今月のビルボードチャートを10のポイントで語る記事です!今月はPop SmokeとJuice WRLDのアルバムが大きな存在感を示しました。その一方で販売戦略を用いて1位を獲得した曲たちは……?
- ① Pop SmokeとJuice WRLDがアルバムチャートを盛り上げる
- ② アルバムラッシュ時のシングル関連記録
- ③ 今月は販売戦略が無かったシングル、来月以降は制限も
- ④ 販売戦略で1位を獲得した曲のその後……
- ⑤ 来月のトップ10候補
- ⑥ 今月のラジオ(The Weeknd・Post Malone)
- ⑦ 5月に予想した年間トップ10の曲たち
- ⑧ 今月のTikTok
- ⑨ Kanyeシリーズ?
- ⑩ その他の曲の短評
- ・今月のデータ
- 参考/関連リンク
① Pop SmokeとJuice WRLDがアルバムチャートを盛り上げる
今月最も注目を集めたテーマといえば、Pop SmokeとJuice WRLDのアルバムでしょう。いずれもストリーミングで高水準の数字を記録し、アルバム / シングルチャートの両方で存在感を示しました。
Pop Smokeは2億6844万再生、Juice WRLDは4億2633万再生記録。これはそれぞれ歴代4位、16位の記録です。この人気により、いずれのアルバムもHot 100に多数の曲を送り込みました。
(US週間再生数が多いアルバム)
※2020年からビデオがアルバムチャートに導入されたため、少しだけ従来よりも再生数が高めに集計されています
Juice WRLDはマーチを利用しセールスも高かったため、今年最大の週間売上49.7万を記録しました。(8月にTaylor Swiftに抜かれるとは思いますが)
両者ともに亡くなった後の作品で注目を集めることに成功しました。客演の豪華さ(Pop Smokeのアルバム)、元からの注目度など要因は他にもありますが、やはり亡くなった事で注目度が上がったという側面もあるのでしょうか。
今月のアルバムチャートでは他にもHamiltonのサウンドトラックが面白い動きを見せました。もともと根強い人気がある作品で、長くチャートに残っていたのですが、新映像公開の効果で250週目にしてアルバム2位まで浮上。Pop Smokeに阻まれ1位獲得はならずも、週によっては1位も狙える数字=10.2万でした。仮に1位ならば圧倒的に遅い段階1位獲得になります。
※アルバム1位獲得までに時間がかかったアルバム (ニールセン = 1991年以降)
62週 Soundtrack – O Brother, Where Art Thou?
52週 Live – Throwing Copper
49週 No Doubt – Tragic Kingdom
46週 Norah Jones – Come Away with Me
44週 Hootie & The Blowfsh – Cracked Rear View
② アルバムラッシュ時のシングル関連記録
Pop Smokeのアルバムは全19曲がHot 100に登場。うち1曲はトップ10入り。またこの曲を含む計7曲がトップ40入りしています。
Juice WRLDも「実質」全曲がHot 100入り。いくつかHot 100入りしてない曲もありますが、それらもストリーミングでは十分な再生数を記録しており、ルールによって弾かれた曲があると推測されます。*1
登場した17曲のうち5曲がトップ10入り。またこの5曲を含む12曲がトップ40圏内に入りました。
このような「アルバムラッシュ」ではその大量エントリーからシングル関連の記録が生まれることも多いです。Pop Smokeはアルバム内の”For the Night”によって初のトップ10を記録。客演のLil Baby、DaBabyはいずれも今年だけで3曲目のトップ10を記録しました。(トータルだとLil Babyが5曲目、DaBabyが4曲目)
ほかPop Smokeのアルバムで客演を務めた、P. Diddyの息子のKing CombsがHot 100初登場を果たしました。
その他このアルバム関連で面白かったのは50 CentとRoddy Ricchが参加した”The Woo”です。この曲は11位に登場し、50 Centにとって2012年の”My Life”以来のトップ40を達成。曲中には彼のヒット”Candy Shop”からの引用が登場するなど、彼の要素が見られる1曲です。
彼は昨年もEd Sheeranの“Remember the Name”にEminemと共に登場しHot 100入り(57位)を果たしています。今後もレジェンド枠として客演などの出番があるかもしれません。
