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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

1/12 リリース新曲/新作の初動を観察 【Troye SivanやCamila Cabello、評論とセールス両方で躍進??】

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 先週はBruno Mars、Justin Timberlakeなどの大物シンガーのリリースが多かったですが、今週際立ったのはTroye Sivan・Camila Cabelloという若手シンガーたちです!

 Camila CabelloのアルバムはそのTroye Sivanが太鼓判を押しています。

 

 

Spotify デイリーのアメリカトップ10 (金曜日)

1 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
2 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse (Remix)
3 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B No Limit
4 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
5 Cardi B feat. 21 Savage Bartier Cardi
6 Camila Cabello Never Be the Same
7 Post Malone I Fall Apart
8 Offset, Metro Boomin Ric Flair Drip
9 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
10 G-Eazy & Halsey Him & I

 

 Bruno Mars・Cardi BのFinesseがrockstarに迫るものの、rockstarが1位をキープ。そしてアルバムをリリースしたCamila Cabelloのシングルが2曲Spotifyトップ10に浮上。各国でヒットの実績を既に残しているHavanaが4位、次シングルのNever Be the Sameが6位まで浮上しています。Havanaはアルバムリリース前からSpotifyのトップ10にいましたが、Never Be the Sameはこのタイミングで大幅な浮上を成し遂げました。アルバムリリースのタイミングで「発掘」され、今後はシングルとしても成功を収めることができるでしょうか。
 ほか先週リリースのKendrick Lamar・SZAのAll the StarsがSpotifyトップ10をキープする一方、Justin TimberlakeのFilthyは40位まで順位を落としています。

 

② 新曲/新アルバムからのシングル アメリカSpotifyデイリー順位 (金曜日)

13 Troye Sivan My My My!
※34 Camila Cabello Real Friends
■35 Taylor Swift feat. Ed Sheeran & Future End Game
44 Camila Cabello In the Dark
50 Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake King's Dead
55 Marshmello & Lil Peep Spotlight
■58 Dua Lipa IDGAF
74 Camila Cabello Into It
77 Camila Cabello She Loves Control
81 Camila Cabello All These Years
92 Eminem feat. 2 Chainz & Phresher Chloraseptic (Remix)
107 Camila Cabello Consequences
115 Camila Cabello Inside Out
123 Camila Cabello Something's Gotta Give
162 Carrie Underwood feat. Ludacris The Champion
175 Enrique Iglesias feat. Bad Bunny EL BAÑO

※ 新アルバムに登場

■ ビデオが新しく公開された曲

 

 まずはTroye SivanのMy My My! 彼はまだHot 100エントリーが3曲でそこまで上位にも入っていない(Youthが23位、Happy Little Pillが92位、Martin GarrixとのThere For Youが94位)ですが、iTunesでも瞬間最高3位まで到達・そしてSpotifyでも13位まで食い込むなど躍進しています。評価が高く(批評メディアの多くで80点前後を記録)、ロングヒットだった(週ピークが7位ながらも、2016年間で53位)、前アルバムBlue Neighbourhoodでの熱量が一気にシングルリリースで昇華されたということでしょうか!
 そしてこの曲最大のサプライズはPitchforkがBest New Trackに選んだということ。Pitchforkは今まで彼を取り上げたことは無かったですが、近年のポップス重視の流れを受けて、このタイミングでのBest New Track選出に踏み切ったようです。
(Pitchforkのポップス化については↓の記事)


