今週は「巨大アルバムのその後」という大まかなテーマでHot 100を見ていきます。画像はそのテーマに当てはまる、The WeekndのReminderのビデオ。
97 The Weeknd – Reminder (Re)
The WeekndのReminderが97位で再登場。昨年12月のアルバムリリース時以来の再登場。5月にシングル化されてラジオでかかり始めたことが要因。2015年のアルバムBeauty Behind the Madnessでは、アルバム前後の盛り上がりから一区切りしてからシングル化された4曲目のシングルのAcquaintedはピーク60位でしたが、同じく4曲目のシングルのこのReminderはどうなるでしょう。ストリーミング時代の巨大アルバムでは、アルバムのシングルのピークがリリース前後に集中してしまうのが悩みでもあります。
95 2 Chainz feat. Ty Dolla $ign, Trey Songz & Jhené Aiko – It’s A Vibe (New)
2 ChainzのTy Dolla $ign、Trey Songz、Jhené Aikoを迎えたIt’s A Vibeが95位で登場。先週にアルバムPretty Girls Like Trap Musicをリリースした彼。リリースがチャートに反映されるのは来週ですが、Hot 100に新たに何曲か登場するかもしれません。現在は4AM、Good Drunk、It’s A Vibeの3曲がHot 100に。
※次の週のアルバム1位はおそらくLordeのMelodramaです。
93 Kane Brown feat. Lauren Alaina – What Ifs (New)
若手カントリーシンガー、Kane Brownのアメリカンアイドル出身のLauren Alainaを迎えたWhat Ifsが93位で登場。両者にとって3曲めのHot 100。今週は他にカントリーではBrothers Osborne のIt Ain’t My Faultが100位、Billy CurringtonのDo I Make You Wannaが79位で登場。
89 Wisin feat. Ozuna – Escapate Conmigo (New)
プエルトリコ出身のシンガー、WisinのEsacapate Conmigoが89位で登場。2014年にはJennifer LopezとRicky Martinの2名の大物を客演に据えたAdrenalinaが94位に登場していました。Despacitoの1位独走で盛り上がるラテン曲シーンですが、ShakiraのChantajeの客演でHot 100に登場したMalumaが後に、自身の曲でもHot 100に登場(Felices Los 4が今週65位)など、この曲のように客演を据えることも多いことから、「客演で紹介したアーティストが後にブレイク」というヒップホップにも似た流れを感じます。この流れが続けば、Despacito単発ではなく、本格的なブームが到来するかも……?
74 Kendrick Lamar feat. Rihanna – LOYALTY. (→)
Kendrick Lamarのアルバム、DAMN.の曲で現在でもHot 100にも残っているのはHUMBLE.、DNA.、LOVE.、LOYALTY. アルバムリリースから9週目が経過したものの、LOYALTY.は順位をキープ、LOVE.は一つのみ順位を落とすなど「横ばい」状態に突入。これらの曲の驚くべきところは、シングル化されていなくてラジオとはほぼ無縁で、主にストリーミングでのポイントで横ばいになっていること。つまりLOYALTY.、LOVE.はストリーミングで音楽を聴いている人と、ラジオで音楽を聴いている人では熱量の差が開いている曲ということになると思います。このような事例が続くなら「ストリーミング vs ラジオ」というテーマを今後注目したいと思います。
※LOYALTY.は今週から一部のラジオ局でかかり始めるようです(=シングル化)
70 SZA feat. Travis Scott – Love Galore (New)
今週アルバム3位のSZAのCtrl。アルバムからはTravis ScottのLove Galoreが70位で登場。SZAにとって初登場。週の後半にはiTunesのアルバムチャート(デイリー)で同週リリースのKaty Perryを上回り1位を獲得するなど健闘。RihannaのAntiの最初の曲、Considerationでも客演を務めたSZAには期待がかかります。
62 Katy Perry feat. Nicki Minaj – Swish Swish (↑)
ストリーミングでそこまで指数を獲得せずとも、元からの支持の高さもあって余裕を持ってアルバム1位を獲得したKaty PerryのWitness。(セールス自体は前アルバムのPrismの約 2/3)Hot 100ではBon Appétitが85位、Swish Swishが62位でいずれも上昇。ポップ系ラジオではそのままSwish Swishで勝負し、Adult Pop系ラジオ向けにSave As Draftをシングル化するという「複数シングル戦略」を仕掛ける模様。この作戦を成功させ、不調の印象があるシングルでも巻き返せるか。
37 YFN Lucci feat. PnB Rock – Everyday We Lit (↑)
XXL Freshmanに落選したYFN Lucci、XXL Freshmanに選ばれたPnB RockのコンビのEveryday We Litが37位と、ヒットの水準とされるトップ40に突入。両者にとって初のトップ40。今年のXXL Freshman(全10人)の面々では5人目のトップ10入り。A Boogie Wit Da HoodieのDrowningが現在42位*1で、この曲もトップ40入りなるか…?
36 Migos feat. Gucci Mane – Slippery (↑)
MigosとGucci ManeのSlipperyが36位でトップ40入り。アルバムがリリースされた時の順位は48位でした。シングル化(Hip-Hop / R&B系ラジオで今週15位)、またそれによりストリーミングも再浮上したこともあって、一回目の山のピークを更新したということに。YouTubeでアルバム全13曲を公開し、7曲のビデオを作成するなど、シングルと非シングルが曖昧なようにも感じましたが、シングルはしっかりと順位を上げていて、Bad and Boujee、T-Shirt、このSlipperyはいずれもトップ40入りをしています。
※そのアルバムの続編、Culture 2 Coming Soonとの情報が出ていますが、いつリリースなのでしょうか……?