Juice WRLDはアルバムの週に一気に5曲がトップ10入りし、キャリア通算トップ10曲数を一気に3→8に伸ばしました。また5曲以上が同時にトップ10入りするのはThe Beatles、Drakeに次ぐ史上3人(組)目の快挙です。時代が違うので単純な比較は出来ませんが、現在もアルバムが人々の注目を集める強力なフォーマットということは確かでしょう。*2
また“Hate the Other Side”で客演のPolo GとThe Kid LAROIは初のトップ10を達成。The Kid LAROIはUSでは珍しいオーストラリアのラッパー。
Marshmelloは“Come & Go”と合わせてこの週2曲がトップ10入りし、キャリア2,3曲目のトップ10。印象よりも少なめに感じます
ちなみにMarshmelloはラップ曲のプロデュースをする時に“Mello Made It Right”というタグを付けるのですが、この「ラップ部門」のHot 100エントリーは2,3曲目でした。Chris BrownとTygaが参加した”Light It Up”が部門初のHot 100でしたが、それよりも初期Roddy Ricchをサポートした“Project Dreams”がこの部門の最大のヒットだと考えられています。(”Project Dreams”はRIAAのプラチナ認定を受けています)
“Life’s A Mess”でコラボしたHalseyは6曲目のトップ10。この2人は以前も“Without Me”のリミックスで組んだことがありました。この曲はリミックスがリリースされた週に、その恩恵を受けて首位返り咲きに成功しました。ただ原曲の方が主要なポイント源だったため、この曲ではJuice WRLDはクレジットに載っていません。
またこのアルバムは制作陣が面白いです。“Hate the Other Side”にはKSHMRが参加。彼はプロダクションチームThe Cataracksの一員として、2010年に”Like a G6”でHot 100首位獲得の経験もあります。2014年以降は現在のKSHMR名義でDJとして人気を得ています。
他のトップ10曲だと、”Wishing Well”にはDr. Luke、“Life’s A Mess”にはRick Rubinとかなり著名なプロデューサーが参加。”Conversations“も複数のトップ10歴があるRonny Jが担当しています。
それ以外でアルバムに参加した著名な裏方としては、Juice WRLDの曲を多く担当してきたNick Mira(”Righteous”)、”THE SCOTTS”やLil Nas Xの“Panini”等をヒットさせたTake a Daytrip(”Bad Energy”)、そしてSkrillex(“Man of the Year”)などが挙げられます。
③ 今月は販売戦略が無かったシングル、来月以降は制限も
5~6月には多くの曲が販売戦略を活用し、1位を獲得していましたが今週はそのような事例はゼロでした。”ROCKSTAR”が堅調に1位をキープ。
この戦略は来月から制限されてしまうので、先月で見納めだったのかもしれません。チャート上で歪な動きをしていたので、そこが訂正されるのは自然な流れですが、この戦略による連続した1位誕生がチャートを盛り上げていた側面もあるので、少し名残惜しい?部分もあるかもしれません。
今月トップ10入りしたのは、リミックスをリリースした”WHATS POPPIN”(先月から) シングルカットを期に調子を上げる”Watermelon Sugar”、元からのストリーミングの好調に加えてラジオの浮上が効いた”Blueberry Faygo”など。
そして珍しいヒットとなったのは”We Paid”。この曲はラジオシングルに指定されていないものの、ほぼストリーミングの人気までトップ10に到達しました。このようにストリーミングの人気のみでトップ10に入ること自体は珍しくないですが、それはリリース初週かアルバムの週であることが多いので、ストリーミングのみで「浮上」するパターンが珍しいということです。
こうしてストリーミングで頭角を表せば、遅れたとしてもそれなりにはラジオでオンエアが始まるのが一般的ですが、Lil Babyは“Emotionally Scarred”や”The Bigger Picture”など他にもラジオシングルが既に存在することから、この曲はオンエアされませんでした。
その他Pop Smoke、Juice WRLDのアルバム曲がトップ10入りを果たしています。ただしラジオでかけられていないシングルも多く、これらがどこまで人気を保つかは不透明です。Pop Smokeは11位の”The Woo”の方をシングルカット。Juice WRLDは“Come & Go”をポップ系へ、”Wishing Well”をリズミック系へとカットしています。元は“Come & Go”一本でしたが、7月の末に”Wishing Well”もカットされたようです。
