チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】

f:id:djk2:20200228002733p:plain

 こんばんは。今月シングル上位の動きが鈍かったですが、アルバムチャートは見ていて面白かったです!(けっこう記事でアルバムチャートも扱うことが多いと感じたので、記事名にもBillboard 200を入れました)

 

※記事は月1ですが、Twitterでは毎週のHot 100の動向・ショート版を配信しています。宜しければそちらも…… あと今月記事が少なかったので、来月以降は改善しようかな~と考えています。

 

 

・今月のトップ10(シングル)推移

f:id:djk2:20200228002819j:plain

 

・今月のアルバムトップ5推移

f:id:djk2:20200228003452j:plain

 

・今月の各指標の1位推移

f:id:djk2:20200228003551j:plain

※日付はHot 100準拠

 

 

~各週のハイライト~

 

2/1のハイライト◇

Eminemが27.9万枚でアルバム1位。10作連続での1位。12曲がHot 100入りし、”Godzilla”は3位に

・アルバム2位のHalseyは23.9万枚、アルバム3位のMac Millerも16.4万枚とかなりハイレベルなレース。Halseyはセールスが中心。Millerはストリーミング中心で10曲がHot 100入り

・“The Box”が首位キープ。アルバムは4位ながらも売上は10.3万枚

・Jonas Brothersの新曲が16位に登場

 

2/8のハイライト◇

・グラミー効果で”bad guy”が24個順位を上げて17位まで浮上。同様に”everything i wanted”も13位上昇で10位へ

・Dua Lipaがキャリア2曲目のトップ10!”Don’t Start Now”が9位に浮上

・Megan Thee Stallionの新曲が31位に登場

・Roddy Ricchがシングル&アルバム両方で1位

・グラミーでパフォーマンスされたDemi Lovatoの”Anyone”が多くのDLを稼いで34位に登場

 

2/15のハイライト◇

・Lil Wayneがアルバム1位。4曲がHot 100入り

・今週ラジオの伸び幅が最大だった”The Box”が引き続き首位

・Taylor Swiftの”Only the Young”が50位に登場

・Dua Lipaの”Physical”は60位に

・Meghan TrainorがNicki Minajとの”Nice To Meet Ya”で2年ぶりのHot 100(89位)

・アルバム1位のLil Wayne、同4位のRuss、同7位のKesha、同9位のLouis Tomlinson、同10位のYo Gotti全員がチケットやグッズのバンドル戦略でセールスを稼ぐ

 

2/22のハイライト◇

・Justin Bieberの”Intentions”が11位に登場

・Nicki Minajの新曲”Yikes”が23位に登場。DLが今週1位。しかし来週は大きく順位を落としそう (追記:2週目は81位に)

・Jojiの”Run”が68位に登場。3回目のHot 100入り&キャリアピークを更新(”SLOW~”のピークは69位)

・Roddy Ricchが再びシングル&アルバム両方で1位

 

2/29のハイライト◇

・Justin Bieberがアルバム1位。売上は23.1万で6曲がHot 100入り。”Intentions”がトップ10に

・A Boogie Wit da Hoodieがアルバム2位。11.1万の売上はほとんどストリーミングから。7曲がHot 100に

・Tame Impalaが11.0万でアルバム3位

・”Don’t Start Now”が5位浮上。”New Rules”を上回る

 

 

主なトピックス

 

・2/1のアルバム激戦区

 2月はこのアルバム激戦区でスタートしました。Eminemが27.9万、Halseyが23.9万、Mac Millerが16.4万とかなり高水準の成績を記録。これらは全て1月ならばどの週でもアルバム1位を獲得できる成績です。 (ほか4位のRoddy Ricch(新リリースではない)も10万超えの成績を記録しています)

 またこの激戦区はHot 100にも影響を及ぼしました。EminemMac Millerの2作品がストリーミングで絶大な人気を得て、Hot 100にアルバム曲が大量登場したため、この週は合計で25曲がチャートから外れました。

 

 Eminemの今作の売上27.9万は、前作”Kamikaze”の43.4万よりは数字を落としたものの、それよりもサプライズリリースでここまでの数字を連発できる凄さの方が目を引きます。純セールスの数字は(25.2万→11.7万)落としたものの、ストリーミングによる売上は大差ありません。(16.8万→15.4万 ただし曲数が前作よりも多いので曲ごとの平均では落ちた) 

