ポップスはもはや英語だけのものだけではない」ような文言がピンと来なかったからです。
昨年の時点では、ROSALÍAはチャートアクション的には「スペイン国内で人気のアクト」程度でした。他の場所へのクロスオーバーが皆無ではありませんが、ラテン圏のアーティストとして規模は小さいほうでした。規模的にはチャート研究者目線で「無視可能」な規模だったのです。
それなのになぜ急にこんなに評価されているの?という考え、ベストアルバム表に載る彼女を見る度に、「何でだよ!」と思っていました。
そこまで思っていた私を、ひっくり返したのはこの曲です。J Balvinと組み、ラテンアーバンに接近したこの曲は、リズミカルで作風が私にハマりました。そして何より、スペイン語圏以外にも広がる特大ヒットになりました。YouTubeの再生数は10億越え。今年リリースされたビデオで10億越えしたのは“Con Calma”とこの曲の2つのみです。またSpotifyでも長くグローバルトップ50に残り、文句なしのヒットになりました。
その後も印象的なシングルを残し続け、“Yo x Tu, Ti x Mi”はかなりヒットもしました。そんなこの1年の彼女の実績を見ていると、昨年感じていたような「何だこいつ!?」は現在完全に消え去りました。
昨年の私が彼女に抱いた疑念は間違っていたことを認め、ここで考えを改めたことを示します。(大げさ)
・2 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road
今年19週にわたるHot 100首位滞在を記録したこの1曲。Hot Country Songs除外を機に話題が更に大きくなり、Billy Ray Cyrusを客演で迎え、熱狂はピークに達しました。
このチャートでチャートの話題を呼び、記録を更新したということは1チャート研究者としてはとても感動的なことです。ここで個人的に嬉しいのは、チャートへの人々の興味が意外とあったということです。多くの人がチャートを一応気にしているから、カントリー曲への除外が話題になり、Billy Ray Cyrusリミックスも特大の人気を得たのです。
多様化の流れで、チャートを気にする人は少なくなるのでは?みたいな意見も多少は見られる昨今ですが、まだチャートも捨てたもんじゃないな、そう感じさせてくれたこの曲に大きく感謝です。 (まあ、ビルボードのそれへの対応?は少し残念でしたが……)
音楽面の話をすると、Billy Ray Cyrusの意外なフィット具合がナイス。Young ThugとMason Ramseyのリミックスがわりと好きです。あとはLil Nas Xの他の曲、“Panini”や”F9mily”なんかも好きですね。
☆プレイリスト
関連:昨年のベストトラック