④ 販売戦略で1位を獲得した曲のその後……
③で述べたように、シングルチャートで使用されていた販売戦略が封印されます。それに関して詳しくはこの記事で書きました:
その販売戦略で1位を獲得したその後を見ていきます。端的に述べると、多くの曲が苦戦しています。
まずその代表例として挙げられるのは6ix9ineとNicki Minajの“TROLLZ”。わずか4週の滞在でチャートを外れてしまい、1位獲得曲としては最短のHot 100滞在になりました。1位→34位という「1位からの最大の落下幅」という記録と合わせてダブルで不名誉な記録を打ち立ててしまいました。
この曲が奮わなかった要因として、6ix9ineの素行を考慮してほぼラジオでオンエアされなかったことが挙げられます。またストリーミングでも同様の理由からなのか、プレイリストに曲が登録されていませんでした。
ただそもそもこの曲は販売戦略がなければトップ10も怪しいくらいの成績だったので、「曲自体のポテンシャルを考えると妥当な成績」という解釈もできるかと思います。11位-20位くらいに登場した曲が4週ぐらいで外れる現象は最近のチャートだとそこまで珍しくはないです。
他に“Stuck with U”や”THE SCOTTS”も早い段階でチャートの下半分に落ちました。”Stuck with U”は”TROLLZ”と違い、1週目からラジオで多くオンエアされていましたが、その戦略の効果が切れた2週目以降は微妙な成績で推移。そして7月上旬から頼みの綱のラジオも下降し始め、尻すぼみが決定的になりました。この曲も戦略抜きだと5~10位クラスの曲だったと思います。
ストリーミングで大人気だった“THE SCOTTS”は意外とラジオでかかっていません。この曲はストリーミングのプレイリストには登録されており、6ix9ineのような理由ではなくただ単にラジオであまりかけてもらえないのだと思います。リズミックで8位、RMS(旧アーバン)*3で22位でした。Hot 100首位曲の割にラジオが少なかった”HIGHEST IN THE ROOM”よりもさらに低いラジオ成績でした。
これは6ix9ineの事例とは違い、ストリーミングでの人気度をうまく反映させられないラジオの「ズレ」が現れた事例かと思います。Travis Scott、Lil Uzi Vert、Juice WRLDがストリーミングでの人気の割にラジオであまりかからない筆頭ですかね
⑤ 来月のトップ10候補
Juice WRLDの曲はラジオであまりかからないので、彼の曲のほとんどが早々にトップ10から外れると思います。(”Come & Go”が唯一のラジオシングル)そして従来トップ10にいた他の曲(”Say So”など)もラジオで調子を落とし始めているので、8月の初週はトップ10に新顔が登場するかもしれません。
まずこの週の目玉はDJ KhaledとDrakeのコラボ曲×2。”POPSTAR”の方はトップ10入りが確実で、”GREECE”の方もトップ10入りの可能性があります。
既存曲の中で注目は”Savage Love”、”Go Crazy”、”Break My Heart”あたりです。特に”Savage Love”は、Juice WRLDの曲が大量登場してほとんどの曲が順位を落とす週でも順位を上げるなど調子の良さが伺えます。
“Savage Love”は8月の初週にトップ10入りしなくても、ゆくゆくはトップ10に到達しそうです。一方で”Break My Heart”は後述のテイラー週とラジオのピークが重なるかもしれず、その影響でトップ10入り逃すというシナリオも少し考えられます。ビデオ効果で浮上が期待される”Go Crazy”も同様にピークがその週の前後に来る可能性もあります。
8月の2週目にはストリーミングで大人気のTaylor Swiftのアルバムが反映されるので、そこからトップ10に複数登場しそうです。中でも”cardigan”はラジオのポイントもあるので、1位を獲得する可能性も。
ほか既存の「じわじわ系ヒット」で、8月中にトップ10入りするかもしれない曲の候補としてはLewis Capaldiの“Before You Go”が挙げられます。ラジオで着実に浮上中。またカントリー系→ポップ系への移行により、ラジオで粘る”I Hope”もダークホースですかね。
⑥ 今月のラジオ(The Weeknd・Post Malone)
今月はラジオでのロングヒットがいくつか生まれました。まずは”Blinding Lights”のラジオ1位長期滞在。この曲は7/25の週までに15週ラジオ1位。この曲の再生数が堅調なこと、さらに競合が数字を伸ばすまでまだ時間がかかりそうなことから記録更新に期待ができそうです。現在の最長記録はGoo Goo Dollsの”Iris”での18週。
