チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】

 

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 今月は3種類の1位にフォーカス。予想を超える/期待通り/期待以下(?)の1位の詳細について探っていきます。(マイペース更新で少し鮮度が落ちたことをご容赦ください🙏)

 

 

目次:

 

 

1 予想を超える1位:"drivers license"

 

 まずは予想外の、しかも破格の規模での1位獲得に成功した”drivers license”から。元々そこまで注目される曲ではなく、例えばSpotifyのNew Music Fridayでは15番目に配置されるような曲でしたが、リリース初日からストリーミング等で上位デビュー。これだけでもサプライズでしたが、本当の驚きを提供したのはここから。

 リリース2日目にはSpotify/Appleで1位に。そこからグングン調子を上げ、なんとリリース日目5日目にはSpotifyのUSデイリー記録を更新(約615万)。リリースが2曲目のニューカマーながらも歴史的な成績を残したのです。

 2週目の後半あたりから次第に数字を落とし、徐々に2位との差は縮まっていきましたが、余裕の1位ということは変わらず。

 ほかUS外でも人気を誇り、Spotifyのグローバルでも1位を独走。歴代最多の週間再生数を記録しました。(デイリーだとクリスマス曲2つに次いで、歴代3位) 

 

 なぜここまでヒットしたのでしょうか?私がまず注目したのは彼女の前シングル“All I Want”です。この曲は、ラジオやプレイリストでほとんどプロモーションされていないにも関わらず、ストリーミングで上昇。なんとHot 100入りを果たすことに成功していました。特段TikTok受けが良さそうなキャッチーな曲でも無いに関わらず、このような浮上を果たしたということは、純粋の曲の良さだけではなく、ヒットを引き寄せるだけのアーティスト個人としての注目度があったということ考えられます。このアーティスト個としての注目度は、ストリーミングで強力な武器になります。

 彼女はHigh School Musicalキャストで、この“All I Want”もHigh School Musicalからの曲。彼女は音楽業界では新人でも、セレブリティ知名度的な面では既に一定の成果を残していたので、上のような個人の注目度を得たのだと思います。ただそういったセレブリティ系の出自だからといって、音楽ではうまくいかないケースも多々見られるため、出自がヒットの理由の全てというわけではありません。

 ただ、彼女がこの出自を巧みに利用はしました。というのも、この曲は主にディズニーキャストとの関係性を歌ったものでした。その歌詞への反響が、元々彼女を追っていた層に深く響き、初日の初動に繋がったのだと思います。この自身の人間関係を歌う/SSW的気質の作風の2点で彼女はTaylor Swiftと比較されているようです。

 “drivers license”で歌われたと推測されているSabrina Carpenterは2週後に、シングル“Skin”をリリース。実質的なアンサーソングとされています。元から用意されていたものか、寝耳に水で急遽反撃したものなのかは分かりませんが、ラッパーのようなバトル/スピード感で、ディズニー系ポップス界隈を盛り上げています。

 

 さらにその次の段階へと進む上で重要な役割を果たしたと推測されるのは曲の質です。人間関係への興味を引き立てる歌詞だけでは、元々のファン層にしか広まらないですが、この大規模ヒットは、一般的な曲として受容され明確に多くの層へ広がったことを証明しているでしょう。

 「インディーポップ的な作風、ポップ的コーラスを高次元で融合させた曲」という評をするメディアが多いようです。Taylor Swiftの他に、Lordeとも比較されることが多いようですが、個人的には2017年以降のKeshaにどちらかというと近い気がします。

 

 まとめると、セレブリティ的な人気があった彼女が、人間関係について歌い、ファンの間で注目を集める。そこからスタートし、曲の質の高さが他の層にも波及し、さらに大ヒットになり一般の層も気になって参入する……のような形でのヒットなのだと思います。

 

 彼女は今のところ“All I Want”、”drivers license”の2曲だけで、キャリアとしては序盤。今後どのようなキャリアを歩み、どこまで結果を出せるかは見ものですね。アンサーソングをリリースしたSabrina Carpenter等、自身の関連アーティストがどこまでヒットし、その「界隈」がどこまで盛り上がるかも重要な指標だと思います。

 