 そしてCamila Cabelloのアルバムからは全10曲が全てランクイン。女性シンガーとしてはかなり「ストリーミングで大成功」といえる成績で、Spotifyの記録が残る2015年以降、アルバムの全曲がSpotifyデイリーのランキングに入ったのはSelena Gomez (Revival)、Rihanna(Anti)、Lorde(Melodrama)、Taylor Swift (Reputation)、そしてCamila Cabello (Camila)の5名のみ。今回のCamilaは成績も全体的に高く、Lorde、Taylor Swiftを上回る成績*1を記録しています。 つまりここ2年弱くらいの女性シンガーのアルバムで「最もストリーミングで成功したアルバム」ともいえるかも。
 このアルバムには元々、Ed SheeranやChance the Rapper、Charli XCXなどの豪華ゲストの参加が噂されていましたが、結局ゲストはHavanaでのYoung Thugのみ。特にEd Sheeranがゲストにいれば、注目は容易に集められるだろうし、ヒットも確実でしょう。そのような豪華ゲストを切ってもここまでのストリーミング成績を収められたということは、それだけCamila Cabelloに対する期待感が高かった、そしてアルバムが良かったということが言えると思います。
 批評家からの評価はまだ出きっていませんが、NMEで4/5点など上々の評判。これから他のメディアが何点をつけるか気になります。
 
 上記した5アルバムのうち、Selena Gomez、Rihanna、Taylor Swiftは知名度が高いですが、その3人と比べるとLorde、Camila Cabelloはやや知名度低め(相対的に)。つまり、この2アルバムに今後「いかに女性シンガーがストリーミングで成功するか?」というヒントがあるようにも思います。
 この2アルバムでは両方ともFrank Dukesというプロデューサーが活躍。LordeのMelodramaでは6曲/11曲をプロデュース、そしてCamila CabelloのCamilaではメインのプロデューサーを務めています。この2アルバムは彼のもと、ゲストは少なく「アルバム単位としての構成」を意識した作品だと思います。(Camilaのほうはある程度Melodramaを意識した構成だと思います) この2つのアルバムは近年の女性シンガーのアルバムの成功例として一つの目安になると思います。

 ほか、映画ブラックパンサーからの、Kendrick Lamar、Future、Jay Rock、James BlakeのKing's Dead、MarshmelloとLil PeepのSpotlightなどが登場。両方とも独特なビートが特徴のラップ曲です。
 また、ビデオがリリースされたEnd Gameはそこまで上昇せず。効果が現れるのはこれから?Dua LipaのIDGAFはこれからシングル化でしょうか。

 

 iTunesアメリカップ10+新曲の順位 (金曜日)

($は割引)

1 Carrie Underwood feat. Ludacris The Champion
2 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse (Remix)
3 Ed Sheeran Perfect
4$ Camila Cabello feat. Young Thug Havana
5$ Bebe Rexha & Florida Georgia Line Meant to Be
6 Justin Timberlake Filthy
7 Dan + Shay Tequila
8 Troye Sivan My My My!
9 Imagine Dragons Thunder
10 Post Malone feat. 21 Savage rockstar

 

11$ Camila Cabello feat. Young Thug Havana (アルバム)
□12 Taylor Swift feat. Ed Sheeran & Future End Game
13 Camila Cabello Never Be the Same
21 Ansel Elgort Supernova
28 Marshmello & Lil Peep Spotlight
42 Blue October I Hope You're Happy
46 Enrique Iglesias feat. Bad Bunny EL BAÑO
51 Camila Cabello Consequences
63 Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake King's Dead
73 Anderson East All On My Mind
77 Russ Flip
81 Scotty McCreery  Wherever You Are
91 Camila Cabello Something's Gotta Give
95 Hunter Hayes This Girl
97 Upchurh & Colt Ford Shoulda Named It After Me
98 Camila Cabello All These Years

 

 iTunes首位に立ったのはCarrie UnderwoodのThe Champion。カントリー歌手のCarrie Underwoodですが、この曲は彼女が客演を務めたKeith UrbanとのThe Fighterのようなポップ曲で、カントリー以外のリスナーにも人気になるかも。
 ほかTroye SivanのMy My My!が8位まで躍進、ほかカントリーデュオのDan + ShayのTequilaが上位につけています。