現在ラジオ2位は”Adore You”。既にシングルは”Watermelon Sugar”に切り替わっているので、こっちがまだ順位が高いのが少し意外です。こちらもなかなかの粘りですが、伸びているわけではないので”Blinding Lights”を脅かすほどではなさそう。
ラジオ3位は“ROCKSTAR”、リズミックとRMS(旧アーバン)では今がピークぐらい、今後ラジオがどこまで伸びるかはポップ系でどこまで奮闘するかにかかっていそうです。まだラジオ1位になるには時間がかかるかもしれません。”Blinding Lights”をラジオで抜くかはポップ系統の伸び次第だと思います。
もう一つ記録を作ったのは”Circles”。”New Rules”、”Love Lies”、”Eastside”と並んでポップ系ラジオチャートの滞在が最長の45週まで伸びました。ただし次週にチャートから外れてしまい、最長「タイ」の記録で終わりました。ポップ系ラジオにもリカレントがあるので、それに引っかかった形です。
⑦ 5月に予想した年間トップ10の曲たち
5月に予想した年間トップ10予想がその後どうなったのかを見ています。
(5月時の予想)
1:Blinding Lights
2:The Box
3:Circles
4:Say So
5:Don't Start Now
6:Life Is Good
7:Memories
8:ROCKSTAR
9:Savage
10:Falling
(記事は:年間チャート トップ10 半年前予想 2020 (Hot 100) - チャート・マニア・ラボ)
記事を書いた時点で既に年間トップ10入りの可能性が高かった1位~6位の曲は割愛します。予想時に未知数だった7位~10位の曲について見ていきます。
“ROCKSTAR”と”Savage”はこの予想の通りヒット。年間トップ10への道を進んでいます。ヒット度も継続性も優秀です。
逆に微妙だったのは”Memories”。5月後半からのラジオ減算*4の影響を受けたのか、その後チャートで粘りが微妙で、Pop Smokeのアルバム曲大量登場の影響で41週の滞在で外れました。ラストの週が42位だったので、滞在の終盤にアルバム曲大量登場とバッティングしなければあと数週長くチャートに残っていたと思います。
“Falling”は最終的にポップ系ラジオで首位になるなど、しっかりヒットはしたような印象ですが、その後はラジオが急落してしまい、さすがに年間トップ10クラスには届かないと思います。Hot 100のピークは17位なので、年間トップ10入りするにはかなり粘る必要があります
代わりに年間トップ10が有力は”Adore You”でしょうか?次シングルがカットされて以降もラジオで調子を維持しており、10位~20位帯に長い期間滞在しています。
他の候補は”I Hope”、”WHATS POPPIN”、”Roses”、”Intentions”など?
⑧ 今月のTikTok
今月最も飛躍したのはRod Waveの”Rags2Riches”です。96位に登場して以降、64位→52位と快調に順位を伸ばしています。Juice WRLDのアルバム曲が大量登場した週にも順位を伸ばしているのが印象的でした。
Rod Waveはアルバム”Pray 4 Love”からのHot 100エントリー数がこれで累計10曲に到達。アルバムリリースの週に8曲がHot 100入りした後、シングルの“Girl of My Dreams”とこの”Rags2Riches”が遅れてチャート入りしました。
アルバムから8曲が一気に登場することから分かるように、彼は元から知名度はあったので、「TikTokに発掘された」というよりは「TikTokによってシングルカットを成功させた」ような印象です。(Roddy Ricchの”The Box”の系統です)
7月ラストの週にHot 100入りした“Tap In”もTikTokで人気ですが、この曲はラジオのオンエアも多いので、純粋にTikTok発というわけでもないです。
あと便利なもの見つけたので、これも活用します。Tiktometerというサイトは使用数を知ることが出来るサイトで、公式音源、非公式音源に関わらず集計可能でジェネラルに人気度を知ることが可能です。サービス全体の使用数を計測しており、ここで上位でもUSの使用数が低いケースも考えられます。
Tiktometer - Top TikTok Songs This Week
ここの7月のランキングに、"Rags2Riches"が4位、”Tap In"が8位に入っています。
https://tiktometer.com/months/July-2020
⑨ Kanyeシリーズ?