この曲のヒットについて、辰巳JUNK様の記事が詳しく、好きだったのでこの章を書く上で参考にさせて頂きました🙏

①:17歳の新人オリヴィア・ロドリゴによる記録的ヒットの理由

②:オリヴィア・ロドリゴ「drivers license」考察と一年越しのマーケティング網|うまみゃんタイムズ|note

 

 

2 期待通りの1位:Morgan Wallen

 

 個人的には期待通り、くらいなのですが、こちらも一般的には予想外の躍進かもしれません。Morgan Wallenが2枚目で初のアルバム1位を獲得。26.5万という高めの売上うち、多くの割合を占めたのはストリーミング。2.4億というかなりの再生数を記録しました。従来の記録(Luke Combsの1.02億)にダブルスコアを付け、カントリー作品のストリーミング数記録を更新しました。彼の人気に加え、曲数の多さ(30)も追い風になりました。

 彼は2014年のThe Voiceに出場後、レーベルと契約を結び正式にデビュー。Florida Georgia Lineを迎えた、“Up Down”で2018年に初のHot 100入り。2019年に”Chasin’ You”がヒットすると、地位を確保。特徴的なのはその声質。低いガラガラとした声は独特の雰囲気を生み出します。そのスタイルで広い層から人気を得たのか、カントリーにあまり縁のないSpotifyAppleでも高い人気を得ていました。

 昨年リリースの”7 Summers”はストリーミングでの高い人気もあり、Hot 100で6位に。その先行シングルへの好調さ、また過去ヒットの堅調な推移を見る限り、彼への高い期待度を感じ、アルバムではかなりの好成績を記録するだろうと私は読んでいました。ちなみにアルバムの曲数がかなり多い(30曲)こともその予想を後押ししました。(曲が多いとその分再生数も自然と増えるので)

 

 2週目も成績が安定しており10曲もがHot 100に残留。ラジオでオンエアされている曲も多いことから、2週目でも5曲がトップ40圏内です。

 年の序盤のリリースであること、さらに2週目以降の安定感を見る限り、年間アルバムチャートでかなり上位を狙えそう。競合次第では年間アルバム1位も現実的な目標かも?

 

……というのが元々の原稿だったのですが、ここ数日で急展開。Nワードを発していた事が問題視され、ラジオやプレイリストでのプロモーションが取り下げに。一見大ピンチに思えますが、iTunesやストリーミングでは今のところは浮上を見せています。ラジオが無関係のアルバムチャートにでは、この現象はむしろプラスに働くという可能性も?

 この一件の動向が実際にチャートに現れはじめるのは2月の3週目ごろからだと思いますが、果たして……

 

 

3 期待ほどではない(?)1位

 

 これもそう感じるのは私だけかもしれません。ここではPlayboi Cartiについて説明します。1.26億再生を記録し、Playboi Cartiにとって初のアルバム1位。5曲がHot 100入り。上々の成績ではあるのですが、個人的にはもっと来る気がしていました。

 というのも、昨年Lil Uzi Vertの“Eternal Atake”がリリースされた後、次はPlayboi Cartiの”Whole Lotta Red”だ!という盛り上がりがあったように思うからです。

 実際に昨年のシングル”@MEH”はリリースと共にストリーミングで注目されていたので、“Eternal Atake”の4億までは行かないにせよ、少なくとも2億は超えてくるかな、と個人的には読んでいたのです。

 一定の注目を集め、初のアルバム1位も獲得した彼でしたが、私が感じていた期待感ムードほどの成績ではなかった気がしました。質的にも微妙だったようで、Rate Your MusicやAlbum of the Yearでは前作を下回る評価(ユーザー)をされています。

 

その他のアルバム

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・Lil Durk

 クリスマス期にリリースされ、実質リリース週には3位を記録。その週アルバム1位のPlayboi Cartiよりも多い6曲がHot 100入り。その後Playboi Cartiを抜いてアルバム2位に浮上。デラックス版で共演したLil Babyと同じような領域(Apple/YouTube中心)で人気を得ています。

 

 

4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る

 

 1月に入り、クリスマス期間も終了。歴代最大だったクリスマス曲ラッシュも終わりを迎えました。

 

2020 Top10 Top50 全体 2019 Top10 Top50 全体
11/21 0 0 0 11/23 0 1 1
11/28 0 2 2 11/30 0 1 1
12/5 0 8 8 12/7 0 6 6
12/12 3 19 22 12/14 2 13 14
12/19 5 22 29 12/21 3 12 14
12/26 6 22 27 12/28 4 14 15
1/2 9 33 39 1/4 5 24 25
1/9 1 10 11 1/11 0 0 0

