今月の最大のトピックはBTSのHot 100首位獲得でしょうか!そのビッグテーマや、ロングヒットに関する記録を深堀りしていきます! (記事遅くなってすいません)
- 1 セールスの制圧力 BTS初のHot 100首位
- 2 歴史的ロングヒット”Blinding Lights”
- 3 アダルトポップの申し子Lewis Capaldi + その他のトップ10
- 4 来月以降のヒット候補
- 5 比較的静かだったアルバムチャート
- 6 TikTok流シングルカット
- 7 TikTok発の最終的な成績
- 8 Global 200
- 9 ヒット曲の4メトリクス”my future“ / “Stuck with U”など
- 10 その他の曲の短評
- 今月のデータ
- 参考/関連リンク
1 セールスの制圧力 BTS初のHot 100首位
最初の2週はBTSの”Dynamite”が、残りの2週は”WAP”が首位に立ちました。悲願の1位達成となったBTSについて詳しく見ていきます。
首位獲得の牽引車となったのはその高いセールスです。初週には30万のセールスを獲得。これは2018年以降で最多の数字。(2017年の”Look What You Made Me Do” =35.3万 以降最大の数字) 仮にストリーミングとラジオのポイントがなしでも、1位を取れるとも推定されるほどのセールスを強力なファンダムと共に成し遂げたのです。
曲のリリースと同時にInstrumentalなど複数バージョンをリリース、ファンがそれに応えこの曲の複数バージョンがiTunesの上位を独占。後にリミックスが順次追加され、セールスの維持に役割を持ちました。
またiTunesのような媒体だけではなく、D2C(直接販売)でもセールスがあった模様です。Rolling Stone ChartsではこのD2Cが集計されないので、こちらでは1位にはなりませんでした。(ほかHot 100よりもセールスの比重がやや低めという側面も)
他に、初週は物理媒体のセールスも少し(3.5万)あったようです。
この現象は、今年盛り上がった「ファンの力を活用したセールスによる首位狙い」の決定版という印象です。現在一般的なセールスの数字は低いものの、依然Hot 100ではポイントを効率的に稼げる指標ではあるので、ファンを呼び込み特定の週にセールスを集中させHot 100首位を「狙いに行く」という戦略です。このような戦略を利用して首位を獲得したと伝えられた曲は今年だけで10曲もあります。
ビルボードはこれの対策として先月、それまで主に使われていた物理媒体(CDやヴァイナル)にDLの権利を付けるという手法を制限(DLされた週ではなく、実際の物理媒体が発送された週に集計)しましたが、今回BTSは異なるセールス戦略で1位を獲得することに成功しました。圧倒的なセールスを獲得し、ファンダムの強さを示しました。
今後も一般的な曲のセールスが低く、一定のセールスで容易に他の曲を出し抜けるという状況は変わらないと思うので、仮に特定のセールス戦略が封じられても、また違う抜け道を探す……といういたちごっこが続くような気がします。ビルボードがこのセールス戦略を本気封じたいのならば、チャートにおけるセールスのポイント自体を抑えることが一番だと思います。
しかしチャートの効果でセールスを増大させており、音楽市場拡大に寄与しているという意味では、実は歓迎すべきことではないか?という考え方も出来るので、このセールス戦略を受け入れるのも一つの手かもしれません。
ここまで長くセールスについて述べてきましたが、この曲はその他の指標でも好調な成績を収めています。彼らの得意分野であったYouTubeが含まれないOn-Demand Streaming(要はSpotifyやAppleなど)では史上最高の4位を記録。そしてラジオでのオンエアも稼ぎ、3週目には初めてRadio Songsチャートに入りました(=ラジオの再生数が50位以上*1) 初の英語シングルという試みが功を奏し、一般層への浸透度も向上している印象です。
2 歴史的ロングヒット”Blinding Lights”
“Blinding Lights”がトップ5滞在最長記録を更新(28週)。先月のラジオ記録に続くロングヒット関連の快挙です。これらの2つは非常に深い関係にあり、このラジオの人気ぶりがトップ5記録の主要因と見て良いでしょう。
(トップ5最長滞在記録)
28週:The Weeknd – Blinding Lights (2020)
27週:Ed Sheeran – Shape of You (2017)
27週:The Chainsmokers feat. Halsey – Closer (2016-2017)