※ちなみに2017年末の“Revival”は総合26.7万、純セールス19.7万 

 

 これでEminemは10作連続10回目のアルバム1位。10作連続1位は歴代最長の記録。通算1位数も歴代で5位タイです。(最多はThe Beatlesの19枚)

 そのストリーミング人気から12曲がHot 100に登場。Juice WRLDとの”Godzilla”は3位に登場。この曲はUK1位など、ほかの国でもヒットしています。最後のヴァースで秒あたりのワード数記録を更新したことも少し話題に。(前はEminem自身の“Rap God”がこの記録を持っていた)

 ほか客演で参加のAnderson .PaakとWhite Goldが初のHot 100入りを成し遂げています。

 

 ちなみに“Godzilla”が歌詞に登場するHot 100に入った曲は4つ見つかりました。

Kanye West feat. Jay-Z, Rick Ross, Nicki Minaj & Bon Iver – Monster

Eminem feat. Royce da 5’9” – Not Alike

Eminem feat. Juice WRLD – Godzilla

Eminem feat. Don Toliver – No Regrets

 太字になっている人物のパートで“Godzilla”が登場します。Eminemが好んで使っている表現のようですね。ほかHot 100に惜しくも入らなかったFutureやGunnaの曲にも”Godzilla”が登場していました。

 

 

 Halseyはチケットやグッズ戦略を駆使したセールス中心に数字を稼ぎ、前作の2倍以上の23.9万枚を売上。アルバム2位としては2016年のBeyoncé*1後で最大の数字です。ストリーミングも5.6万で、同様にかなり伸びました。普通に好成績ですが、それでも2位なのは巡り合わせが悪いだけです。昨年このアルバムよりも高い成績を記録したのは8人(組)のみでした。アルバムからのHot 100エントリーは2曲。

 これでHalseyは3作の中で最も売上が低い(10.6万)のセカンドが唯一のアルバムチャート1位という変わった経歴の持ち主となりました。

 

 Mac Millerはストリーミング中心の人気。これにより10曲がHot 100入りを果たしています。そしてグッズ戦略も使ってセールスも少し稼ぎ、総合売上は16.4万でキャリア最高です。アルバム1位を獲得した2011年のデビュー作は14.4万でした。

 

 

・激戦区再び?2/29のアルバムチャートも……

 1週目ほどではないですが、2月の最終週も10万超えが3つ登場する激戦区でした。Justin Bieberの”Changes”が23.1万で1位。(7作目の1位) 次いでA Boogie Wit da Hoodieが11.1万で2位、Tame Impalaが僅差の11.0万で3位です。JustinとTameはチケット+音源戦略*2やグッズバンドル戦略を駆使してセールスを稼ぎました。

 

 Justin Bieberは前作”Purpose”の総合64.9万と比較すると数字が落ちました。これはもちろん2015年と2020年の環境の違い:人々が購入からストリーミングへ移行したこと、が影響しています。実際に純セールスは52.2万→12.6万と数字を落とす一方、ストリーミングは7700万→1.3億と伸びています。再生数はポップアルバムでは歴代でも屈指の数字で、好成績と捉えることもできます。

 しかし前作では収録曲が17もHot 100入りを果たしていたのに対し、今回は6曲のみのエントリーに。ストリーミングへの移行により、環境的には2020年の方がアルバム曲のHot 100エントリーは増えているのにも関わらず、Hot 100入りが減少。この点に関しては物足りなさを感じます。シングルの”Intentions”が多少はヒットしそうな点が希望の光でしょうか。

 

 次いでA Boogie Wit da Hoodie。2019年にアルバム1位を獲得した実績はありますが、今回は2位デビューに。前作ではストリーミング人気の持続によってリリース週ではない週にアルバム1位を獲得しましたが、次週以降もリリースラッシュが続くため今作ではアルバム1位にはならなそうです。

 とはいえ各種バンドルといったセールス戦略を使わずに11.1万という成績はかなり優秀だと思います。純セールスはわずか3,000のみで、成績はほとんどストリーミングによるものです。Apple Musicでは絶大な人気でしたが、Spotifyではそこそこ。

