チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 12/16 見どころ【新規層を開拓?G-Eazy + Cardi B再びトップ10へ / クリスマス女王の帰還】

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今週の注目はG-Eazy・Cardi B・A$AP RockyのNo Limitのトップ10入り。G-Eazyは以前のMe, Myself & Iとは違うヒットの仕方をしているのですが、どう違うのかを説明していきます。写真の左にいるのはG-Eazyの恋人Halsey。

またクリスマス女王がHot 100に帰ってきました。

 

※Meant to Beの項目で確認不足による粗相をしてしました、申し訳ないです。(現在は訂正しました)

 

 

100 Shakira feat. Nicky Jam – Perro Fiel

Shakiraの今年のアルバムからの3曲目のシングル、Perro Fielが100位で登場。ラテン系ラジオ(2位)、YouTube(全体で14位)などが主要なポイント源で思われます。客演のNicky Jam色の強いレゲトン風ポップです。

 

99 Chloe Kohanski – Total Eclipse Of The Heart

The Voice出場者Chloe KohanskiによるTotal Eclipse Of The Heart(Bonnie Tylerのカバー)が99位で登場。ストリーミングで扱われておらず、商用リリースではなくラジオでもほぼかからないので、(だいたい)ダウンロードのみでのエントリーです。ダウンロードだけなら6位のこの曲ですが、他の要素がほぼ0なのでヒットを多角的に分析するHot 100では99位になってしまいます。

同じくThe Voice出場者のAddison AgenのA Case Of Youもダウンロード13位に登場していますが、同じくほぼダウンロードのみでのポイント集計のためHot 100に登場せず。今後数週はThe Voice勢のエントリーが続きそうです。

 

98 Kelsea Ballerini – Legends

前回のグラミーで新人賞にノミネートされていたカントリー歌手Kelsea BalleriniのLegendsが98位で登場。今年リリースされたセカンドアルバムUnapologeticallyからの1曲目のシングルです。リリースのタイミングではHot 100に登場しませんでしたが、カントリー系ラジオで人気となり(今週カントリー系ラジオ14位)今週Hot 100にエントリーしました。

※意外とソングライトを他人に任せている(=曲のソングライトのクレジットに自身が載っていない)カントリー歌手が多いのですが、Kelsea Balleriniはファースト・セカンドアルバムの両方の全曲に自身の名前がソングライトにクレジットされているようです。

 

91 Jake Paul feat. Team 10 (& Gucci Mane) – It’s Everyday Bro

アメリカのYouTuber、Jake PaulのIt’s Everyday Broが91位で再登場。ビルボードには表記されていませんが、Gucci Mane入りのリミックスをリリースして再注目されたことがHot 100に今週入った理由だと思われます。Jake Paul & Team 10名義のEPも12/1にリリースされています*1。このEPにはRae SremmurdのSlim Jxmmiも登場しています。

※日本でもYouTuberの曲は注目されていて、Hikakin & Seikinの『雑草』がiTunesで瞬間的に1位に入り、Billboard Japan Hot 100でも19位にランクインしていました。

 

86 Farruko, Nicki Minaj, Bad Bunny, 21 Savage & Rvssian – Krippy Kush

Farruko、Bad BunnyなどのKrippy Kushが86位で登場。ラテン界隈で人気だったこの曲にNicki Minaj、21 Savageがリミックスに加わることでHot 100に到達しました。

この曲のように、ラテンのヒットに北米のラッパー/歌手が新たに追加され、ヒットというパターンはDespacito、Mi Genteなど今年多くありましたが、今後は逆に英語圏のヒットにラテン系ラッパー/歌手が追加されヒットにつながるというパターンが増えるのか?と個人的に少し注目しています。

原曲を超えるほどではないですが、Camila CabelloのHavanaのDaddy Yankeeリミックスが最近それなりにヒットしています。またラテンとは少し違いますが、Iggy Azaleaがブラジル人シンガーAnittaを客演に迎えたところ、歌詞は英語ながらも英語圏ではなく母国ブラジルのみ(ほぼ)でヒットとなったという事例も今年あります。今後は非英語圏のパワーがどこまで英語圏に影響を及ぼすか?に注目です。

 

52 Kodak Black feat. Lil Wayne – Codeine Dreaming

Kodak Blackが今年のEP、Project Baby 2に何曲かを追加。そのうちCodeine Dreamingが人気で、Hot 100の52位で登場。このEPに同じく収録されているXXXTentacionとのRoll In Peace(53位で登場)と同じくらいの順位で登場しています。Apple Music内のトップ10をキープするなどストリーミングで好調なので、数週チャートに残りそうです。

 

40 Bebe Rexha & Florida Georgia Line – Meant To Be

ダウンロードの強さ(ここ最近ダウンロードがトップ10)に加え、ポップ系ラジオでの浮上(今週31位 → 28位)によりBebe Rexha, Florida Georgia LineのMeant To Beがトップ40に浮上しました!今週40位。Bebe Rexha「メイン」*2の曲では初のトップ40入りです。(I Got Youは43位ピークでした)

David Guetta、Louis Tomlinsonの客演、またEminemのソングライター(The Monsterにて)など裏方の仕事がこれまでは多かったBebe Rexhaですが、自身がスポットライトを浴びるシンガーとしても伸びてきていますね!

