チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

“Blinding Lights”の90週を振り返る

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こんばんは。久々に記事を書くことが出来ました。来月から年末系の記事もいくつか書く予定なので、そちらの方もよろしくおねがいします。

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 Hot 100滞在90週と、歴代最長記録を生み出してチャートを去った“Blinding Lights”。その滞在の長さから、Hot 100史上最もヒットした曲との認定も受けました。*1

 そんな大記録を生み出した曲のチャートアクションを振り返り、これがどのような記録だったかを見ていきます。

 

(まず、①で1週目から起きた出来事を説明します。そして②で考察等をします)

 

 

1 90週を振り返る

 

 滞在していた90週を最初から振り返り、その関連事項等を説明していきます。

 

 

1週目:登場

 “Heartless”と共にダブルシングルとしてリリース。コラボ、映画サントラへの提供を除くと2018年3月以来の新曲。その”Heartless”はHot 100で首位獲得に成功、一方”Blinding Lights”は11位でした。ストリーミングの数はそこまで差がなかったのですが、シングルだった“Heartless”はラジオやセールスに分があったため、少し順位に差が出ました。

 

(2019年12/14:11位)

↑この最後にある数字は、Hot 100の日付、その週の順位です。実際にチャートが発表されているのは、この日付の4日前、チャートの集計期間はこの日付の15日前~9日前です。

 

 

2週目:「相方」と共に下落

 “Heartless”が不名誉な記録を作ってしまいました。一気に17位まで順位を落とし、「1位からの下落幅が最大の曲」になってしまいました。(後に6ix9ineの“TROLLZ”などが記録を更新)

 ストリーミングではリリース直後の注目度が高く、近年メジャーなアーティストの曲は初週の順位がとても高い傾向にあります。しかしその「初動」が強すぎる故、2週目*2は「相対的に」順位を落とすことが多いです。

 この曲は初週にCDやヴァイナルを販売し、セールス増加に力を入れて「初週ブースト」を強化していたため、その分反動も大きくなりました。

 この特定の週を狙い、1位獲得を目指す「販売戦略」は2019年~2020年によく行われていたものです。CDやヴァイナルの物理媒体を販売(サイン入りを含む販売を行うアーティストも)し、それに付属するDL権利によってセールスを伸ばす戦略です。2020年の10月からは制限されています(付属のDL権利の分は反映されず、実物の発送日に反映されるように。これで狙った週にセールスを集中させる難度が上がる)

関連:Billboard 動向・10月号 【販売戦略の行く末 + オルタナティブ系 など】 - チャート・マニア・ラボ

 

 さらにこの期間はクリスマス曲が非常に多く、一般曲の順位が低くなってしまうという要素も大きかったです。

 “Blinding Lights”の方も、このような要因で52位まで順位を落としました。Chart Dataが”Heartless”のこの不名誉な記録を伝えるツイートには「”Blinding Lights”の方が……」というリプがいくつか寄せられていたのが印象的でした。非シングル時代から、支持は高かったのかもしれません。

 

(12/21:52位)

 

 

4週目:最も順位が低い週 

 72位にランクイン。90週で最も順位が低かった週。クリスマス曲がその年で最も多く(25曲)チャート入りしていた週で、その影響を受けた形に。

(2020年1/4:72位)

 

 

6週目:正式シングルカット

 シングルと非シングルの違いは曖昧で、ストリーミングではこの境界線が無くなりつつありますが、「この曲はシングルです」と宣言され、ラジオでかかったものをチャート界的にはシングルとすることが多いです。ウィキペディアもこの定義を採用しています。

 「曲名 Officially Impacted ○○系統 Radio」という声明が、このタイプの「シングルカット」の合図になっています。

 この宣言がされていなくても、ストリーミングの人気等を判断しラジオでかかるようなこともありますが、この手の曲は本格的には伸び切らないです。やはりラジオでかかるには基本シングル認定が必要、という考え方で良いと思います。

 ちなみにラジオのシングルカットの動向がストリーミングのプレイリストに影響を与えることもあります。しかし基本的に“Blinding Lights”はリリース時から一貫してストリーミングのプレイリストに含まれています。

 “Blinding Lights”がそのシングル認定を受けたのは1/6だそうです。これが反映されるのは1/18のチャートになります。ここから本格的な上昇を見せていきます。逆に言えば、これまで非シングルながらも人気を維持してHot 100に残り続けたということでもあります。

 

(1/18:39位)

 

 

12週目:トップ10入り

 初のトップ10入りにして、ピーク更新。最近はストリーミングとラジオのピークがズレる曲も多く、リリースから日が経っての曲の場合、トップ10に入ったとしてもそこから伸び悩むことも少なくないですが、この曲はストリーミングの強さを維持したままラジオが伸びていたので、以降も8位→7位→4位→2位と順位を伸ばし、首位に迫っていきます。

(2/29:10位)

 

 

17週目:アルバムリリース→Hot 100で首位に立つ 

 ついに首位に立ちます。この週にThe Weekndはアルバムチャートでも1位を獲得しています。元来の好調さに加え、アルバムによる加勢が効きました。

 アルバムのリリースは、現在シングルを上向かせる「最強のカード」です。各ストリーミング媒体では、アルバムリリース時に高い再生数が記録される傾向にあります。SpotifyのUSデイリー再生数ランク歴代上位記録を見ると(PkStreamsをタップすると、ソートします)、有名アーティストの非シングル曲がアルバムリリース時に注目を集め、数々のヒットシングルと同等以上の再生数を記録していることが分かります。

 ほか、Apple Musicでは再生数こそ表示されませんが、Spotify以上に「アルバム聞き」が盛んで、より頻繁にアルバム曲が上位を独占する現象が見られます。

 

(4/4:1位)

 

 

19週目:ラジオで1位に 

 Radio Songsで1位獲得、つまりラジオの再生数が1位に。”Earned It”、”Can’t Feel My Face”、”The Hills”に次ぐ4曲目の1位。

 ほかこの週にラジオで最も規模の大きいポップ系ラジオでも1位を獲得しています。この系統では通算3曲目の1位(後に”Save Your Tears”も1位に)

 

 一方でDrakeの新曲が注目を集めたため、Hot 100では2位に。先に述べたストリーミングにおける初週の強さ故です。ラジオで1位になった週でHot 100の順位が落ちるなんて、ストリーミング時代らしい現象?と感じるかもしれませんが、ラジオは以前から他の動向よりも若干サイクルが遅いため、ラジオで1位に立った週にHot 100で1位から外れる現象はストリーミング前時代でも別に珍しくはありません。

 

(4/18:2位)

 

 

21週目:4週にわたり1位に

 4/4付のHot 100で首位に立ち、以降合計4週で1位に。4/18こそDrakeに首位を譲りましたが、アルバムで得た勢いを維持し、しばらく支配力があったことが伺えます。それ以降も勢いが衰えたわけではありませんが、この5月は「販売戦略」でブーストをかける曲が相次ぎ、それらの後塵を拝する形になりました。

 一方で、こんなにロングヒットなのに意外と首位期間が短いという感想もあると思います。傾向として、そこまで首位期間とHot 100滞在期間の長さはリンクしない傾向にあるので、首位の長さはロングヒットの指標とは違いますかね。

 1位滞在が最も長い(19週)“Old Town Road”のHot 100滞在は45週のみ。逆にHot 100滞在が長い曲トップ10には、10週以上1位になった曲はありません。(このリストのうち週間1位になっていない曲も多い)

 

90週 The Weeknd – Blinding Lights (ピーク順位:1位×4週)

87週 Imagine Dragons – Radioactive (3位)

79週 Awolnation – Sail (17位?)

76週 Jason Mraz – I’m Yours (8位)

69週 LeAnn Rimes – How Do I Live (2位)

68週 LMFAO feat. Lauren Bennett & GoonRock – Party Rock Anthem (1位×6週)

68週 OneRepublic – Counting Stars (2位)

65週 Jewel – Foolish Games / You Were Meant for Me (2位) 

65週 Adele – Rolling in the Deep (1位×7週)

64週 Carrie Underwood – Before He Cheats (8位)

 

(5/2:1位)

 

 

23週目:“Heartless”が外れる

 同じタイミングでリリースされ、先にシングルカットをされていた“Heartless”がこのタイミングでチャートを後に。当初の序列を覆しました。

 リリースから勢いよくラジオを伸ばしたものの(2月にリズミック系で1位など)、長くは続かず。アルバム週に瞬間的に息を吹き返したものの、ラジオが下降線だったこともあり、比較的短命に終わりました。

 ちなみに“Heartless”がR&Bリスナー向け、”Blinding Lights”はポップリスナー向けと意図されていたことがオンエアされていたラジオの系統から伺えます。

 

(5/16:3位)

 

 

24週目:アダルトポップ系1位

 初の1位(後に”Save Your Tears”も1位を獲得) The Weekndが新しい領域に進出成功したと言えます。最終的にはこの系統で20週にわたり1位になっています(歴代3位の記録) 

 ラジオ系統の規模はおおよそ ポップ>>カントリー>>アダルトポップ=リズミック=RMS(通称アーバン)といったイメージです。ラジオヒットは、まずポップを抑えた上でアダルトポップかリズミックを第二の系統に据えていることが多いです。例えば2010年代前半のシングルヒットを例に挙げると、Katy Perryはアダルトポップ、Rihannaがリズミックをチョイスしています。しかしシングルごとに使い分けをする場合もあり、Katy Perryの“E.T.”はリズミックの方の順位が高かったです。

 このうちカントリーは他の系統へのヒットの飛び火がまれなため、あまり第二の系統としてカウントされません。しかし規模が大きいため、運良くポップ系との人気を両立すれば、大規模なラジオヒットになります。(Gabby Barrettの”I Hope”など)

 

 系統ごとの作風の都合上、飛び火の「距離感」は

アダルトポップ⇔ポップ⇔リズミック⇔RMS

 のような感じです。これはアダルトポップとRMSが最も遠い作風ということです。ポップから左に行くと穏やかな作風になり、ポップから右に行くとラップに近づくイメージです。

 ちなみに彼がそれまで最も得意としていた系統はリズミックで、これまで11曲が1位に立っています。つまり、ラップ寄りから穏やかな作風に進出したということです。(“Blinding Lights”が「穏やか」という描写は合わない気がしますが、「穏やか」な曲を好む層にも受け入れられたアップテンポの曲という解釈で良いかと思います)

 Hot 100の滞在が伸びる曲はこの系統で人気なことが多いです。ポップより若干曲の回転サイクルが遅いことが関係していると思われます。Hot 100の滞在後期はラジオのポイントが生命線になるので、ラジオ、とくにこの系統を抑えるとHot 100滞在がグッと伸びるような気がします。(逆にリズミック系は曲の回転サイクルが早めです)

 Post Maloneも初めてこの系統で1位を獲得した”Circles”がロングヒットになっていますね。

 

(5/23:4位)

 

 

32週目:次シングルの”In Your Eyes”が外れる

 ラジオで競合するのは他アーティストの曲だけではない? 次のシングルとしてリリースされていた“In Your Eyes”が先にチャートを後に。ピーク16位・滞在15週とかなり控えめな成績に終わる。他の曲はヒットしているだけに、意外な結果でした。

 かつてシングルは順番にヒットし、次のシングルが来たら前シングルのラジオは落ちる……という「シングル回転」がはっきりしていましたが、ストリーミング以降はそれがボヤケて来ました。有名アーティストでもシングルカットがうまく行かないことも多いです。

 その一つの例が、このような後シングルが優先されるような現象でしょう。”Blinding Lights”は次シングルとの競争に打ち勝ち、そのヒット期間を伸ばしました。

 

(7/18:2位)

 

 

37週目:Radio Songs記録更新

 Radio Songsで19週にわたり1位を獲得。Goo Goo Dollsの“Iris”が持っていた記録(18週)を上回り、最も長くラジオ1位を獲得した曲に。最終的にはこの記録を26週まで伸ばしています。

 Hot 100での滞在の後半はラジオが重要項目になるため、今回の記録更新を説明する上で重要な記録更新です。アダルトポップ系1位獲得など、支持層を広げたこと、シングルの回転速度が遅い系統に支持されたことが記録更新を支えたと思います。

 

(8/22:3位)

 

 

42週目:トップ5記録を更新

 トップ5滞在が28週目を迎え、記録を更新。最終的に43週まで伸ばしています。

 

43週 The Weeknd – Blinding Lights

27週 Ed Sheeran – Shape of You

27週 The Chainsmokers feat. Halsey – Closer

26週 Post Malone - Circles

 

(9/26:5位)

 

 

50週目:トップ10記録を更新

 トップ10滞在が40週目を迎え記録を更新。最終的には59週まで伸ばしています。

 

57週 The Weeknd – Blinding Lights

41週 Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating (この記録の後に達成された)

39週 Post Malone - Circles

 

(11/21:5位)

 

 

53週目:上がるハードル

 この週以降、Hot 100残留のハードルが上がります。21週目~52週目までは、51位以下に落ちるとチャートから外れるのですが、53週目以降はこの「足切り」が26位以下まで引き上げられます。このルールが適応された曲はRecurrentと名付けられたチャートに移動するため、Go Recurrentと称されます。また、私はこのルールを慣習的に「リカレントルール」と呼んでいます。

 21週目時点のルールは1991年から存在しますが、53週目の方は2015年末から設定されました。

 “Blinding Lights”の前の最長記録(”Radioactive”)は2014年に達成されたため、このルールの前です。当時の記録は、”Blinding Lights”より低いハードルで達成されたものということです。ただし、仮に当時このルールがあったとしても、69週は滞在できたようです。

 

 ほか、このタイミングでクリスマス曲の勢い(この週3曲がトップ10入り)もあり、トップ10入り後では初めてトップ10外に。次週はトップ10に復帰しますが、またその次の週に再びトップ10外に落ちます。

 

(12/12:11位)

 

 

?週目:驚愕!実は1回チャートの外に?

 なんと、Hot 100から外れてしまいます!この時点での滞在期間は55週。記録樹立前に一回チャートから外れていたのです。理由はクリスマス曲の大量登場。この週は全体で39曲、トップ10のうち9曲をも占めるという過去最大規模のクリスマス週に。この勢いにより、2週前までトップ10だった”Blinding Lights”も陥落してしまうのです。

 

 クリスマス曲によるチャート上位占領は近年激しさを増しており、その期間は通常の曲が端に追いやられ、通常のチャート機能が失われているように感じます。その曲の多さ、期間の長さから、個人的には毎年この期間かなりもどかしさを感じますね……

 せいぜい1週間か、または少数精鋭の曲のみがヒットする、なら構いませんが、この規模感には毎年モヤモヤしています。(チャート観察者的、個人的な感想です。チャート以外にもメインストリームに与える影響が大きく、様々な視点からモヤモヤしていますが、本題ではないので割愛します。宗教観とかも絡みそうなので、あんまり簡単に考察できるテーマでも無い気もします)

 

(2021年1/2:圏外)

 

 

56週目:復活

 クリスマスが終了。一気にクリスマス曲が減少し、平時のチャートに戻っていく週です。この週に、“Blinding Lights”は3位でチャートに復帰します。

 1回リカレントルールでHot 100を去った曲は、違うサイクルにならないと復帰しません。例えば51位相当→49位相当のようにポイントが移行しても、51位相当の週にチャートから外れ、49位の週にもHot 100には復帰しません。*3

 しかし、クリスマスは別枠のようです。近年クリスマス曲がチャートを一時的にジャックするのはここまで述べた通りです。ビルボードもこれは異例のチャートアクションと見なしたのか、この時期に特別ルールを設定しました。2020年以降、①クリスマス時期に外れた曲で ②クリスマス明けの週に50位以上に相当する曲 は一律チャートに復帰するようになったのです。(クリスマス自体は2019年、チャート復帰が実行されるのは2020年)

 そして、なぜクリスマス前よりも上位(3位)で復帰したのも不思議かもしれません。これはラジオが関係しています。カウントダウンの企画なのか、毎年ポップやアダルトポップ系のラジオでは年始年末にかけて、その年のヒット曲が再浮上を果たします。一回再浮上を果たすと、その後も急激に落ちることはなく、ある程度その水準を維持します。“Blinding Lights”はこの両方で人気(ポップは年間1位、アダルトポップは年間2位)の曲だったため、この効果の恩恵を最も受けた曲といえます。

 

(1/9:3位)

 

 

62週目:The Weeknd ハーフタイムショーに出演

 ハーフタイムショーが集計に入っていた週。元来からの好調に加え、そのブーストが入るので1位復帰もあり得ましたが、当時の特大ヒット”drivers license”、さらにCardi Bの新曲“Up”の存在もあり、3位維持に留まりました。

 また、彼の現行シングルの”Save Your Tears”がこの週4位まで浮上しています。

(2/20:3位)

 

 

70週目:最後のトップ10

 トップ10最後の週。この週までにトップ10滞在は59週わたり、他を圧倒する記録となっています。

(4/17:9位)

 

 

76/77週目:強力なアルバムに負けず、残留

 ストリーミングでアルバムの強力さゆえ、有力アーティストがアルバムリリースした際には多くのアルバム曲がHot 100入りをします。76週目にはJ. Cole、77週目にはOlivia Rodrigoと超強力なアーティストがアルバムをリリースし、実際に上位に多くの曲を送り込みましたが、“Blinding Lights”は26位以下に落ちることなくHot 100に残留しました。新記録を樹立する上で、最後の難所だったと思います。

(5/29:23位 6/6:22位)

 

 

84週目:ついに新記録達成!

 “Radioactive”を上回り、ついに記録を達成。まだ外れる圏と少し差があり、かつポイントもほぼ横ばい状態が続いていることから、ここからもう少し粘りそうと考えていました。上位に複数曲を送り込める超大物のアルバム、またはクリスマス期間以外では外れないと考えていました。

(7/24:17位)

 

 

・外れる

 9/10付のHot 100で、ついにチャートから外れる。大往生。90週という歴代最長の滞在記録を残し、チャートを後にしました。

 一つ前の週では20位と、足切りラインからは少し離れていましたが、The Weeknd自身も参加したKanye Westのアルバム”DONDA”の曲が上位に多く登場したため、それに押し出される形。仮にこの週外れなかったとしても、次の週にもDrakeのアルバムがリリースされたため、その週が最後になったでしょう。

 

 

 

2 まとめ:この記録をどう受け止めれば良いのか

 

 まず、この記録がすごいのは間違いないです。というのも、ビルボードは頻繁に「これは新記録」という発信をするため、大々的に喧伝されながらも、中身が微妙な記録も存在します。

 例えば、条件が複数付き、ニッチでそこまで重要ではない記録も存在します。(デュオであるか、初週かどうかなどの条件)しかし、この記録は純粋に単純期間が長いというシンプルな記録を更新しており、重要な指標であるという認識で間違いないでしょう。

 もう一つ、「たしかに記録は更新しているんだけど、昔のデータと比較して良いのか?」という視点です。Drakeがトップ10記録更新!という報道は近年何度もされています。これらの比較対象がMadonna(トップ10総数)やThe Beatles(同時トップ10入り)と時代が違うアーティストであるため、単純な比較が出来ず、どう捉えて良いのか分かりづらいということです。

 しかし今回の滞在週数更新で2位3位にあたる記録がストリーミング導入以降の2014年のデータなので互換性はあります。しかも2014年時はリカレントで外れる順位が低かったため、当時より高いハードルを乗り越えた、ということがこの記録をより輝かせます。しかしラジオで変化があったので、少し環境に違いもあります(後述)

 

 

・ストリーミングに順応したラジオ?