※日付はチャートの日付。その日付から15日前~9日前が集計の対象(ストリーミングとセールス)

 

 人気を牽引しているのはストリーミング。Amazon Musicでの圧倒的な強さ(例:トップ50すべてがクリスマス曲など)は毎年変わらずなのですが、今年は他の媒体でもかなり強かったです。Spotifyでは週間チャートで最大17位まで独占。(昨年まではクリスマス曲がUS週間チャートの1位に立ったこともなかった*1)ほかApple Musicでも“All I Want for~”が初めてデイリー1位に立っていました。

 集計が12/25~12/31である次の週ですら10曲が残留し、勢力の強さを物語っています。特に12/25当日のストリーミングが圧倒的すぎて*2、1週分まるまる集計される一般曲を圧倒していたということです。(ちなみにSpotifyの数字を見る限り、グローバルでは12/24がピークですが、USでは12/25がピークです)

 

 昨年以上の規模になったのは、家にいる時間が長いことに加え、暗い世間からの逃避として明るいムードになれるものが求められる、という時勢も大きく寄与しているのでしょう。これほどのクリスマス曲の強さは継続的な現象なのか、感染症下特有のものなのか、いずれ来る(と信じたい)感染症後のデータを見て比較したいです。

 

 個人的にずっと気になっているのは、このクリスマス曲の隆盛が現行メインストリームに与えている影響です。チャート上位を支配することによって現行曲が目立つチャンスが少なくなることに加え、私がよく考えるのは現行曲の消費時間がクリスマス曲に奪われる(?)こと等です。

 クリスマス曲の消費自体は以前からされていたので、実際の再生時間的にはストリーミング前時代とバランスが変わっていない可能性や、また従来と違う層によって再生されている可能性も考えられるので、「奪う」という表現が全く的を射ていない可能性もありますが。

 こればかりはどのような内訳で再生されているかの内部データ*3を見てみないと分からないのでなんとも言えませんが、一応Spotifyのランキングを元に考えてみました。

 

クリスマス曲を除いた上位10曲の再生数合計(週間)の推移です。

 

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 今年のクリスマス明け、USのSpotifyのデイリー首位が100万を割っていて(現存するデータ=2017年以降では初)気になったのですが、やはりクリスマスを通してトップ10が随分弱体化していました。一方で、昨年は極端に落ち込む週は無かったようです。

 補足すると、ヒット曲がより強く影響を受けているようです。2020年の1/9付~2/6付、2021年の1/7付~2/4付のそれぞれ5週の週間チャートの合計値を調べたところ、以下のようになりました。クリスマス前/後に限らず、感染症による現在の環境もヒット曲の消費に影響を大きく与えていそうなので、引き続き深く追っていきたいテーマですね。*4

 

10位:2020→2021で33%減少

200位:2020→2021で11%減少

 

 クリスマス曲は普段そこまで音楽を聞かない層がBGM的(スマートスピーカー等)に使っているのか、それとも普段も音楽を聞いている層がいつもと同じような感覚で聞いているのかが分かれば面白そうです。

 クリスマスが終わると軒並みすぐに急落してしまうので、クリスマスという枠を外れて一般的な曲として受容されることは無いようです。当たり前と言えば当たり前なのですが、2019年の半分以上をUKのSpotifyランキング圏内で過ごしていたEarth, Wind & Fireの“September”のような「時制ソング」でありながら同時に一般的な曲として受容されているケースもあります。(USでも稀に9月以外でもデイリーランキングの下位に登場します。あとなぜか新年プレイリストの常連曲なので、年始にもランキングに入ります)

 しかしその傾向を破って、今年Siaの“Snowman”がクリスマス後も調子をキープするという異例の動向を見せています。主にUS外の人気ですが。理由はもちろん(?)TikTokです。

 このジャンルごとの躍進を見る限り、おそらく一つ一つ思いを込めて曲を聞くよりも、自動再生がメインと推測されます。そんなこと言ったら、通常時のプレイリスト再生はどうするの?等、他にも疑問は無限に湧いてきますが、個人的にはもう少しクリスマスの圧倒的支配に対しての策が見てみたいところです。例えばビルボードのルール変更など。*5