23 Selena Gomez – Bad Liar (↑)
水曜日のビデオリリースで注目を集めて、Selena GomezのBad Liarが大きく浮上。45位→23位。来週のチャートでは、ビデオ公開のポイントが一週間フルカウントされること、またiTunes0.69$値下げセールでダウンロードが伸びた(現在3位)こともあって、さらに順位を上げそうです。
ビルボードがこのBad Liarはヒットするか?という記事を作っていました。要旨は、「Shape of You、Something Just Like Thisが思ったよりもラジオで長くヒットしたこともあって、ポップ系ラジオでの争いは激しい。あと、スタートの順位もそこまで高くなかった。ただ批評家からの後押しもあるし期待はしている」
21 Ed Sheeran – Castle on the Hill (↑)
Shape of Youと対極的に、順位をずるずる落としていたのは過去の話。Ed SheeranのCastle on the Hillが今週21位まで浮上。大きなポイント源はラジオ。ラジオのポイントが今週10位。先週チラっとShape of YouがHip-Hop / R&B系ラジオのチャートに入りましたが、Castle on the HillはRock系のラジオである程度の期間かかっていたようです。リリースから上下動ありながらも、一回もチャートから外れずに、23週目にして上昇気流に乗るなどロングヒットになっています。ストリーミングではもう順位が高くはない(例:Spotify 139位)ものの、ラジオで支持を得て長持ちになっているという事象は、ストリーミング時代のシングルの売り方としては参考になりそうなケースだと思います。
※①リリース時 ②アルバムのリリース時 ③ラジオで再浮上 という3つの山があるという点で、2014年のColdplayのA Sky Full Of Starsとチャートアクションが似ていると思います。
16 David Guetta feat. Justin Bieber – 2U (New)
David GuettaとJustin Bieberの2Uが16位で登場。Purpose以降、Major Lazer、DJ Snakeと2組のDJをそれぞれ2位、4位に導いたJustin Bieber。今度はベテランDavid Guettaと共にどこまで順位を上げることができるか。ちなみにDavdi Guettaの最高位は2012年のTurn Me Onの4位。
ストリーミング、ラジオでも強いJustin Bieberですが、ダウンロードではさらなる強さを発揮していて、今週ダウンロードの多かった上位3曲はDespacito、I’m the One、2Uと全て彼の曲でした。
× Martin Garrix & Dua Lipa – Scared To Be Lonely (↓)
交際の噂が浮上?したタイミングで姿を消したMartin GarrixとDua LipaのScared to Be Lonely。84位ピークは低く感じるかもしれませんが、Martin Garrixもこのスタイルに転換してから日が浅く(=ポップスリスナーの間ではまだそこまで馴染んでいない)、またDua Lipaの知名度もアメリカでは低いこと、それに14週チャート滞在とこの順位にしては長め、ということを考慮すれば、「そこそこ」のチャート成績だと思います。Troye Sivanとの次シングルThere For Youはどこまでいけるでしょうか。
チャートで今週伸びを見せた曲たち
今週最もラジオで伸びた曲 Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber - Despacito
今週最もダウンロードが上昇した曲 Selena Gomez – Bad Liar
今週最もストリーミングが伸びた曲 YFN Lucci feat. PnB Rock – Everyday We Lit
最も高い順位で新登場した曲 David Guetta feat. Justin Bieber – 2U
上記以外でチャートに登場/再登場した曲
100 Brothers Osborne - It Ain’t My Fault (New)
79 Billy Currington - Do I Make You Wanna (New)
今週チャートから外れた曲
【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位/チャート滞在週数)】
100 Rag'n'Bone Man - Human (74位/7週)
95 Martin Garrix & Dua Lipa - Scared To Be Lonely (84位/14週)
94 Jake Paul feat. Team 10 - It's Everybody Bro (94位/1週)
92 Gucci Mane feat. Offset - Met Gala (88位/2週)
89 Lil Yachty feat. Migos - Peek A Boo (78位/4週)
88 blackbear - do re mi (87位/7週)
82 Meek Mill feat. Chris Brown & Ty Dolla $ign - Whatever You Need (82位/1週)
49 Clean Bandit feat. Sean Paul & Anne-Marie - Rockabye (9位/27週)
☆近いうちのヒットが期待されるシングルたち
Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲を集めました。
(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora)
DJ Khaled feat. Rihanna & Bryson Tiller – Wild Thoughts (Shazam 3位、Spotify 5位)
Calvin Harris feat. Pharrell Williams, Katy Perry & Big Sean – Feels (Shazam 36位、Spotify 20位)
Portugal. The Man – Feel It Still (Shazam 28 位)
The Revivalists – Wish I Knew You (Shazam 35位)
Yo Gotti & Mike Will Made-It feat. Nicki Minaj – Rake It Up (Shazam 49位)
Goldlink – Crew (Shazam 53位)
Sia feat. Labrinth – To Be Human (Shazam 55位)
Lauv – I Like Me Better (Spotify 59位)
DJ Khaled、Calvin Harrisの豪華客演の2曲がHot 100で高い順位での登場が期待できそう。特にDJ KhaledのWild ThoughtsはiTunesで現在2位、Spotifyで5位とすぐさま浸透しているようで、来週トップ10で登場するかも!
LauvのI Like Me Betterは、StarleyのCall On MeやAJRのWeak系統の、プレイリストでじわじわヒット中のいわば「Spotifyのみヒット」で、Hot 100に登場するのはまだまだ先かと思います。
*1:ピークは41位