 ちなみに彼は前作で純セールスが1000以下ながらもアルバム1位、という史上初の記録(当時)を成し遂げています。

(参考:Hot 100 1/19 見どころ 【“Sunflower”が首位奪取 + ストリーミング時代のアルバムチャート】 - チャート・マニア・ラボ

 

 ちなみに今年はここまで収録曲を5曲以上(同時に)Hot 100入りに送り込んだ作品が5つあります。これは2018年の29アルバム/53週を上回るペースです。さらに来週はYoungBoy Never Broke Again、2週間後はLil Babyなど、今後も5曲以上がHot 100に入りそうなアルバムが相次ぐことから今年は歴代で最も「アルバム曲Hot 100ジャック」が見られる年になるかもしれません。

 

※5曲以上が同時にHot 100入りした作品

1/11:JACKBOYS 6曲

2/1:Eminem 12曲

2/1:Mac Miller 10曲

2/29:Justin Bieber 6曲

2/29:A Boogie Wit da Hoodie 7曲

 

 

  そして躍進が光ったのは3位のTame Impalaです。Hot 100入りの経験は無いですが、11.0万と週によっては充分1位を獲得できるクラスの成績を記録。前作の4.5万から大幅に上昇しました。

 チケットやグッズ戦略も活用。さらにはヴァイナル人気も伴い、セールス(8.0万)で大きく数字を稼ぎました。

 またストリーミングも好成績を記録。特にSpotifyでの人気が高く、リリース日には収録曲全てがランキング圏内に登場。その中でも特に人気のあった”Breathe Deeper”がHot 100に入るかも!?と少し期待していたのですが、残念ながらBubbling Underにも届かず。

 Tame Impalaは過去作品も注目されていて、2015年の”The Less I Know The Better”がリリースから4年が経過した昨年、はじめてSpotifyのグローバルチャートに登場するという快挙も成し遂げています。今年に入ってからも断続的にランクインしています。(この曲が収録された”Currents”はUSアルバムチャートに再登場を果たしました)

 ストリーミングで人気を獲得し、さらにはヒップホップ方面とのタッグ(RihannaTravis Scott)もこなすTame Impala。そんな彼(ら)がメインストリームでも大躍進する日がいつか来るかもしれません。

 

 ほかこの週はK-PopグループMonsta Xが複数戦略(チケットやグッズ、ポップアップストア、CD複数バージョンなど)を駆使してセールスを稼ぎ、5.2万の成績でアルバム5位に食い込みました。

 彼らはHot 100には未登場ですが、昨年French Montanaとの英語シングル“Who Do You Love”がポップ系ラジオで26位まで浮上と人気を得て、飛躍の兆しを見せています。 (BTSでもポップ系ラジオ最高成績は22位なので、K-Popがここまでラジオにかかるのは珍しいです。ラジオでかかるには英語歌詞がやはり大切なのかも? ちなみにMonsta Xは今回のアルバムも全編英語歌詞のようです)

 

 

・全員バンドル? 特徴的だった2/15のアルバムチャート

 激戦区ではないのですが、2/15のアルバムチャートも面白かったです。トップ10に新作が5つ登場したのですが、その全部がバンドル戦略を活用していたのです!もはやこのようなセールス戦略を活用しないほうが珍しく、アルバムチャートはこのセールス戦略をいかに活用するか・ストリーミングでいか人気を得るかの2つの軸で争われている印象があります。

 この戦略を用いた場合、初週の数字は高くなりますが2週目に反動でガクっと数字を落とす傾向にあります。この週の作品はどうだったでしょうか。

 

Lil Wayne 🎫👕:1位 → 6位

Russ 🎫👕:4位 → 46位

Kesha 🎫👕:7位 → 139位

Louis Tomlinson 🎫👕:9位 → 圏外

Yo Gotti 👕:10位 → 30位

(🎫=チケット+音源戦略 👕=グッズバンドル戦略)

 

 セールス戦略を導入したとはいえ、ストリーミングの成績が半分以上を占めたLil WayneとYo Gottiの下げ幅は最小限に。同様にストリーミングで一定の成績を収めたRussも落下はそこまで大きくないです。

