チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 9/2 見どころ 【新進コンビの曲が躍進+1位争いの行方】

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今週のハイライトはMarshmello+KhalidのSilenceの躍進、そして1位最長記録に肉薄するDespacitoが今週も1位を守ったのか?です。

 

 

 

97 Maren Morris – I Could Use A Love Song (New)

昨年リリースしたアルバムHeroが好評。そしてグラミーの新人賞候補にもノミネートされたカントリーシンガーMaren MorrisのI Could Use A Love Songが97位で登場。そのアルバムHeroからMy Church、80s Mercedesに次ぐ3曲めのエントリー。今年客演で初のトップ40入りを果たしましたが(Thomas RhettとのCraving You)、自身の曲でもトップ40に到達できるでしょうか。まだトップ40が無いのは意外な気もしますが。

※今週は同じくカントリーのChris JanasonのFix A Drink、Kip MooreのMore Girls Like YouがHot 100に登場。(雑な括りですいません)

 

95 YoungBoy Never Broke Again – Untouchable (New)

NBA YoungBoy a.k.a. YoungBoy Never Broke Againとも。このUntouchableで初のHot 100入り。今週過去の銃撃事件への関与により、10年間の執行猶予と3年間の保護観察が言いわたされています。

 

92 Wiz Khalifa feat. Ty Dolla $ign – Something New (New)

Wiz KhalifaとTy Dolla $ignによるSomething Newが92位で登場。客演のTy Dolla $ignのパートのほうが多く、こちらが主役という印象があります。ZappのComputer Loveをサンプリングしています。

 

42 Marshmello feat. Khalid – Silence (New)

MarshmelloとKhalidのSilenceが大躍進。Marshmelloにとっては自己最高位となる42位でのHot 100登場。同じDJ系プロデューサー+Khalidの(Calvin Harrisの)Rollin(ピーク62位)より高い順位での登場*1に。Demi Lovato、Selena Gomezとのコラボの噂のあるMarshmelloが今後もメインストリームをかき回すでしょうか!?ここ1年前後でのシンデレラストーリーぶりが凄いです。

 

37 Logic feat. Alessia Cara & Khalid – 1-800-273-8255 (↑)

アルバムリリース時から注目を集め、ポップ系ラジオでも人気を博しているLogicの1-800-273-8255(アメリカの自殺予防ダイヤルの番号)のビデオが遂にリリース。その効果でダウンロードを伸ばしHot 100でも37位まで浮上。トップ40圏内に入りました。LogicにとってはSuicide Squadのサントラに収録された大所帯シングルSucker For Pain以来2回めのトップ40。

 

33 Bruno Mars – Versacce On The Floor (↑)

こちらも上記の1-800-273-8255と同じくビデオリリース効果による上昇。Bruno MarsのVersace On The Floorが33位とトップ40に突入。ビデオではシングル化される時に発表されたDavid Guettaのディスコ調のリメイク版ではなくオリジナルの音源が採用されています。この調子で24K Magic、That’s What I Likeに次ぐトップ10を目指したい!と言いたいところですが、既にラジオで停滞気味なのが気がかりですね。

 

29 P!nk – What About Us (↑)

事実上のリリース週。P!nkのWhat About Usが29位で登場。ダウンロードでは3位と好調(ダウンロード1位、2位は値下げした曲)、ポップ系ラジオでも順調に数字を伸ばしていおり、P!nkの息の長さ・健在ぶりが伺えます。ただ、来週以降もこの水準をキープするかというと微妙で、ダウンロードは10位前後まで落ち(2週目は反動で落ちるので仕方がないですが……)、ストリーミングでの数字も伸びてこないので、少し我慢の時期が続くかもしれません。ただラジオが順調に伸びてくればいつか持ち直すと思います。

※Shape of YouのプロデューサーのSteve Macを起用していることもあって、そのうちストリーミングでも伸びてくると思うのですが、果たして……?

 

27 Khalid – Location (↑)

Khalidが32週めで29位 → 27位と粘っています。ここ数週の粘りを支えているのはポップ系ラジオへの“飛び火”です。元々はアーバン系ラジオ(Hip-Hop / R&B系ラジオ)でピーク2位とヒットした曲で、Hot 100のピークもそのラジオでのポイントが高かった時期でした。アーバン系ラジオでは今週17位と落ちてきていますが、ポップ系ラジオでは9週めの32位という「新顔」になっています。この異ジャンルへの「飛び火」は以前からHot 100でロングヒットする際のカギとなっていて、かつてBoyz ii MenR&B → ポップ系ラジオへの「飛び火」でロングヒットを記録したと言われています。