 

 

5 クリスマス後の特別復活ルール

 

 クリスマス後はクリスマス曲が一気に去るため、代わりに空いた枠に多くの新曲が登場し、新年らしい様相を見せます。ただ最近はクリスマス曲の影響力が強すぎて、本来ならばまだまだ活躍しそうな曲まで外れてしまうことを考慮し、昨年からは一度リカレントした曲もクリスマス後に再登場させるようになりました。

 以下の曲が再登場。 

 

3 The Weeknd - Blinding Lights
26 DaBaby feat. Roddy Ricch - ROCKSTAR
30 Lewis Capaldi - Before You Go
31 Jawsh 685 & Jason Derulo - Savage Love (Laxed – Siren Beat)
33 Morgan Wallen - More Than My Hometown
34 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez & Lil Wayne - WHATS POPPIN
37 Dan + Shay - I Should Probably Go To Bed
40 Parker McCollum - Pretty Heart
42 Blake Shelton feat. Gwen Stefani - Happy Anywhere
47 Harry Styles - Watermelon Sugar
59 Jhené Aiko feat. H.E.R. - B.S.

 

 ほぼ全てがラジオヒットです。1年の振り返りが行われるのか、主にポップ系ラジオではその年のヒットが年末に再浮上を果たすので、それに当てはまる曲は感覚よりも高めの順位で舞い戻ります。“Blinding Lights”の順位がやたらと高いのはその理由もあると思います。(それに加えて、他の曲とは違い26位以下になると落ちる週数で、元の順位が高めということも大きい)

 これらの曲のうち、”I Should Probably Go To Bed”と”Happy Anywhere”は年明けにラジオのピークが来たため、Hot 100でのピークも更新しています。(どちらもカントリー曲です)

 昨年、ルールが初めて実施された時に私は「復活した曲は既にピークを過ぎているので微妙」との旨を記事で述べていましたが、今年のクリスマスは曲数が桁違いだったため、復活後にピークを更新する曲も出ましたね。

 

 ちなみに”B.S.”が51位以下なのに復活したのはおそらくラジオです。このタイミングではまだRMS系(一般的にはアーバンと表記、ビルボードではMainstream R&B/Hip-Hopと表記される)で1位に立っていました。ただその後、1/23付の時に総合ポイントもラジオポイントも下落で、56位23週という状態でもチャートに残留したのは謎です。ビルボードは時折リカレント関連で計算ミスをします。

 

 

6 その他のトップ10 + 今後

 

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 今月のトップ10、そして来月以降のトップ10候補について見ていきます。

 

・Dua Lipa feat. DaBaby - Levitating

 クリスマス中も順調に上げ、クリスマス明けの週にトップ10まで到達。見事な3連続シングルヒット。Dua Lipaはラジオでの人気が盤石になってきました。ストリーミングでも調子が良く、Rolling Stoneチャートでもトップ10に入っています。

 

Chris Brown & Young Thug - Go Crazy

 クリスマス後の週に8月以来のトップ10復帰。次の週には5位とピークも更新。35週目のトップ5入りは歴代で3番目に遅い成績です。(”I Hope”=45週目、”Radioactive”=42週目に次ぐ)

 それを支えているのはラジオ。最近になってポップ系での伸びてきたこと、リズミックやRMS系で好成績をキープしていることが要因。ラジオでのロングヒットというと、主にアダルトポップ系でのヒットが多かったのですが、最近はリズミックやRMSでのR&B調曲のラジオロングヒットも見られるようになってきました。(そのもう1つの代表例が、同じくChris Brownの“No Guidance”)

 

・SZA - Good Days

 ストリーミング偏重型ヒット。”drivers license”出現前は、Spotify/Appleの両方で1位でした。前シングル”Hit Different”のオンエアが続いていたことからか、こちらのシングルへの移行が遅れ、まだあまりラジオでオンエアされていないです。

 

・Ariana Grande feat. Doja Cat & Megan Thee Stallion – 34+35

 リミックス効果で2位に。アルバム週以来のトップ10に。トップ10を離れてからも大きくは調子を落とさず、ラジオも伸びてきたタイミングでの強力な援護射撃に。この週では、リミックス勢もクレジットに掲載され、それぞれトップ10曲数を増やしました。Doja Catは2曲目、Megan Thee Stallionは3曲目のトップ10。

 

・AJR – Bang!

