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Charli XCX “Number 1 Angel” 感想/レビュー

Charli XCX “Number 1 Angel” 感想/レビュー

【豪華な前夜祭+”友だち”について】

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Charli XCXがミックステープ、”Number 1 Angel”を3/10にリリースしました。

今年の9月にもアルバムをリリースするようですが、それとは別の扱いのようです。いわば”前夜祭”の段階といったところです。

 

ミックステープについて端的に述べると、ミックステープと侮るなかれ。豪華なアルバム前夜祭 といった感じです。

そんな彼女の新ミックステープを2つのポイントに分けて、感想を述べていきたいと思います。

 

1 ミックステープと侮るなかれ。“ボツ曲集合体”のような雑さが無い。

 

今年の後期にアルバムリリースを予定しているCharli。この時期に「ミックステープ」をリリースすることは、「ボツ曲を集めたもの?」という推測をすることも可能でしょう。

Charliは特に言及せずにこのミックステープをリリースしたので、どういう立ち位置のミックステープかはよく分かりませんが、”ボツ曲集合体”のような雑さを私は感じませんでした。むしろ、これがアルバムでも違和感はないくらいに思いました。

 

収録曲がそれぞれ色のある好ポップソングで、悪い意味浮く曲も無い。さらにプロデューサーを全員PC Music関連で固めていてアルバム全体で統一感があること、そして37分という適度な長さも相まって、現状2017年の「自然とリピートしてしまうポップアルバム大賞」の1枚だと思っています。

 

次に曲単体について。私は”Dreamer”と”Emotional” に注目しました。

まず、“Dreamer”について。この曲は先に述べた「自然とリピートしてしまう」に関して大きな役割を担っていると感じます。この曲はミックステープの中でも際立って「ドハマり指数」が高いと思います。R&Bサウンドにも寄ったこのキラー曲をミックステープの最初に置くことで、この曲を聞きたいがゆえにミックステープ頭から再生して、気づいたら全部聞いていた、のような現象を引き起こす気がします。

そして”Emotional”。この曲は一番ミックステープの中で光っている曲だと思います。その名の通りエモーショナルなサビのメロディラインが特徴的。Charliの最大のヒット”Boom Clap”の感じをCharliに求めるリスナーにも良い曲かもしれません。豪華ゲストであるMØが客演の3AM (Pull Up)と並んでこのミックステープの顔といってもよい輝きを、アルバムの中心(10曲中5曲目)で放っています。

 

アルバムを通して粒ぞろいで、人によって注目曲は違うような気がしますが、みなさんはどの曲が好きでしたか。

 

2 豪華なアルバム前夜祭、”友だち活用法”

このアルバムはCharliの充実した”友だち”を紹介する役目も担っているように思いました。

以下の画像は公式サイトのアルバムの紹介。

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客演のアーティスト、プロデューサーもロゴで表示してあって比較的それらが目立つようなデザインになっています。これは、それらのアーティストを紹介するという意図がミックステープにあることを感じ取れます。

このような取り組みをポップスで行うのはなかなか珍しいことのように感じました。

 

ヒップホップの世界では客演が多く、アーティスト同士のつながりがよく見られるます。

Drakeを例に挙げてみます。Drakeは2011年のアルバムではThe WeekndやKendrick Lamar、など後のスターを起用し、また昨年のOne Danceでは客演のKylaとWizkidの知名度上昇に大きく寄与しました。さらには2015年にはFutureタッグを組んでミックステープをリリースしていました。

つまり、このエピソードから何が言いたいか。ヒップホップは一人を追っているだけでも客演、またはプロデュースなどの”紹介”によって様々なアーティストを知ることが出来るのです。”レコード買い”のような感覚でDrake関連の曲を全て聞く”Drake買い”をするだけでもかなりの曲を楽しむことができます。今月リリースされたプレイリスト”More Life”はそんな需要にも答えたプレイリストのように思います。今回のプレイリストではSkepta、Giggsなどのグライム勢や南アフリカのDJのBlack Coffeeなどを起用していて”Drake買い”をするリスナーに影響を与えそうです。

一方、ポップスでは客演やプロデューサーにスポットライトが当たる機会は少ないです。ポップスのアルバムでは音楽的には様々なトレンドを吸い上げて、”現在らしいサウンド”を聞く事はできます。しかしそれがどこ発祥なのか、どのプロデューサーがやっているかはあまりアピールはされませんし、リスナーもあまりそこに目を向けないでしょう。つまり、ポップスのアルバムは他のアルバムとの関わりが薄かったり、関連性が見えづらかったりするのです。

しかしこのアルバム、もといCharli XCXは様々なアーティストと組んでいてCharliだけを追っていても色々なことを楽しめるかと思います。

After the Afterpartyのソングライトにも参加したRaye、Sophieなどの定番メンツ、今回はMØ、Abra、Danny L Harleなどの新しいメンツも参加。Uffie、Cuppcakeなどの新人も起用し、このミックステープは名前だけでもかなり楽しむことができるかと思います。ちなみにCharliと組んでソングライトを担当することも多いNoonie Baoはこのミックステープでもソングライトを担当しているようです!

この中でもNoonie Bao、MØとの絡みは珍しいと個人的に考えています。なぜかというと同業者の女性シンガーソングライター同士のコンビだからです。女性シンガーソングライターとよく組むのはプロデューサー、またはソングライトを主に行う男性シンガーソングライター、そして客演で入るラッパーなどが入る傾向にあるので、女性シンガーソングライター同士が組むのは意外と珍しい気がします。その2人以外にもアメリカR&BシンガーのAbra、アメリカの新進女性ラッパーCupcakke、そして前述の通りPC Musicの面子など幅広い領域をカバーしていて、なかなか面白い並びだなぁ、と思います。

 

私は自身も”Charli買い”を楽しんでいて、After the Afterparty以降(ソングライトで参加した)Rayeに注目し、またこのツイート(↓)を見てそれまであまり気にしていなかったLittle MixのTouchにハマるなど……

 

 

今回のアルバムでは3AMとEmotionalのプロデュースをしたEasy FX、ラストの曲Lipglossに客演で参加したCupcakkeが個人的には新発見でした。今後も注目してみようと思います。

 

今年の9月リリース予定のアルバムがますます楽しみになりました!

そして今後どんなアーティストを紹介してくれるのか、そういう視点でも楽しみにしています!次の”Charli買い”は誰になるでしょうか!