ポップ系ラジオでかかる「だけ」で他のヒット要素が少ないと、そこまでのヒットにはなりませんが、何か(他のジャンルのラジオ、ストリーミングなど)+ポップ系ラジオと複数要素が組み合わさるとチャート上で強力な武器になります。つまり、Hot 100で上位に入るには「幅広く」受け入れられる必要があるのです。

※現在はHot 100にエントリーしたThe ChainsmokersのHonestですが、ポップ系ラジオ以外ではヒットの要素がまだ無いので、ポップ系ラジオで21位になった段階でもHot 100に入れていませんでした。

 

22 Kesha – Praying (↑)

今週アルバム1位を記録したKesha。デビュー作以来、2枚めのアルバム1位。しかしシングルチャートでは目立った動きはなく「自然増」程度の24位 → 22位に。これはアルバムリリース時によく行われる「先行シングルiTunes値引き」が無かったからだと思われます。ポップ系ラジオでは順調で、さらにストリーミングも悪くない数字なので、適切なタイミングでiTunes割引を敢行すればトップ10にいずれ入れるのではないでしょうか。

 

10 Sam Hunt – Body Like A Back Road (↑)

Sam HuntのBody Like A Back Roadがトップ10に復帰。10位前後に長く滞在し、時に「トップ10の番人」にもなっています。今週はI’m the Oneをトップ10から蹴落とす形に。このBody Like A Back Roadとは直接関係無いですが、少し前はJulia MichaelsのIssues、James ArthurのSay You Won’t Let Goが(いずれもピーク11位)、そして最近はChildish GambinoのRedbone(ピーク12位)がトップ10を目前にして涙をのんでいます。

 

2 DJ Khaled feat. Rihanna & Bryson Tiller – Wild Thoughts (→)

アーバン系 / ポップ系と複数のラジオで好調だったこともあって先週ラジオのポイントが1位になったWild Thoughts。今週こそ!との思いを胸にiTunes割引を敢行するもDespacitoにダウンロードの成績は一歩及ばず。さらに相変わらずストリーミングでも負けているのでHot 100での1位はならず。1位を取るならば今週がベストでしたがDespacit強し、という結果に。これでDespacitoは15週目の1位に。歴代単独2位の長さに。以下が今後のDespacitoの予定表です。

※複数系統のラジオで存在感を示し、かつダウンロードが伸びたタイミングで首位というのは最もよくある1位浮上パターンなのですが、原曲+リミックスの合算でポイントを取る「2段固め」をするDespacitoには及ばず……

 

来週 9/9 1位16週目? (Despacito1位の見込み ※両バージョン値引き)

ライバル1:Justin BieberのFriends(ラジオはまだまだダウンロード・ストリーミングも不足)

ライバル2:Cardi BのBodak Yellow (ラジオは急上昇中も、ダウンロードはかなり不足、ストリーミングはDespacitoを抜けるかも?)

 

来週 9/16 1位17週目? (この週は危うい?ラジオがかなり落ちてきています)

ライバル1:Taylor Swiftのシングル (ダウンロードはかなり期待できる、ラジオも1週目にしてはかなり伸びそう。あとはYouTubeなりSpotifyなり、どこまでストリーミングを開放するかも少し重要な要素かもしれません)

ライバル2:Cardi BのBodak Yellow (同上。Taylor Swiftに1位を阻まれそうなあたり、チャートアクションがAll About That Bassと似ていますね)

 

Despacitoは「夏感」が強かったせいか、夏も終わりかけてきた現在ラジオでジリジリ数字を落としつつあります。(今週5位に)この数字をどこまでカバーできるでしょうか。

 

✫年間1位争いについて

正直、3月頃に今年の年間1位はShape of Youで決定と思っていました。が、Despacitoがこうも1位に長く居座るとなると少し迷いも出てきます。例年1位滞在の長い曲よりも「時期の良い曲=ピークが3月くらいまでトータルチャート”滞在”週数が長い」曲が年間チャートでは上位に来る傾向があるので、今も変わらずShape of You!と言いたいところですが、Despacitoも実は早い時期からチャートに入っていて、実はShape of Youとチャートの滞在週数自体は同じなのです。つまりいかに上位に入っていた時にポイントを稼いだか?ということが勝負の焦点となると思います。現在トップ10の滞在週数はShape of Youが32週、Despacitoが18週と開きはあるのですがDespacitoがまだまだトップ10に居座りそうなこと、値下げダウンロードという伸びシロがまだあることなどから年間チャートの集計時にはDespacitoが1位に立つ可能性のほうが若干高いのでは?という考えに至りました。