 ストリーミングも優秀でしたが、このロングヒット記録を大きく支えたのはラジオです。ラジオ1位記録を大幅に伸ばしているように、この曲の大きな強みだったことは間違いないでしょう。

 なぜここまでラジオ記録が伸びたのか。そこにはラジオ側の変化があったと私は考えています。

 様々な側面で、ストリーミングとラジオではヒットに違いが見られます。特に2017年以降に顕著です。例えば2018年にSpotifyで週間1位に立った曲は全てラジオ1位になっていません。どのような点ですれ違っているのでしょうか。

 まずは好みのアーティストの違いです。ラジオ受けするか否かという差異は昔から存在すると思いますが、これはストリーミングでも見られます。そしてストリーミング環境ではアルバムが人気なことから分かるように、シングル単位で人気かよりも、アルバム単位で注目を集められるか=アーティスト単位で人気を集められるかがヒットのカギを握っています。

 仮にラジオ受け、つまりはシングル人気が無かったとしても、アーティストとしての基盤がしっかりとしていればシングルとして売り出さなくともストリーミング人気は得られるのです。こうした「インディー気質」のアーティストがジャンルに関わらず、近年ストリーミングのランキングでは多く発見されるようになりました。Lil Uzi Vert、Juice WRLDあたりが代表格でしょうか。彼らの(近年の)曲はストリーミングで高い注目を受ける一方、そのストリーミングでの注目度に相応しいラジオオンエアはありません。最近はTaylor Swiftもこの方向性に近づいている気がします。

 The Weekndはアルバム単位で人気を集めるアーティストではありますが、しっかりとラジオ人気も集めることは出来ています。ただし、2018年のEP ”Dear My Melancholy,”の時はストリーミング人気&ラジオ薄の傾向がありました。

 

 もう一つはサイクルの違いです。ラジオではヒットしてから一定期間が過ぎると、次の曲をヒットさせるために、メインシングルを切り替えていきます。かつてはこのサイクルに従い、曲もヒットしていく傾向がありました。

 しかしストリーミングはこれに従う必要がありません。アルバムのリリース時がピークになりやすいストリーミングのリスナー的には、そこから時間が経過してからシングルカットがあっても、「その曲もう知っているよ」となるのです。一方で、過去曲が突如伸びるなど、ストリーミングのヒットの回転は不規則極まりないのです。従来とは違うシングル回転のサイクルが見られるのです。

 もちろんこれが一致する時もあり、そうすればポイントが同時期に集中するため、Hot 100の順位が伸びます。これが得意なのはカントリーです。ラジオでもストリーミングでも、近い時期に似たような曲がヒットしているような印象が強いです。つまりストリーミングがラジオのシングル系統に従順ということです。これはカントリーのリスナーが、個別にバラバラの趣味を持つのではなく、「カントリー」という枠組みで曲を聞く傾向にある、と個人的には解釈しています。

 ただ、逆に言うとラジオもストリーミングも同じタイミングで落ちていく可能性があるため、一時の勢いがあれど、滞在期間が伸びるとは限りません。カントリー曲に限らず、ラジオがベースとなっているヒット曲は、ラジオが落ち次第すごい勢いでHot 100を駆け下りるケースもあります。

 

 このようにラジオとストリーミングでは違いが見られましたが、実は近年はそれに徐々に対応している様子が伺えます。この曲関連で見られたのは、後シングルの“In Your Eyes”を蹴落としてシングルとして続行したことでしょうか。うまいことストリーミングとラジオの合致点が見つかると、ラジオシングルとして長持ちする傾向が見られるようになってきました。

 

 このような変化はセールスとストリーミングの違いも影響しているのではないかと考えています。セールスは基本1回されれば、それで完了です。ある程度まで曲が浸透すれば、それ以上はセールスが伸びずに曲が売上的な側面で「用済み」になる可能性があります。しかしストリーミングは繰り返し行えます。この違いから、売上的な観点からのシングルの寿命が伸び、ラジオで同じ曲を書け続けるメリットが生まれたのでは、ということです。

 

 また2021年に起きたラジオ+ストリーミングの融合で最大のテーマといえば“Levitating”の扱い方です。この曲は1回通常のラジオヒットをし、ピークを終えてラジオのオンエアが減少し始めていました。しかしその「落ち始め」のタイミングでストリーミングが再浮上(TikTokもヒットに一役買う)。これにラジオ側も対応し、ストリーミングの動きに合わせてオンエア数が再浮上しました。これに伴い、ラジオの再生数を扱うMediabaseというチャートでは、曲が「再登場する」というルールが制定されました。これが意味することは、このようなラジオのオンエアの再浮上はかつて見られなかったということでしょう。後に”Heat Waves”も似たような対応が取られています。ストリーミングの不規則なシングルのサイクルに、ラジオも対応し始めた、印象的な出来事でした。(結果的に共に大ヒットとなっています)

 

 もちろん、ストリーミング側もラジオでオンエアされる手法を見つけたという側面もあるでしょう。ストリーミングで人気を得やすい「アーティスト性」を維持しつつ、ラジオヒットも得ることの出来る作風ということです。

 このような分析から、今回の大記録はラジオとストリーミングが互いにうまい合致点を見つけ始めたことによるものだと考えました。

 

 

ビルボードの反応にも注目

 ちなみにメジャーな記録更新があった場合、ビルボードが何かしらの仕様変更をする場合があります。かつて2014年に滞在期間更新があった後、2015年に53週ルールが導入されました。少し時間差がありますが。

 また”Old Town Road”が首位滞在期間を更新した時、その独走の要因の一つだったYouTubeの非公式ビデオに翌年メスが入れられました。“Old Town Road”はミーム的な人気を誇り、公式ビデオ以外からも多くの再生を得ていたのですが、現在非公式ビデオはHot 100の集計対象外です。(ただしビデオが集計対象外のRolling Stone Charts*4でも長きに渡り1位だったため、この非公式ビデオ抜きでもHot 100の記録を更新していた可能性大)

 

 要は、「ナーフ」です。(ゲームで強すぎるキャラに調整が入ること)この記録に対して何かしらの調整があるかにも注目です。

 

 

・ロングヒット=10年後もロングヒットになるか?

 この曲が歴代で屈指のヒットになったことを、この記録が証明しています。しかし楽曲はチャートを外れて終わりではありません。現在ストリーミングでは過去曲の再生が盛んです。Spotifyのランキング圏内には多くの過去曲がエントリーしています。具体的に言うと、200位以内に5年以上前の曲が30以上入っていることもあります。(クリスマス曲等、「ホリデーソング」を除いても)

 90週も長いですが、5年はもっと長いです。これらの曲はある意味このチャート期間よりも長いスパンでロングヒットしているとも言えるのです。これらの曲にはリリース当初はさほどヒットしていなかった曲、Hot 100に入っていなかった曲も含まれます。つまり年月を経て、ヒットの序列が入れ替わることが十分あり得るのです。

 「序列が入れ替わる」とするならば、“Blinding Lights”は追われる立場です。チャートから外れた後も、さらなるロングヒットを目指し、2030年代、2040年代となっても、「2020年代の代表曲」であり続けるのか。長い長い旅は続いていくでしょう。

 

 

 

・参照

https://www.billboard.com/charts/hot-100/ (Hot 100)

https://www.billboard.com/artist/the-weeknd/ (The Weekndの過去のチャート成績)

Billboard + アーティスト名で検索すると、過去のチャート成績が閲覧できます

https://www.billboard.com/chart-beat/ (ここに掲載される、毎週のチャート解説記事 ただし直近の週しか一般公開はされていません)

 

 

 

*1:Hot 100でのポイントを合計でどこまで稼いだか、に基づき作られるチャート。Hot 100滞在期間中のみが対象。時代ごとに比率の調整等もあると考えられています

*2:“Heartless”はこの時チャート滞在3週目ですが、1週目は週半ばリリースでフルの集計ではないので、実質2週目というとらえ方で良い

*3:違う系統のラジオに飛び火した、など新たなヒットの芽が出れば、Hot 100に復帰します。これで復帰するかには明確なルールは存在せず、ケースバイケースです

*4:現在は過去のアーカイブも含めて消失

Billboard(US) 動向 6月号 【”Butter”4週1位 / Olivia Rodrigoデビュー作など】

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 今月もチャートは活発でした。Hot 100では“Butter”が4週連続1位でしたが、2位の”good 4 u”もかなりの規模のヒットを遂げ、ハイレベルな首位争いを繰り広げました。アルバムチャートでは、全ての週で違う作品が首位に立ち、かつどれも売上が10万を超えました。

 

 

~目次~

 

 

1 Butterが4週連続1位

 

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 熱心なファンダムで知られるBTS。2018年に初めてアルバム1位を獲得すると、以降はその常連に。さらにシングルでも昨年に首位を獲得して以降、一気に1位の数が増えました。今回の”Butter”は、“Dynamite”、”Savage Love”、“Life Goes On”、に次ぐ4曲目の首位。アルバムだけではなく、シングルもリリースすれば即1位というのが鉄板になってきました。

 彼らの躍進を支えるのはやはりセールス。今月は”good 4 u”というかなり強い競合がいましたが、この曲を出し抜けたのは桁違いのセールスが効いたと思います。この“Butter”はリリース以降、DLは24.3万→14.0万→13.9万→11.2万と推移。

 今年はここまでDLが5万を超えた曲は無く、DL1位の中央値は2.3万ということを踏まえると、スケールの違いが分かると思います。

 このようなセールスの異次元の高さがBTSのチャートアクションでの特徴ですが、この“Butter”はストリーミングとラジオの数字も決して悪くありません。特にラジオは、かなり快調なスタートを切っており、”Dynamite”よりも早いペースで数字を伸ばしています。

 また、セールスの比率が低く、一部セールス(D2C)が含まれないRolling Stone Chartsでも2位(4週連続)には入っていることから、セールス「だけ」でヒットしている曲ではないということは伺えます。

 

 現在のHot 100ルールではセールスが「重く」設定されており、ここを稼ぐとHot 100順位が一気に跳ね上がります。BTSはその恩恵を最も受けるアーティストの一つでしょう。

 ただ昨年あたりからこれを活用し、1位をファンの力で「取りに行く」アクションが増えたため、ビルボードはこれへの制限を示唆しています。その記事がリリースされたのが昨年の10月だったため、なんとなく今年の始めからこのルールが適用されるのかと思っていましたが、まだ適用されていませんね。1位を取れるのであれば、取りに行かない理由は無いので、このようにブーストを狙いに行くのは当然でしょう。ただしこの曲のヒット中にルールの変更があれば、順位を大幅に落とす可能性があります。

 

 

2 トップ10:3位堅持の”Levitating"、突き上げの"Kiss Me More"など

 

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 トップ10を見ていきます。Olivia Rodrigoの曲は、次の章で触れます。

 

・Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating

 “Butter”と”good 4 u”のリリース前は1位獲得にも接近した1曲。今月は3位の座を確保し、この2曲以外では首位なのですが、いかんせんこの2曲の壁が高かったです。ライバルが落ちてくるまで、この調子を保てるでしょうか?下からも”Kiss Me More”が突き上げてきます。

 

・Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More

 勢力を着実に伸ばしている1曲。ここ最近ラジオが大きく伸びているうえ、さらにアルバムのリリースというブースト要因(反映されるのは7月2週目)もあるため、首位獲得の可能性も。

 ラジオのピークとアルバムのリリースが重なる絶好の機会のため、何かしらの他戦略を仕込んでいる可能性も考えられます。

 

・Lil Nas X – MONTERO (Call Me By Your Name)

 ラジオでの好調により、トップ10復帰。特にポップ系やリズミック系で人気。リリース直後はそれほどラジオのオンエアがありませんでしたが、少し遅れて再生が増加しました。

 USだけでなく、UKやオーストラリアでも首位を獲得*1するなど、文句なしの世界的ヒットになっている曲で、それに見合うラジオを得た格好。

 

・Bad Bunny - Yonaguni

 Bad Bunnyの新曲がトップ10スタート。キャリア4曲目のトップ10です。曲のほとんどはスペイン語で歌われていますが、終盤に少し日本語が登場します。ビデオでは、その箇所でアニメ調に切り替わります。また、曲名も日本の与那国島のことを指しているようです

 日本語歌詞とはいえ、イントネーション等を工夫して巧みに元の曲調と合わせているため、ボーッと聞いていると意外と日本語であることに気づかないかもしれません(個人的な感想)

 Bad Bunnyは日本関連のワードを歌詞に登場させることが多く、昨年Hot 100に登場した曲に限っても、3曲もそのような事例がありました。(関連:Hot 100に登場した日本関連の曲 2020 - チャート・マニア・ラボ

Safaera:Honda
Pera Ya No:Pokémon
BOOKER T:Hadoken

 

 この曲のヒット具合は彼の近年の活躍からして納得の成績なのですが、不思議だったのは前シングルの”100 Millones”です。Hot 100にも入らず、プレイリスト等での扱いも悪く、謎に「空気」でした。どういう扱いのシングルだったんですかね?

 

 

3 3週目まで全曲Hot 100入り Olivia Rodrigoのアルバム

 

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 デビュー作をリリースした、今年の顔Olivia Rodrigo。競合が強かったため、シングル/アルバムともに1位の期間は短いですが、そうでなければ両方で今月4タテを狙えそうなヒットを記録しています。

 そのデビュー作は今年最大の29.5万の売上を記録。さらに非ラップアルバムとしては2回目の3億再生超えを達成しました。

Olivia Rodrigo – SOUR 3億73万再生(11曲)
Ariana Grande – thank u, next 3億707万再生(12曲)
(曲が1つ少なく、曲あたりの再生数ならばOliviaが上回ります。しかし2019年とは違い、2021はストリーミングにビデオも含まれるので、その点に留意する必要があります。)

 

さらに持続性について、このアルバムとの比較を行います 
1週目 A:360,000 O:295,000
2週目 A:151,000 O:186,000
3週目 A:116,000 O:143,000
4週目 A:86,000 O:122,000

 初週こそセールスの差*2で”thank u, next”の方が高い成績を記録していますが、2週目以降の持続性では”SOUR”に分があります。

 Hot 100でもこの成績は現れており、3週目まで全収録曲がHot 100に残留しています。これは(おそらく)史上初のことです*3。”thank u, next”の場合は全曲が残ったのは2週目まででした。(Hot 100のルールは適宜微調整されているため、この場合も僅かですが条件が異なります)

 

(それぞれのHot 100残留数)
“SOUR”:11、11、11、10
“thank u, next”:12、12、8、4
(1週目、2週目、3、4の数)

 

 元々はEPをリリースする計画があったようですが、「自身が何を出来るかを表明するには、フルの長さのアルバムしかない」として、"SOUR"リリースに至ったそうです。このチャートアクションはその判断が大正解だったことを表していますね!

 一つのヒットに甘えることなく、熱があるうちに次の手を打ち続けた結果、わずか半年で大スターの地位を確立することに成功しました。

 

 そんな成功を収めたアルバムなので、曲単体でも語りがいのあるものも多いです。いくつかの曲を取り上げます

()内は今月の順位推移(1、2、3、4週目の順位)

 

・good 4 u (2、2、2、2)

 ポップパンク感じる作風が大きく受け、”drivers license”にも劣らない規模でヒットしている曲。アルバムリリースの週(今月1週目)には、USで6270万再生を記録。これは“drivers license”のリリース週に次ぐ、今年2番目の数字。

 さらにUS外に目を移すと、Spotify Global(=サービス全体)では8413万の再生を記録し、週間再生数の記録を更新しています。ちなみにこの記録をこれまで持っていたのは”drivers license”(8076万再生)でした。

 しかしセールスで異次元のポイントを稼ぐ“Butter”に届かず、2週目以降は2位になっています。(先月ラストの週=リリース1週目では1位でした)

 ストリーミングの比率が高めなRolling Stone Chartsでは現在4週連続1位です。(逆にHot 100で首位だった先月最後の週は、J. Coleの”m y . l i f e”がRS首位でした)

 

deja vu (3、8、9、10)

 アルバムリリースの週にピークを更新。アルバムきっかけで勢いが増し、上位に定着しました。”good 4 u”と並行してラジオシングル運用されています。

 

・traitor (9、12、19、25)

 次シングル候補とされる曲。アルバムの週は、先行の”drivers license”よりも高い順位に入っています。SpotifyのToday’s Top Hitsに入ったほか、ラジオでも少しずつオンエアを得ているようです。SpotifyAppleともに上記の2強に次ぐ順位を記録しています。

 

・drivers license (11、13、17、19)

 すでにメインシングルの座は”good 4 u”や” deja vu”に譲ったため、ラジオは下り調子。アルバムから間もないため、現在は高めの順位を維持していますが、これからのロングヒットは望みづらいと考えています。

 

・favorite crime (18、16、26、43)

 唯一2週目に順位を上げた曲。TikTokで一時期注目をされたため浮上しました。

 

・happier (15、20、28、40)

 “favorite crime”の次にTikTokで注目された曲。4週目にはその”favorite”を上回りました。アルバムの流れで聞くと、シングル想定の曲な気がするのですが、どうでしょうか。

 

・brutal (12、19、35、52)

 アルバムの1番に配置されたギターをかきならす曲。その作風が評価されたのか、オルタナティブ系ラジオでオンエアされています!