 ただしストリーミングの数字をあまり稼げなかったKesha・Louis Tomlinsonは順位を大きく落としました。

 

 

・動きが鈍い上位

 今月アルバムチャートの話題は盛りだくさんでしたが、Hot 100上位の動きは鈍かったです。1位の”The Box”、そして2位の”Life Is Good”が2月の間ずっと順位をキープ。さらに”Circles”も2/1の週以外はずっと3位に居座っていました。

 “The Box”と”Life Is Good”はストリーミング中心の人気。そして”Circles”はラジオ中心の成績です。”Circles”は今月4週にわたりラジオ1位を記録しています。(1週だけ”Memories”がラジオ1位になった。その”Memories”も長く上位に)

 

 あまり変化が無かったHot 100の上位で数少ない新風となったのはDua Lipaの“Don’t Start Now”。

 この曲はリリース時から注目を集め、次第にラジオでも浮上。ストリーミングでも数字を落とさずに人気をキープしたことによりHot 100で好成績を記録。かつての”New Rules”の6位ピークを上回る5位まで到達しました。このようにラジオとストリーミングの足並みが揃う曲は最近では少しレアだと思います。

 最後の週にトップ10入りを果たした”Blinding Lights”も来月以降の活躍に期待ができそうです。この曲はアメリカ国外で人気を得たことによって、USのラジオでもシングルカットされHot 100で急浮上しました。

 

 

・グラミーの週

 昨年のグラミーのチャートへの影響力は最小級でした。披露する曲のチョイスを巡ってグラミー出演がキャンセルされたAriana Grandeのアルバム曲がチャートを支配する一方で、グラミー関連曲でHot 100に登場したのは96位のKacey Musgravesの”Rainbow”くらいです。

(参考:Hot 100 2/23 見どころ 【Ariana Grande、1位2位3位を支配、史上2回目の偉業】 - チャート・マニア・ラボ

 

 その昨年と比べると、今年はチャートで動きがありました。まず4部門制覇のBillie Eilish。”bad guy”が41位→17位へ、”everything i wanted”23位→10位へと上昇。次週以降もそこまで順位を落とさず、本格的な「再浮上」になりました。特に後者は以降ラジオの伸びが見られたので、グラミーがきっかけに曲がさらにヒットしたと言えます。

 

 これ以外にも34位にDemi Lovatoの”Anyone”、80位にMeek Millの”Letter To Nipsey”、93位にAlicia Keysの”Underdog”、94位にCamila Cabelloの”First Man”と複数のグラミー関連曲がHot 100デビュー。グラミーはチャートで一定の存在感を示しました。ただしこれらの曲はBillieとは違い、すぐにチャートから外れてしまいました。

 

 

・表記の揺れ?

 細かいところなのですが、ビルボードの表記とストリーミングなどでの表記が少し異なるケースがいくつか見られます。多いのは、ストリーミングでは2人目以降のアーティストがfeat.なのに、ビルボードでは&でくくられて全員がメインアーティストになっている事例です。直近の週で言えばMigosの”Give No Fxk”です。この曲に関しては曲名も微妙に異なります。(ビルボードでは”g n f (Give No Fxk)”と表記されていますが、他でこのg n fという表記を見たことが無い)

 メインか客演かならば些細な問題だと思うのですが、少し気になるのはリミックスの名義を載せるかどうかの問題です。ビルボードは人気のバージョンの方の名義を採用する*3としていますが、ストリーミングでの数字と比例しないケースも多く見られます。ラジオの成績準拠なのかもしれませんが。

 ストリーミングではリミックスのほうが人気なのにビルボードではリミックス名義が載らないというケースが多いのですが、2/22に登場した”Rodeo”ではLil Nas X & Cardi B or Nasという柔軟な表記をしています。この"or"の表記はレアですが、動向を忠実に反映させていて良い表記だと思います。

 

 

・曲ごとの短評

 その他気になった曲について書いていきます。

 

・Jonas Brothers - What A Man Gotta Do

 ストリーミングでは”Sucker”のような成績を記録できませんでしたが、DLでは同週リリースのBTSを上回り1位に。ほかラジオでも熱烈な支持を受けてHot 100で16位デビュー。その後もラジオでの好成績によって中位に留まっています。彼らは過去曲の”Sucker”や”Only Human”もラジオでの人気が長く持続しています。このラジオ人気があれば、今後もHot 100で安定した成績を残しそうな予感がします。