 主にラジオヒット。グループ初のトップ10。Appleでは150位程度、Spotifyでも60位程度ですがAmazonやPandoraでは比較的上位。この後者2つはラジオとヒットが連動しやすい印象です。(そのためこの2つで人気の場合は、ストリーミングで人気でも「ラジオヒット」のような印象にはなる)

 

 

(今後のトップ10候補)

・The Weeknd – Save Your Tears

 シングルカット後、勢いよくチャートを駆け上がる。昨年のHarry Stylesのような華麗なシングルカット。ストリーミング時代は、あまりシングルカットがうまくいかないことも多かったですが、最近は成功率が高めですね。このご時世で、リリース量が少なめなことも関係するのでしょうか?

 2/7にはハーフタイムショーが行われるので、そのあたりのタイミングでトップ10に到達しそうです。(これが反映されるのは2月3週目のチャート)

 

・CJ – Whoopty

 1月に入ってからトップ40入り。昨年Pop Smokeによって注目されたドリル・ムーブメントにさらに火を付けたと考えられる1曲です。US出身の新人ラッパーですが、UKで先にヒット中で、既に同チャート3位まで到達しています。

 ラジオでも次第に人気を伸ばしており、リズミック>RMS>ポップの順に人気。ストリーミングでも好調と、有望な1曲。

※2/10訂正:"Whoopty"のドイツでの順位の記述について誤りがあったので、該当部分を削除しました。失礼致しました。

 

 

7 短評

 

・Ed Sheeran – Afterglow

 実質デビュー週となった1/9に32位スタート。その後も各種数字が伸びず、トップ10からは未だ遠いです。彼は過去3作品で、アルバムのリード曲はキャッチーな曲でヒットを飛ばしてきましたが、この曲はそうではないためか、あまり注目されず。

 その作風から、もしかしたらヒット狙いよりも、作家性アピールに主眼を置いたシングルなのかもしれません。

 

・Taylor Swift – willow

 リリース2週目がクリスマスと丸かぶりしたこともあり、38位に。1位からの下落幅記録を更新してしまいました。クリスマス曲が仮に無ければ15位程度です。*6

 

1-38 Taylor Swift – willow
1-34 6ix9ine & Nicki Minaj – TROLLZ
1-28 BTS – Life Goes On
1-25 Travis Scott feat. Young Thug & M.I.A. - Franchise

 

 クリスマスが明けた3週目以降は少し調子を取り戻し、20位台を推移。滞在も伸び、少なくとも滞在期間では落下幅2位の”TROLLZ”(4週)より良い成績を残すことが決定。

 

・Gabby Barrett – The Good Ones

 “I Hope”が特大ヒットになった後も、なかなか次のHot 100エントリーが出なかったGabby Barrettですが、12月にはクリスマス曲の“The First Noel”、そして1月には通常シングルの”The Good Ones”がHot 100に入りました。現状はおそらくラジオシングル/カントリーのヒットという枠組みでの人気のため、今後躍進するにはアーティスト個人としての存在感を発揮する必要があるでしょう。

 

・All Time Low feat. Demi Lovato & blackbear – Monsters

 Alternative系ラジオで計18週の1位というスマッシュヒットもあり、ポップ系ラジオ等にも浸透中。ポップ系へのクロスオーバーにあたり、Demi Lovatoのリミックスも追加されました。All Time Lowは”Damned If I Do Ya (Damned If I Don't)”以来、12年ぶり2回目のHot 100。

 ラジオでは人気ですが、ストリーミングではあまり注目されず。SpotifyAppleではこの曲よりも、TikTokで注目された“Dear Maria, Count Me In”の方が人気です。今っぽい現象です。

 

・Popp Hunna – Adderall

・SpotemGottem – Beat Box

・Erica Banks – Buss It

 今月のTikTok系ヒット。全員Hot 100初登場。”Adderall”はLil Uzi Vertの、”Beat Box”はPooh Shiestyのリミックスの恩恵も受けています。Pooh Shiestyも今年躍進が期待されるタレントの一人です。彼の新ミックステープは2月の3週目のチャートに登場予定。

 