少し意外だったのはKanye Westの新曲への反応が薄めだったことです。リリースが比較的少ない時期にリリースされ、貴重な新曲として登場直後はストリーミングで上位につけましたが、すぐに下落。約3日間の集計の初週に49位だった後、7日間の集計になったにも関わらず75位へ順位を落としました。そして次週に外れました。順位を落とすのが早いのは想定済みでしたが、もう少し注目されるかな?という気もしました。まあ初週から7日分の集計だったら少し違う展開だったかもしれないですが。
この成績は昨年のアルバム曲と比べると低く感じますが、それはアルバムという形態を取っていないからなのか、それともリスナーがKanyeを見限り始めたのか(!?)が気になります。
ほか彼も参加したTy Dolla $ignの“Ego Death”はHot 100入りできませんでした。100位にも入らないのは意外でした。この曲に参加したFKA twigsは2回目のBubbling Underで、Hot 100入りを惜しくも逃しました。(1回目のBubbling UnderはA$AP Rockyの客演を務めた”Fukk Sleep”)
⑩ その他の曲の短評
・Breland – My Truck
新規のカントリーラップが登場。92位→97位と推移した後に圏外になりました。この曲で不思議だったのはラジオでほぼかからず、Apple、Spotify、YouTubeで圏外。さらにはiTunesでも100位~200位程度(バージョンが2つ存在)でHot 100入りしたという点です。唯一Amazon Musicでは20位~30位程度にランクインしていたので、そこの勢力がそれだけ大きいということでしょうか?
Amazon Musicは再生数が明示されていないので、どのような影響をHot 100に与えているのかが読みづらいです。(Apple Musicも同様に再生数は明示されませんが、Hot 100への影響はわかりやすい)
・Billie Eilish – everything i wanted
(🗻8位⏰33週)という成績でアウト。”bad guy”ほどのヒットではありませんが、オルタナ系の作風の曲としては十分成功だとは思います。この曲はAlternative Airplayで1位を取った曲の中で唯一トップ10入りした曲です。ここで今年1位を取った曲のうち、Hot 100に入ったのもこの曲とtwenty one pilotsの”Level of Concern”の2曲のみなので、この作風でヒットを飛ばすことの難易度が伺えます。 *5
・BLACKPINK - How You Like That
"Sour Candy"と並ぶキャリア最高タイの33位でデビュー。次週は91位、その次は圏外と推移しました。2週目以降、アルバムラッシュとバッティングしたのは少し運が悪かったでしょうか。
初週の注目度は非常に高いですが、外国語曲ということであまりラジオではかかりません。これに対し、チャート系サイトHeadline Planetの創始者Brian Cator氏は、「正式にシングルカットをされたかに関わらず、現在世界で最も注目される出来事なのだから、この曲はもっとラジオでかけられるべき」と、ラジオの問題点を指摘しています。
・Trevor Daniel & Selena Gomez – Past Life
“Falling”でブレイクを遂げたTrevor Danielの次シングルには心強い相方が参加。その効果で、シングルカット後すぐにラジオで人気を得ています。”Mine”でブレイクしたBazziの次シングル”Beautiful”にCamila Cabelloが参加したのと似たような展開です。
・The Weeknd – In Your Eyes
大成功の”Blinding Lights”の次シングルとして、アルバムと同時に公開されました。アルバムも成功を収めていたことから、ヒットが期待されましたが、(🗻16位 /⏰15週)という成績に終わりました。途中Doja Catのリミックスが公開されましたが、その後すぐにラジオが落ちてしまい、うまくいかず。ピーク位はアルバムの週に記録されました。
“Blinding Lights”が人気すぎて、こちらに切り替わることなくそのまま“Blinding Lights”の方が継続してシングルとして運用された、ような印象があります。
・Katy Perry – Daisies
ピーク40位、滞在7週で外れました。微妙な成績に思えますが、近年彼女はHot 100に登場すらしないシングルも多いので、相対的にはうまくいった方だと思います。Brian Cantor氏は以前よりもアダルトポップ系に寄せた作風で、ターゲットを絞った曲だと分析しています。
・Jonas Brothers feat. Karol G – X
スペイン語パートを取り入れる一風変わったアプローチをしましたが奮わず。7週で圏外へ。リリース直後の反応は良いのですが、その後落ちてしまうようなチャートアクションが今年は続くJonas Brothers。