26週:Post Malone – Circles (2019-2020)
……と近年の曲が際立ちます。ビルボードには23週の記録までが掲載されていましたが、その23週~25週も近年(2017年~)の曲が過半数を占めていました。これはこの時期からストリーミングが存在感を示すようになり、指標が増えた分それらを全て取るような曲が減少し、「圧倒的に強い曲」が誕生しやすくなったことも理由の一つだと思います。
もう一つ気になるのはラジオの循環率の低下です。Radio Songsのロングヒットに関するデータはあまり見つからなかったのですが、最大のラジオ系統であるMainstream Top 40 (Pop Songs)のデータを見ると、少し面白い点がありました。(記録は:Mainstream Top 40 - Wikipediaにまとめられています)
・Pop Songsで1位滞在が最も長い曲
14週:Ace of Base – The Sign (1994)
11週:Mariah Carey & Boyz II Men – One Sweet Day (1995-1996)
11週:Donna Lewis – I Love You Always Forever (1996)
11週:Natalie Imbuglia – Torn (1998)
11週:Nelly feat. Tim McGraw – Over and Over (2004-2005)
11週:The Chainsmokers feat. Halsey – Closer (2016)
一番メジャーな記録、最も長く1位を獲得したという記録では近年の曲はほとんど際立ちません。ただしロングヒット関連では近年の曲が多く独占しています。
・最長トップ10滞在
35週:Circles 31週:Adore You* 29週:Blinding Lights*
・最長チャート滞在
45週:New Rules, Love Lies, Eastside, Circles 42週:Adore You*, I Like Me Better
・1位到達までの期間が長い曲
37週:Before You Go 31週:Eastside 28週:Falling
・トップ10到達までの期間が長い曲
35週:I Like Me Better 31週:I’ll Be(1998) 27週:Lights Down Low, Before You Go
*=現在も継続中の記録 太字は今年のヒット
下線を引いたEdwin McCainによる”I’ll Be”を除いて、全てストリーミング時代(2017~)の曲でした。その中でも太字になっている今年の曲の存在感が際立ちます。今年に限っては感染症の影響でリリース量が減少したという側面もありますが、近年ポップ系ラジオでは曲のロングヒット化という傾向が見受けられるようです。
推測にはなりますが、ストリーミングの台頭で「ヒットしている」という感覚が多様化し、それぞれでピークが分散していることがこのラジオのロングヒット化の要因の一つだと考えています。*2
このようなラジオシングルのロングヒット化、は近年相次ぐHot 100でのロングヒット記録(トップ10、5最長滞在など)の大きな要因として調べがいがありそうです。
3 アダルトポップの申し子Lewis Capaldi + その他のトップ10
前章で注目した”Blinding Lights”はもう一つ、ラジオ連続1位(計23週)という記録を持っていましたが、今月ストップ。(来月1位返り咲きの可能性あり)それを止めたLewis Capaldiの”Before You Go”について見ていきます。
彼は2つのHot 100入りでいずれもトップ10入り。かつラジオ1位を獲得することを成功しています。彼のバラード調の曲はアダルトポップ系統との相性が良く、これがラジオヒットの要因だと考えられます。
一般的にアダルトポップ系はポップ系よりも回転が遅めですがが、彼の曲はその適正の高さからか、2つともアダルトポップ系で先に1位を獲得しています。(また、そこから遅れてポップ系で人気を得たため、”Before You Go”はポップ系で1位獲得まで最も長い期間をかけた曲になりました)
アダルトポップ系は規模の大きめな系統の中で比較的じっくり曲をオンエアしてくれるので、比較的「ラジオヒット」を狙うのに向いているかもしれません。ポップなどの系統と比較すると、ストリーミング人気にとらわれない選曲が多めな印象です。近年P!nkはこの系統をうまく活用し、ラジオヒットを飛ばしています。
イギリスでは彼以外にも男性SSWが多く台頭しており、このアダルトポップ系はイギリス人にとってUSヒットを目指す上で狙い目になる可能性も?