Black Eyed Peas & Shakira – GIRL LIKE ME

 ラテンとの融合を図る最新作、“TRANSLATION”から3曲目のHot 100入り。2010年前後に大活躍し、今もポップ系ラジオヒットを地道に飛ばし続けるという点でMaroon 5と少し似ています。ヒットの規模は向こうのほうが上ですが。

 

BTS – Dynamite

 初めて滞在期間20週を達成。ファンダムによるセールスの影響力が大きいので、「一般的な」ヒット度をピーク順位から測るのは難しいですが、滞在期間がここまで伸びたということは一般への浸透にも大きく成功したと言って良いのではないでしょうか。

 

・Doja Cat – Streets

 今月ストリーミングで勢いがもっともあった曲。TikTokで人気を得て、ストリーミングでもシングルのような扱いとなり、急浮上したような印象。やはりスターの座を確保しているようなアーティストだと、バズを有効に曲のヒットに変換できる印象です。

 

・Saweetie – Best Friend / Back to the Streets

 2つの曲が好調だったSaweetie。“Back to the Streets”はリズミック系ラジオで1位を獲得。さらに今月リリースされたDoja Catとの”Best Friend”は39位と好スタートを切りました。

 

Travis Scott & HVME – Goosebumps

 ドイツ等で定期的に見られる有名曲のハウス/トランスカバーがまさかのUS上陸。スペイン出身DJのHVMEによって作られたリミックスがヨーロッパ方面で人気に。最初は(おそらく)HVMEがボーカルも務めていたのですが、正式シングル化にあたりボーカルをTravis Scott本人のものに差し替え。そしてラジオのオンエア等によってHot 100入りを果たしました。

 元の”goosebumps”は既にリカレントした曲ですが、別曲とカウントされ下位でのHot 100入りを果たしています。ダンスリミックスはこのような判定になることが多い印象です。

 あと細かい違いなのですが、原曲は頭文字が小文字で、リミックスのほうは大文字です。

 

・Pop Smoke – What You Know Bout Love / For the Night

 1/30に、同時に2つのシングルがジャンル別ラジオの1位獲りを達成。この週“What You Know Bout Love”がリズミック系、”For the Night”がRMS系で1位に。Pop Smokeはアルバムから複数曲が人気になっていることを受け、同時に複数をシングルカット。“What~”はポップ向け、“For the Night”はラップ向けシングルといったイメージ。

 リズミック、RMSは“For the Night”を先にかけ、次にポップ系向けだったシングル”What~“がこの系統にも取り入れられた、ような印象です。(”For the Night”は1月の1週目~3週目にリズミックでも1位でした)

 

・Maluma & The Weeknd – Hawai

 ラテン圏で大ヒットしていた“Háwai”にThe Weekndリミックスを加えて、さらなる飛躍を目指した1曲。英語ヴァースが加わると、ラジオのオンエアでだいぶ有利になります。リリース直後はリミックスが人気を得たこともあり、12位と高順位を記録しましたが、その後はそこまで勢いが続かず。期待されたラジオも最高40位止まりでした(とはいえMalumaにとっては最高記録です)

 

・Parmalee & Blanco Brown - Just The Way

 2019年、Lil Nas Xが起こしたムーブメントに乗っかり、ラップ系カントリー曲、“The Git Up”をリリースしたBlanco Brown。この時Lil Nas Xがカントリー系のチャート(そしてラジオ)から外されたことは当時大きな話題となりましたが、一方でBlanco Brownはカントリー系チャートに継続して採用。

 その後はあまりヒットがありませんでしたが、この度カントリーのラジオシングルでHot 100に復帰。カントリー界隈の一員として認められていることが伺えます。Lil Nas XとBlanco Brown、2人の扱いがなぜここまで違うのかは考えれば考えるほど不思議です。

 

 

データ等

 

主な外れた曲

 

1/2

18 The Weeknd – Blinding Lights (🗻1 /⏰55)

44 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez & Lil Wayne – WHATS POPPIN (🗻2位 /⏰45)

50 DaBaby feat. Roddy Ricch - ROCKSTAR (🗻1 /⏰35週)

70 Dan + Shay – I Should Probably Go To Bed (🗻42位 /⏰20週)

76 Jhené Aiko feat. H.E.R. – B.S. (🗻24位 /⏰20週)

93 Jon Pardi – Ain’t Always The Cowboy (🗻55位 /⏰16週)

 