 シングルによってラジオ系統を使い分ける手法は、Post MaloneやTaylor Swiftも過去にやっていました。

 

 

4 アルバムチャート:10万超え続出

 

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 全ての週で売上10万超えアルバムがあるのは去年の8月以来です。その時はマーチ+音源抱き合わせ戦略が有効で、その効果で10万に乗ったような週もありました。

 

(1週目)twenty one pilots – Scaled And Icy

 2015年の“Blurryface”では1位、2018年の”Trench”では2位、今作では3位と推移。ただし売上は14.7万→17.5万→7.5万で、”Trench”の方が売上は良かったです。ただ“A Star Is Born”に敗れてアルバムチャートで2位でした。今作はそのリベンジが期待されましたが、3位。

 

(2週目)Taylor Swift - evermore

 売上大幅増でアルバム1位に復帰。これでアルバム1位の通算週数が53まで伸び、単独3位に浮上しました。

132週 The Beatles
67週 Elvis Presley
53週 Taylor Swift
52週 Garth Brooks

 

 総合売上20.2万のうち、19.2万はセールスから記録。効果として大きかったのはヴァイナルのリリースで、10.2万枚を売り上げました。これはNielsen以降(1991~)では最大のヴァイナルの売上です。これまで記録を持っていたのは2014年のJack Whiteです(4万枚)

 その他、サイン入りを含むCDでは6.9万、割引が実施されたDLでは2.1万のセールスを記録しました。僅かですがカセットの販売も行っていたようです。

 

(3週目)Lil Baby & Lil Durk – The Voice of the Heroes

 Lil BabyとLil Durkのコラボ作が15.0万の売上でアルバム1位獲得。前者は2枚目、後者は初の1位。Apple Musicを中心にストリーミング人気が高く、16曲がHot 100入り。うちTravis Scottを迎えた16位の“Hats Off”が最高順位です。

 ともにクロスオーバーヒットはあまり無いラッパーですが、ラップリスナー間での人気は非常に高いです。Apple Musicのランキングを見ると2人の根強い人気を感じます。

 

(4週目)Polo G – Hall of Fame

 初のアルバム1位を獲得。売上もファーストから3.8万(6位)、9.9万(2位)、そして今回の14.3万と伸び続けています。ちなみに、作を追うごとにゲストの数が増加しているという特徴が見られます。

 13曲がHot 100入り。この週順位が最も高かったのは先行シングルの“RAPSTAR”。次いでThe Kid LAROIとLil Durkが参加した“No Return”(26位)

 この収録曲の中で、面白かったのは”GANG GANG”。今月1週目に登場した時は、なぜかビルボードでは”you”という曲名表記でした。2週目からは直りましたが。

 

(4週目)Migos – Culture III

 13.05万の売上でアルバム2位に入ったMigos。6曲がHot 100入り。Migosは“Culture”、”Culture II”と続いた連続アルバム1位が途切れました。競合が強いだけで、悪い成績ではないのですが、一時期ほどの勢いが無いのもまた事実でしょうか。

 収録曲のうち、Drakeとの“Having Our Way”(15位)、先行曲の”Straigtenin“(23位)、”Avalanche”(27位)あたりが好調です。

 このアルバムで気になったのは、13.”05”万という単位の区切り方。通常は1000単位で発表されているので、500という単位は登場しないはずです。今後はこの区切りになるのか?とも思ったのですが、この週に他の500区切りのアルバムは無かったので、詳細は不明です。

 

 このようにラップアルバムからHot 100エントリーが大量にあると、客演でHot 100デビューを果たすアーティストがいることも多いですが、ここで述べた今月の3作品からはいませんでした。(有名所の客演起用が多かったです)

 

(その他上記の表に載ってはいないアルバム)

 

・TWICE – Taste of Love (EP)

 4週目に、アルバムチャートで6位と躍進。これまでの最高位が”Eyes Wide Open”での72位だったので、大幅な記録更新に成功しました。

 要因として大きいのは金曜日リリースになったこと。これまでは韓国に標準を合わせた月曜日リリースだったため、US基準だと初週の成績が中途半端に分かれてしまい、条件的に不利でした。

 それを金曜日リリースに変更したということは、本格的な世界進出を視野に入れているということでしょう。音楽の面でも最近の作品では変化を感じ、新境地開拓への意欲を感じるTWICEに注目です。

 

Maroon 5 – Jordi

 シングルの“Beautiful Mistakes”は14位浮上と好調ですが、アルバムチャートでは8位(4週目)と微妙な成績。セカンド以降、アルバムチャートでは2位か1位を記録していましたが、今回は順位を落としました。現行アルバムチャートではストリーミングが最重要項目ですが、彼らはシングル以外の再生数が少なかったため、苦戦を強いられました。

 近年のメガスターはアルバムも破格のストリーミング成績を誇ることが多いですが、Maroon 5はそうではないです。しかし彼らはそれでも、最終的にはシングルがヒットするので不思議なものです。

 個人的には、ラジオにしっかりフィットするシングルを作り続けていることが理由の一つかと考えています。このラジオ(=ヒット)重視の方向性は、アーティスト性に対してプラスに働くとは限らず、批評家からの評価も低くなりがちですが、そこを嫌がらず(?)にしっかり出来るからこそのシングルヒット連発なのかと思います。

 ただしアーティスト性のパワー、それに付随するファンダムが際立つ現行シーンで、この手法がいつまで通用するかは不明……という側面もあります。

 

 

5 ラジオ:"Forever After All"に注目

 

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(※RMS=Mainstream R&B / Hip-Hop)

 

・Bruno Mars & Anderson. Paak - Leave The Door Open

 ここまで10週連続ラジオ1位。主要系統ではリズミックでしか1位になっていませんが、かかる系統が広いため、再生が突出した系統が無くとも、ラジオ総合1位にはなるのです。とはいえオンエアは減少傾向で、7月の1週目には“Peaches”か”Levitating“のどちらかにラジオ1位を譲りそうです。

 

・Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon - Peaches

 同じくかかる系統は広く、さらにポップ系とリズミック系で1位を獲得したこの曲ですが、ラジオのピークが“Leave the Door Open”と丸かぶりだったため、その人気の割にラジオ1位を獲得せずに終わる可能性も?

 

・Dua Lipa feat. DaBaby - Levitating

 ポップ系とアダルトポップ系で1位を獲得するなど、上り調子。Hot 100で1位を取るかは分かりませんが、ラジオでの1位は取れそう。

 

・Lil Tjay & 6LACK - Calling My Phone

 リズミックに続いて、RMSでも1位を獲得。ストリーミングだけでなく、ラジオでも成功を収めました。

 

・Luke Combs - Forever After All

 既にHot 100滞在31週目を迎えたタイミングで、カントリー系ラジオで1位獲得。この曲はまだ他系統へのクロスオーバーをしていませんが、単純にカントリー系ラジオでの人気の高さにより、Hot 100(12位)やラジオチャート(10位)で高い順位につけています。

 Talk of the Chartsによるとカントリー系のオンエアのみで、Radio Songsで10位まで到達するのは1998年12月以降では初だそうです。

 

 

6 外れた曲

 ビルボードは取り上げることがほとんど無いですが、「曲の成績発表」がされるタイミングとして、個人的には重要と考えている外れた曲について取り上げていきます。その週に主に外れた曲を見ながら、振り返っていきます。

 

※主に外れた曲=ピークがトップ40以上 or 滞在が10週以上。ただし滞在が10週未満のアルバム曲は除く。後に再登場する曲も除く。

 

6/5 (全部で16曲が入れ替わり)

84 Rod Wave – Street Runner (🗻16位 /⏰10週)

88 Bad Bunny & ROSALÍA – LA NOCHE DE ANOCHE (🗻53位 /⏰17週)

98 Brett Young - Lady (🗻52位 /⏰19週)

 

Bad Bunny & ROSALÍA - LA NOCHE DE ANOCHE

 “DÁKITI”のようにクロスオーバーはなりませんでしたが、ラテン系ラジオで首位獲得など、一定の結果は残しています。

 

6/12 (全:9曲)

71 J. Cole – i n t e r l u d e (🗻8位 /⏰3週) *4

79 Doja Cat - Streets (🗻16位 /⏰20週)

 

・Doja Cat - Streets

 ピーク16位、滞在20週の成績で外れる。TikTokで注目され、ストリーミングで浮上。予期せぬヒットを遂げてシングルカットされましたが、そのストリーミングに似合ったラジオのサポートを得られませんでした。

 しかし、このタイミングで前アルバムからのシングルを切ってしまうと、先行シングルを含めた新作のリリーススケジュールに影響が出てしまう可能性もあるので、これはこれで賢明な判断かもしれません。

 

6/19 (全:19曲)

40 Gabby Barrett – The Good Ones (🗻19位 /⏰23週)

44 Eric Church – Hell Of A View (🗻28位 /⏰21週)

46 Lil Baby – On Me (🗻15位 /⏰26週)

83 Travis Scott & HVME - Goosebumps (🗻47位 /⏰20週)

88 Pop Smoke feat. A Boogie Wit da Hoodie - Hello (🗻83位 /⏰11週)

90 Jazmine Sullivan – Pick Up Your Feelings (🗻75位 /⏰19週)

91 Tiësto – The Business (🗻69位 /⏰14週)

95 Future & Lil Uzi Vert – Drankin N Smokin (🗻31位 /⏰18週)

97 Justin Bieber – Hold On (🗻20位 /⏰13週)

98 Morgan Wallen – Wasted On You (🗻9位 /⏰19週)

 

・Gabby Barrett - The Good Ones

 カントリー系ラジオでの下落により、チャートを後に。ただ、アダルトポップ系でのオンエアはが開始したため、将来的にチャートに復帰する可能性も?また、ちょうど外れたあたりのタイミングで、TikTokでも注目され始めています。

 

・HVME & Travis Scott - Goosebumps

 HVMEによるハウスリミックスが人気を得て、正式シングルカット。🗻47位・⏰20週と、それなりの成績を残してチャートを後に。原曲を上回るには至らず。(原曲の成績は🗻32位・⏰35週)

 アーティスト当人の予定には無い、このようなリミックスのヒットってどうなんでしょうか。Travis Scottは既に評価が確立されているので、この曲のヒットの影響は少ないでしょうが、昨年の”Roses”のSAINt JHNのような気鋭のアーティストの場合、その影響が大きく、アーティスト性を揺らがしかねません。

 SAINt JHNは昨年のアルバムでは、ラップ回帰を目指すスタイルを披露しました。

 

・Justin Bieber - Hold On

 🗻20位・⏰13週の成績で外れる。ラジオでオンエアされていた時期もありましたが、“Peaches”一本に絞ったため、この曲のオンエアは終了へ。ストリーミングの動きを見つつ、柔軟にシングル選定、という理想的なラジオのサポートが出来ています。

 

6/26 (全:22曲)

48 Pooh Shiesty feat. Lil Durk – Back In Blood (🗻13位 /⏰23週)

75 Billie Eilish – Your Power (🗻10位 /⏰6週)

77 Dua Lipa – We’re Good (🗻31位 /⏰17週)

93 42 Dugg & Roddy Ricch – 4 Da Gang (🗻67位 /⏰10週)

94 Rod Wave - Tombstone (🗻11位 /⏰12週)

95 Drake – What’s Next (🗻1 /⏰14週)

100 Nicki Minaj, Drake & Lil Wayne – Seeing Green (🗻12位 /⏰4週)

 

・Pooh Shiesty feat. Lil Durk - Back In Blood 

 この曲をきっかけに、Pooh Shiestyは主にApple Musicのような層(=正統派ラップ)での人気を確立した印象です。この曲単体では、多少クロスオーバーも見られました。

 

・Billie Eilish – Your Power

 わずか6週で外れる。(ピークは10位)ラジオのオンエアが止まり、一気に圏外へ。シングルっぽくないと判定されたのでしょうか?昨年の“my future” (🗻6位 /⏰6週)とそっくりなチャートアクションに。

 どちらもリリース直後はラジオでオンエアされていたものの、早いタイミングでオンエアが終わっています。

 

・Dua Lipa – We’re Good

 シングルを“Levitating”に一本化したことにより、この曲は役目を終えてラジオのオンエアが激減。(🗻31位 /⏰17週)の成績でチャートを後に。

 

・Drake – What’s Next

 1位スタートながらも、わずか14週の滞在で外れました。早いタイミングでシングルが“Wants And Needs”(現在24位)に切り替えられたことが理由です。

 この曲自体は微妙な成績に終わりましたが、ストリーミングの様子を見て素早くシングルをスイッチした判断は見事です。

 

【6/29 訂正】

 "Wants And Needs"はプレイリストではシングル級の扱いで、かつ一時期ラジオでかかってもいましたが、正式にはシングルカットされておらず、「シングル」と称するには少し注釈が必要でした。その点を訂正致します。失礼しました。

(なので、シングルをスイッチした判断が見事、という評価も変わります。”What's Next"のシングル扱いを止めたこと自体はストリーミングを反映させています。しかし”Wants And Needs"のカットを同時に行えていないので、評価は「並」ぐらいですね)

 ちなみに、ここで紹介した"We're Good"や”What's Next"は次の週にHot 100に復帰していますが、既に下り調子なのは変わらず、今後の上昇はほとんど考えづらいため、内容的には差支えないです。

 

 

7 ロックの波?

 Olivia Rodrigoのアルバムでも注目された、メインストリームにおけるロックブーム。それに関する今月の動きを取り上げます

 

・WILLOW feat. Travis Barker – t r a n s p a r e n t s o u l (外、外、外、100)

 WILLOWは10年ぶりのHot 100入り(3曲目)。”feat. Travis Barker”から分かる通り、最近勢いのあるポップパンク系統の1曲です。Travis Barker個人名義では2曲目、トータルでは10曲目です。(個人2、Blink-182で7、+44で1曲)

 2000年代ロックスタイル*5を取り入れ、アルバムが大絶賛されたRina Sawayamaもこの曲を称賛しています。

 

 ちなみにTravis Barkerの、Wikipediaディスコグラフィー「客演」の欄で一番最初にあるのはSoulja Boy Tell’emの“Crank That”のTravis Barkerリミックスです。彼はインターネットミーム、そしてアニメなど現行シーンに見られる特徴をいち早く取り入れていたことが知られていますが、このポップパンクブームまで先取りしていたとは、驚きの一言です。

 そんなSoulja Boy Tell’emですが、新シングル“She Make It Clap”がにわかにTikTokで注目を集め、一部のプレイリストやラジオに登場しています。

 

・Duncan Laurence – Arcade (88、85、86、74)

 TikTokで再注目をされ、シングル運用もされてHot 100に入った曲。この曲での注目点はEurovisionというコンテストで優勝したこと。このコンテストからの曲がHot 100入りするのは25年ぶり*6でした。この曲もUSでの注目の理由は、このコンテストの影響ではなくTikTokだったので、少なくともHot 100観察者としては注目してこなかったイベントでした。

 しかしそのコンテストの今年の優勝者がにわかに注目を集めています。イタリア出身のロックバンドMåneskin。ヨーロッパで現在一大旋風を巻き起こしています。ドイツでは3曲がトップ10入り、イギリスでも2曲がトップ10などイタリア以外でも高い人気です。

 近年のEurovision曲は、優勝曲でもチャート上位入りするのはその演者の母国がメインで、それ以外の国では週間のトップ10入りが怪しいくらいなので、このように他国で複数曲がトップ10に入っているのは珍しく感じます。

 ヨーロッパでそんな快進撃が続くMåneskin ですが、USでも最近ようやくヒットの兆しが。”Beggin’”と”I WANNA BE YOUR SLAVE”の2曲が直近の週のSpotifyチャートにエントリーしました。(※この動向が反映されるのは7月1週目付のビルボードチャート)

 2017年のシングルながらも最も人気が高い前者、そして今年のアルバムからのシングルの後者、このどちらかがUSでもシングルとしてカットされる可能性があります。USラジオ局は、UKのヒットを取り入れることが少なくないため、UKでヒットしているという点は心強いです。

 ちなみに“Beggn’”はthe Four Seasonsというグループの曲をカバーしたもの。この曲をMadconというアーティストがカバーしたバージョンが、昨年TikTokで流通していました。

 

 

その他:短評

 

()内は順位の推移。(1週目の順位、2週目、3、4)です。外は圏外、”-“はその時点ではまだリリースされていないことを指します

 

・City Girls – Twerkulator (51、82、外、外)

 正式リリース前からTikTokで流通しており、期待感が高かった1曲。ですが3週目に外れるなど、今のところ微妙な成績。ラジオでもかかっているため、ここから巻き返す可能性もありますが。

 

・Lil Nas X – SUN GOES DOWN (66、外、外、外)

 大ヒット“MONTERO”の次シングルは1週で外れるという結果に。ビデオも用意され、プレイリストでも扱いが良かったですが、ラジオにはかからず。もしかしたらシングルとしてそこまで期待されていない枠なのかもしれません。

 

https://vt.tiktok.com/ZSJXEaYgF/

↑ Lil Nas X当人が既存曲と混ぜつつ、まだ正式にリリースされていない曲を紹介する動画。”Industry Baby"の露出が多い気がするので、次の正式シングルはこれかもしれません。

 

・Marshmello & Jonas Brothers – Leave Before Love Me (85、72、69、58)

 初動は鈍かったものの、徐々に勢力を伸ばす。私の聞く限り、ヒットしそうな雰囲気を感じました。ラジオやプレイリストで粘り強くプロモーションを続ければ、もっと伸びそうな気はします。

 

・Kali Uchis - telepatía (44、34、33、30)

 ラジオの伸びにより、ストリーミングのパワーで記録した登場直後のピークを塗り替える。主にポップ系やリズミック系でオンエア。スペイン語ヴァースが過半数を占めている曲ですが、ラジオではリミックス無しで問題なくオンエア。英語ヴァースも含まれていることが関係していそうです。

 ストリーミングとラジオのピークが少しズレているとはいえ、まだ勢いが残った時期にシングルカットできたため、悪くはない運用が出来ていると思います。

 

・Ariana Grande - pov (45、37、39、33)

 TikTokで人気を得て、リリース直後にストリーミング主体で記録したピーク(40位)をラジオパワーによって更新する。ただその時とは違い、現在はあまりストリーミングに優れません。

 ビデオという可能性を残す一方、ラジオは少し頭打ちになってきました。こちらはストリーミングとラジオのピークが離れすぎているため、そのポテンシャルをイマイチ発揮できていないような印象です。

 ストリーミングでアルバムごと注目されていた作品の場合、そのリリースから時間を置いてカットされたシングルがあまりヒットしないのは最近よくある事例です。

 ここで紹介した”telepatía”、”pov”の2曲はストリーミングのピーク時にRolling Stone Chartsでトップ10入りを果たしています。ラジオ抜きでもそのようなポテンシャルのある曲が、ラジオでどこまで評価を得るでしょうか。

 

Eminem feat. Jack Harlow & Cordae - Killer (-、62、外、外)

 Eminem昨年のアルバムの、”Side B”にあった曲のリミックス。客演のCordaeは初のHot 100です。彼は大坂なおみとデート報道があるラッパー。それ以外でもよく名前を聞くラッパーだったので、今回がHot 100初登場だったのは意外でした。

 Roddy Ricchとの“Gifted”がBubbling Underの1位に到達したのがこれまでの最高位。

 

・Cochise & $NOT - Tell Em (-、64、92、外)

 両者ともに初のHot 100。TikTokで正式リリース前から注目されていた曲。Cochiseによるスニペットの他、Varoon Ramesh*7という人物が作成したマッシュアップの音源もリリース前から人気を集めていました。

 Cochiseは“Hatchback”が昨年TikTok内でヒットしたこともあるラッパー。Mario Judahと並び、Playboi Cartiとの類似性が指摘されることもあります。

 $NOTも同様に、以前Flo Milliの”Weak”が以前TikTok内でヒットしていたことがあります。

 

・Rauw Alejandro - Todo de Ti (外、66、53、45)

 ラテン圏で目下絶好調の1曲。従来のレゲトンは一線を画するサウンドの曲で、今後のクロスオーバーにも期待が持てそう。

 英語ヴァースもあると、ラジオやプレイリストで有利に働くことが多いので、今後リミックスがリリースされるかも?