 

・Taylor Swift – Lover

 ピーク10位で滞在22週と十分好成績なのに、年を跨いだことによって年間チャート入りが難しい曲。アルバムリリース時のストリーミング成績は良かったですが、ラジオがそこまで伸びなかったこと、Shawn Mendesリミックスがそこまで効力を発揮しなかったことが誤算でしょうか。次シングルは“The Man”

 

Chris Brown feat. Gunna – Heat

 ピーク36位・滞在20週と地味に良い成績だと思います。リズミック系1位・アーバン系2位とラジオの好成績によってHot 100で成功を収めました。

 Chris Brownは“No Guidance”も同様にラジオで強く、R&B/Hip-Hop Airplay*4では合計27週1位。これは歴代で最長の1位滞在です。 (それまで記録を持っていたのは”Adorn”の23週)

 

・Joji - Run

 Joji3曲目のHot 100エントリー。68位に登場し、”SLOW~”の69位を上回りキャリア最高位を更新しました。Spotifyでは週間16位とかなり好成績でした。 ただ2週目にはHot 100から外れ、ストリーミングでも数字を落としていきました。

 このような「登場時のストリーミング成績は高いが、その後数字を早く落としてしまう」というアクションは2つの捉え方ができると思います。

 

 1つ目はリリース時の高順位に着目して、「人への期待度が高い」という捉え方です。インディーアクトなどにも見られる動きで、この傾向があるアーティストはアルバム時に伸びることが多い印象です。

 世間的な注目度、例えばラジオのオンエア・メディアでの露出・過去のシングルヒット数などから予測されるヒット度を上回るとこの印象がつくと思います。Jojiもラジオのオンエア少なめなので、こちらの印象が付くと思います。あとは5位ピークながらも9週でHot 100を去ったLil Uzi Vertもこちらのパターンだと思います。

 

 Jojiは新曲の”Run”こそ順位がすぐに落としてしましましたが、”SLOW DANCING IN THE DARK”はSpotifyで超絶ロングヒットを記録しています。この曲の存在が彼への期待感を高めている、という捉え方もできます。以下はこの曲のSpotify順位推移です。

 

f:id:djk2:20200228005931j:plain

2018年のクリスマスの1週を除き、リリース以降全ての週でランクインし続けています。

 

f:id:djk2:20200228010002j:plain

さらに再生数ベースの表です。横ばいどころか、微増の傾向が伺えます!

 

 

 2つ目は落ちる方に着目して、「期待はずれ」という捉え方です。これは従来ならばシングルヒットを多く飛ばしているアーティストなのに……というニュアンスが含まれています。すぐ順位を落としてしまう状況は、あまりシングルヒットとは言い難いです。Nicki Minajなどがどちらかというとこのパターンでしょうか。

 2つ目とは逆に、ラジオ・メディアのサポートを受けているとこの印象が強くなるかもしれません。ラジオでたくさんかかっていたのに、すぐに順位を落としてしまうと「ヒットを逃した」感が出てしまいます。

 とはいえアーティストとしての注目度が高いことはたしかなプラス材料です。最初の注目度が高ければ、今後のリリースでヒットを生み出すチャンスも大きいですし、アルバムで人気を集める可能性も大きいです。

 いくら落下度が高くても、その初動の火を消さないことが大切だと思います。

 

 

・Don Toliver – No Idea

 ピーク43位・滞在11週という成績でチャートを後に。トップ40に惜しくも届かず。Hot 100では重要なラジオの数字をあまり得られなかったことが痛かったです。

 彼はこの曲でHot 100で登場以降、JACKBOYSのアルバムで2曲、さらにはEminemの客演として1曲のHot 100入りを成し遂げました。この多方面からの人気ぶりは今後の飛躍を予感させます。

 

・The Black Eyed Peas & J Balvin – RITMO (Bad Boys For Love)

 The Black Eyed PeasがJ Balvinと組んだ”RITMO”がトップ40まで到達。BEPは”Just Can’t Get Enough”以来、およそ10年ぶりのトップ40です。