その他トップ10で目立った動きを見せたのは24kGoldnとiann diorの”Mood”。元々それなりの知名度があったラッパーが、TikTokの力を借りつつ、さらなるヒットを飛ばすのはLil Moseyの”Blueberry Faygo”と似ています。
この”Mood”はさらに大規模なヒットになる予感。ストリーミングだけでなくラジオでも強く、将来的なラジオ1位も射程範囲内。ほか既にUKで1位獲得済みと海外でも大人気。
もう一つ際立ったのは”POPSTAR”。ビデオ効果で再注目され、トップ10返り咲き。 Justin Bieberとスター出演とはいえ、ビデオでここまでの注目を集めたのはお見事。またその効果でラジオも浮上を果たし、リズミック系の1位を獲得。
ただ直近のデータでは、シングルを”GREECE”の方にバトンタッチしており、ラジオが急降下。来月は順位を落とす見込み
4 来月以降のヒット候補
毎月今後トップ10に「上昇」しそうな曲を挙げていますが、今月は”Lemonade”くらいで、候補は少なさそうです。既存の曲ではなく、新規リリースされる大物のシングルたちがトップ10付近を盛り上げそうです。
既にトップ10入りしている曲ですが、再浮上という意味で”For the Night”と”Come & Go”にも注目です。前者はストリーミングの人気により、ビデオ&ラジオ無しで20位以上に居座る大健闘を見せており、何かしらのプラスがあればトップ10に返り咲きしそうです。どのような運用をするか注目です、と思ったら10/10付の集計分の時期くらいからラジオオンエアが始まりました。
後者はどちらかというと逆。ストリーミングの減少分をラジオ増が補うような形で20位付近に居座っています。このストリーミング/ラジオのバランスがどこかで増加に転じればトップ10に届くかも。
ほか“Tap In”も一応可能性がありますが、リミックスがそこまで盛り上がらなかったことやラジオにポイントが寄っていることを考えると、トップ10は少し厳しそう?
ちなみにこのような順位帯(トップ10を目指す20位以上の帯)が盛り上がらなければ、”Circles”が長くHot 100に残りそうです。53週/26位*3ルールが出来て以降、最長の滞在となった”Shape of You” = 59週の記録も上回りそうです。
※仮に53週/26位ルールが以前から適用されていた場合の長期滞在ランキング
69週:Radioactive (実際には87週)
60週:Sail (実際には79週)
59週:Shape of You
5 比較的静かだったアルバムチャート
週10万超えはBig Sean、YoungBoy Never Broke Againの2つ。今年10万超えがのべ2つ以下だったのは6月のみ。その6月も20万を超えたLady Gagaのリリースがあったことを考えると、今月は今年最もアルバムチャートが静かだったと捉えることもできます。
最初の2週はストリーミング+セールスの総合力に優れるTaylor Swiftがアルバム1位を獲得。残り2つはストリーミングを稼いだラッパーの新作が1位を獲得しました。Big SeanもYoungBoy Never Broke Againはいずれも3作目のアルバム1位。
YoungBoy Never Broke Againはその3回の1位を全てここ1年で獲得。彼はリリースペースの早さが特徴的で、2017年以降15もの作品がBillboard 200入りを果たしています。この矢継ぎ早のリリースにファンも応え、毎回ストリーミングで人気を得ています。(特にAppleとYouTubeで Spotifyではこの2つほど人気ではない)
ちなみにそのリリース量の割にはラジオにあまり恵まれておらず、自身メインの曲でビルボードのラジオ系チャートに入ったのは3曲のみ(Make No Sense, I Am Who They Say I Am, No Smoke)です。(ちなみにMigosの客演を務めた”Need It”が最大のラジオヒット。ほかJuice WRLDと組んだ”Bandit”も一定のラジオオンエアを獲得)
6 TikTok流シングルカット
9月ラストの週にPop Smokeの”What You Know Bout Love”が再登場。これはTikTokでの人気浮上に関連するもの。アルバム期から少し経過しての浮上、ということで擬似的なシングルカットとなりました。(この時点で)Pop Smokeの曲でラジオにかかっているのは”The Woo”のみですが、Hot 100では”For The Night”と”Mood Swings”も上位に。