ただ、上記の通りDespacitoはラジオで数字を落としておりShape of Youと10月あたりに順位が入れ替わるかもしれません。そうなればShape of Youが年間1位になる可能性が高くなりますし、またそうでなくとも年間チャートではHot 100の順位感覚よりも若干ラジオでヒットしたシングルが上位に来る傾向があるので、その傾向が今年もあればShape of Youが年間1位になるでしょう。

現状年間1位はDespacito 55%、Shape of You 45% と私は考えています。

 

× Fifth Harmony feat. Gucci Mane – Down (↓)

Fifth HarmonyのDownが圏外へ外れました。前回チャートから外れた時は”Jay-Zの曲が大量エントリーした”というエクスキューズがあったものの、今回は単純に調子を落としてチャートから外れています。カミラ脱退後初のシングルでしたが、両者ともに思うようにヒットせず。(Camila CabelloのCrying in the ClubとFifth HarmonyのDownは似たような成績でチャートを後に)今週アルバムがリリースされるのですが、何かそこからヒットに繋がりそうな明るい要素は見つかるでしょうか。

※一方Camilaには浮上の兆しが。Havana、OMGともにストリーミングで好調です。(特にHavana)

 

× Future feat. Nicki Minaj – You Da Baddest (↓)

Chris BrownとのPIEに続いて、HNDRXXの新しいトラックとして追加されたNicki MinajとのYou Da Baddestでしたが、あまりインパクトを残せず2週のチャート滞在でチャートを後に。ビデオまでリリースして本格的にプロモーション。そしてダウンロードでもしっかりと数字を稼いだものの、ストリーミングが持ちませんでした。先述のPIE、このYou Da Baddest、そしてアルバム”Future”のほうに入ったYGとのExtra Luvも併せて、全体的にFutureが試みた”追加トラック”の実験はインパクト薄く終わったように思います。

※Mask Offがもともとシングルでもなく、ビデオが無い状態から大ヒットしてFutureキャリア最大のヒットになったのに対し、ビデオを用意してしっかりプロモーションした曲はそこまでヒットせず……ということは今年の「ヒット」を語るうえで重要な要素なのかもしれません。

 

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Cardi B – Bodak Yellow

今週最もダウンロードが上昇した曲 P!nk – What About Us

今週最もストリーミングが伸びた曲 Bruno Mars – Versace On The Floor

最も高い順位で新登場した曲          Marshmello feat. Khalid – Silence

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Camila Cabello feat. Young Thug - Havana (🗻99位 /⏰1週)

95 Descendants 2 Cast – Chillin’ Like A Villian (🗻95位 /⏰1週)

90 Fifth Harmony feat. Gucci Mane - Down (🗻42位 /⏰9週)

87 Future feat. Nicki Minaj – You Da Baddest (🗻38位 /⏰2週)

85 China Anne McClain – What’s My Name (🗻61位 /⏰3週)

81 Camila Cabello feat. Quavo – OMG (🗻81位 /⏰1週)

44 Julia Michaels – Issues  (🗻11 /⏰29)

 

 

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲をピックアップしました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora、Apple Music、各種ラジオなど)

 

Bonnie Tyler – Total Eclipse of the Heart

Pink FloydEclipse

The Beatles – Here Comes the Sun

Creedence Clearwater Revival – Bad Moon Rising

Manfred Mann's Earth Band - Blinded By the Light

Cat Stevens – Moonshadow

Soundgarden - Black Hole Sun

Grace VanderWaal - Moonlight

日蝕を記念して、その関連曲がiTunesで急上昇。1日限定ですが、Bonnie TylerのTotal Eclipse of the HeartはDespacito(合算)の2倍程度の数字を記録していました。多分週の合計になるとDespacitoを下回るとは思いますが。とはいえ、Hot 100への再登場の可能性が高いと思います。

 

Gucci Mane feat. Migos – I Get the Bag (Spotify27位、Apple Music 3位)

今年好調な2組の新曲がストリーミングで絶好調。次のストリーミングキングはこれでしょうか!

 

Kodak Black feat. XXXTENTACION – Roll in Peace (Spotify51位、Apple Music 4位)

特異なスタイルを武器にする若手二人の1曲も好調です。この組み合わせはラップ・ファンにとって見逃せないでしょう!!!

 

Camila Cabello feat. Young Thug – Havana (Spotify 21位)

今週Hot 100に42位で登場したMarshmelloのSilenceと並んでいまSpotifyで最も勢いのある曲の一つ。今週はHot 100から落ちてしまいましたが、近いうちに復帰しそうな勢いを見せています。

*1:後述の1-800-273-8255、Locationよりは下