※今週からカントリー曲であると判断され、Hot Country Songsに入ったこのMeant to Be。従前のカントリー曲のうち最高位がHot 100で今週48位のLANCOのGreatest Love Storyなので、Meant To Beは今週Hot Country Songsで初登場1位を変わった形で成し遂げています。

何故このタイミングでジャンルの判断変更が起こるのかは不明。ビルボードのジャンルの判断基準はラジオのジャンル、また変更のタイミングはアルバムのリリースの前後にあることが多いのですが*3、この曲はアルバムリリースのタイミングでもなく、また最近ビルボードカントリー系ラジオチャートに登場した訳でもないので少し不思議なジャンル変更です。この曲のサウンド自体もカントリーというよりもポップのほうが強い気はします。

12/7追記 カントリー系ラジオにエントリーしていたので、ラジオを参考にジャンル判別をしているビルボードの妥当な判断でした。事実誤認の情報を伝えてしまい申し訳ありませんでした。今後はこのようなことがないように気をつけます。

 

36 Marshmello feat. Khalid – Silence

従来のストリーミング・ダウンロードでの好調に加え、ラジオで少しずつ上昇によってMarshmelloのSilenceがトップ40入り。今週36位。Illeniumのリミックスが好調でダウンロードが伸びた時は42位と惜しくもトップ40入りを逃していましたが、見事今週トップ40入り。

ただ、ストリーミングは今がピーク or 過ぎた感があり、さらなる伸びシロを求めるのは厳しいか。とはいっても短期間での2連トップ40入りは見事。Selena GomezとのWolvesは先週に引き続き20位。

 

29 NF – Let You Down

元から順調だったNFのLet You DownがiTunes割引によるダウンロード増でトップ40入りを達成。今週29位。今年自身初のアルバム1位を成し遂げてから勢いに乗っています。世界的にも人気で、Spotifyグローバルでもトップ10に入っています。(逆にアメリカでのSpotifyトップ10には入っていない)

歌唱法はラップと分類できるこの曲ですが、ヒップホップリスナーからはあまり注目されておらず、かかっているラジオの系統も専らポップです。

 

28 BTS feat. Desiigner – MIC Drop

BTSのMIC Dropが28位で登場!K-Popグループとしては初のトップ40入り。PSYは3曲でトップ40に入っていました。

韓国のアーティストとしては8曲目のHot 100エントリーです。(Wonder GirlのNobody、PSYのGangnam Style・Gentleman・Hangover・Daddy、CLのLifted、BTSのDNAに次ぐ) *4

Steve AokiとDesiignerを新たに加えたリミックス、そのビデオを一気にリリースしたことにより多くのダウンロード(今週4位の多さ)とそれなりのストリーミング(今週48位)によって高い順位での登場を達成しました。

これらの数字(特にダウンロード)はファンの力に依るところが大きいと思われますが、現在ポップ系ラジオでも上昇中でファン以外のライト層にも影響力を及ぼせるか注目です。

 

27 Kendrick Lamar feat. Zacari – LOVE.

シングル化以降好調のKendrick LamarのLove. 今週27位まで順位を上げていて、これはシングル化以降のLoyalty.(ビデオリリース時に31位。アルバムリリース時は14位)よりも高い順位で、今後シングルとしてのさらなる上昇が期待できそうです。

ヒップホップ系のラジオ局だけではなく、最近はポップ系のラジオ局にも人気が飛び火したようです。一回はHot 100から外れたLove.ですが、最近シングルとして浮上しHot 100に再登場。「第二のチャート人生」を送るLove.の動向を見守りたいです。

 

21 Mariah Carey – All I Want For Christmas Is You

クリスマス女王がHot 100に帰ってきた!All I Want For Christmas Is Youが21位で再登場。この曲が意外にもトップ10入りの経験が無いのは、リリース当時のHot 100は、シングルカットされた曲のみを取り扱っており、この曲はラジオでかかっているもののシングルカットされていなかったため、Hot 100の取扱対象外に。実はリリース時はHot 100に入ってすらいなかったのです。(このシングルカットのルールは1998年に解除されています)

その後もクリスマス時期に再浮上するのですが、過去のヒット曲とされチャート再登場に制限がかかっていました。ですが2012年以降過去の曲が再登場できるようになり、それ以降は毎年クリスマスの時期に再登場するようになりました(似たような事例にハロウィン期のThrillerがあります)

2015年にはトップ10目前の11位まで上昇していたこの曲。今年はそのピークを更新できるのかが見どころです。

ちなみにGoogleでこの曲を検索するとこんな粋な図らいが……

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8 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B – No Limit