ラジオに加えてTikTokの勢力も加わることで、複数曲のHot 100入りを実現させています。これは単にTikTokの勢いだけではなく、Pop Smokeの人気がストリーミング高く、ヒットする土壌があったことも大きいです。(TikTokでヒットしたからといって、ストリーミングで人気が出ないことも多いです。逆に元々そのアーティストへの注目度があると小さなきっかけでも浮上を果たすこともあります。)
この「TikTok流シングルカット」は、ラジオのシングルカットと比べて自由度が大きいです。ラジオでは同一アーティストの曲はなかなか複数かかりませんが、TikTokでは回転率の高さから、短期間で複数曲にスポットライトを当てることが可能です。またジャンルや知名度に囚われない選曲も可能で、ストリーミング世代に向いているラジオのような素質があります。
ただしTikTokのランダム性もあり、「狙う」ことは難しいでしょうし、今回のPop Smokeクラスの大ヒットも今後もなかなか見られないでしょう。ただこのようにTikTokがラジオのような効果を持っていることは頭の片隅に置いて良いでしょう。
7 TikTok発の最終的な成績
そのTikTok発の曲が今月そのヒットサイクルを終え、いくつかチャートから外れました。その成績を、先月外れた”Supalonely” “Sunday Best”と合わせて見ていきます。
StaySolidRocky - Party Girl (🗻21位 /⏰20週)
Powfu feat. beabadoobee - death bed (🗻23位 /⏰26週)
Surfaces - Sunday Best (🗻19位 /⏰21週)
BENEE feat. Gus Dapperton - Supalonely (🗻39位 /⏰22週)
Don Toliver - After Party (🗻57位 /⏰20週)
“After Party”を除き、これらの曲は中位まで到達 / 25週程度のヒットで、総合的に見ると「中ヒット」といえる成績を残しています。
もちろん元々無名だったことを考えると大健闘なのですが、ただしほとんどが次シングルで存在感を示すことに失敗しています。上記のアーティストのうち、Don Toliver以外はHot 100にも再登場していませんし、ストリーミングでの順位も低いです。
昨年はLil Nas Xという大スターを生み出しましたが、この上記の成績で「TikTok発」の天井?のような物も感じました。
そんな中唯一Don Toliverは繰り返しの活躍。TikTok以前からTravis Scottの”CAN’T SAY”にクレジット無しで参加するなど、元々期待度があったということが大きいと思います。過去にHot 100入り歴のあったLil Moseyや24kGoldnはTikTokを経由して上記のアーティストよりも大きくヒットを飛ばしているので、TikTokで曲をヒットさせるにも、ある程度それまでの知名度が多少は関係するような印象を受けました。
8 Global 200
ビルボードは9月の3週目からグローバルチャートを開始。200を越える国と地域から集計したGlobal 200、そしてアメリカを除外したGlobal Excl. USの2種類。それぞれの初代王者は”WAP”と”Hawái”に。
このチャートでポイントとなるのは「遷都」かと思います。これまではあまり週間で集計される世界ランキングがほぼ無かったため、Hot 100が代わりに「世界のヒットの指標」のような役割を担ってきました。かつては国によってリリースの曜日も違い、販売店まで集計を行わなくてはならない負担などから週間の世界ランキングを作成するのは難しかったでしょう。その後世界的にリリース日が統一され、さらにSpotifyやYouTubeなどのグローバル単位での数字を表示される媒体の台頭でグローバル単位のヒットを観察できる視座が誕生しましたが、いずれもHot 100ほどの影響を持つことは無かったと思います。
その「世界」を上回る影響を持ち続けた「US」のHot 100を作成してきた、ビルボードによるGlobal 200。世界とアメリカでは、「世界」の規模が大きいため、純粋な考え方をするとこの世界ランキングの方が影響を持ちます。その純粋な考え方が実現されるのか、つまり実質的な「世界ランキング」がアメリカからグローバルに「遷都」するのか、ということがこのチャートの見どころかと思います。