・Roddy Ricch feat. Mustard – High Fashion
(🗻20位 /⏰28週)の成績でチャートから外れました。ストリーミング→ラジオへの移行がうまかった1曲です。”The Box”に次ぐRoddy Ricchの人気曲としての地位をストリーミングでは確保。そしてその熱が冷めないうちにラジオでもシングルカットをし、徐々にポイント源がラジオへと移行していきました。
そしてリズミックとRMSの両系統で1位を獲得することに成功しました。両系統とも3曲目の1位です。(“Ballin’”と”The Box”に次ぐ)
ストリーミングの熱が冷めてからシングルカットされ、Hot 100の順位があまり伸びないという曲も多いので、上位に居座り続けることに成功したこの曲はその移行がうまかったと思います。
・Jhené Aiko – Pu$$y Fairy (OTW)
(🗻40位 /⏰25週)という成績でチャートから外れました。登場~アルバムまではストリーミング中心にチャートイン。アルバムリリースの少し後にシングルカットされ、次第にラジオへ移行。21週目以降、51位以下を推移していましたが、「まだラジオが伸びている」という理由で25週目までチャートに残留しました。
下位で過ごした期間が長いですが、滞在が長めのため年間チャートに滑り込む可能性があります。ラジオで粘った5週分のプラスの効果と言えそうです。
・Kane Brown, Swae Lee & Khalid – Be Like That
Kane BrownがSwae LeeとKhalidを迎えたポップ系意識の1曲。現在カントリー系ラジオではオンエアされず、ポップ系とアダルトポップ系でオンエアされています。SpotifyのToday’s Top Hitsにもリスト入りしました。
・今月のデータ
・主な外れた曲
7/4
47 Diplo feat. Morgan Wallen - Heartless (🗻39位 /⏰21週)
82 Regard – Ride It. (🗻62位 /⏰10週)
7/11
45 Carly Pearce & Lee Brice – I Hope You’re Happy Now (🗻27位 /⏰25週)
49 Billie Eilish – everything i wanted (🗻8位 /⏰33週)
90 twenty one pilots – Level Of Concern (🗻23位 /⏰11週)
100 Noah Cyrus & Leon Bridges - July (🗻85位 /⏰16週)
7/18
42 Maroon 5 - Memories (🗻2位 /⏰41週)
43 Blake Shelton & Gwen Stefani – Nobody But You (🗻18位 /⏰25週)
46 blackbear – hot girl bummer (🗻11位 /⏰42週)
84 Lil Baby & 42 Dugg - Grace (🗻48位 /⏰15週)
85 PARTYNEXTDOOR & Rihanna – Believe It (🗻23位 /⏰14週)
89 The Weeknd – In Your Eyes (🗻16位 /⏰15週)
95 Juice WRLD - Righteous (🗻11位 /⏰10週) ※のちに再登場
7/25
22 Pop Smoke - Dior (🗻2位 /⏰21週)
40 Roddy Ricch feat. Mustard – High Fashion (🗻20位 /⏰28週)
70 Jhené Aiko – P*$$y Fairy (🗻40位 /⏰25週)
90 Travis Denning – After A Few (🗻31位 /⏰15週)
92 Bad Bunny – Yo Perreo Sola (🗻53位 /⏰17週)
96 Scotty McCreery – In Between (🗻53位 /⏰13週)
・アルバムチャートのキリ番
7/4
1周年:Chris Brown – Indigo (90位)
1周年:Mustard – Perfect Ten (118位)
1周年:Elvis Presley – The Essential Elvis Presley (166位)
250週目:Chris Stapleton – Traveller (66位)
400週目:Kendrick Lamar – good kid, m.A.A.d city (100位)
7/11
1周年:Dreamville – Revenge Of The Dreamers Ⅲ (110位)
100週目:Travis Scott – ASTROWORLD (34位)
7/18
1周年:Ed Sheeran – No,6 Collaborations Project (100位)
100週目:Lil Baby – Harder Than Ever (184位)
150週目:Lil Uzi Vert – Luv Is Rage 2 (87位)
150週目:XXXTENTACION – 17 (133位)
