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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Phoebe Ryan / James (EP) レビュー 【個性的なボーカルセンスを持つ緑髪の眠り姫?】

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当サイトで何回か取り上げているPhoebe Ryanが10/27にJames (EP)をリリースしたので、レビューをします。↓Phoebe Ryan関連の過去記事です。

 


 

また、このEPのリリースに当たってインタビューを受けていたようなので、そちらも参照してみてください。このレビューもそのインタビューの内容を参考にしています。

 

 

 


 

レビューに入る前に、シングルのカバー画像を本人が書いているらしいので、それを見ていきましょう。

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そしてJames Has Changedのリリックビデオも絵です。


 

本人曰く、曲作りの合間にけっこう絵を書くみたいです。

 

ではレビューに入っていきます。

1 幅が広がったポップセンス

2 ポップス?インディー?両方?

3 おまけ:なぜ眠り姫?

 

 

1 幅が広がったポップセンス

2015年のEP、”Mine”で独特なボーカルセンスを初めて披露したPhoebe Ryan。そのEPにも収録されたDo You.. / Ignition のマッシュアップで注目を集めると、その次にリリースした表題曲Mineでさらなるスポットライトを浴びます。

最初に彼女に目をつけたのはTove Lo。この曲良いね!とツイートをし、そこから自身のツアーの前座にするなど交流が続いています。Phoebe RyanもTove Loを慕っているようで、「Tove Lo先生の言うことはいつもすごい!一言も聞き逃せない!」と語っています。(ビルボードのインタビューより)

その後は、Taylor Swiftが2015年に各SNSで発表した”New Songs That Will Make Your Life More Awesome (I Promise!)”というリストにそのMineが入り、2016年にはThe ChainsmokersがCloserの次にリリースしたAll We Knowの客演に入るなど、ポップス界の巨星からも注目される存在に。着実にキャリアを前進させています。

他にもAll We Knowに引き続きThe Chainsmokersのアルバムで1曲バックコーラスを担当(Bloodstream)、Britney Spearsのアルバムでソングライト、アルバムチャートで2016年間44位に入ったMelanie Martinezのアルバムでも(ボートラですが)ソングライトを担当するなど、要所で活躍中です。

 

このような経験が生きたのか、今回のEPでは以前よりも格段に曲作りの幅が広がっている印象を受けました。

2015年のEP、Mineでは「Phoebe Ryanとはこういうスタイルのシンガーです!よろしくね!」という自身の音楽スタイルを紹介するような作品でしたが、今回のEP、Jamesでは「私の音楽スタイルを活かして何が出来るのか?」を証明する作品であると感じました。

 

アルバム最初のShould IではJamie xx風(On Hold風?)のインディー系エレクトロサウンドを取り入れています。インディーとポップのバランスをうまく取っている曲で、一番取っ付きやすい曲かもしれません。おそらく万人が好きな曲だと思います。(Apple Musicでも✫がついています)Should Iが気に入ったならば、このEPには入らなかったChronicという曲も好きかもしれません。

Be Realは早口歌唱で始まります。そこから夜空に広がる星のようなスケールのあるコーラス、という展開が良い1曲です。夜空に広がる星、というイメージはBe Realのイラストから取っています。ヒップホップというほどでもないですが、ラップ調と自身のスタイルをうまくかけ合わせた曲だと思います。

AspirinはEPの中で一番壮大な一曲。最後に向かって盛り上がっていき、終盤のエモーショナルなフェードアウトが特徴だと思います。

次のJames Has Changed個人的なEPのベストトラックです。”James”はEPのタイトルにもなっていて一番気合が入っているのかもしれません。Phoebe Ryanっぽさが一番表れている曲で、彼女が持つポップセンスがよく発揮されていると思います。私を含む多くの人は2015年のMineを聴いてPhoebe Ryanのファンになったと思うのですが、この曲を聴いてファンになる人も多いのでは?と思いました。今後どのようなヒットに恵まれるかは分かりませんが、しばらくPhoebe Ryan2大エッセンシャルはMineとJames Has Changedだと私は思います。