 この曲はJ Balvinがスペイン語ヴァースで参加していることにより、まずはラテン圏で人気になり、SpotifyYouTubeの両方でグローバルトップ10まで到達。その後USラジオでのオンエアが始まり、Hot 100にも登場。現在ストリーミングでのピークは過ぎたような印象ですが、ラジオでの人気拡大によってトップ40入りを成し遂げました。ラテンのスターに牽引される形で英語圏のビッグアクトが復活を遂げたという構図は興味深いです。

 USのラジオでオンエアされたのはある意味The Black Eyed Peasの功績とも言えます。ラテン曲ヒットのうち、全パートスペイン語の曲だとラテン以外のラジオにあまりかからないですが、英語パートがある程度混ざっていると他系統のラジオにも波及しやすいようです。

 昨年Spotifyのグローバルトップ10入りしたラテン曲を調べたところ、英語ヴァースのある曲はラテン系以外のラジオでもかかる一方、スペイン語のみの曲はDrakeが参加した”MIA”を除きすべてラテン系以外のラジオチャートへのエントリーがありませんでした。

 Hot 100で順位をより伸ばすには、ラジオの成績が大切ですが、そのラジオでオンエアされるためには英語ヴァースが必要、ということです。

 

 

・DaBaby - VIBEZ

 “VIBEZ”がピーク21位・滞在20週という成績でチャートから外れました。いわゆる「完走」です。

 この曲の特筆すべきポイントは、ラジオの成績(ほぼ)無しで20週もHot 100に残ったという点です。DaBabyのシングルは現在”BOP”の方で、”VIBEZ”はビルボードのラジオ系チャートに一切登場していないですが、ストリーミング人気を長く持続してHot 100に残り続けました。純粋にDaBaby人気が抜群なこと、TikTokで人気を得たこと、プレイリストに長く入っていたことなどが人気の理由だと思います。

 ラジオではシングルカットを「順番に」行うため、ストリーミングで盛り上がるタイミング=多くはアルバムリリース直後のタイミングを逃してしまうことがありますが、プレイリストは同一アーティストの曲を複数含むことも多いので、ヒットの熱を逃さず複数シングルを活かすことが可能です。

 DaBabyは現在、”TOES”もTikTokやプレイリストの恩恵を受けてHot 100にランクイン(12週目)。”VIBEZ”と同様にラジオなしでどこまで奮闘するか、見ものです。

 

 

・来月の展望:Spotifyで人気の…… / Lil BabyとMigos

 来月に向けて、私が注目しているのはSpotifyで人気浮上中の曲たちです。その中でも期待が大きいのはAsheによる“Moral of the Story”。昨年リリースの曲ですが、TikTokの人気などもあってここ1週間ぐらいで急浮上。プロデューサーFinneasということもあり、今後ますます注目を集めそうです。

 他の注目候補はSurfacesの“Sunday Best”、Powfuの”death bed”、または同じくFinneasプロデュースJP Saxeの”If the World Was Ending”など。そして既にHot 100入りしている”Blueberry Faygo”や”WHATS POPPIN”もヒットの見込みあり。

 

 あともう一つ気になるのはMigosとLil Baby。ともにQuality Controlというレーベルに所属しているのですが、このレーベルのエースがLil Babyになるのでは?ということです。

 Lil Babyはここ最近のシングルリリースが好調。スタート時からトップ40に登場し、その後もある程度は上位に残っています。この調子を見るかぎり、今週末リリースのアルバムでかなりの成績を残しそうです。

 一方Migosは微妙な成績。Travis Scott・Young Thugという強力なゲストを迎えた”Give No Fxk”も46位スタートとそこそこな成績。さらに各ストリーミングですぐに順位を落としたため、2週目以降の数字に不安を残しています。(実際、圏外に)

 メンバーのQuavoが参加したJustin Bieberの“Intentions”が好調なので、全く奮わないというほどではないですが。

 

 

今月トップ40(以上)に入った曲

(☆=新登場 ◇=再登場 △=順位上昇)

 

2/1

☆3 Eminem feat. Juice WRLD – Godzilla

☆16 Jonas Brothers – What A Man Gotta Do

☆28 Eminem – Darkness

☆31 Eminem feat. Ed Sheeran – Those Kinda Nights

☆36 Eminem feat. Young M.A – Unaccommodating

☆38 Mac Miller – Blue World

△40 Camila Cabello feat. DaBaby – My Oh My

 

2/8

☆31 Megan Thee Stallion – B.I.T.C.H.