 

・Roddy Ricch - Late At Night (-、-、20、35)

 Roddy Ricchのカムバック。過去に2曲のヒットを共に生み出したMustardがプロデューサー。しっとりしたR&Bで、“The Box”のようなスマッシュヒットを狙うよりは、主にラップ/R&Bのリスナーの心を射止めに来た印象です。堅実なシングルと言えます。

 

・Regard, Troye Sivan & Tate McRae - You (外、外、外、100)

 主にポップ系ラジオで注目される曲。DJのRegard、Tate McRaeは2曲目のHot 100。Troye Sivanは6曲目。ストリーミングではそこまで良い成績が出せていませんが、ラジオでのサポートは充実していたため、Hot 100にたどり着きました。

 Tate McRaeはKhalidとの“working”も現在ポップ系ラジオでかなりオンエアされています。(この曲がチャートに反映されるのは7月の1週目)

 

・Lorde - Solar Power (-、-、-、64)

 Lorde2017年以来のシングル。ポップ系やアダルトポップ系などの大きな系統では今の所ほぼオンエアされておらず、そこまでシングルヒットを意気込んだ曲ではないと推測されます。オルタナティブ系ではしっかりオンエアされています。

 

Nelly & Florida Georgia Line - Lil Bit (62、53、50、37)

 4週目にトップ40入り。ラジオに加え、実はストリーミングでも人気な曲。特に人気なのはAmazonやPandoraですが、SpotifyAppleでもある程度注目されています。

 昨年にヒットした、DiploとMorgan Wallenの“Heartless”にチャートアクションが似ていると思います。

 

・Megan Thee Stallion - Thot Shit (-、-、-、16)

 各ストリーミングで注目を集め、好スタートを切ったMegan Thee Stallionの新曲。YouTubeのSong ChartではUS1位になっています。(Song Chartでは曲が紐付けられたその他のビデオも含む。ただし、ビルボードでは公式ビデオの再生数しか含まれない)

 2週目以降もストリーミングで好成績を維持しており、しばらくは上位に残りそう。

 

・Machine Gun Kelly & blackbear – my ex’s best friend (39、31、42、36)

 かなりロングヒットになっているポップパンク曲。今月見られたようなポップパンクブームの影の立役者かもしれません。44週目で36位なので、もしかしたら滞在が1年まで届くかもしれません。

 

・The Weeknd – Blinding Lights (22、17、15、17)

 J. ColeやOlivia Rodrigoのアルバム曲大量登場という難所を切り抜け、チャートに残留した“Blinding Lights”。その滞在週数を80まで伸ばし、歴代単独2位まで浮上しています。他の曲よりも不利な条件(26位以下で外れる)ながらも、記録更新も見えてきました。

 

87週:Imagine Dragons – Radioactive

80週:The Weeknd – Blinding Lights

79週:AWOLNATION - Sail

 

 

主なデータ

 

アルバムチャートのキリ番

 

6/5

100週目:BTS – Love Yourself: Answer (109位)

 

6/12

1周年:Tyler Childers – Purgatory (190位)

150週目:Arctic Monkeys – AM (143位)

150週目:Future – DS2 (162位)

 

6/19

100週目:Chris Brown – Indigo (146位)

300週目:Chris Stapleton – Traveller (59位)

450週目:Kendrick Lamar – good kid, m.A.A.d city (52位)

 

6/26

1周年:Gabby Barrett – Goldmine (112位)

1周年:George Strait – Strait Out Of The Box (164位)

100週目:Brooks & Dunn – The Greatest Hits Collection (187位)

150週目:Travis Scott – ASTROWORLD (49位)

 

Hot 100初エントリー

Eminem feat. Jack Harlow & Cordae – Killer

Cochise & $NOT – Tell Em

MO3 & OG Bobby Billions – Outside

Los Legendarios, Wisin & Jhay Cortez - Fiel

 

※先月号で書き忘れてしまったのですが、Nicki Minajの客演を務めていたSkillibengもおそらく初登場でした。失礼いたしました。(アルバム曲で、TwitterBillboard Chartsで言及されないタイプの曲)

 

 

・各指標1位

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 強さを発揮する曲が、それぞれの媒体で異なります

 

【6/29 追記】

 Pandoraで首位を獲得したChris Stapletonの"You Should Probably Leave"は異質の存在。まだカントリー系ラジオでは「かかり始め」くらいの段階ですが、ラジオ系ストリーミングのPandoraでは1位まで到達。ラジオとPandoraでシングルの運用にズレが生じていることが分かります。

 この曲はまだHot 100に登場していません。Pandora単体の成績では、Hot 100には届かないようです。

 

・Rolling Stone Charts トップ10

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 1週目だけでなく、2週目までOlivia Rodrigoの曲が多いです。1位と2位がHot 100とは逆。

 

Spotifyチャート(US) トップ10

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 Olivia Rodrigoが異次元の強さ。初週はトップ10独占。以降8→6→5曲と推移。

 

※Rolling Stone Charts、Spotifyチャートの日付はHot 100準拠

 

 

・2021上半期 Hot 100首位推移

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(こういう表の曲の色合いは、アルバム or シングルジャケ、もしくはビデオ等を参照にしています。他の曲との兼ね合いもあります)

 

 

リンク/参照

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music

YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts

・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week (←今月も更新止まっている期間があった)

Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist

Apple Music - Today's Hits:Today’s Hits on Apple Music 

・Genius(曲の情報等):Genius | Song Lyrics & Knowledge

 

 

(過去の月へのリンク)

 

5月号:Billboard(US) 動向 5月号 【活発な月。"Save Your Tears"、"good 4 u"、J. Coleなど】 - チャート・マニア・ラボ

1:首位推移
2:トップ10の曲
3:今月のアルバムチャート
4:各系統のラジオ首位を見る
5:年間チャートのトップ10予想
6:TikTok関連
7:外れた曲(とその魅力)

 

4月号:Billboard(US) 動向 4月号 【週替りの1位:Justin Bieber→Lil Nas X→Silk Sonic→Polo G】 - チャート・マニア・ラボ

1 毎週交代!シングル首位
2 トップ10
3 新作が増加、アルバムチャート
4 ラジオ動向
5 BTSの「バトンタッチ」?

 

3月号:Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】 - チャート・マニア・ラボ

1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補
2 動かないアルバムチャート
3 グラミーはどうだった?
4 トップ10周り
5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok関係
6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト
7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち

 

2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ

1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B

 

1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ

1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後

 

 

 

*1:ドイツでは2位

*2:当時はマーチやチケット戦略が有効でしたが、このアルバムはそれらを使ったとの記述は無い

*3:ビルボード公式では明言されていないものの、少なくともストリーミング時代には無かったです。この記録の性質上ストリーミング時代以外には考えづらいです。

*4:ラジオにはかかっていませんが、プレイリストには含まれていたので、ここではシングル扱いということにします

*5:ポップパンクとは少し違いますが

*6:Chart Dataより

*7:過去にBillie Jean x Boo x F*ck It Upというマッシュアップもヒットさせていた。ちなみにBillie JeanはLagloinskiというフィメールラッパーのビートジャックを使っています

Billboard(US) 動向 5月号 【活発な月。"Save Your Tears"、"good 4 u"、J. Coleなど】

 

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 今月も先月に引き続き、動きが激しく賑やかな月だったのではないでしょうか!

 

 

1:首位推移

 

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1週目:Polo G – RAPSTAR

 4月ラストの週から継続での1位。それまでは目まぐるしく首位が入れ替わっており、同一曲が連続して1位をキープするのは3/6→3/13以来(”drivers license”)でした。

 ストリーミングでは高い人気を誇りますが、ラジオの伸びがそれと比べると遅いです。

 

2週目 / 3週目:The Weeknd & Ariana Grande – Save Your Tears

 2週目にAriana Grandeリミックス効果で首位獲得!両者ともに6曲目のHot 100首位。DLがその週1位、ストリーミングとラジオも同週2位とすべての指標で好成績。

 この曲はラジオでヒットしており、Hot 100におけるポイントの「基盤」がしっかりしていたため、少しプラスがあれば首位を獲得できる状況でした。そこにリミックスが加わり首位獲得、という流れです。昨年からの鉄板の戦略。

 セールスやリミックスでブーストをかけて首位を狙うタイミングは、初週かラジオが強くなった時が多いです。両方ともセールス以外のポイントがある程度「計算できる」というのが鍵です。

 ちなみにラジオが集計に入らないRolling Stoneチャートでは首位を獲得していません(2位)

 

4週目:Bruno Mars & Anderson. Paak – Leave The Door Open

 ラジオの強さもあり、Hot 100首位復帰。累計2週目の1位に。この週は“Levitating”に分があると考えられていましたが、不発でした。

 

(2位) Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating

 全指標で好調を維持していることもあり、1位獲得の可能性も噂されましたが2位。一応ピーク更新に成功しています。この週以降は強力なライバルが続々と登場するので、取るならこの週だったのかもしれません。

 この週はHot 100の発表が遅れていました。その理由をビルボードは、「データの異常への対処」としています。1位と予想されていた“Levitating”が2位だったことと、もしかしたら関係しているかもしれません???

 ちなみにDua Lipaは以下のようなツイートをしており、Dua Lipa陣営にも1位獲得が間近という自覚があったようですが、実現ならず。

 その1位獲得間近、という根拠が内部データに基づくものなのか、それともTalk of the Chartsなど一般のファンが行っている予想なのかは個人的に気になりますね。

 仮に後者ならば、一般ファンによるチャート分析が公式にも影響を及ぼし、価値を認められているということになります。Stan以外のファンダムが、影響を持つという点で少し珍しい気もします

 

 ちなみにこの曲は1回トップ10を後にし、ピークが終わったかと思われていましたが、グラミーの週でトップ10に復帰。これはグラミー限定の現象かと思いきや、その後も好調を維持。5月の1週目にはついに元のピークと同じ順位まで到達。

 TikTokで「一人会話」を演出する曲として有効利用*1されたことなどもあり、ストリーミングが再上昇していました。

 当初、ラジオは既に下降線だったのですが、このヒットを受けてラジオまでもが再浮上を果たしています。これは非常にレアな現象で、Mediabaseというラジオ系チャートでは、再浮上した曲は復帰できるという新ルールが作られました。そしてこの曲が同チャートに復帰しています。

 ラジオが落ちたタイミングにTikTokでヒットし、そこからストリーミングで返り咲きというパターンは過去にEllie GouldingとJuice WRLDの“Hate Me”がありましたが、その時はラジオの返り咲きは見られませんでした。

 その時はラジオが本格的に落ちた後のヒットでしたが、今回は「落ちかけ」くらいのタイミングでヒットしたことがラジオ再浮上の手助けになりましたかね。このケースのように、ストリーミングの動きに柔軟にラジオも対応できるようになると良いですね。

 

5週目:Olivia Rodrigo – good 4 u

 “drivers license”のヒットが全く偶然ではないことを証明し続けるOlivia Rodrigo。リリース以降再生数がみるみる伸び、ストリーミングでJ. Coleに負けない数字を叩き出して2曲目のHot 100首位獲得に成功。来週のチャートではデビュー作の動向が反映されます

 この曲はポップパンク系の作風で、特に似ているとされているParamoreの“Misery Business”は、この曲の効果なのかUSのSpotifyランキング下位に登場しています。(初登場)

 ちなみに今年にかけて過去曲の再生はSpotifyで盛んなようで、去年の同時期と今年の同時期の過去曲(5年以上前)のランキング入り数を比較すると、明確な違いがあります。さらには現代ポップアクトへの影響力も語られるParamore(およびHayley Williams)の曲なので、再注目を浴びやすい条件は揃っていたように思います。

 

・年初~20週目までの、USのSpotify週間チャートにおける5年以上前*2のランキング曲数(週平均)

2021:26.45曲 

2020:2.05曲

 

 

2:トップ10の曲

 

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・The Kid LAROI & Miley Cyrus – WITHOUT YOU

 Miley Cyrusリミックス効果でトップ10入り。LAROIは2曲目のトップ10(1曲目は客演で参加したJuice WRLDのアルバム曲)、Mileyは10曲目のトップ10

 The Kid LAROIは「ラッパー」と分類されることの多いアーティストですが、ポップやアダルトポップ系、そしてオルタナティブ系ラジオでの順位が高めです。(リズミック系でもオンエアはされているが順位が高くない)

 昨年の”Mood”と並び、オルタナティブ系でのオンエアが意外に感じる曲の一つです。

 

・Billie Eilish – Your Power

 Billie Eilish新曲がトップ10スタート。特にYouTubeSpotifyで人気。5曲目のトップ10を記録しています。そこまでキャッチーではない曲調、そしてラジオのサポートもゆるやかなことから、あまりヒットには期待していないシングルという可能性もあります。

 

・Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More

 7位で登場以降、トップ10に残り続ける安定性の高さ。ラジオ、ストリーミングともに優秀で今後も期待ができそうです。5位まで到達し、SZAはKendrick Lamarとの“All the Stars”で記録したキャリアハイを更新しています。

 

 

3:今月のアルバムチャート

 

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1週目:Young Stoner Life - Slime Language 2

 Young Thug率いるYoung Stoner Lifeのコンピレーションがアルバム1位を獲得。11.3万の売上のほとんどがストリーミングから。7曲がHot 100入り。最高位はDrakeを迎えた“Solid”(12位)。次点はTikTokで人気の”Ski”で18位

 媒体によってはYoung Thug & Gunna両者のアルバムと表記されていることもありますが、ビルボードのクレジットはYoung Thugだけで、Gunnaのチャートヒストリーにはこの作品は載っていません。

 このアルバムの客演のうち、Yung Kayo、YTB Trench、Yak Gottiが初のHot 100入りだと思われます。ビルボード公式が運営するTwitterBillboard Chartsでは普段初のHot 100エントリーを果たしたアーティストには、その旨がツイートされるのですが、この作品に関しては、アルバムからのHot 100は以下の通りです、という記述のみで誰が初のHot 100入りかは明言されていません。(ですが過去のリリースのデータ等を参照するに、初のHot 100だと思われます)

 

2週目 / 4週目:Moneybagg Yo - A Gangsta’s Pain

 11.0万の売上で初のアルバム1位を獲得のMoneybagg Yo。9曲がHot 100入り。うち2曲がトップ40圏内。人気はかなりApple Musicに偏っています

 目立ったリリースが無かった今月4週目にもアルバム1位の座を獲得。リリース以降、TikTokで“Wockesha”が人気を得て、ストリーミングでも浮上しています。

 

3週目:DJ Khaled - Khaled Khaled

 9.4万の売上でアルバム1位獲得(3枚目の1位) 7曲がHot 100入り。客演が豪華で、シングル候補っぽい曲は多いですが、Lil BabyとLil Durk(とTay Keith)が参加の“EVERY CHANCE I GET”がシングルに決まっています。

 

5週目:J. Cole – The-Off Season

 6枚目のアルバム1位を獲得。28.2万の売上はTaylor Swift(29.1万)に次ぐ今年2番目の数字。ストリーミング人気がずば抜けて高く、収録曲がすべてトップ40入り。うち4曲はトップ10圏内。この週に2位だった、21 SavageとMorrayを迎えた”m y . l i f e”がシングルとして運用される模様。

 J. Coleは2016年の”4 Your Eyez Only”に次ぐ、全曲トップ40達成。2018年の前作もトップ40に入らなかったのはInterludeやIntro等が中心(14曲中10曲がトップ40に)で、アルバムのパワーが毎回凄まじいのが分かります。

 2016年当初、彼はトップ10曲が無かったにも関わらず、アルバム曲で全曲トップ40入りと初のトップ10を記録。その時の衝撃は大きく、「アルバムによるHot 100支配」の幕開けを予想させる出来事でした。それ以前にもDrake等がアルバム曲を多くHot 100入りさせたことがありましたが、彼らは大規模なシングルヒットが多かったため、その延長線上のような感覚がありました。しかし一方でJ. Coleは、それまでトップ10ヒットが無かったという点がポイントです。

 

その他:Nicki Minaj – Beam Up Scotty

 2009年のミックステープが再リリースされ、ストリーミングのプラットフォームに登場。8.0万の売上で、アルバムチャートでは2位。Hot 100には4曲が登場。“Seeing Green”はこの週DL1位で、Hot 100で12位と好成績。

 

 

4:各系統のラジオ首位を見る

 

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・Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon – Peaches

 “Leave the Door Open”並に広い系統でオンエアされる曲。今月リズミック系とポップ系で1位獲得。ラジオ、Hot 100の両方でそのSilk Sonicを追いかけます。

 

・Lil Tjay & 6LACK – Calling My Phone

 ストリーミングでロケットスタートを切った後は、11位~20位帯に位置してきた曲。今月リズミック系で1位を獲得するなど、ラジオでピークを迎えつつあり、逆に考えるとこれが終わるとHot 100での順位も落ちていきそうです。

 

・Yung Bleu feat. Drake – You’re Mines Still

 RMSでは今月初頭まで1位を獲得していましたが、今月の5週目にHot 100から姿を消してしまいました。ラジオヒットになったのは、客演のDrakeの効果が大きいでしょうが、今後Yung Bleuは単独でどこまで活躍できるでしょうか。彼は最近、後述の“Track Star”のリミックスに参加したようです。

 

・Mooski – Track Star

 ストリーミングでド派手にヒットしているわけではないですが、ラジオで地味に勢力を拡大している曲。今後はポップ系でもオンエアされるようで、さらなるラジオヒットを目指します。

 

 

5:年間チャートのトップ10予想

 

 ここ数年、5月頃に年間チャート半年前予想を行ってきた私ですが、今年は単独記事でではなく、ここでひっそりと予想します。Talk of the Chartsがまとめた、これまでの推定ポイントの集計表を参照すると分かりやすいと思います:https://www.talkofthecharts.org/hot-100/year-end

 

 2020年以降、YouTubeのポイントの順次カットなどもあり、ストリーミングによる独走/短期間での逆転が難しくなりました。そのことから、ラジオの力を借りつつ、長い期間で満遍なくポイントを集めることが年間チャートで上位入りするうえで重要になります。

 

 予想:

1 Levitating

2 Mood

3 Blinding Lights

4 drivers license 

5 Peaches

6 Save Your Tears

7 Leave the Door Open

8 Butter

9 Forever After All

10 good 4 u

 

 

1:Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating

 上記項目で書いた通り、今月週間の1位を取り逃した“Levitating”ですが、「年間」の1位獲得レースでは最有力候補かと考えています。集計の初期からしっかりとポイントを稼いでいる上に、現在も異例のラジオ再浮上によってまだ伸びる余地があることから、集計期間の終盤までしっかりとポイントを稼ぎ続けそうと予想。年間1位予想としました。

 ちなみに週間の1位にならずも、年間1位を獲得したケースは過去にも3回あります。(1965年、2000年、2001年)

 

2 24kGoldn feat. iann dior – Mood

 集計序盤から上位を走り、最も安定してポイントを稼いできた曲。現在滞在は41週目で、順位ももうあまり高くないため、52週のタイミングでチャートを後にするでしょう。そうなると終盤の数週はポイントがゼロになってしまいますが、前半の貯金が大きく年間2位と考えました。(※チャート圏外の期間は年間チャートにおける集計ポイントがゼロになる)

 

3 The Weeknd – Blinding Lights

 26位以下ならば外れる、という高いハードルを乗り越え、チャートに残留し続ける“Blinding Lights”(クリスマス期を除く)。J. Coleのアルバム曲大量登場、という厳しい状況をも乗り越え、粘っています。次の週のOlivia Rodrigoのアルバム週も乗り切れば、また安全圏に戻るでしょうか。(仮にこの週で外れると、一気に予想順位が落ちる)

 比較的ポイントは安定しているため、一気にポイントが落ちることは考えづらいですが、次に何かしらのアルバム曲大量登場が来たら、危ないかもしれません。

 集計の終盤には、さすがに外れてしまいそう。その期間の分はマイナスになりますが、それまでの蓄積が大きく、かなり上位だと考え3位。

 

4 Olivia Rodrigo – drivers license

 年の序盤に登場+大ヒットで、一見すると年間1位の最有力候補にも思えますが、既にトップ10から外れ下降線に入っているため、このくらいと予想。アルバムの週で一旦持ち直すとは思いますが、集計の最後までは残留しないような気がします。

 年の序盤にはリリースされましたが、年間チャートの集計が11月半ばに始まる都合上、最初の数週でポイントが無い点も少し痛いです。

 

5 Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon – Peaches

 かかっているラジオの系統が広い上、ロングヒット向きの落ち着いた曲調を持っている点から、終盤までポイントが安定しそうと読んで5位に。リリース時期が少し遅いため、終盤までポイントを稼ぎ続けないと上位入りは厳しいですが、それを成し遂げそうな気はします。

 