G-Eazy、A$AP Rocky、Cardi BのNo Limitがトップ10に到達!G-Eazy、にとって2曲目のトップ10、A$AP Rockyにとっては*53曲目のトップ10。Cardi BはBodak Yellow以降待望の2曲目のトップ10入りです。Migos, Nicki MinajとのMotorSportも一時期14位(今週17位)とCardi BはBodak Yellow以降、勢いを落とすこと無く大活躍しているといえます。

※以前とのG-Eazyとの違いについて

前アルバムWhen It’s Dark OutでMe, Myself & Iなどヒットを連発したG-Eazy。その時の主戦場はポップスで、例えばMe, Myself & Iはポップ系ラジオの1位に到達。その他Some Kind of Drugでもポップ系ラジオ39位にはいり、またBritney SpearsやGraceの客演でポップ系ラジオの中位に達しています。一方Hip Hop / R&B系ラジオではChris Brown・Tory LanezとのDriftingが48位に入る程度。(When It’s Dark Outに収録)。

このようにラッパーながらもヒップホップ層から以前は注目されていなかった彼ですが、このシングルでは評価が逆転。このNo LimitはHip Hop / R&B系ラジオでは現在2位に入る一方、ポップ系ラジオでは未だ40位圏外。以前とは支持層が大きく変わる結果に。

ポップ系は今回軽視?かというとそうでもなく、次シングル、HalseyとのHim & Iはポップ系ラジオを快調に登っているようです(まだ40位圏内に入っていないようですが)

Cardi Bを擁しヒップホップ層の人気を勝ち取り、Halseyを擁しポップ層の人気を勝ち取る……この「二刀流」の姿勢はアルバムでどこまで花開くでしょうか。アルバムには他にヒップホップ層としてJay-ZやKehlani、E-40。ポップ層としてはCharlie Puthが登場予定。

意図的なのか偶然なのか、同じ白人ラッパーのEminemとアルバムのリリース日が被っているようです!この週のアルバムチャート争いは注目です。

 

 

今週チャートから外れた曲 (9曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

 

98 Tim McGraw & Faith Hill – The Rest Of Our Life (🗻98位 /⏰1週)

97 Chris Stapleton – Broken Halos  (🗻92位 /⏰4週)

96 YoungBoy Never Broke Again – No Smoke (🗻96位 /⏰1週)

94 Chris Brown – Questions (🗻78位 /⏰13週)

93 Macklemore feat. Skylar Grey – Glorious (🗻49位 /⏰19週)

90 Machine Gun Kelly, X Ambassadors & Bebe Rexha – Home (🗻90位 /⏰1週)

84 Carly Pearce – Every Little Thing (🗻50位 /⏰17週)

81 Young Thug feat. Future - Relationship (🗻65位 /⏰14週)

79 Lil Peep – Awful Things (🗻9位 /⏰1週)

 

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Ed Sheeran - Perfect

今週最もダウンロードが上昇した曲 Halsey - Bad At Love

今週最もストリーミングが伸びた曲 NF - Let You Down

最も高い順位で新登場した曲         BTS feat. Desiigner - MIC Drop

 

 

来週以降にHot 100に入るポテンシャルを持った曲をピックアップしました

 

G-Eazy & Halsey – Him & I

カップル同士の1曲。ダウンロード(iTunes現在3位)・ストリーミング(Spotify 8位)でロケットスタートを切った上、ラジオでも順調とNo Limitに引き続きヒットになりそうです。少しHalseyのファーストアルバムっぽい雰囲気を感じます。

 

Brenda Lee - Rockin' Around The Christmas Tree

クリスマス曲の、次のHot 100エントリー候補です。

 

 

*1:本人的にはアルバム扱い?らしいです。Gucci Mane入りリミックスの音源の最後に”Album December 1 st!”と連呼しています

*2:客演などではなく、自身がメインの曲という意味。トップ10に入ったMe, Meself & IではG-Eazy “&” Bebe Rexha で客演ではなかったのですが、G-Eazyのアルバム用の曲なのでBebe Rexhaは客演のような立場なのでBebe Rexha「メイン」ではなかったです。とはいえなぜ客演ではなく”&”で括られたかというと、この曲がもともとBebe Rexhaが作った曲でそこにG-Eazyがラップを乗せたといされるなど、Bebe Rexhaの作詞への寄与度が高いから?と思われます。Martin GarrixとのIn the Name of Loveも似たような感じです

*3:例:Bruno Mars https://www.billboard.com/charts/r-b-hip-hop-songs/2016-12-17

*4:ちなみに日本のHot 100エントリー曲数と並んでいます。他のK-Popが先にHot 100に入るか、それとも植野有砂が客演にいて現在ラジオで上昇中のBest Friendが先にHot 100に入るか……

*5:F**kin’ Problems・Selena Gomezの客演Good For Youに次ぐ