最後のForgetting All About Youは一番ポップな曲です。現状で一般的に好まれている曲はShould Iのようですが、一番メインストリームに近く、ヒットの可能性がより高いのはこちらのForgettingなようにも思います。客演は今年do re miでトップ40にも入ったblackbearです。同じメインストリーム路線の曲としては、今年リリースした(EPには入らなかった)Dark Sideが挙げられます。

 

自身のスタイルを活かしつつ、新たな要素も取り入れた今後に期待が持てる内容のEPだと思います。曲数は少ないですが、「通しで聞く一つの曲群」としても説得力があると思います。(EPサイズだとプレイリスト的なノリでシャッフル再生上等!のようなものもあるので)

 

 

2 ポップス?インディー?両方

 

2015年のEP、今回のEPでインディー系ポップ*1、メインストリーム系ポップ両方の素質を見せているPhoebe Ryanですが、今後はどちらに進んでいくのでしょうか。

idolatorのインタビューでこのようなやりとりがありました。

 

Are you happier doing more commercial songs like The Chainsmokers collaboration or indie fare?

(The Chainsmokersと組んだ時のようにメインストリーム寄りの音楽か、インディー寄りの音楽、どちらをやっていきたい?)

それに対して……

 

It’s so interesting just thinking about the last question you asked about the sound, all the different vibes I’m going for. I feel like since I began doing music, I have always just been so inspired by all different kinds. In college, I was in a folk band for three years. I was in a punk/screamo band, I was all over the place. I feel like I’m good at just being a little bit of a chameleon in a way. And I don’t think that’s a bad thing. Really at the end of the day it just comes down to the vocal. That’s literally it.

It comes down to the songwriting and the vocal and it being good. It just all has to come together. Whether it’s a Chainsmokers song, whether you’re singing a Bob Dylan cover. I love the songs.

自身の音楽遍歴を語りつつ、最後に「良い曲を書いて、良いボーカルを作ることが大切だと思う!チェインスモーカーズの曲だとしても、ボブ・ディランのカバーだとしても曲を愛するのよ」(意訳)と、ポップス / インディーの壁はあまり気にしていない模様です。

 

自身のセンスを巧みに発揮しポップスでもアクセントとして活躍し、ポップス方面から注目され始めているPhoebe Ryan。ポップスの名参謀として今後の活躍が見込めそうですが、一人のアーティストとしてアルバムをどう作り上げるのか?という点がやはり気になります。

Popcrushのインタビューでは 「EPの次は何をリリースしますか?」という質問に対し、

“Album. Album album album. Where is the album? We want the damn album.”

とアルバムを連呼しており、近いうちのリリースに少し期待を持てます。

 

歌詞分析サイトGeniusでは Expected 2018 の “PR1”というアルバムページが既に出来上がっています!まあ、憶測レベルでしょうが……



そのアルバムで自身のスタイルを確立し、批評家などのインディー方面からも注目されたら素晴らしいと思います。最近のCarly Rae Jepsenのような、ポップスとインディー両方から支持されるようなアーティスト像が一つの理想なのかなと思います。

独自のボーカルセンスに加え、ポップスの素質、インディーの素質どちらとも兼ね備えていると思うので、今後の多方面での活躍を期待したいです。

 

 

3 おまけ:なぜ眠り姫?

 

各所で「寝ることが好き」のような記述が見られるため、こう命名してみました

↓のインタビューでは


「午後の3時に目を覚ます、真のロックスターのような生活。どうやら前日のゲームが原因― 主にマインクラフトを午前6時までやっていたようだ」と紹介されており、

 

またidolatorのインタビューで

I know you’re currently on the road. What’s the best and worst thing about touring?

(Touringで好きなことと苦手なことは何ですか?)

※Touringは音楽のツアーか、単なる「旅」かは不明。

という質問に対し、

「Touringで好きなことは寝ること!誰にも邪魔されずに一日中寝ていられる!」と答えています。

 

緑の髪の毛も目立ちますが、Phoebe Ryanには眠り姫?という特性もあるみたいです!

 

 

 

*1:インディーポップと評されることが多い