6 The Weeknd (&Ariana Grande) – Save Your Tears

 序盤から地道にポイントを稼ぎ、Ariana Grandeリミックスで週間の1位を獲得。そこまで大規模なヒットにはならない気がしますが、長い期間ポイントを安定して稼いでおり、上位の有力候補でしょう。

 

7 Bruno Mars & Anderson. Paak (Silk Sonic) – Leave the Door Open

 リリース時期もヒットの仕方も“Peaches”と近いです。しかし、Bruno Marsの楽曲は一定の時期からラジオがガクッと急落することもあり、今後その現象が発生するとなると、年間トップ10入りが厳しくなる可能性も考えられます。それが無ければ、安定したラジオで年間上位は確実

 

8 BTS – Butter

 ストリーミングが制限され、週間チャートで他の曲に大差をつけて後半に大逆転、というシナリオが難しいという説明を上に記しましたが、その唯一の例外となりうるのはBTSです。セールスは現状、制限がかかっていないため、これを活用すれば天井知らずの成績を記録することが可能です。

 一般的なアーティストの場合、セールスにブーストがかかるのは、特定の週で1位を狙いに行く場合です。短い期間でしか数字が増えないため、年間のスケールで見るとセールスの影響力は限定的なのですが、BTSは長くに渡り「買い支える」ことが可能なファンダムが存在しているため、年間チャートのスケールで見ても、高い効果を発揮するポテンシャルがあるのです。(“Dynamite”はDLチャートで最長1位滞在の記録を持っている)

 この“Butter”はラジオやストリーミングでも好調なスタートを切っており、そこに他を圧倒するセールスが加われば、年間で見ても上位の成績を記録するかもしれません。現在のセールスの「比重の重さ」を考えると、年間1位も決して不可能ではありません。

 ただし、ビルボードは以前セールスに関するルールを仄めかしたことがあり、これが適用されてしまうと、セールスが生命線の一気に窮地に陥ります。

 これらを踏まえると、年間1位の可能性も、年間100位圏外の可能性もある先が読めない1曲です。どこまで気合を入れて「売るか」、またルールがどうなるかに左右されます。現状はルールが変更されていない以上、そのままだと仮置し、トップ10圏内予想に。

 ちなみに“Dynamite”は9月に初めてHot 100入りし、年間38位でした。この”Butter”がチャートに登場するのは6月です。

 

9 Luke Combs – Forever After All

 少し挑戦的な予想。リリース後、しばらくラジオでカットされていませんでしたが、ストリーミング(パンドラ等)で奮闘し、下位ながらもHot 100に残り地道にポイントを稼いでいました。そして最近ようやくシングルカットされ、ラジオを得て順位を上げてきた、という流れです。

 このままカントリー系ラジオの再生が減れば、すぐにHot 100から外れてしまいますが、この曲はポップ系ラジオへのクロスオーバーが期待できると思います。この曲はAriana Grandeの”positions”と同じ週のリリースながらも、同等の初週の成績を記録するという経歴の持ち主で、そのポテンシャルを考えるとポップ系ラジオでもヒットする素質は十分だと思います。

 仮にポップ系のクロスオーバーを成功させれば、現在の20位前後の順位を保ったまま、集計の終盤まで進むと思うので、その成績ならば年間トップ10入りも可能です。初週2位だったこと以外は、“The Bones”に近いチャートアクションです。(実現すれば)

 

10 Olivia Rodrigo – good 4 u

 “drivers license”をも上回る勢いでストリーミングを稼いでいる、今年後半の主役候補。勢いがどこまで続くかは分かりませんが、ストリーミングの現在の強さを見る限り、リリース時期の遅さを覆し、ギリギリで年間トップ10に届くと考えました。

 

 

(その他の候補)

? Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More

 リリース以降の安定感が高い曲。ストリーミングもラジオも優秀なため、このペースを持続できればトップ10に手が届くか?

 ただDoja Catは昨年、“Say So”がかなりの規模のヒットに見えて、トップ10を逃してしまった経歴があります。この時は持続性に課題があったので、今回もそれが続くと厳しいかも。ラジオがどこで落ち始めるかが注目ポイントか。

 

? Lil Nas X – MONTERO

 既に順位を落としているため、厳しいか?と思いきや、予想外にラジオを伸ばし始めたため、素質はあるかも。ただ、リリース時期が遅めであることを考えると基本的には厳しそう。

 

? The Kid LAROI (& Miley Cyrus) – WITHOUT YOU

 序盤から安定してポイントを稼いでいるため、もしかしたら枠ですが、既にラジオがマイナスに転じそうなので、さすがに厳しいか。オルタナティブ系でオンエアされるなど、ラジオの幅広さは魅力ですが。

 

 

6:TikTok関連

 

・Bella Poarch – Build A Bitch

 個人的には一大イベントだった、この曲のHot 100エントリー。有名TikTokerによるシングルで、他の同業者Dixie D’AmelioやAddison Raeが出来なかったHot 100入りを達成しました。この曲は本格的にヒット街道に乗っており、以降も安定してHot 100に残りそうです。

 TikTokerたちは昨年前半頃から知名度を獲得しているように感じたので、TikTokerによるシングルが今月Hot 100に初登場!というのは、個人的には意外と遅かったような気もします。

 

 この曲のヒットの要因は、とにかく耳に残りやすい点だと思います。私も少ない聴取回数でこの曲のメロディーが頭に流れ始めました。この点が他の同業者の曲よりも優れているように思いました。

 この曲のソングライトにはSub Urbanやsalem ileseなどが参加しています。前者は”Cradels”が、後者は”mad at disney”がTikTok内で流行したことがあります。

 ちなみに外部からソングライターを招くのは他の有名TikTokerの曲も同じで、Addison Raeの“Obsessed”には著名なBenny Blancoが参加しています。またDixie D’Amelioの”FUCKBOY”にも、Hot 100でトップ10の経歴があるOlivia O’Brienが参加しています。(gnashとの”i hate u, i love u”)

 

(その他のTikTok関連曲)

・Cico P – Tampa

 Hot 100の下位に登場。TikTok発ラップ、最新版です。

 

・Tion Wayne & Russ Millions feat.(7人のラッパー)- Body

 UKのラップながらも、Hot 100入りに接近中。昨年同様にTikTokでヒットし、Hot 100入りした“Don’t Rush”とは違い、ストリーミング主体のヒット。珍しいUKラッパーのHot 100入りが期待されましたが、ピークがJ. Cole / Olivia Rodrigoのアルバム曲大量登場週とかぶり、結局Hot 100に入らないかも?

 

・Starboi3 feat. Doja Cat – Dick

 Hot 100に接近中。TikTokヒットの多いDoja Catの最新ヒット。ストリーミングで一定のヒットになっていますが、プレイリストやラジオでのサポートはまだありません。やはり、「直球すぎる」曲名はプロモーションの足かせとなってしまうのでしょうか?

 

 

7:外れた曲(とその魅力)

 

 個人的な話をすると、Hot 100から外れるところが一番チャートで興味のある所かもしれません。古い曲が去り、新陳代謝が徐々に進んでいく点が、チャートのダイナミズムや循環、息吹を感じ、惹かれるんですよね。

 まあ、個人的な「フェチ」は置いといても、曲が最終的にどういう成績を残したのか?は重要な項目なので、曲が外れた瞬間を丁寧に観察することは大切だと考えています。(あまり触れられませんが)今月外れた曲のうち、一部を解説します。

 

(5/8に外れた曲)

 

× Chris Stapleton – Starting Over

 ストリーミングのピークは1月、ラジオは4月とピークが分かれていたため、滞在が34週まで伸びました。成績:(🗻25位 /⏰34週)

 

・Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cry Baby

 🗻28位、⏰20週で外れる。前シングルの“Body”と同様、TikTok起因でストリーミングの注目 → ラジオでも人気に、で一定の成績を残す流れ。両方とも20週で終わっているので、後半は少し失速しています。ただ、この短い滞在は、ラジオがストリーミングの動きに付いていっているということでもあります。

 

・All Time Low feat. Demi Lovato & blackbear – Monsters

 オルタナティブ系ラジオで大ヒットを遂げ、ポップ系にも進出。予想外の12年ぶりHot 100入りを成し遂げたAll Time Low。最終的に (🗻55位 /⏰17週)という成績でチャートを後に。

客演のblackbearは今年Machine Gun Kellyとの“my ex’s best friend”でもオルタナティブ系1位を獲得しています。

 ただしこの曲は、別の点でも予想外でした。この“Monsters”はラジオで大ヒットの一方で、SpotifyAppleで奮わず。代わりにこれらの媒体で人気だったのは、TikTokで注目された2008年の”Dear, Maria Count Me In”でした。ヒットの経路が複雑化した今っぽい現象で見ていて面白かったです。

 

(5/15に外れた曲)

 

× Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night

 🗻6位、⏰43週の成績で外れる。リリース直後の7月、そしてラジオが伸びてきた11月と、2回にわたりピークが来ていました。その結果、43週ととても長い滞在を達成。

 

× Taylor Swift – willow

 🗻1位、⏰20週で外れる。”cardigan”とは違い、滞在が20週まで届きました

 

× H.E.R. – Damage

 🗻44位、⏰20週で外れる。中下位ながらも20週まで滞在、というのはラジオが安定しているH.E.R.にありがちなチャートアクションです。

 

× Justin Bieber - Anyone

 🗻6位、⏰17週。トップ10でスタートするも、滞在20週未満で外れる

 

 

Ava Max – My Head & My Heart

 シングルカット直後からラジオでオンエアされ、期待されていた曲ですが、過去2シングルのようなヒットにはならず。成績: (🗻45位 /⏰12週)

 

 

(5/22)

× Chris Brown & Young Thug – Go Crazy

 52週の滞在の末、大往生を遂げる。複数系統のラジオで人気を得て、そのピーク時期が分散したことによりロングヒットとなりました。Chris Brownが参加したR&B系の曲がラジオでロングヒットというのは2019年の“No Guidance”と共通しており、新たなヒットのパターン誕生でしょうか

 

(5/29に外れた曲)

 この週はJ. Coleアルバム曲大量登場の効果もあり、10もの曲がリカレントによってチャートを後にしました。

 アルバム曲が大量登場するようになってからでは、2018の2/10(Migosアルバム効果)、7/14(Drakeアルバム効果)での8曲が最多だったようです。上位に多くの曲が一気に登場するのが、ストリーミング時代固有の現象ということを踏まえると、正式には確認できませんがリカレントで外れる曲が最も多かった週かもしれません。

 

× Billie Eilish – Therefore I Am

 (🗻2位 /⏰27週)と、「可もなく不可もなし」な成績でチャートを後に。実質リリース週に2位だった以外は、トップ10圏外でした。ただラジオでも人気を得て、滞在はそれなりに長くなりました。

 

× Bad Bunny & Jhay Cortez – DÁKITI

 🗻5位、⏰28週の成績で外れる。スペイン語ヴァースのみで構成された曲ですが、リズミック系3位など、ラジオでも奮闘していた点が印象的。

 かつてDrakeと組んだ“MÍA”(🗻5位、⏰27週)でも似たような成績を記録したBad Bunnyですが、当時はDrakeの効果でヒットしていた印象がありました。しかし現在は、彼が牽引する側に周り、英語圏リスナーもある程度巻き込みつつヒットを生み出すことに成功しています。

 

× Tate McRae – you broke me first

 🗻17位、⏰38週の成績で外れる。トップ10には届きませんでしたが、滞在はかなり長かったです。ストリーミング→ラジオとじわじわ移行してのヒットに。

 現在Regard、Troye Sivanと組んだ”You”が新たにポップ系ラジオ等でオンエアされています。

 

× Ariana Grande - positions

 通常の週ならばまだ外れなさそうな、先週37位の”positions”と同36位の”34+35”が外れてしまったAriana Grandeは少し運が悪かったですね。

 ちなみに”34+35”は、外れる一つ前の週にDoja CatとMegan Thee Stallionのクレジットが復活しました。リミックスの方が過半数を占めたと判断されたのでしょうか。

 

× SZA – Good Days

 ストリーミングで先行し、後からラジオでオンエアされるも、ピーク時の期待ほどはヒットせず……といった曲。ストリーミングでは最高2位でしたが、ラジオでは50位圏内に入っていません。

 ちなみに最終週は54位だったので、この曲に関しては大量登場とは関係の無いリカレントになります。成績:(🗻9位 /⏰20週)

 

 

その他:短評

 

・Dua Lipa – We’re Good (今月1週目にトップ40入り)

 “Levitating”と並行して運用されているシングルが、ラジオを伸ばし、滞在10週目でトップ40に到達。

 

・Glass Animals – Heat Waves (1週目にトップ40入り)

 14週目でトップ40入り。ラジオのほか、Spotifyでも上位

 

 

・Ariana Grande – pov (1週目にチャート再登場)

 シングルカットにより、ラジオで浮上しHot 100に再登場。アルバムのリリース直後とは違い、現在ストリーミングでは現在ほとんど圏外です。

 一見正解そうに見えて不正解なシングルカットかもしれません。ストリーミングではすでに一通りシングルとしての役目を果たしているので、今頃シングルカットです!と言われても、今更!?となって注目されづらいかもしれません。

 “Watermelon Sugar”は似たような運用方でヒットしましたが、それは当時リリースが少なかったことも関係しているのかもしれません。

 

・Gera MX & Christian Nodal – Botella Tras Botella (2週目に60位)

 メキシコ出身のラッパーとシンガーのタッグ。ともに初のHot 100。とくにYouTubeで上位

 ビルボードが運営するTwitterBillboard Chartsではこの曲がregional Mexicanというジャンルで初のHot 100入りとしています。簡単に訳すと「メキシコ式カントリー」となると思います

 

 

・Trippie Redd & Playboi Carti – Miss the Rage (今月4週目に11位)

 J. Cole新曲と並んでストリーミングで注目を集めた1曲。Trippie Reddにとってはキャリアハイの順位

 両者ともTikTokでの人気があるアーティストで、この曲もイントロがTikTokで注目されたことがヒットの要因の一つとされています。

 Trippie Reddはアルバムをリリースすれば、1位候補になる人気アーティストですが、意外とシングルヒットは少なく、自身の曲で滞在が最も長いのは“Dark Night Dummo”と”Death”の7週です。客演だとXXXTENTACIONの”Fuck Love”で21週まで到達したことがあります。

 

Coldplay – Higher Power (4週目に53位)

 Coldplay新曲。前アルバムの先行曲ではHot 100入りを逃しましたが、今回の曲ではそれを達成

 

・Don Toliver – What You Need (4週目に82位)

・Internet Money, Don Toliver & Lil Uzi Vert feat. Gunna – His & Hers (5週目に63位)

 昨年躍進したDon Toliverが2つの曲をリリース。後者は昨年のヒット“Lemonade”からNAVを抜いてLil Uzi Vertを加えた布陣

 

 

・Migos – Straightenin (5週目に38位)

 昨年のシングルではトップ40入り出来なかったMigosがそのリベンジを達成。昨年はそのように苦戦続きだったため、少し意外なチャートアクションでした。ただ、今後この調子が続くかは不明。

 

・Drake – What’s Next (5週目に62位)

 早々と“Wants And Needs”にシングルをバトンタッチしたこともあり、こちらの”What’s Next”は急落中。11週目で62位と、滞在が20週まで行くか怪しいです。

 

 

今月のデータ

 

主な外れた曲

5/1

16 DMX – Ruff Ryders’ Anthem (🗻16位 /⏰5週)

40 DMX – Party Up (Up In Here)  (🗻27位 /⏰22週)

46 DMX – X Gon’ Give It To Ya (🗻46位 /⏰17週)

52 Taylor Swift – Love Story (Taylor’s Version)  (🗻11位 /⏰2週)

100 Lil Baby feat. EST Gee – Real As It Gets (🗻34位 /⏰6週)

 

5/8

45 Chris Stapleton – Starting Over (🗻25位 /⏰34週) 🔃

55 Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cry Baby (🗻28位 /⏰20週) 🔃

85 Dustin Lynch – Mommas’s House (🗻59位 /⏰15週)

90 Taylor Swift – Mr. Perfectly Fine (Taylor’s Version) (From The Vault)  (🗻30位 /⏰3週)

95 VEDO – You Got It (🗻75位 /⏰16週)

98 All Time Low feat. Demi Lovato & blackbear - Monsters (🗻55位 /⏰17週)

 

5/15

45 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night (🗻6位 /⏰43)🔃

61 Taylor Swift - willow (🗻1 /⏰20週)🔃

62 H.E.R. - Damage (🗻44位 /⏰20週)🔃

87 Justin Bieber - Anyone (🗻6位 /⏰17週)

88 Ava Max – My Head & My Heart (🗻45位 /⏰12週)

92 DaBaby - Masterpiece (🗻55位 /⏰14週)

93 Florida Georgia Line – Long Live (🗻45位 /⏰17週)

98 Morgan Wallen – Wasted On You (🗻9位 /⏰16週)

 

5/22

28 Chris Brown & Young Thug – Go Crazy (🗻3位 /⏰52)🔃

30 DJ Khaled feat. Nas, JAY-Z & James Fauntleroy (⏰1週)

78 Tenille Arts – Somebody Like That (🗻50位 /⏰16週)

 

5/29

36 Ariana Grande feat. Doja Cat & Megan Thee Stallion – 34+35 (🗻2位 /⏰28週)🔃

37 Ariana Grande - positions (🗻1 /⏰29週)🔃

39 Tate McRae – you broke me first (🗻17位 /⏰38週)🔃

43 Bad Bunny & Jhay Cortez - DÁKITI (🗻5位 /⏰28週)🔃

44 Yung Bleu feat. Drake – You’re Mines Still (🗻18位 /⏰23週)🔃

45 Billie Eilish – Therefore I Am (🗻2位 /⏰27週)🔃

46 Thomas Rhett – What’s Your Country Song (🗻29位 /⏰21週)🔃

54 SZA – Good Days (🗻9位 /⏰20週)🔃

62 Parmalee & Blanco Brown – Just The Way (🗻31位 /⏰20週)🔃

77 Luke Bryan – Down To One (🗻36位 /⏰20週)🔃

97 Rod Wave feat. Polo G - Richer (🗻22位 /⏰7週)

 

アルバムチャートのキリ番

5/1

1周年:Whitney Houston – I Will Always Love You: The Best Of Whitney Houston (184位)

200週目:Imagine Dragons – Evolve (141位)

200週目:Blake Shelton – Reloaded: 20 #1 Hits (185位)

300週目:twenty one pilots – Blurryface (143位)

 

5/8

1周年:Sam Hunt – SOUTHSIDE (99位)

1周年:Drake – Dark Lane Demo Tapes (120位)

250週目:The Beach Boys – Sounds Of Summer: The Very Best Of The Beach Boys (144位)

 

5/15

1周年:Lil Durk – Just Cause Y’all Wanted 2 (92位)

 

5/22

1周年:Polo G – The GOAT (22位)

1周年:Future – High Off Life (122位)

100週目:Polo G – Die A Legend (102位)

150週目:Drake – Scorpion (43位)

 

5/29

1周年:Gunna – WUNNA (115位)

 

Hot 100 デビュー

Young Thug feat. Lil Uzi Vert & Yung Kayo – Proud Of You (🗻59位、⏰1週)

Young Thug & Gunna feat. Lil Baby & YTB Trench – Paid The Fine (🗻77位、⏰1週)

Young Thug & Gunna feat. Yak Gotti & Lil Duke – Slatty (🗻99位、⏰1週)

Ryan Hurd & Maren Morris – Chasing After You (🗻87位、⏰4週、継続中)

Gera Mx & Christian Nodal – Botella Tras Botella (🗻60位、⏰3週)

Cico P – Tampa (🗻91位、⏰2週)

Bella Poarch – Build a Bitch (🗻58位、⏰1週、継続中)

Lainey Wilson – Things A Man Oughta Know (🗻94位、⏰1週、継続中)

 

 

・各指標1位

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・Rolling Stone Chartsのトップ10

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(最終週での、圧巻のJ. Coleの強さ)

 

Spotifyチャート(US)のトップ10

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※Rolling Stone Charts、Spotifyチャートの日付はHot 100準拠

 

・リンク / 参照

 

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music

YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts

・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week (←今月更新が止まっている期間があった)

Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist

Apple Music - Today's Hits:Today’s Hits on Apple Music 

・Genius(曲の情報等):Genius | Song Lyrics & Knowledge

 

 

(過去の月へのリンク)

 

4月号:Billboard(US) 動向 4月号 【週替りの1位:Justin Bieber→Lil Nas X→Silk Sonic→Polo G】 - チャート・マニア・ラボ

1 毎週交代!シングル首位
2 トップ10
3 新作が増加、アルバムチャート
4 ラジオ動向
5 BTSの「バトンタッチ」?