200週目:Travis Scott – Birds In The Trap Sing McKnight (120位)
250週目:Original Broadway Cast – Hamilton: An American Musical (2位)
400週目:Imagine Dragons – Night Visions (199位)
7/25
100週目:Stevie Wonder – The Definitive Collection (200位)
200週目:Billy Joel – The Essential Billy Joel (148位)
・各週のデビュー曲(上位から5つ)
◇は再登場の曲
※スペースの都合でアーティストクレジットを一部簡略化しています。
・各指標の1位推移
Apple Musicでは毎週違う曲が人気に。
・Rolling Stone Chartのトップ10
(ここあとで直して)
・各週の動向まとめ表
7/4
7/11
7/18
7/25
参考/関連リンク
各週のHot 100
7/4:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-07-04
7/11:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-07-11
7/18:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-07-18
7/25:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-07-25
参照:
ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard
Kworb(ラジオやiTunnes):https://kworb.net/radio/
HitsDailyDouble:https://hitsdailydouble.com/mediabase_building_charts
Genius(曲のクレジット等):Genius | Song Lyrics & Knowledge
Spotify Charts:Spotify Charts
Apple Music Top 100(US):Top 100: USA on Apple Music
YouTube Charts:YouTube music charts
過去の月の記事
6月:Billboard動向・6月号 【コラボ曲の首位が相次ぐ / アルバムチャートはリリース減少?】 - チャート・マニア・ラボ
※この号に載っていた「ピークを更新した曲」で抜け落ちが複数見られたため、この項目は削除致しました。訂正してお詫び申し上げます。
5月:5月まとめ 【首位が全て異なる月 / 販売戦略が躍動】 - チャート・マニア・ラボ
4月:Hot 100 / Billboard 200まとめ 4月号 【The Weekndがアルバム4タテなど無双】 - チャート・マニア・ラボ
3月:Hot 100・Billboard 200まとめ 3月号 【Lil Uzi Vert・Bad Buny・Lil Baby・BTSなど…アルバム大盛況】 - チャート・マニア・ラボ
2月:Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】 - チャート・マニア・ラボ
1月:Hot 100 2020年1月まとめ 【激動の1ヶ月、Roddy Ricch大活躍など】 - チャート・マニア・ラボ
*1:Intro、Interlude、Outroとつく曲がHot 100入りせず。Hits Daily Doubleなどの外部ソースを参照するとこれらの曲も再生数は十分でしたが、Hot 100にはなぜか入らず。過去にも再生数が十分だったSkitを除外した事例もあるので、このような明らかにシングル運用されない曲を除外する「隠れルール」みたいなものが存在するのかもしれません
*2:ほかDrakeの時とは若干Hot 100集計方法が変わっており、少しだけストリーミング中心のアルバム曲が有利になった印象です。詳しくは5月号の「・Chris BrownとFutureが100曲超え / アルバム曲の時代?」の章を参考にしてください
*3:ビルボードのChart HistoryでのURLの記載にある略称です。Mainstream R&B / Hip-Hopの表記はさすがに長いので……
*4:5月にビルボードの記事内で表記されるラジオ再生数の値が急に大幅下落し、それに伴いラジオのポイントが落ちたと感じさせる動きがHot 100内でも見られた現象。詳しくは5月号の「・今後どうなる?最終週でラジオに大きな変化が」に書きました
*5:ちなみに1月にオルタナティブ系ラジオの1位を取った、Absofactoの"Dissolve"はTiktometerの7月ランキングで90位に入っています。(昨年末にBubbling Underの22位までは到達していました)