そのため、このチャートの「使われ方」に着目したいのですが、今の所とても影が薄いです。ChartDataやPopCraveなどの人気Twitterメディアを見てもHot 100の報道量よりもかなり少ないです。上位をチラッと触れて終了程度です。この程度は公式のBillboardChartsでも同じで、あまり本家本元もHot 100を上回るとは思っていない可能性があります。
ほか、チャート関連のニュースを時折報じるPitchforkもこのランキングについては触れていません。(批評方面では、アメリカ vs 世界みたいな比較は注目テーマな気はしますが……)
(9/14-9/27) Global発表日から2週
ChartData Globalは12、Hot 100は109
PopCrave Globalは5、Hot 100は35
BillboardCharts Globalは7 Hot 100は26
9 ヒット曲の4メトリクス”my future“ / “Stuck with U”など
初週は高順位でデビューしたものの、最終的には短い滞在でチャートを去ったBillie Eilishの”my future” (🗻6位 /⏰6週)やAriana GrandeとJustin Bieberの”Stuck with U” (🗻1位 /⏰18週)。このようなチャートアクションについて考えていこうと思います。
上の図は曲のヒットを「初動の注目」と「チャート滞在期間の長さ」の2つの基準でタイプ分けしたものです。右に行けば行くほどシングルとしては成功、上に行けば行くほどアーティストとしては成功、というのが私は考えています。
最初の数字に関わらず、右に行けばシングルとしては成功できます(②)。ただシングルで成功を収めてもその後アーティストとして注目を集めるかは微妙です。上記で挙げたTikTok発のアーティストや、Tones And Iなどがこれに当てはまります。もちろんブレイク以前よりは格段に知名度は上がっていますが、シングルでのヒット度と比較すると?ということです。
一方で、初動のみで尻すぼみのチャートアクション(③)は失敗と私も考えていたのですが、一概にそうとは言えない気がしてきました。アーティストとしての評価は急激には変化しづらいので、初動が強いということは今後も再現性があるということになります。アーティストの評価が高ければ、現在ストリーミングで強い媒体であるアルバムで一気に注目を集めることも可能です。他にも、以前よりもマニアックな表現が受け入れやすくなり、大物が全てのシングルで必ずしもシングルヒットを狙わなくなった、という点も重要でしょう。
もちろん、シングルの不発が続けばこの「アーティストの評価」の部分が動くこともあれば、また逆もしかりです。
10 その他の曲の短評
・Roddy Ricch - The Box
(🗻1位 /⏰38週) という成績でチャートを後に。11週連続1位と、ピーク時の強さは圧巻でしたが、チャート滞在期間は1位の曲としては「やや長い」程度です。ストリーミングでは強かったですが、ラジオはそこそこ(ピーク6位)。中でもポップ系ラジオでは不遇で、11位止まり。Hot 100で10週以上獲得した曲のうち、ポップ系ラジオでトップ10に入らなかったのは歴代3つ目の事例です。
・Drake - Toosie Slide
の成績でチャートから外れる。初週の1位など、登場直後はスターの貫禄を見せていますが、最後の方は下半分の順位まで落ちるなど、ペースダウン。TikTokを意識した策略が注目を集め、実際にTikTok内で人気を得たよう*4ですが、”In My Feelings”ほどはバズらなかったので可もなく不可もない成績に終わった印象です。
・Lil Baby - Emotionally Scarred / We Paid (& 42 Dugg)
ストリーミングの人気からは時間差でカットするため、Hot 100滞在20週目前後のタイミングでラジオが伸びる。これによりロングヒットを実現。Lil Babyはストリーミング、ラジオともに安定しており、このパターンが定番化しています。そしてストリーミングのピーク > ラジオのピークになりがちです
・BLACKPINK & Selena Gomez - Ice Cream
BLACKPINKキャリアハイの13位に登場。そして初めてラジオ系チャートに登場。目論見どおりUSではキャリア最大のヒットに。最長滞在(”Kill This Love”の4週)も更新間近。次シングルとの兼ね合いもありますが、滞在10週が目標?