 

3月号:Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】 - チャート・マニア・ラボ

1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補
2 動かないアルバムチャート
3 グラミーはどうだった?
4 トップ10周り
5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok 関係
6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト
7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち

 

2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ

1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B

 

1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ

1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後

*1:ちなみにこの流行で該当する箇所がDua Lipaパートなので、DaBabyリミックスの音源でもオリジナル音源でも可。この影響で、Spotify Globalチャートなど、オリジナルの音源が浮上していた媒体もあります

*2:週や月まではカウントせず、2021年では一律2016年以前リリースの曲、2020年では2015年以前、として集計しています

Billboard(US) 動向 4月号 【週替りの1位:Justin Bieber→Lil Nas X→Silk Sonic→Polo G】

 

f:id:djk2:20210427053407p:plain こんばんは!今月はHot 100もBillboard 200も新規の1位が続々と生まれ、彩り豊かな月となりました!

 

 

 

1 毎週交代!シングル首位

 

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 こうして月を通して、毎週Hot 100首位が交代するのは昨年12月以来です。昨年は12月のほか、5月も毎週首位が交代していました。

 

 

・Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon – Peaches

 Justin Bieberの新作がアルバム単位でストリーミング上で人気を獲得。その中で最も注目を集めた“Peaches”がHot 100でも首位を獲得しました。Bieberは7曲目、客演陣は初。ほかラジオやセールス面でも好成績。

 他にもシングル候補が多く、この曲が注目されたのは意外と感じるかもしれませんが、リリース時から有力プレイリストにも入っており、最初からシングル想定の曲だったようです。Apple MusicのToday’s Hitsでは最初からプレイリストの先頭に配置されていました。SpotifyのToday’s Top Hitsでも、彼の曲の中では3番手の配置でしたが、リスト入りはしっかりとしていました(一番手はKhalidとの“As I Am”)

 そのためか、ストリーミング人気と一致したラジオでのシングルカットが即座に行えたのだと思います。

 

 そのアルバムは15.4万の売上で1位に。うち11.9万枚(相当)はストリーミングから来ています。既にリカレントで外れていた“Holy”と”Lonely”、そしてInterlude以外の曲がすべてHot 100入りしました。

 ”Purpose”の時は1つのボートラ除く全曲が、“Changes”の時は6曲がHot 100入りしていました。前回の“Changes”のHot 100エントリー数から、彼はキャリアの曲がり角にいるのかな?という気もしましたが、今回のアルバムでしっかりと巻き返すことに成功した印象です。

 今回のアルバムに客演で参加したBEAM、Dominic Fike、Burna Boyは初のHot 100入りを記録。

 Dominic FikeはUS出身のインディーポップ系シンガーで、2019年に”3 Nights”がヒット。UKとオーストラリアで3位など、US以外では注目を集めていた曲なのですが、Hot 100には登場しませんでした。

 Burna Boyはナイジェリア出身のラッパー。近年は有名アーティストとのコラボが増加中で、UKでは3曲のトップ10(うち1曲は首位)の実績があります。

 BEAMはこの2人と比べるとまだ実績が少ないですが、Justin Bieberが今月半ばにリリースしたEP、“Freedom”にも参加しています。

 

 2週目にはデラックス版を追加でリリース。Lil Uzi Vert、DaBabyなど豪華ゲストが参加していましたが、あまり注目を集めず。そこからの新規Hot 100エントリーは0曲で、アルバムチャートでもRod Waveに1位の座を譲りました。しかし特に新規要素は無かった3週目に1位に復帰しています。

 

 

・Lil Nas X – MONTERO

 次に1位を獲得したのはLil Nas X。リリース初日の時点でもトップ10クラスの成績で、好調な滑り出しを切ったこの曲ですが、週の後半にさらに注目度が向上。DLやストリーミングでの上昇が見られ、見事1位の座を射止めました。

 YouTube(公式ビデオ)ではこの週に2800万もの再生数を記録。2位が670万、3位が638万、ということを念頭に入れると独走ぶりが分かります。*1ただし“Old Town Road”の時と比べると、かなりYouTube関連の数字のレートがHot 100では下げられているので、1位獲得への寄与度はそこまで高くないと思われます。しかし、それだけ話題を呼んだということを証明していると思います。

 ほかSpotifyでも週間1位に。(USでは初週から、グローバルでは2週目から)Apple Musicでは週の後半にトップ10に入るくらいの成績でした。DLもBTSに次ぐ2位と好調。一方ラジオはほぼ無し。

 この曲は事前からある程度の認知度があったことで、リリース直後のバズにつながったと言われています。実際私もリリース前から、曲の一部や曲名(”MONTERO”ではなく“Call Me By Your Name”のほう)をちらほら耳にしていました。

 

 Lil Nas Xは登場以降、曲をプロモーションする巧みさが際立っています。Complexは” Lil Nas X Is Even Better at the Internet Than We Thought”というタイトルの記事で、彼のことを称賛しつつ、この曲のヒットの経緯を説明しています。この記事で印象的だった部分を引用して紹介します。

 

「Lil Nas Xは、2021年現在のファンが“ただ“音楽を聞きたいわけではないということを誰よりも理解している。ファンは関与し、解釈し、そして自分なりの何かを想像したいと考えている」

 

「もちろん、ソーシャルメディア重視のアーティストにも欠点はあります。誰もが安直なギミックが音楽それ自体を上回ることを望んでおらず、私たちは6ix9ineのようなインターネットトロールという“ダークサイド”も見てきました。しかしながら、Lil Nas Xの”Montero”は重要な政治的メッセージを伝えながら、ビデオの芸術性をマーケティングに落とし込むことが出来ているので、魅力的なのです」

 

 私はよくブログで「曲をヒットさせるには、アーティスト自体への期待度/注目度/評価が重要」との旨の記述をよくしますが、彼はそれをよく満たしていると考えています。それだけに、前シングル“HOLIDAY”の成績=ピーク37位/滞在12週は、少し不本意な数字に感じていました。(ピークがクリスマスと被っているため、時期が違えばもう少し良い順位を記録していたとは思いますが)

 それだけに、今回のヒットは私の考えていた通りの評価がチャートに表れていて嬉しいですね。正直1位まで獲得するとは思っていませんでしたが!(トップ10くらいかな?と考えていました)

 

おまけ:ファンによる「Lil Nas Xを構成する要素」の動画(を紹介するLil Nas X)

→ https://vt.tiktok.com/ZSJSRn76A/

曰く、”Strange”、”Good Representation of LGBTQ Community”、”Gay”の要素が強いらしいです

 

 

・Bruno Mars & Anderson. Paak – Leave the Door Open

 この週は目立った新リリースが無かったため、既に1位を獲得した曲を中心とした首位レースとも考えられていました。しかしその週をうまく活用し、1位を獲得したのは”Leave the Door Open”でした。この週にCDをリリースするなどし、セールス戦略を展開。その結果セールスが138%増加となり、それが効いて1位を獲得することに成功しました。もちろんセールスだけでなく、リリースから継続して高いラジオ/ストリーミングの貢献度も大きいです。

 昨年からセールス戦略を打ち出して1位を獲得するパターンがいくつか見られますが、その中でも初週勝負型と、元来のヒットに上乗せ型の2パターンがあると感じます。今回の“Leave the Door Open”は上乗せ型で、昨年だと”Say So”、”Savage”、”Watermelon Sugar”、”Savage Love”がこれです。

 

 

Polo G – RAPSTAR

 リリース前から大きく期待されるような曲は無かった4月の4週目ですが、Polo Gの“RAPSTAR”が想像以上の人気を得て、Hot 100首位デビューに成功しました。5360万再生は、”drivers license”の1週目、2週目に次いで今年3番目に高い数字でした。初週からAppleSpotifyYouTubeで1位に立っています。同様に初週からストリーミングで高い人気を得たLil Nas Xの”MONTERO”と比較すると、Apple Music人気に優れています。

 彼はキャリア初の1位獲得に。これまではトップ10も、客演を務めたJuice WRLDのアルバム曲(“Hate the Other Side”)のみでした。自身の曲での最高位は”Pop Out”での11位。2019年に彼がブレイクしたきっかけとなったと曲です。

 

 彼は昨年のアルバムの時点でも飛躍の兆しを見せていました。Futureと被ったことによりアルバムチャートでは2位だったものの、ファン層がかぶるであろう競合がいながらも、9曲がHot 100入りと好成績を残していました。

 そのアルバムは現在も人気が持続しており、今月もアルバムチャート28→30→21位と推移。さらに次の週は、新シングルの影響が出て19位まで浮上しています。これらはリリース週に1位を争ったFuture(今月80位程度)のアルバムよりも高い順位です。

 また、その昨年のアルバムに収録された“Martin & Gina”はこの曲に引っ張られる形でストリーミングで再浮上中。まだ滞在が19週なので、Hot 100再登場の可能性も??

 

 

2 トップ10

 

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 続いてその他のトップ10について見ていきましょう。

 

・Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating

 グラミーの週に浮上して以降、再びトップ10に定着。ラジオのピークは過ぎましたが、代わりにストリーミングが好調を維持しており、これが巻き返しの要因となっているようです。

 先月の記事で言及するのを忘れてしまったのですが、グラミーの週にはリリースから50週目にしてアルバムチャートのピークを更新していました。(従来4位→3位) ただし売上自体はリリース週の方が高かったです。

 

Olivia Rodrigo – deja vu

 大ヒットの次シングルもトップ10から登場と、上々の滑り出しに。新規アーティストが大ヒットを飛ばした場合、その次が出ずに苦労することも多いですが、そうはならず新曲もこの順位で登場したということは、それだけ彼女がアーティストとして期待されているということなのでしょうか。来月リリースのアルバムがどこまで伸びるか、要注目です。(実際に反映されるのは6月付のチャート)

 

・Masked Wolf – Astronaut In The Ocean

 オーストラリアのラッパーによる曲がトップ10まで到達。ラジオ、DL、ストリーミングで満遍なく人気。Amazon MusicやPandoraでは1位に到達しています。

 ダンサブルなラップ、ヨーロッパ圏で先にヒット、TikTokがヒットの一因……など、昨年の“Roses”を彷彿とさせる部分が多いです。ヒットの規模もそれと同じくらいになるのではないでしょうか。

 

・Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More

 Doja CatとSZAのコラボレーションが注目を集め、トップ10スタートを切りました。Doja Catは3曲目、SZAは4曲目のトップ10で、ブラックパンサーのサントラの”All The Stars”と並んでキャリアハイの順位です。

 ラジオ / ストリーミングの両方が継続的な好成績を収めているため、今後も期待が持てそうな1曲。

 

・The Weeknd – Blinding Lights

 4月ラストの週にトップ10を後に。それまでのトップ10滞在は57週にもわたります。数々のロングヒット記録を塗り替えたこの曲を象徴する記録の一つに。2番目の記録が39週、3番目の記録が33週と考えると、いかに破格の数字かが分かります。

 

57週 The Weeknd – Blinding Lights (2020-21)
39週 Post Malone – Circles (2019-20)
33週 Ed Sheeran – Shape of You (2017)
33週 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You (2018-19)
33週 Post Malone & Swae Lee – Sunflower (2018-19)

(このように、ストリーミング時代によく更新される記録です)

 

 次に目指すのはトータルのHot 100滞在週数でしょうか。2015年末から、53週目以降は26位に落ちると外れるというルールが実行されたことから、この記録を達成する難易度が上昇しましたが、どこまで記録を伸ばせるでしょうか。

 

87週 Imagine Dragons – Radioactive (2012-14)
79週 Awolnation – Sail (2011-12 / 13-14)
76週 Jason Mraz – I’m Yours (2008-09)
71週 The Weeknd – Blinding Lights (2019-)

 

 

3 新作が増加、アルバムチャート

 

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・Rod Wave - SoulFly

 Rod Waveが初のアルバム1位を獲得。売上は13万で、14の収録曲がHot 100入り。リリース週に8曲がHot 100入りした前作以上に飛躍を遂げました。ただし現状Apple / Spotifyでの人気に差があり、クロスオーバーという点ではまだまだかもしれません。もちろんアルバム1位なので、コアなラップリスナーには人気ということですが。

 

Demi Lovato - Dancing With the Devil: The Art of Starting Over

 3週目のJustin Bieberに1000枚差の僅差で破れ、アルバム2位に。売上7.4万のうち、セールスが3.8万、ストリーミングが3.3万(残りシングルDL)と均等に数字を獲得。セールスに関しては、CDの販売も行っていたようです。

 

Lil Tjay - Destined 2 Win

 2月に6LACKとの“Calling My Phone”がロケットスタートを切ったLil Tjay。その動向から、アルバムもかなりヒットするかな?とも思っていましたが、アルバムチャート5位(売上6.2万)とそこそこの成績に留まりました。シングルは際立っていましたが、アルバム曲がストリーミングのトップ10に多数登場、とはならなかったです。

 

Taylor Swift - Fearless (Taylor's Version)

 “Fearless”の再録バージョンが29.1万の売上でアルバム1位に。キャリア9枚目の1位。(デビュー作だけアルバム1位ではない) 特殊な形態でのリリースでしたが、他に大差をつけてのアルバム1位に。

 29.1万の売上のうち、17.9万をセールスが占めていますが、ストリーミングでも人気で8曲がHot 100入り。これでHot 100エントリー数を136まで伸ばし、女性アーティスト最多Hot 100エントリー数の座を維持しています。

 

231曲 Drake
207曲 Glee Cast
170曲 Lil Wayne
136曲 Taylor Swift
122曲 Future
114曲 Nicki Minaj

 

 

4 ラジオ動向

 

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RMS = Mainstream R&B / Hip-Hop

 

 各ラジオ系統でどの曲が1位になっているか?ということについて取り上げていきます。上記の5つが規模の大きいメジャーな系統です。大まかなイメージとしては、ポップ>カントリー>アダルトポップ=リズミック=RMSの順番に大きいです。Radio Songsとはラジオ全体での再生数を測るチャートです。このラジオ動向をもとに、いくつかの曲について見ていきましょう。

 

・drivers license (Olivia Rodrigo)

 4/17付のランキングまで5週間ラジオ再生数が1位に。ポップ系とアダルトポップ系で1位を獲得しています。現在は”deja vu”という有力な次シングルが登場したため、ラジオ・ストリーミングともにそちらへシフトしており、それに伴いdriversの方は徐々に順位を落としそうです。

 

・Leave the Door Open (Bruno Mars & Anderson. Paak)

 ポップ、アダルトポップ、リズミック、RMSと広い系統でオンエアされていることもあり、4/24付のランキングでラジオ1位を獲得。Bruno Marsにとっては9曲目のラジオ1位で、これはHot 100首位曲数(8つ)よりも多い数字です。(ラジオ1位曲のうち、”Finesse”だけHot 100首位を獲得できなかった)

 前述のように、このラジオでの好調、ストリーミングとセールス戦略を合わせてHot 100首位を獲得することに成功しました。まだラジオでの伸びしろがあるため、しばらくはHot 100上位に残るでしょう。競合が少ない週が来れば、また1位獲得のチャンスもあるかも?

 

・Therefore I Am (Billie Eilish)

 “bad guy”に次いで2曲目のポップ系首位。ただしここをピークに、ラジオ再生数は落ち始めており、Hot 100での浮上はもう望めなさそうです。長い間11位~20位のゾーンに留まっていましたが、結局トップ10に入っていたのはリリース直後の週だけでした。(ただ上位には長く残っているので、総合ヒット度はそれなりに高い)

 

・Save Your Tears (The Weeknd)

 ポップ系で1位を獲得。ほかアダルトポップ系でも浮上中。このラジオが高まってきたタイミングでAriana Grandeリミックスがリリースされる予定。額面通りにヒットすれば、元々の高いヒット度も合わさって、Hot 100首位が獲得できそうです。

 ちなみにリズミック系ではすでにピークを終えて、下降中です。

 

・The Good Ones (Gabby Barrett)

 昨年“I Hope”が特大ロングヒットになったGabby Barrett。その時のようなポップ系への飛び火はまだしていませんが、カントリー系ラジオではしっかり1位を獲得(2週) AppleSpotify等では存在感がやはり薄めですが、AmazonやPandora等のストリーミング、ほかDLが高いこともあって、Hot 100では19位まで到達しました。

 

・willow (Taylor Swift)

 “folklore”からはラジオ1位が出ませんでしたが、”evermore”からは”willow”がアダルトポップ系1位を獲得。ただポップ系ではオンエアが終わりに近づいており、今後の浮上は望めないでしょう。

 

・Best Friend (Saweetie feat. Doja Cat)

 リズミック系で1位を獲得。Saweetieはこの系統を得意としており、”My Type”、”Back to the Streets”に次いで3曲目の1位。一方、彼女はRMSで1位を獲得したことがありません。客演のDoja Catも3曲目のRMS1位(”34+35”を含むならば*2、もう一つは“Say So”)

 この曲はHot 100で17位まで到達し、”Tap In”で記録したキャリアハイ(20位)を更新しています。

 

・You're Mines Still (Yung Bleu feat. Drake)

 客演Drakeのアシストもあって、ラジオ人気を得たYung Bleuの曲。先月のRMSに続き、今月リズミック系で1位を獲得。

 

・What’s Next (Drake)

 順当にラジオを伸ばし、まずはリズミック系で首位獲得。ただし“Wants And Needs”が既にシングルカットされる動きがあり、早いタイミングでシングルが交代するかもしれません。

 

・On Me (Lil Baby)

 RMS系統を得意とするLil Baby。この系統5曲目の1位。ちなみにリズミックの方では1位は3曲。自身のシングルの多さに加え、客演の活躍もあり、約3年間で29曲のシングルがRMSチャートにエントリーしています。

 

・What You Know Bout Love (Pop Smoke)

 1月にリズミック系で1位を獲得した後、今月はRMS系でも1位を獲得。基本的に他系統に飛び火しないカントリーを除くと、主要5系統の中で最も珍しい組み合わせはRMSとアダルトポップなのですが、この曲はそれを達成しています。(アダルトポップ系で38位)

 

・Cry Baby (Megan Thee Stallion feat. DaBaby)

 ラジオを順調に伸ばし、“Body”に次いで2連続でこの系統で1位に。Megan Thee Stallionにとっては3曲目、DaBabyにとっては6曲目のこの系統1位。

 ちなみに今年に入ってから、11曲がRMSで1位に。これは上記5系統の中では、カントリーと並んで最多タイ。元々はここまで入れ替わりが激しい系統ではありませんが、ここ数ヶ月限定の現象なのか、それともこのような方針へ今後変化していくのでしょうか?

