Hot 100で最近アルバムからHot 100(=シングルチャート)に大量エントリーするケースが増えてきました。
理由はみなさんお察しの通りストリーミングサービスの台頭。
ストリーミングサービスによってアルバムの中でどの曲がよく聞かれているのか、ということが可視化されるようになり、そのことにより所謂「アルバム曲」もHot 100にエントリーするようになりました。
その結果、一つのアルバムから10曲以上がHot 100にエントリーするような事象が頻発するようになり、2013年以降だけでなんと12個のアルバムがその偉業を達成しました。
以下がすべてです。
Drake - Nothing Was the Same (2013)
Drake - If You're Reading This, It's Too Late (2015)
The Weeknd - Beauty Behind the Madness (2015)
Drake & Future - What A Time To Be Alive (2015)
Justin Bieber - Purpose (2015)
Beyoncé - Lemonade (2016)
Drake - Views (2016)
The Weeknd - Starboy (2016)
J.Cole - 4 Your Eyez Only (2016)
Ed Sheeran - ÷ (2017)
Drake - More Life (2017)
Kendrick Lamar - DAMN. (2017)
中には、アルバムの全ての曲がヒットの基準とされるトップ40に入り、アルバムの曲の平均順位が約21位というようなアルバムも生まれました。それについて詳しくは↓の記事で書いたので、詳しくはそちらで……
今回のそのような事象をもとに、アルバムの曲順はヒット具合に影響を与えるのか?という考察をしてみようと思います。
アルバムは通常、1曲目→2曲目→3曲目………と聞いていきます。それを最後の曲まで続けるならアルバムの曲順によらずに均等に再生回数が増えると思います。しかし、そうではない場合も多々あるでしょう。例えば、移動中にアルバムを聴いていたけど目的地に到着した場合、思いのほか夕ご飯が早く出来た場合……または最後まで聴ききれずに飽きてしまう場合もあるでしょう。
そこで今回はこのような疑問が生じました。
「(聴き方が可視化された)ストリーミング時代において、ヒット度という観点でアルバム最初の曲は有利で、アルバム最後の曲は不利ではないか」
この疑問を考えるために、上にあるような「一つのアルバムから10曲以上がHot 100に入った」12の事例を参照したいと思います。調査方法は、最初の曲と最後の曲は他の曲とくらべてHot 100でどのような順位にあるか。
Hot 100はどの週を指すかというと、アルバムの曲がHot 100で最も高い順位を記録していた週(=最も聴かれていたであろう週)。だいたいリリース直後です。
ケース1 アルバム最初の曲の順位
ボートラ含む全ての曲のうち、アルバムの1曲目に配置されている曲のアルバム内順位が平均を下回るか上回るかカウントします。仮に平均を上回るが多ければ、ボートラを計算から除くなどして再計算をしようと思います。結果は……
Drake - Nothing Was the Same (2013)
Tsucan Leather 10位 / 15曲 (平均より下)
Drake - If You're Reading This, It's Too Late (2015)
Legend 2位/19曲 (平均より上)
The Weeknd - Beauty Behind the Madness (2015)
Real Life 7位/14曲 (平均より上)※
Drake & Future - What A Time To Be Alive (2015)
Digital Dash 2位/11曲 (平均より上)
Justin Bieber - Purpose (2015)
Mark My Words 7位/18曲*1 (平均より上)
Beyoncé - Lemonade (2016)
Pray You Catch Me 7位/12曲 (平均より下)
Drake - Views (2016)
Keep the Family Close 16位/20曲 (平均より下)
The Weeknd - Starboy (2016)
Starboy 1位/18曲 (平均より上)
J.Cole - 4 Your Eyez Only (2016)
For Whom the Bell Tolls 6位/10曲 (平均より下)
Ed Sheeran - ÷ (2017)
Eraser 10位/16曲 (平均より下)
Drake - More Life (2017)
Free Smoke 4位/22曲 (平均より上)
Kendrick Lamar - DAMN. (2017)
BLOOD. 12位/14曲 (平均より下)
平均より上 / 平均より下がちょうど半分という結果に。目立ちにくいボートラも計算に入れてこの結果ということは、アルバム一番最初の曲が特別有利なわけではないといえそうです。
ちなみにリカレントルール(古い曲排除ルール、21週目以降の曲が51位以下に「落ちる」と消えてしまうルール)を考慮し、すべての曲を「リリース時の順位」ではなく「ピーク順位」で判定すると、Beauty Behind the MadnessのReal Lifeが平均より下に転じ、最初の曲が平均より目立たないが有利=平均より下のほうが多くなります。
ケース2 アルバム最初の曲の順位
こちらは「ボートラ含む最後の曲」だと対象曲がボートラになり、他より不利ということが明確になるので、ボートラを含めずに計算します。
Drake - Nothing Was the Same (2013)
Pound Cake / Paris Morton Music2 7位/13曲 (平均より下)
Drake - If You're Reading This, It's Too Late (2015)
Jungle 11位以下*2/16曲 (平均より下)
The Weeknd - Beauty Behind the Madness (2015)
Angel 11位以下*3/14曲 (平均より下)
Drake & Future - What A Time To Be Alive (2015)
30 For 30 Freestyle 11位/11曲 (平均より下)
Justin Bieber - Purpose (2015)
Purpose 8位/13曲 (平均より下)
Beyoncé - Lemonade (2016)
Formation 1位/10曲 (平均より上)
Drake - Views (2016)
Views 19位/19曲 (平均より下)
The Weeknd - Starboy (2016)
I Feel It Coming 3位/18曲 (平均より上)
J.Cole - 4 Your Eyez Only (2016)
4 Your Eyez Only 8位/10曲 (平均より下)
Ed Sheeran - ÷ (2017)
Supermarket Flowers 8位/12曲 (平均より下)
Drake - More Life (2017)
Do Not Disturb 16位/22曲 (平均より下)
Kendrick Lamar - DAMN. (2017)
DUCKWORTH. 14位/14曲 (平均より下)
12事例中なんと、10曲が平均より下という結果に。さらにそのうち3事例がアルバム内最下位ということ、また平均を上回った2つの事例がシングル化されているということも考慮すると、アルバム最後の曲はヒット度という観点において不利だということが立証できると思います。
つまり……
・アルバム最初の曲はそこまで有利でもない
・アルバム最後の曲は注目されない傾向がある
ということが今回の調査で分かりました。
最近の事例で気になったこと……
Kendrick LamarのDAMN.はリリース時にアルバムが全ての曲がHot 100に入ったのですが、次の週2曲が圏外に落ちました。その2曲とは……
BLOOD. (一番最初の曲)
DUCKWORTH. (一番最後の曲)
最初の曲と最後の曲が真っ先に落ちるということは、もしかしてアルバムを通しで聴く人が少ないということを表しているのでは……?という疑問が生まれました。
Spotifyの無料会員は「シャッフルプレイ」でしか曲を再生できないこと等が理由でしょうか…?ちなみにSpotifyの有料会員/ 無料会員の比率*4は「最新データ」*5でほぼ同等なようです。