 End Gameはダウンロードもまだそこまで伸びていません。そしてもう一つ注目なのはCamila CabelloのアルバムからのiTunesでの人気曲で、iTunesで人気*2のConsequences、Something's Gotta Give、All These YearsはSpotifyではどちらかというと人気の無い曲でした。これはiTunesSpotifyのユーザーの趣味が違うということなのか、またSpotifyで聞きたい曲とiTunesでダウンロードしたい曲が違うということなのか、真相はよく分かりませんが、「サービスごとの分断」という点で興味深い現象な気がします。(ほかApple MusicとSpotifyで人気曲が違ったりする)

(参考 Apple MusicとSpotifyの違いの2記事)

 


 

iTunes アルバム順位 (アメリカ)

1 Camila Cabello Camila
2 Various Artists The Greatest Showman
3 Black Veil Brides Vale
4 Anderson East Encore
5 BØRNS Blue Madonna
6 Taylor Swift Reputation
7 Eminem Revival
8 Joe Satriani What Happens Next
9 Ed Sheeran ÷ (Deluxe)
10 Corrosion of Conformity No Cross No Crown

 

 iTunesでも首位に立ち、ストリーミングで上々の成績を記録しているCamila CabelloのCamilaですが、ライバルのThe Greatest Showmanのサントラもダウンロード・ストリーミングの両方で高い数字をキープしているため、アルバム首位争いで勝てるかは微妙です。
 ですが、仮にアルバム2位だとしても、古巣Fifth Harmony越えは達成できます。(Fifth Harmonyはセルフタイトル、7/27でのアルバム4位が最高位)

 ほかBlack Veil Brides、BØRNS、Joe Satriani、Corrosion o Conformityなどのアルバムが登場。

 

⑤現在ラジオで上り調子の10曲

25 Justin Timberlake Filthy
7 Dua Lipa New Rules
3 Halsey Bad At Love
187 Luke Bryan Most People Are Good
20 MAX feat. gnash Lights Down Low
4 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
28 Migos, Nicki Minaj & Cardi B MotorSport
1 Ed Sheeran Perfect
26 NF Let You Down
6 Sam Smith  Too Good At Goodbyes

 

 Filthyが驚異的なスピードでラジオの数字を伸ばしています。ほかMAXのLights Down Lowの粘りにも注目です。

 

⑥各ラジオ局で今週かかりはじめた曲

✫ポップ系

14 Justin Timberlake Filthy
47 Maroon 5 Wait
48 Lil Pump Gucci Gang
49 Lost Kings feat. Sabrina Carpenter First Love
50 Alan Walker, Noah Cyrus & Digital Farm Animals All Falls Down

 Filthyはもう14位まで到達。Maroon 5の次シングルはWaitに。またLil PumpのGucci Gangがこのタイミングでポップ系ラジオに到達。ストリーミングは既に下り坂ですが……あと最近こんなリミックスも……(チャートへの影響はないです。)


 

✫アダルトポップ系

21 Justin Timberlake Filthy
45 Vance Joy Lay It On Me

 ここでもFilthyは強いです。オーストラリアのシンガーVance Joyが登場。

 

✫リズミック系

16 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
31 Justin Timberlake Filthy
40 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
49 Migos Stir Fry
50 Sofi Tukker feat. NERVO, The Knocks & Alisa Ueno Best Friend

 Bruno Mars、Justin Timberlakeの両者が急スピードで上昇中。この2名はかかる系統も広く、ラジオでの強さが伺えます。またSofi TukkerのBest Friendがリズミック系にも登場。ラジオの成績をさらに伸ばして、Hot 100でも順位を伸ばせるか。当面の目標はピコ太郎超え??? (PPAPはピーク77位/滞在4週)

 

✫アーバン系

27 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
39 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
40 SZA Broken Clocks
49 Tank When We
50 H.E.R. Focus

 Bruno Marsは直近のアルバム、24K Magic以降はアーバン系ラジオでも人気。SZAの次シングルはBroken Clocksのようです。タイミングからいして、グラミー効果でのヒットも期待できるかも。
 またTANKやH.E.R.などのR&B系シンガーも登場しています。

 

 

*1:収録曲が全体的にSpotifyデイリーの順位でどこまで高いか?という観点において

*2:シングルのHavana、Never Be the Same以外で