 ただしこのRMSとAdult R&Bという系統が合算されたチャート、Hot R&B / Hip-Hop Airplayでは今月逆の現象が起きました。Chris BrownとYoung Thugの“Go Crazy”が29週で1位を記録し、この系統の最長記録を更新。ちなみに従来の記録もChris Brown(とDrake)による”No Guidance”(27週)でした。

 

 

5 BTSの「バトンタッチ」?

 

 BTSの日本語シングル、”Film Out”が81位でHot 100入り。日本市場向けの曲ではありますが、ファンの熱心さがセールスに現れ、Hot 100にも入ったということに。BTSによる日本語シングルのエントリーは今回が初です。ソングライトにはBTSのメンバーのほか、日本のバンドBack Numberのメンバーも参加しています。

 

 日本語のシングルはHot 100で珍しいです。これまで日本人によるHot 100エントリーは過去に何回かありましたが、英語詞の曲が多く、日本語詞がメインという曲はあまりありませんでした。今回の“Film Out”は坂本九の2つの曲に次いで、おそらく3曲目?の日本語シングルHot 100エントリーかと思います。

 

以下の2曲は日本語も英語もある曲です

2018年 Sofi Tukker feat. Nervo, The Knocks & 植野有砂 – Best Friend
2019年 宇多田ヒカル & Skrillex - Face My Fears

 

 “Best Friend”は、当の植野有砂は日本語で歌っているものの、その他のメンバーは英語です。

 “Face My Fears”は解釈が難しいです。iTunesのアルバムチャートで上位だった作品が、Hot 100に登場するという、不思議な経緯でのヒットだったので、日本語版も英語版も両方ヒットに寄与したとも考えられますが、英語版の効果が大きいと考えるのが自然な流れでしょうか。(ストリーミング等でも目立った数字が無く、入るならアルバムチャートと思っていたことも含め、かなり意外なHot 100入りだった記憶 )

 

 この”Film Out”が登場した週には同時に“Dynamite”がHot 100を後にしました。ピーク1位、滞在32週という成績。22週目には40位台に落ちて、その時点でラジオのポイントが大きく減少していたので、そろそろ外れるかな?と思っていたのですが、そこから粘って滞在を32まで伸ばしていました。

 Digital Songsで1位に返り咲くなど、DLが伸びたので、ファンたちが滞在期間を伸ばすためにセールスで支えたのではないか、と推測しています。(滞在の終盤は、おそらくDL以外のポイントは低めだった)iTunesどではさほど上位に入っていなかったので、他の媒体でセールスを伸ばしたのだと考えられます。

 そのような形でHot 100に粘りの残留を果たしてきましたが、4/10付のチャートで、Digital Songs最長1位(18週)、またK-Pop史上最長のHot 100滞在(”Gangnam Style”を上回る)と複数の記録を達成し、次の週にチャートを後にしました。この週ちょうど“Film Out”がリリースされていたので、まさにバトンタッチといった感覚でしょうか。

 

 

6 その他の短評

 

Maroon 5 & Megan Thee Stallion – Beautiful Mistakes

 登場してからどんどん順位を伸ばしていく、というメジャーなリリースにしては珍しいチャートアクションを見せる1曲。メジャーなリリースの場合、初週にまず大きく注目されるので、高い順位に登場 → 一旦順位を落とす → そこから伸るか反るか という過程で順位が動いていくことが多いですが、この曲は初週の注目度が鈍かったです。初週の順位が悪い場合、短命で終わってしまうケースが多いのですが、この曲はその方向に行かず、順調にヒット。ラジオだけでなくストリーミングの数字も改善傾向に。

 この曲はポップ&アダルトポップ系でのオンエアがメインで、Megan Thee Stallionの元のファン層とはあまり被っていません。

 

・Megan Thee Stallion – Body

 ピークがクリスマスと被った関係でトップ10入りを逃した1曲。リリース直後にTikTokで人気を得て、ストリーミングが急上昇。そのタイミングで、仮にクリスマス曲抜きならばトップ10、という順位まで到達。ただしクリスマスが終わる前にストリーミングが落ち始め、後にラジオでのサポートも得ましたが、タイミングがうまく噛み合わずにトップ10にはどの期間でも到達しませんでした。滞在の最後の方は下位で過ごし、20週の滞在でチャートを後に。

 

・Coi Leray & Pooh Shiesty – Big Purr

 2シングル連続でTikTok人気を得たCoi Leray。AppleYouTubeで人気を集めています。下位ながらも、Spotifyのランキングにも登場しています。(客演以外では初)

 

・Erica Banks – Buss It

 Nellyの“Hot In Herre”使いの、キャッチーな1曲。TikTokで人気を得てHot 100に登場したのち、Travis Scottリミックスをリリースして本格的な飛躍を狙いましたが、あまり注目されず。ラジオではそれなりに人気でしたが、ピーク49位、滞在13週の成績でHot 100から外れました。

 

・24kGoldn feat. iann dior – Mood

 合計で31週もトップ10に残るなど、特大ヒットとなっている”Mood”。その24kGoldnがデビュー作をリリースしましたが、アルバムチャートでは22位。この曲以外はHot 100に入らないなど、あまり存在感を発揮できませんでした。

 

DMX – Ruff Ryders’ Anthem

 訃報のあったラッパーの過去曲が注目を集め、3曲(16位、40位、46位)がHot 100入り。またベスト盤がアルバムチャート2位に浮上しています。彼の従来のキャリアハイは1998年に記録された17位だったため、このタイミングでそれを更新したということになります。

 

・Duncan Laurence – Arcade

 おそらくTikTokが起因で、2019年のシングルながらも、今年に入ってからストリーミングで注目を集めた曲。この「ストリーミングで再発掘」タイプのヒットにしては珍しく、時間差なくラジオでのオンエアも得ています。FLETCHERを迎えたバージョンもラジオではかかっているようです。

 この曲は2019年当初もSpotifyのToday’s Top Hits入りを果たしましたが、注目は長く続かなかったのでおよそ3週で外されていました。ただ今年の再注目を受けて、再びリストに復帰しています。

 彼はオランダ出身のシンガーで、2019年のユーロビジョンの優勝者。ユーロビジョンとは主にヨーロッパ圏を対象とする歌のコンテストです。このユーロビジョンの曲がHot 100入りを果たすのは珍しく、ChartData曰く1996年以来のことだそうです。(Gina Gの”Ooh Aah… Just a Little Bit”、ピーク12位)

 

・Kevin Gates – Big Gangsta

 少し前にTikTokで頭角を現し、以降ストリーミングを継続的に伸ばしてHot 100入り。AppleSpotifyYouTubeのいずれでも人気。元は2019年にリリースされた曲でした。

 

・CJ – Whoopty

 2月にトップ10に到達した曲でしたが、そこからストリーミングもラジオも急落下して、今月Hot 100から外れました。ピークは10位で滞在は22週。このような上昇してトップ10に到達するタイプの曲(リリース当初からトップ10ではない、ということ)がここまで一気に落ちるのは珍しい気がします。ラジオだけでなく、ストリーミングまでも一気に勢力を失うのが少し興味深いです。

 

・Doja Cat – Streets

 自身の新シングルの存在によって、こちらのラジオでのオンエアは終了してしまう見込み。リズミック系で31位に到達したのみと、ストリーミングに似合わないラジオ実績でした。ビデオも人気を得るなど、ストリーミングでは好成績だったので、ラジオがもう少し多ければトップ10にも届いたかもしれませんね

 

・Ritt Momney – Put Your Records On

 TikTokで発掘されてからのストリーミングでの人気、そこから少し遅れてのラジオ上昇と2段階でピークを迎えるタイプの曲。そのラジオの再生が落ちてきたため、Hot 100を後に。ピークは30位、滞在は25週という結果に。ピークが割れているため、ピーク順位の割に滞在が長めになっています。

 

・VEDO – You Got It

 ピーク75位、滞在15週で外れる。Erica Banksの”Buss It”と似たタイプのヒット。TikTokで人気を得てから、ラジオでもそれなりにオンエアを得たため、下位中心の滞在ながらもそれなりに長い滞在になりました。

 

 

今月のデータ

 

主に外れた曲

 

4/3

50 BRS Kash – Throat Baby (Go Baby)  (🗻24位 /⏰22週)🔃

96 Lil Durk & King Von – Still Trappin’  (🗻53位 /⏰12週)

97 Lil Durk feat. Lil Baby – Finesse Out The Gang Way (🗻39位 /⏰7週)

 

4/10

47 Luke Combs – Better Together (🗻15位 /⏰25週)🔃

49 Niko Moon – Good Time (🗻20位 /⏰25週)🔃

96 Morgan Wallen – Sand In My Boots (🗻32位 /⏰11週)

99 Future & Lil Uzi Vert – Drankin N Smokin (🗻31位 /⏰10週)

100 Darius Rucker – Beer And Sunshine (🗻42位 /⏰15週)

 

4/17

30 BTS - Dynamite (🗻1 /⏰32週)🔃

 

4/24

43 Ritt Momney – Put Your Records On (🗻30位 /⏰25週)🔃

48 CJ – Whoopty (🗻10位 /⏰22週) 🔃

70 Drake feat. Rick Ross – Lemon Pepper Freestyle (🗻3位 /⏰5週)

84 Megan Thee Stallion - Body (🗻12位 /⏰20週)🔃

87 VEDO – You Got It (🗻75位 /⏰15週)

94 Future & Lil Uzi Vert – Drankin N Smokin (🗻31位 /⏰11週)

98 Black Eyed Peas & Shakira – GIRL LIKE ME (🗻67位 /⏰13週)

99 Erica Banks – Buss It (🗻47位 /⏰13週)

 

 

・ アルバムチャート キリ番

 

4/3

200週目:Bon Jovi – Greatest Hits: The Ultimate Collection (153位)

250週目:Linkin Park – [Hybrid Theory] (164位)

600週目:MetallicaMetallica (101位)

 

4/10

1周年:Dua Lipa – Future Nostalgia (9位)

1周年:Rod Wave – Pray 4 Love (39位)

1周年:DaBaby – BLAME IT ON BABY (49位)

150週目:Juice WRLD – Goodbye & Good Riddance (32位)

200週目:Luke Combs – This One’s For You (34位)

350週目:Michael Jackson – The Essential Michael Jackson (93位)

 

4/17

200週目:SZA – Ctrl (54位)

 

4/24

1周年:DaBaby – BLAME IT ON BABY (52位)

100週目:Lewis Capaldi – Divinely Uninspired To A Hellish Extent (66位)

300週目:Zac Brown Band – Greatest Hits So Far... (122位)

 

 

・今月Hot 100デビューアーティスト

Justin Bieber feat. Dominic Fike – Die For You (🗻81位 /⏰1週)

Justin Bieber feat. BEAM – Love You Different (🗻84位 /⏰1週)

Justin Bieber feat. Burna Boy – Loved By You (🗻87位 /⏰1週)

Duncan Laurence – Arcade (🗻100位 /⏰1週)

 

 

・各指標1位

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・Rolling Stone Chartsのトップ10

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 個人的なポイントは、Olivia Rodrigoの"deja vu"が2週目もトップ10に残ったことですかね。

 

Spotifyチャート(US)のトップ10

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 奮闘していた"telepatía"の勢いが止まってきています……

 

 

リンク / 参照

 

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music

YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts

・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week (←今月更新が止まっている期間があった)

Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist

Apple Music - Today's Hits:Today’s Hits on Apple Music (※基本的にUSと日本で選曲は同じですが、リストが51曲以上になると、日本版では51番目以降の曲がカットされます。PCからリンクを踏むとUS版のページに飛ぶと思います)

 

 

(過去の月へのリンク)

 

3月号:Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】 - チャート・マニア・ラボ

1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補
2 動かないアルバムチャート
3 グラミーはどうだった?
4 トップ10周り
5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok関係
6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト
7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち

 

2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ

1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B

 

1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ

1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後

 

 

*1:ビルボードは現在、公式のビデオのみをチャートに集計。しかしYouTubeチャートに表示される数字が額面通り集計されているわけではないようです。非ログインユーザーの再生数を抜かれていると考えられています。

*2:ビルボードのChart Historyにはこの曲が載っていませんが、リズミック系統で伸びを見せたのがDoja Cat参加のリミックスのリリース後なので、彼女もクレジットされるべきと判断しました

Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】

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 こんばんは!

 

目次:

 

 

 

1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補

 

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 先月は”drivers license”が全ての週を制し、動きが無かったHot 100の\。しかし今月の後半、上位が激しく動きました。

 3/20にチャートを席巻したのはDrake。リリースした3曲が、そのまま1位2位3位に収まり、トップ3を独占。The Beatles、Ariana Grandeに次ぐ史上3回目の快挙を成し遂げました。Drakeにとって43-45曲目のトップ10で、首位は8曲目です。

 この3曲は“Scary Hours 2”というEPのような形式でリリースされており、それらがアルバムのような熱量で受容され、3曲全てが圧倒的な再生数を叩き出したことが大きかったと考えています。(ストリーミングではアルバムが強い)

 とはいえこの3曲はシングル扱いで、アルバムチャートには登場していません。仮にアルバム扱いならば、アルバムチャート首位獲得相当の成績を収めています。(Rolling Stone Charts等に記載されている3曲の数字を合算すると、この週のアルバム1位を上回ります)

 この3曲のうち“What’s Next”がラジオシングルで、今後は主にこの曲がHot 100で上位に残りそうです。ただ”Wants and Needs”も非シングルながらストリーミングでの調子が良いため、この曲にも期待がかかります。

 

 同週にこの3曲に次ぐ4位に登場したのはBruno MarsとAnderson .Paakによるユニット、Silk Sonicの”Leave the Door Open”。前者は17曲目の、後者は初のトップ10。Anderson. PaakはHot 100エントリー自体もまだ2曲目です(1曲目は客演を務めた、昨年のEminemのアルバム曲)

 DL、ストリーミング、ラジオ全てで優秀な成績。特にラジオはリリースから即座に大きな上昇を見せています。Bruno Marsはポップ、アダルトポップ、リズミック、RMS(Mainstream R&B/Hip-Hop)と広い系統でオンエアされるのが強み。リズミック&アダルトポップの組み合わせも珍しいのに、RMSまでカバーできるタレントは他にあまり浮かびません。(RMSでのオンエアが本格的に始まるのは来月からですが)

 リリース直後の注目度が大きすぎる反動で、2週目は大きくポイントが減少するのが近年の一般的なチャートアクションですが、この曲は2週目にHot 100首位獲得のチャンスがありました。引き続きのラジオの大幅な上昇に加え、グラミーでパフォーマンスを行い、注目度も向上。DrakeのEP3曲が初週よりは大きく数字を落としたこともあり、首位の有力候補の1つでした。

 しかし“Leave the Door Open”との僅差の争いを制し、Hot 100首位を獲得したのはCardi Bの”Up”でした。Cardi Bにとって5曲目の首位に。

 リリース以降ストリーミングの調子をあまり落とさなかったこと、こちらもラジオの調子が良かったこと(この週リズミック/RMSの2系統で首位)。この従来の2点の好調に加えて、この週DLが伸びた(+96%)ことも、僅差を制する上では効いたかと思います。この曲もグラミーでパフォーマンスを行ったため、その恩恵もあったでしょう。

 ちなみにこの次の週、“Up”はUSのSpotifyでの週間再生数のピークを更新しています。グラミーでのパフォーマンスやHot 100首位獲得のニュースもプラスに働いたのでしょうか。有名アーティストの曲は、ストリーミングでリリース初日にピークが来ることが多いので、このような追い上げ型は珍しいです。

 来月以降は”Leave the Door Open”、”Up”の2曲に加え、新たにリリースされたJustin Bieberの”Peaches”、この3曲で首位争いが繰り広げられるでしょう。

 

 

2 動かないアルバムチャート

 

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 一方、アルバムチャートは1位が変わらず。Morgan Wallenが10週まで、その1位滞在を伸ばしています。先月はまだ売上が10万を超えていて、新規アルバムの1位チャレンジを阻んでいるという印象がありましたが、今月は売上も下がってきていて、競合がいなかった点が1位キープの要因として強いかと思います。

 とはいえ、ストリーミングでここまで安定した強さを維持しているのは見事でしょう。複数の曲がストリーミング内でシングルとして成立したこと、曲数の多さなどが強さの理由と思われます。

 

 数少ない新たな動きだったのはAriana GrandeとGiveon。Ariana Grandeはデラックス版をリリース。5曲を新たに追加したものの、そこまでストリーミングが伸びず2位止まりに。デラックス版で大きく伸びるのは、Apple Musicでの人気が高いタイプのアーティストに限られているような気もします。(正統系のラッパーなど)

 Giveonは昨年のEP2つを合体したコンピレーションをリリース。アルバムチャート5位に入りました。

 この2つにしても、正式な新作ではないので、本当にリリースが少い月だったことが伺えます。

 

(参考:先月のアルバムチャート)

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  The Weekndのベスト盤や、Foo Fightersの新譜は今月のリリースならアルバム1位を獲得していたかもしれません。

 

 

(以下長尺のアルバムに関する余談)

 今のリスナーが、どこまで真面目にアルバムという単位で音楽を聞くかは不明ですが、仮に真面目に最後まで聞くとすれば、長尺アルバムは2つの恩恵を受けると思います。まずは単純に曲数の多さの分だけ再生数が伸びる点。再生数を伸ばすために、ストリーミング以降で長尺の作品が増えた、という問題はストリーミング初期から指摘されています。

 もう一つ、私が最近感じたのはリコメンドで有利になるという点です。私はそこまでMorgan Wallenを好んで聞いているわけではない(流行っているから、勉強として少し聞こうぐらいの感覚、Nワードの一件の前に)ですが、ちょいちょいApple Musicの個人用リコメンドプレイリストに登場してきます。

 この理由を考えたところ、再生時間が長め=この人はMorgan Wallenが好き、と判断された可能性が浮かびました。今回のMorgan Wallenの作品は1時間37分で、30分くらいのアルバムの3周に相当します。「流し」で聞いたとしても、聴取時間では上位に行きやすいすいのです。個人用プレイリストの選曲アルゴリズムは、詳しくは分かりませんが、再生時間がマイナスに働くことはまずないでしょう。

 

(ただ、これは私のApple Musicの使い方も関係するのかもしれないです。私は「ラブ」も「これと似たおすすめを減らす」も、ライブラリ追加も全くしていないので、再生時間しかアルゴリズム的な判断材料が無いです。これを積極的にする人はこの限りではないのかもしれません。この機能が一般的にどれくらい使われているか、は分かりませんが)

 

 

3 グラミーはどうだった?