☆34 Demi Lovato – Anyone 

 

2/15

☆33 Lil Wayne feat. Big Sean & Lil Baby – I Do It

△34 Sam Hunt – Kinfolks

 

2/22

☆11 Justin Bieber feat. Quavo – Intentions

☆23 Nicki Minaj – Yikes

△36 The Black Eyed Peas & J Balvin – RITMO

 

2/29

☆16 Billie Eilish – No Time To Die

☆23 A Boogie Wit da Hoodie feat. Roddy Ricch, Gunna & London On da Track – Numbers

☆24 Justin Bieber feat. Post Malone & Clever – Forever

 

※CleverとLondon On da Trackは初のトップ40。(ただし後者は”Lifestyle”などプロデューサーとしてのトップ40入り経験はあります。)

 

 

今月Hot 100から外れた主な曲 (滞在10週以上かピークが10位以上の曲)

 

2/1

46 Wale feat. Jeremih – On Chill (🗻22位 /⏰23週)

48 Khalid – Talk (🗻3位 /⏰46週)

49 Lady Antebellum – What If I Never Get Over You (🗻40位 /⏰21週)

50 Taylor Swift – Lover (🗻10位 /⏰22週)

54 Summer Walker – Playing Games (🗻16位 /⏰20週)

59 Chris Brown feat. Gunna – Heat (🗻36位 /⏰20週)

78 NLE Choppa – Camelot (🗻37位 /⏰18週) ※のちに再登場

80 Thomas Rhett – Remember You Young (🗻53位 /⏰18週)

85 Quality Control, Layton Greene, PnB Rock, Lil Baby & City Girls – Leave Em Alone (🗻60位 /⏰15週)

95 Niall Horan – Nice To Meet Ya (🗻63位 /⏰14週)

98 YNW Melly & 9lokknine – 223’s (🗻34位 /⏰19週)

 

2/8

94 Post Malone feat. Ozzy Osbourne & Travis Scott – Take What You Want (🗻8位 /⏰20週)

 

2/15

49 Lil Nas X - Panini (🗻5位 /⏰32週)

64 Halsey - Graveyard (🗻34位 /⏰20週)

 

2/22

99 NLE Choppa - Camelot (🗻37位 /⏰20週)

 

2/29

46 Young Thug feat. Gunna - Hot (🗻11位 /⏰26週)

47 Luke Combs – Even Though I’m Leaving (🗻11位 /⏰24週)

52 Jon Pardi – Heartache Medication (🗻42位 /⏰20週)

65 DaBaby - VIBEZ (🗻21位 /⏰20週)

84 Lil Uzi Vert – Futsal Shuffle 2020 (🗻5位 /⏰9週)

88 Don Toliver – No Idea (🗻43位 /⏰11週)

94 Roddy Ricch & Gunna – Start Wit Me (🗻56位 /⏰13週)

95 DaniLeigh feat. Chris Brown - Easy (🗻79位 /⏰15週)

98 Tory Lanez & T-Pain – Jerry Sprunger (🗻44位 /⏰10週)

 

 

・各週のHot 100順位リンク

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-01

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-08

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-15

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-22

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-02-29

 

 

・おまけ:今月のRolling Stone Chartsトップ10推移

f:id:djk2:20200228010457j:plain

※日付はHot 100と揃えています。

 1位・2位の並びはHot 100と同じですが、それ以外は並びは違う点が多いです。

 

 

・先月号

 

☆2020/3/30 一部内容を補足・訂正しました

 

*1:このアルバムはHalseyとは違い、一つ前の週に1位を獲得しています。

*2:ツアーのチケットを買うと音源を入手できるプラン。その分チケットの値段が上がっているとの説もあり

*3:"Lover"のShawn Mendesリミックスがリリースされた時、ビルボードの記事でそのような言及がありました。結局Shawn Mendesはクレジットされませんでした

*4:アーバン系+アダルトR&B系の合算