・Taylor Swift feat. Bon Iver - exile
シングルごとにラジオ系統を使い分ける戦略を取ったTaylor Swift。そしてこの曲は彼女にとって発のTriple A(Adult album alternative、要はアルバム志向の玄人向け系統)ヒットに。
その他”Betty”で久々にカントリー系ラジオを得るなど、ラジオ系統の使い分けは上手く言っているのですが、”cardigan”以外は早々にHot 100から去ってしまいシングルヒットにはつながりませんでした。アルバムのテイストからして、シングル単体で聞くような曲が少なかったので、路線的には致し方ないのかもしれません。
・Justin Bieber feat. Quavo - Intentions
ピーク5位、滞在31週で外れる。うち19週はトップ10圏内で過ごしており、十分な成績を残したと言えます。近年の彼の曲は20週に満たずにチャートから外れてしまうことも少なくないので、貴重なヒットだったとも言えます。
・Morgan Wallen - More Than My Hometown
SpotifyやAppleでも存在感のあるMorgan Wallen。複数曲が同時にストリーミングで人気を得ていることもあり、現在複数曲がHot 100入りしていますが、現在カントリーラジオで盛んにかけらている曲はこれ。”7 Summers”もカントリー系、アダルトポップ系でオンエアが開始しています。
・Luke Combs - Lovin’ on You
1週ごとに首位が交代しがちなカントリー系ラジオで4週にわたり1位に。彼はデビュー以来ラジオシングルが全てトップ40入り(9曲連続)
・Miranda Lambert - Bluebird
(🗻26位 /⏰20週)という成績で外れる。Miranda Lambertがリカレントまで到達するのは2014年の”Somethin’ Bad”以来
今月のデータ
・主に外れた曲
(ピーク=🗻が10位以上 or 滞在=⏰が10週以上)
9/5
45 Lil Baby – Emotionally Scarred (🗻31位 /⏰25週)
64 Miranda Lambert - Bluebird (🗻26位 /⏰20週)
72 Drake – Toosie Slide (🗻1位 /⏰20週)
87 Black Eyed Peas, Ozuna & J. Rey Soul - MAMACITA (🗻62位 /⏰11週)
91 Juice WRLD - Conversations (🗻7位 /⏰6週)
96 Juice WRLD - Righteous (🗻11位 /⏰16週)
9/12
48 Roddy Ricch – The Box (🗻1位 /⏰38週)
98 Taylor Swift feat. Bon Iver - exile (🗻6位 /⏰5週)
9/19
42 Thomas Rhett feat. Reba McEntire, Hillary Scott, Chris Tomlin & Keith Urban – Be A Light (🗻42位 /⏰22週)
62 Florida Georgia Line – I Love My Country (🗻40位 /⏰20週)
66 Keith Urban – God Whispered Your Name (🗻60位 /⏰20週)
92 Taylor Swift – the 1 (🗻4位 /⏰6週)
94 Chris Janson - Done (🗻41位 /⏰12週)
96 Lil Durk feat. Lil Baby & Polo G – 3 Headed Goat (🗻43位 /⏰11週) ※
100 Rod Wave – Girl Of My Dreams (🗻65位 /⏰16週)
9/26
39 Powfu feat. beabadoobee – death bed (🗻23位 /⏰26週)
48 Justin Bieber feat. Quavo - Intentions (🗻5位 /⏰31週)
61 StaySolidRocky – Party Girl (🗻21位 /⏰20週)
90 Billie Eilish – my future (🗻6位 /⏰6週)
93 Justin Moore – Why We Drink (🗻50位 /⏰15週)
94 Don Toliver – After Party (🗻57位 /⏰20週)
99 Migos feat. YoungBoy Never Broke Again – Need It (🗻62位 /⏰15週)
100 Ariana Grande & Justin Bieber – Stuck with U (🗻1位 /⏰18週)
※=のちに再登場した曲
・アルバムチャートのキリ番
9/5
100週目:Morgan Wallen – If I Know Me (17位)
100週目:Daryl Hall John Oates – The Very Best Of … (169位)
9/12
1周年:Post Malone – Hollywood’s Bleeding (11位)
1周年:Elton John – Elton John (143位)
1周年:Harry Styles – Harry Styles (182位)
100週目:Lady Gaga & Bradley Cooper – A Star Is Born (191位)
100週目:Lil Baby & Gunna – Drip Harder (181位)
300週目:J. Cole – 2014 Forest Hills Drive (106位)
9/19
300週目:Taylor Swift – 1989 (116位)
9/26
なし
・各週の上位デビュー
◇は初登場
・よく順位を上げた曲
・各指標の1位推移
"WAP"の強さが際立っています。この圧倒的な”WAP"をセールスで抑え込んだのが”Dyanamite"。
・Rolling Stone Chartsのトップ10
"Dynamite"の項目で説明したように、セールスの集計方法がHot 100とは異なります。その影響をモロに受け、"Dynamite"の順位がHot 100とは違います。
・各週の動向まとめ表
9/5
9/12
9/19
9/26
参考/関連リンク
各週のHot 100
9/5:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-05
9/12:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-12
9/19:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-19
9/26:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-26
参照
Chart Beatの記事:Chart Beat | Billboard
Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/
HitsDailyDouble:https://hitsdailydouble.com/mediabase_building_charts
Tikboard:https://tiktometer.com/
過去の月の記事
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