1/9

(クリスマス曲:計27曲)

 

1/16

(クリスマス曲:11曲)

 

1/23

32 Blake Shelton feat. Gwen Stefani – Happy Anywhere (🗻32位 /⏰22週)

37 Parker McCollum – Pretty Heart (🗻36位 /⏰22週)

42 Harry Styles – Watermelon Sugar (🗻1 /⏰39週)

76 Jon Pardi – Ain’t Always The Cowboy (🗻55位 /⏰18週)

85 Jameson Rodgers – Some Girls (🗻29位 /⏰17週)

90 YoungBoy Never Broke Again – Kacey Talk (🗻50位 /⏰15週)

91 Shawn Mendes - Wonder (🗻18位 /⏰11週)

96 Matt Stell – Everywhere But On (🗻48位 /⏰12週)

 

1/30

50 Maluma & The Weeknd - Hawái (🗻12位 /⏰21週)

56 Jhené Aiko feat. H.E.R. – B.S.  (🗻24位 /⏰23週)

98 Miley Cyrus – Midnight Sky (🗻14位 /⏰20週)

 

 

アルバムのキリ番

 

1/2

450週目:Michael Jackson – Thriller (69位)

 

1/9

1周年:JACKBOYS – JACKBOYS (155位)

100週目:Mariah Carey – Merry Christmas (20位)

100週目:NirvanaMTV Unplugged In New York (200位)

200週目:Khalid – American Teen (71位)

200週目:Ed Sheeran - ÷ (94位)

500週目:Bruno Mars – Doo-Wops & Hooligans (161位)

 

1/16

1周年:Moneybagg Yo – Time Served (108位)

100週目:A Boogie Wit da Hoodie – Hoodie SZN (162位)

100週目:Ariana Grande – thank u, next (62位)

250週目:Rihanna – ANTI (134位)

650週目:Journey – Journey’s Greatest Hits (60位)

 

1/23

1周年:Halsey – Manic (68位)

1周年:Blake Shelton – Fully Loaded: God’s Country (188位)

 

1/30

1周年:Eminem – Music To Be Murdered By (7位)

 

 

各指標の1位

f:id:djk2:20210209011852j:plainYouTubeで長く1位だった"Life Is Good"は1/16相当分のチャートをもって、リカレントしました。もしかしたらその後に1位相当の成績を記録している週もあるかも。(YouTubeのチャートでリカレントって、別に要らなくないですか???やるとしても、1位くらいの曲を外してしまうのはマズいのでは……)

 

・Rolling Stone Chartsのトップ10

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12/25-31集計の週でも、7曲がクリスマス曲

 

・各週の動向まとめ

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・リンク

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

 

 

(おまけ)

Spotifyの再生数から見る消費方法の変遷メモ(クリスマスのヒットを考察する上で調べたことです)

 

2017/1/12 vs. 2021/1/14(US週間)

2017:10位=5,145,003、200位=995,035

2021:10位=4,701,678、200位=1,486,494

10位 = 8.6%減少、200位 = 49.4%増加

 

同比較(Global週間)

2017:10位=17,377,668 200位=2,619,942

2021:10位=18,425,259 200位=4,740,987

10位 = 6.0%増加、200位 = 81.0%増加

 

 

 

*1:日程的には今年の方が不利

*2:26日以降は劇的に減少するが、すぐに0になるわけではない

*3:※データから推測しまくっても、結局このような内部データを見ないことには結論が出せない、というのは近年感じるもどかしさです。

*4:個人的な経験なのですが、動いているときはある意味「雑に」曲を聞きたいムードの曲が多く、仮にそのような思考の人が世の中に多いのならば、外出制限の環境下でヒット曲への需要げ減るのかもしれません

*5:アレクサを通しての再生は内容的にはラジオと同じなので、それと同じ比率まで下げる等。Limited-Tier Paid Subscriptionという制限付きのストリーミングがRIAAでは表記されているが、ビルボードでは導入されていないので、それを導入する等。アレクサにもこのプランが存在するらしいです。比率は分からないですが。あとはクリスマス曲に限っては、無料会員からの数字を集計しないなど

*6:なぜ程度かというと、“Blinding Lights”より上かはっきりしないため