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TikTok Top Tracks (仮) 7月+総括

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 私が行うTikTok Top Tracks(仮)に関するレポート・7月号です。

 

 TikTok内の流行を詳しく知りたい!という動機で始めたこの調査ですが、TiktometerというTikTok内使用回数が分かるサイトを発見し、今後ジェネラルな使用回数を求めるときはそちらを使おうと思うので、この調査は一旦区切りにしようと思います。(詳しくはまた後半に述べます)

 まずは7月分の調査報告から行います。

 

 

※調査対象:Charli D'Amelio, Addison Rae, Chase Hudson, Dixie D'Amelio, Noah Beck, Avani Gregg, Josh Richards, Tony Lopez, Payton Moormeier, Quinton Griggs, Cynthia Parker, jxdn

 

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 調査に3名が新たに加わりました。(Noah Beck, Quinton Griggs, Cynthia Parker)


  今月最も注目を集めていたのは”Wet”。”Kolors”とのマッシュアップ、”Shoota”とのマッシュアップなど様々な形で使用されていました。2ヶ月連続で高い注目度を記録しました。

 2位には”Hatchback”。Playboi Cartiを彷彿とさせるスタイルの1曲。実際に曲としてもある程度注目を受けることに成功し、USのSpotifyのランク圏内に一時期入りました。また、そのPlayboi Cartiも先月に引き続き複数曲がランクインしました。

 3位にはTikTok外部でも大ヒット中の”Rags2Riches”、4位と5位には先のようなマッシュアップで登場する”Kolors”と”Shoota”がランクインしました。

 今月はこれ以外にも人気のマッシュアップが多かった印象です。“Banana” + “Dream Girl”、”We Paid” + “Flatbed Freestyle” + “Ballin’” + “No Heart”の2種類が特に際立ちました。

 

 今月の動向を見守って気になった点は男性特有の選曲がいくつか見られることです。男性TikTokerのみが使用した「ボーイズ選曲」は”Banana”を始めとして11曲。一方女性TikTokerのみに使用された曲は1つのみでした。男性TikTokerはお気に入りをリピートすることも多く、仮に男性TikTokerのみの人気でも、このランクでは上位に行きました。

 

 ちなみに12人のうち男女比は7:5ですChase Hudson, Noah Beck, Josh Richards, Tony Lopez, Payton Moormeier, Quinton Griggs, jxdnが男性です。Noah Beckはこの中で投稿数がとても多いです。逆にPaytonとjxdnは投稿が少なめです。

 

(イメージ的に)

投稿がかなり多い:Noah Beck

投稿が多い:Josh Richards

投稿がやや多い:Charli D'Amelio

投稿量が普通:Addison Rae, Chase Hudson, Avani, Tony Lopez, Quinton

投稿がやや少ない:Dixie D'Amelio, Cynthia Perker

投稿が少ない:Payton Moormeire

投稿がかなり少ない:jxdn

(ちなみに月によっても変化します。Addison RaeやAvaniは月によってはかなり多い)

 

 以前は知名度が飛び抜けている2人の投稿数が多く、知名度の高い2人の投稿にパワーバランスが寄っていくならランキングとして気にする必要はありませんでしたが、現在はその2人の投稿数が若干減少し、Josh Richards、Noah Beckあたりの投稿数が多い男性TikTokerの投稿にランキングが引っ張られるようになりました。彼らは全体では5~7番目くらいの存在なので、彼らにランキングが引っ張られるとしたら何かしらの改善が必要かもしれない、とも感じました。

 

 と、そのようなことを考えていたのですが、より大規模にTikTok曲の人気を知ることができるTiktometerというサイトを発見したので、この調査は一旦一区切りとしようと思います。

 

 このサイトはPopular Videosの数で、曲の人気度を計測。Popular Videosのみなので全てのビデオをカバーできるわけではないですが、Popular Videoは全再生数の96%を占めており、ほとんどの動向がカバーできる、という模様です。

 12人の動向を追ったデータよりも、こちらのデータの方がよりジェネラルなので今後はこちらを主に人気度のバロメーターとして活用しようと思います。このサイトのデータを参考にした考察も行っている最中です。

 USではなく、サービス全体のデータを追跡しているため、一部US目線ではリアリティーを感じにくいランキング上位もあるかもしれません。

 

 このようなサイトがあるとはいえ、この調査にも独自の価値はあったと思います。このサイトの上位曲であっても、TikTok外でヒットしていない曲はたくさんあります。その純粋の使用数がヒットに比例しないのであれば、上位インフルエンサーが使用した曲ならばヒットに結びつくのか?という疑問がこのサイトを見た後に湧いてくると思うので、この調査はそれを先取りで行っていたということになります。

 全体の使用数が多かろうと、インフルエンサーの使用数が多かろうと、ヒットに結びつくのかはやはりランダムなので、TikTok発のヒットは謎が多いというのが結論ですかね。

 ほか個人の音楽傾向が伺えたり、ジェンダー差があったり、広告の導入など、面白い発見もいくつかあったので、今後も追加で個人の使用回数の調査をするかもしれません。

 

 あともう一つ比較対象になりそうなのは、ビルボードが始めたTriller Top Songs。TrillerはTikTokと類似のショートビデオサービスで、TikTokの先行き不安から現行TikTok StarもTrillerのアカウントを作り始めているようです

 そのTrillerではたしかにTikTokと似たような傾向の曲がヒットしているのですが、直近の週ではトップ10が全て違うなど、さすがにTikTokの人気曲を知る「代役」としては無理があるでしょう。参考にはなりますが。

 

 

・本調査 vs Tiktometerの比較

  互いにどのような違いがあるのか、2つの7月のトップ10を見比べました。

 

(2つの調査は微妙に集計方法が違います。私の調査は「曲」という単位で集計していますが、Meterは「音源」という単位で集計しているため、同じ曲でも複数バージョンがランクインすることがあります)

 

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 どれもインフルエンサーが使った曲ということで、月間トップ100に入った曲も多いです。”We Paid”も、月の下旬までは月間100位圏内にギリギリ入っていました。

 

 

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 逆バージョンです。同じくトップ10にある程度の相互性がありますが、際立つのは1位の“Renee”が本調査の方で1回も使われていないことですかね。同じく3位、5位の曲もこちらでは1回も使われていませんでした。TikTok内にはある程度「界隈」のような区分が存在し、流行が全ての界隈に行き渡るわけではない、ということでしょうか。

 Meter1位の”Renee”は本調査でもランクインしなかった上、TikTok以外の媒体でのヒットもあまり見受けられませんでした。

 

 

5月号:5月 TikTok Top Tracks(仮) - チャート・マニア・ラボ

6月号:TikTok Top Tracks(仮) 6月 - チャート・マニア・ラボ