 

 昨年は主要4部門を独占したBillie Eilishの楽曲が浮上。それがきっかけでラジオも上向くなど、継続的な向上が見られました。(その曲が今年のRecord of the Yearを受賞した”everything i wanted”) ほかパフォーマンスされた曲が4つHot 100入りしましたが、それらは全て1週or2週でチャートから外れてしまいました。

昨年:Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】 - チャート・マニア・ラボ

 

 今年は新規登場が無かったものの、上位には影響を及ぼしました。パフォーマンスが行われた”Up”はグラミー後に一定のストリーミング/iTunesの伸びが見られたので、僅差の首位レースを制する要因の1つになったかと思われます。また、同じくパフォーマンスされたDua Lipaの“Levitating”はセールス/ストリーミングが増加。トップ10に返り咲きました。

 昨年グラミー効果でHot 100入りした曲がすぐに外れたように、新たにヒットを作り出すような影響力はグラミーには望みづらいです。しかし依然広い層にアピールできる貴重なイベントではあるので、既存の曲を上向かせるプロモーションの場、とくに僅差を制する必要がある時には有効な方法だと思います。

 ただグラミーはそんな単純な場所ではなく、アーティスト側の思い通りにプロモーションを出来るとも限りませんが。(あとタイミングの問題もあります)

 

 次に実際に受賞した曲に目を向けます。今年のRecord / Song of the YearはHot 100でのピークが低いことが特徴です。Songを受賞したH.E.R.の”I Can’t Breathe”はHot 100に入ってもいない曲です。Record / Song受賞曲でHot 100入りもしていないのは、2009年の”Please Read the Letter”以来です。(Robert PlantAlison Kraussによる / Record受賞)

 またSongの”everything i wanted”の8位ピークも順位が低い部類に入る曲で、そのHot 100に入らなかった2曲以外では、その2009年以降では最もピークが低い曲です。ただし、2008年以前だと8位より低いRecord / Song受賞曲は多く見られます。

 

 

4 トップ10周り

 

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Chris Brown & Young Thug - Go Crazy

 ちょうどラジオで1位だったタイミングでFuture, Lil Durk, Mulattoのリミックスをリリース。この効果で3位とピークを更新しました。(リミックス勢はクレジットされず)

 42週目でピークを更新するというかなり遅咲きの曲。しかし月の後半になるとラジオが減少し、トップ10を後にしました。

 

・Doja Cat – Streets

 ビデオが注目を集め、16位まで浮上。ただしラジオのサポートが現在手薄なため、トップ10は近いようで遠いかもしれません。

 

Olivia Rodorigo - drivers license

 ラジオで1位を獲得。ただしその週に新曲が大量リリースされたため、5位に順位を下げました。今月上位に登場した“Up”、”Leave the Door Open”のほか、来月はJustin Bieberの“Peaches”という新たな競合も登場するため、今後1位に復帰するかは微妙なところです。

 

 

5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok関係

 

 TikTokに関連しそうな曲では、“Astronaut In The Ocean”、”telepatía”、”No More Parties”の3曲が今月トップ40入り。それぞれのヒット経路は様々。

 “Astronaut~”は、TikTokから直接ヒットしたというよりは、まずヨーロッパ圏(ドイツなど)で先に火がついた曲が、TikTokの力を借りつつUSでもヒットしたような印象。このヨーロッパ圏でのヒットの効果もあり、ラジオのオンエアも順調に伸びています。来月にはトップ10に届くかもしれません。

 ”telepatía”はTikTokによって「発掘」されたシングルと思います。発掘以降順調にストリーミングを伸ばしていったものの、既にかなり上位のため、これ以上伸ばすのは難しい気がします。またラジオのサポートが遅いため、現状でこれ以上順位を伸ばすのは難しそうです。TikTokストリーミングで伸びたものの、ラジオのサポートが遅いという点で、Doja Catの“Streets”と似ています。

 “No More Parties”は一般的なTikTokヒットとは違い、Apple MusicとYouTubeに人気が偏っており、Spotifyでは圏外です。Lil Durkのリミックス追加によって大きく順位を伸ばしました。

 Mooskiの“Track Star”にも似たような傾向が見られます。(Spotifyで圏外ではないですが、100位以下)

 

 来月以降、TikTok関連曲でヒットが期待されるのはBeach Bunnyの“Cloud 9”。現在Spotifyを中心に数字を伸ばしていて、このペースが続けばHot 100にも手が届きそう。

 

 

TikTok関連の余談×2)

 

・SugarCrash!の謎

 TikTokの人気曲を計測するサイト、Tokboardでは1位まで浮上。さらにはSpotifyのGlobalランキングでは53位まで到達するなど、TikTok内外でヒットになっているElyOttoの“SugarCrash!”。USのSpotifyでも51位につけるなどし、Bubbling Underまで到達しました。

 しかしこの曲には謎の点が1つあり、それはSpotifyでの成績の割に一向に最大手プレイリストToday’s Top Hitsに入らないことです。

 

 Today’s Top Hitsはその名の通り、ヒット曲全般を扱うプレイリストです。50曲の編成なので、Global50位以上の曲が主にリスト入りの対象と自然に考えられますが、一定期間経った曲は上位でも外されるので、このリスト入りするためのボーダーラインは50位よりもかなり低いです。

 また、過去曲以外にもこのような場合にはリストに入りません。

1:アルバム曲(=アルバムの4番手以下)の場合

2:英語曲ではない場合 (入らない訳わけではないが、基準が厳しくなる)

3:アーティストの素行に問題がある場合(レアケース)

 

 この“SugarCrash!”は53位と順位的にも十分で、かつ1-3にも当てはまりません。リスト入りは時間の問題!と思っていたのですが、まだ入りません。

 入らない理由として思い当たるとすれば、その作風です。この曲はHyperpopというジャンル(大まかに説明すると”未来志向のポップス”)なのですが、その作風は現行メインストリームの一員としては相応しくない、離れすぎていると考えられた可能性があります。 

 また昨年も、Indian Style Remixのミームで知られるDripReportによる”Skechers”がリスト入りしないという似たようなケースがありました。一方で、順位的には足りなさそうな特定のシンガーの曲が、複数回に渡ってリスト入りするようなこともあります。(このタイプのシンガーは、SpotifyだけではなくAppleのリストにも入ることが多い)

 ラジオよりはジャンルの壁が下がったプレイリストですが、それでも「これはメインストリーム向き」「これは不向き」といった、暗黙の了解、基準があるのでは?と感じました。

 

 ちなみに同じくHyperpopとしてカウントされているCharli XCX(とKim Petras、Jay Park)の“Unlock It”もTokboardで1位まで到達し、同ランキングの1位&2位をHyperpopが占めている期間もありました。”Unlock It”はメジャーなランキングには今のところ入っておらず、具体的なヒットはまだ観察されていません。

 

(こうやってヒット系プレイリストを観察していると、自分ならこの選曲をする、という考えが色々湧いくるので、作った私作成のヒット系プレイリスト →トコの「トコ Today's Hits」をApple Musicで

 

 

・日本関連のコンテンツ?

 ストリーミングやDLでは圏外で、Hot 100に接近しているわけではないですが、TikTok内で日本関連のコンテンツの英語圏での躍進が今月見られました。

 最も際立ったのはLizz Robinett(日本だと核のリズという名前)による「恋愛サーキュレーション」の英語カバー。この曲はアニメ「化物語」のOPで、オリジナルは声優の花澤香菜によって歌われています。この音源はTokboardで11位まで一時期浮上しています。オリジナルの曲はもともと、英語圏でも「人気のミーム曲」として受容されていて、一部では根強い人気があった曲なのだと思います。その人気が今回花開いたということでしょうか。

 もう一つここ数日で大きな浮上を見せているのは桃黒亭一門(ももいろクローバーZの別名義)による「ニッポン笑顔百景」です。こちらは主にコスプレイヤーの間で人気が出ています。(日本関連のコンテンツが海外圏に広がる時、コスプレイヤーを中心に人気になるというのはパターンの1つです)

 日本関連のコンテンツを積極起用する有名TikTokerのBella Poarch(最多Like動画記録の保持者)もこの「ニッポン笑顔百景」を使用していました。「恋愛サーキュレーション」は今回人気が出た英語版ではなく、日本語版(だけどオリジナルではなくカバー)を以前使っていたことがあります。ほか以前に楽天パンダのCMを踊っていたこともあります。

 

 

6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト

 

Clinton Kane – Chicken Tendies (🗻88位 /⏰1週)

Mooski – Track Star (🗻55位 /⏰4週)  ※継続中

Lil Baby feat. EST Gee – Real As It Gets (🗻34位 /⏰2週)  ※継続中

ROSÉ – On The Ground  (🗻70位 /⏰1週) ※継続中/ソロ名義として初

NF feat. Hospin - LOST  (🗻79位 /⏰1週) ※継続中

Machine Gun Kelly feat. CORPSE – DAYWALKER!   (🗻88位 /⏰1週) ※継続中

 

 太字のほうが初登場アーティストです。(客演等で複数アクト名義の場合) 後ろ3つは最後の週に登場したので、継続中という表記にしましたが、おそらく次の週には外れるでしょう。

 ROSÉはBLACKPINKのソロプロジェクト、第二弾。2018年の第一弾、JENNIEの“SOLO”はBubbling Underにも届きませんでしたが、今回は見事Hot 100入り。それぞれの曲やメンバーの違いというよりは、この約2年半でBLACKPINKがグループとして、勢力を伸ばしたことが大きいでしょう。

 

 

7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち

 

 今月、計11曲がリカレントルールによってチャートを去りました。うち2曲が53週目/26位以下のルールによって外れています。Drake等の上位デビューが多かった3/20の週は、一挙に6曲がリカレントで外れています。(詳しいデータは下の「主なデータ」欄にあります) そのうちのいくつかをこの章で紹介します。

 

・Lewis Capaldi – Before You Go (🗻9 /52)

 2曲のHot 100エントリーが、両方とも滞在52週に到達する、ロングヒットのエキスパートLewis Capaldi。アダルトポップ系ラジオに適した作風を持ち、ラジオでのオンエアがかなり長いことが特徴。ストリーミングも弱くはないです。

 

・Gabby Barrett feat. Charlie Puth – I Hope (🗻3 /62)

 ゆったりとしたラジオの系統移行(カントリー → ポップ)が功を奏し、46週目でピークを更新していた遅咲きの曲。この曲もアダルトポップ系に適した作風で、ピーク後のラジオ減少もゆるやかでした。2015年に新リカレント(53週/26位)が適用されてからは、”Blinding Lights”に次いで2番目に滞在が長いです。

 

・AJR – Bang!  (🗻8 /35)

 ピークに到達するまでは遅かったですが、その後はラジオが急落して、下降が思いの外早かった曲です。

 

・Internet Money & Gunna feat. Don Toliver & NAV - Lemonade (🗻6 /29)

 ポップさも兼ね備えたラップ曲。全員US外でのヒットはこれまで少なかったですが、この曲はUK1位、ドイツ2位などUS外でも大ヒットでした。

 

・Drake feat. Lil Durk – Laugh Now Cry Later (🗻2 /29)

 自身がトップ3を独占した週に外れる。ピークが高く、上位にいた期間も長いものの、トータルの滞在週数があまり長くないのはDrakeっぽいチャートアクションです。

 

・Justin Bieber & benny blanco - Lonely (🗻12 /20)

・Justin Bieber feat. Chance the Rapper - Holy (🗻3 /25)

 4月の1週目にアルバムのリリースがチャートに反映されるJustin Bieber。しかしその前に先行シングルが2つチャートから外れてしまいました。近年のヒットシングルは滞在が長めなので、アルバム前に2つもシングルがリカレントしているのは、なんだか懐かしい感じがします。

 

Harry Styles - Golden (🗻57位 /20)

 20週滞在と、シングルとして一定の存在感は示したものの、ピークは57位で前2つのシングルほどにはならなかったです。

 

・Jack Harlow – Tyler Herro (🗻34 /20)

 ブレイク後の次シングル。下位の滞在が長かったものの、20週まで到達。さすがに前シングル”WHATS POPPIN”ほどのヒットを望むのは難しいので、20週まで到達するだけでも健闘だと思います。

 

 

8 短評

 

・SpotemGottem feat. Pooh Shiesty Or DaBaby – Beat Box

 アーティストに優しい表記をしている曲。リミックスが存在しても、原曲を上回ってメインにならない限り、ビルボードのクレジットに載らないのが定番。ほかリミックスがリリースされた週だけはクレジットされても、次の週にはすぐクレジットが外される、ストリーミング媒体ではリミックスが上でもラジオ等の関係かリミックスが認識されない、などリミックスで活躍した人の名義がイマイチ反映されていないことが多いです。

 しかしこの“Beat Box”では複数のリミックスが “Or”の表記で両方掲載される、というリミックスならびにアーティストに優しい表記になっています。

 この曲自体は一時期15位と、その多くのリミックスの恩恵を受けて好調です。

 

・Juice WRLD, Clever & Post Malone – Life’s A Mess II

 この曲は昨年のJuice WRLD & Halseyの“Life’s A Mess”のリミックスに相当する曲なのですが、新たに”II”と銘打ってリリースしたことからか、別の曲としてチャート入りしました。リミックスに関する名義は時と場合によってさまざまな扱いが見られます。

 

・Pop Smoke feat. A Boogie Wit da Hoodie – Hello

 Pop Smokeの新たなシングルカット。ストリーミングでもある程度調子をキープしているところに、ラジオ再生が加わりHot 100入り。

 彼は昨年のアルバム曲のうち、オリジナル版に入っていた曲は全てリリース週にHot 100入りしたのですが、デラックス版の曲は当時入らず(Juice WRLDのアルバムとバッティングしたため) この“Hello”はデラックス版の曲で、シングルカットのタイミングで初めてHot 100に入りました。

 

Tiesto – The Business

 イギリスとドイツで3位など、ヨーロッパ圏でヒットしているダンス曲。この手の曲はUSにあまり縁が無い印象なので、現在の69位でも健闘の部類だと思います。

 

・CJ – Whoopty

 まだHot 100には残っていますが、下落のスピードがものすごく早い曲。20週くらいの滞在で外れそうです。ラジオ&ストリーミングを両立する曲としては珍しい下落だと感じます。

 

・Machine Gun Kelly & blackbear – my ex’s best friend

 滞在が20週を超えてからもラジオの粘りによって、Hot 100ピークを更新していた曲。そのポップパンク的な作風が認められ、Alternative系ラジオで1位を獲得しています。

 

・Shawn Mendes & Justin Bieber – Monster

 滞在は14週に終わる。最初の週は8位だったものの、長続きはせず。キャリア初期は30週を超えるようなロングヒットのシングルが多かったですが、直近の”Wonder”と”Monster”はいずれも20週未満の滞在に終わってしまいました。

 初めてHot 100首位の獲得に成功した”Señorita”が良くも悪くもキャリアの変換点になった印象です。

 

・Ed Sheeran – Afterglow

 彼が本来持っていたアコースティック系のサウンドを試みたシングルも、20週に満たない滞在でHot 100を後にしました。

 直近のアルバムでは“Sing”、”Shape of You”、“I Don’t Care”とアップテンポなシングルを先行曲として持ってくることが多いので、そのような傾向を踏まえると、この曲はアルバム宣伝用の曲ではなく、彼の作風を取り戻す等の、ヒット以外の意図のあった曲なのではないかと私は考えています。

 

Maroon 5 & Megan Thee Stallion – Beautiful Mistakes

 ストリーミングの反応がイマイチだったものの、ラジオに安定感があり、Hot 100中位デビュー。その後ラジオが順調なうえ、Spotifyでの数字が改善してきたため、2週目に順位を上げるという珍しいチャートアクションに。今後もまだ伸びそうです。

 

・Selena Gomez & Rauw Alejandro – Baila Conmigo

 自身のルーツも意識した、スペイン語EPという意欲的な試みも、アルバムチャート22位、Hot 100入りは1曲のみと、大きなインパクトは残せませんでした。

 

・Luke Combs – Forever After All

 ストリーミングでの人気もあり、リリース週に2位を記録していた曲。その後もPandoraで1位など、ストリーミングの数字で粘りチャートに残っていましたが、このタイミングでようやくラジオでシングルカット。21週目、かつ51位以下ながらもHot 100に残っているのは、そのラジオの伸びが理由です。

 

・Lil Durk – Hellcats & Trackhawks

 昨年2つアルバムをリリース。今年1月末にはそのデラックス版もリリースしているLil Durkですが、今月は自身のレーベルOnly the Familyの作品もリリース。多作です。

 

 

主なデータ

 

・外れた曲

 

3/6

11 Taylor Swift – Love Story (Taylor’s Version)  (⏰1週)

33 Lewis Capaldi – Before You Go (🗻9位 /⏰52)

77 The Kid LAROI – SO DONE (🗻59位 /⏰15週)

83 Kenny Chesney – Happy Does (🗻47位 /⏰14週)

89 Chris Lane – Big, Big Plans (🗻42位 /⏰20週)

92 Karol G - BICHOTA (🗻72位 /⏰12週) ※

97 Saweetie feat. Jhené Aiko – Back To The Streets (🗻58位 /⏰13週)

98 Juice WRLD & Young Thug – Bad Boy (🗻22位 /⏰5週)

 

3/13

94 Ed Sheeran - Afterglow (🗻29位 /⏰10週)

98 Shawn Mendes & Justin Bieber - Monster (🗻8位 /⏰14位)

 

3/20

24 Gabby Barrett feat. Charlie Puth – I Hope (🗻3位 /⏰62)

35 AJR – Bang!  (🗻8位 /⏰35週)

38 Internet Money & Gunna feat. Don Toliver & NAV - Lemonade (🗻6位 /⏰29週)

41 Justin Bieber & benny blanco - Lonely (🗻12位 /⏰20週)

47 Drake feat. Lil Durk – Laugh Now Cry Later (🗻2位 /⏰29週)

89 Kelsea Ballerini – Hole In The Bottle (🗻39位 /⏰20週)

100 Karol G – BICHOTA (🗻72位 /⏰13週)

 

3/27

49 Justin Bieber feat. Chance the Rapper - Holy (🗻3位 /⏰25週)

65 Harry Styles - Golden (🗻57位 /⏰20週)

93 DDG – Moonwalking in Calabasas (🗻81位 /⏰11週)

94 Jack Harlow – Tyler Herro (🗻34位 /⏰20週)

95 Morgan Wallen – Somebody’s Problem (🗻25位 /⏰13週)

96 Morgan Wallen – Cover Me Up (🗻52位 /⏰10週)

 

 

・アルバムチャート キリ番

 

3/6

1周年:Lil Baby – My Turn (10位)

1周年:Bad Bunny – YHLQMDLG (31位)

1周年:A Boogie Wit da Hoodie – Artist 2.0 (184位)

1周年:Jason Aldean – 9 (193位)

100週目:Billie Eilish – WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? (28位)

250週目:Drake – Views (108位)

 

3/13

1周年:Lil Uzi Vert – Eternal Atake (32位)

1周年:Jhené Aiko – Chilombo (55位)

100週目:Khalid – Free Spirit (117位)

200週目:Hozier – Hozier (144位)

 

3/20

150週目:Post Malone – beerbongs & Bentleys (41位)

200週目:Drake – More Life (120位)

400週目:Tom Petty And The Heartbreakers – Greatest Hits (83位)

 

3/27

1周年:The Weeknd – After Hours (4位)

100週目:Lizzo – Cuz I Love You (115位)

350週目:The Rolling Stones – Hot Rocks 1964-1971 (168位)

 

 

各指標の1位

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 それぞれで人気曲が異なります。

 

 

Rolling Stone Chartsのトップ10

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 こちらでは"Back in Blood"と"telepatía"がトップ10に入っています。

 

Spotifyチャートのトップ10

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◇各週の動向メモ◇

 

3/6

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3/13

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3/20

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3/27

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・リンク / 参照

 

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music

YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts

・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week

Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist

 

 

(過去の月へのリンク)

2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ

1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B

 

1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ

1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後