チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 2/3 見どころ 【Vine出身の新星登場 / Drake一位デビュー / SZAの無念】

f:id:djk2:20180201000854j:plain

 写真はVine出身と言われているBazzi。今週MineがHot 100に登場。今後の上昇に期待が持てます。ほかDrakeが数々の記録を打ち立て、Hot 100首位デビュー、ほかSZAの無念、Twitterアカウント@Chartdataの話など

 

 

99 Plies – Rock [New]

 フロリダのベテランラッパー、PliesのRockが99位で登場。Apple Musicで150位前後、Spotifyで200位圏外などストリーミングのポイントを特に稼いでいるわけではないですが、She Is My Rock, Rock……のフレーズに合わせて踊る動画が流行しているようで、その人気でのHot 100エントリーしたのだと思われます。○○チャレンジのような名前はまだ無いみたいです

 

90 Quavo & Lil Yachty – Ice Tray [↓]

 来週のHot 100ではMigosの曲が大量登場する見込み。その影響で下位の曲が一気に圏外へと落ちてしまいそうです。MigosのメンバーQuavo自身のIce Tray(今週90位)をはじめとした90位以下の曲は来週ピンチです。ほか、日本のシンガー/DJ植野有砂が客演を務めるSofi TukkerのBest Friend(今週89位)、ラジオでもヒットしたBTSのMIC Drop(今週84位)あたりも今週ラストかもしれません。

 

88 Maroon 5 – Wait [Re]

 スナップチャットを使ったビデオのリリースもあり、Maroon 5のWaitが88位で再登場。シングル化してラジオでかかり始めたことも大きいです。ポップ系ラジオで今週26位。A Boogie wit da Hoodieのリミックスもリリースされましたが、これがチャートに反映されるのは来週です。ただし、リミックスよりも原曲のほうが人気なようです。

 

82 NF – No Name [New]

 昨年アルバム1位を獲得したことで話題となったNFの新曲No Nameが82位で登場。この曲はその1位を獲得したアルバムPerceptionには収録されていません。ダウンロードでは今週9位とかなりの数字を記録しましたが、一方ストリーミングではApple Music・Spotifyの両方で圏外など数字を稼げず。

 彼のシングルLet You Downは今週14位と好調をキープ。ポップ系ラジオで8位などラジオの好調が際立ちます。イギリス、ドイツ、オーストラリアでは既にトップ10入りを達成しており、それらに続く母国でのトップ10入りなるか。

 

71 Justin Timberlake – Supplies [New]

Justin TimberlakeのFilthyに続く新アルバムからのシングル、Suppliesが71位で登場。今週ダウンロード10位を記録。PharrellChad Hugoのユニット、The Neptunesがプロデュースした1曲です。既にリズミック系で33位など、ラジオでかかっていることから、アルバム宣伝用の曲ではなく、シングルとして売り出しているということが分かります。

今後ラジオの上昇で巻き返す可能性もありますが、71位デビューという順位は不足感があり、またFilthyも今週33位と下降中なので、彼の今回の路線はヒットがあまり期待できないかもしれません。アルバムはセールスでしっかり1位を取るでしょうが、ストリーミングの成績が低くなるかもしれません。

 

65 The Chainsmokers – Sick Boy [New]

 The Chainmokersの新曲Sick Boyが65位で登場。今週33位のダウンロードのほか、Spotifyでは一時期トップ10に入っていたのでストリーミングでもそれなりに数字を稼いでいると思われます。ラジオはスタートダッシュに失敗しており、Sick Boyよりリリースが1週間遅かったZeddらのThe Middleに既に抜かされているようです。(今週、Sick Boyはポップ系ラジオ40位圏外、The Middleはポップ系ラジオ38位)

 アルバム以降はヒットが少なく、(The One、Honestなどはトップ40に到達せず)やや勢いが落ちているようにも思えるThe Chainsmokers。今回のシングルはアルバムの路線を受け継いだようなロック寄りのサウンド*1が特徴的な1曲ですが、この曲で「様子見」して、ヒット具合次第では、路線を変えるという可能性もあるかもしれません。

 

※この曲ではCloserのソングライターShaun Frank、Don’t Let Me Downなど複数曲でソングライターを務めるEmily Warrenが、携わっていて少し「The Chainsmokersオールスター感」があるかも

※Something Just Like This、The Oneに引き続き週半ばのリリースです。

 

56 Bazzi – Mine [New]

 ミシガン出身のシンガーBazziがMineで初のHot 100入り。Mineが56位で登場しています。Apple Musicで18位・Spotify 12位などストリーミングでの好調が際立ちます。今週に入ってからはダウンロードも伸びてきているようで、来週以降はHot 100でさらに上昇の予感がします。彼はもともとVineなどで活動していたシンガーのようです。

 

彼はTwitterで↓のようなスクショを貼っていましたが、Apple Musicの「総合1位」ではなく「ポップス曲の中で1位」です。(Apple Musicはヒップホップが常に強いです。この辺りの時期はDrake、Cardi Bが総合1位を取っています) *2

 

 

39 Offset & Metro Boomin – Ric Flair Drip [↑]

 OffsetとMetro BoominのRic Flair Dripが39位とトップ40に突入。この曲はハロウィンにリリースされた21 Savage、Offset、Metro BoominのジョイントアルバムWithout Warningからの1曲ですが、この曲では21 Savageのバースが無くOffsetのソロ曲になっています。

 Offsetソロ名義では同アルバムからのGhostface Killersに続いて2曲目のトップ40。またプロデューサーのMetro Boominは21 Savage、FutureとのXに続いて2曲目のトップ40に。プロデューサーながらも裏方専門ではなく、精力的に活動しています。先日もGapのビデオに出演。


 

 

 Apple MusicとSpotifyの両方でトップ10に長く入り続けるなどストリーミングの強さが特徴の1曲。ヒップホップ系のラジオの下位に登場しているとの情報*3もあり、ラジオでも少しはポイントを稼いでいると思われます。

ストリーミングで強いアーティストはストリーミングで様子見してからシングルを決められるという点がチャートで強みになり得ると思います。近年はアーティスト/レーベル側が定めたシングルと、ストリーミングで人気のシングルがズレている事例もありますが、ストリーミング成績で様子見をすれば、そのズレに気づいてからシングル化できます。

 

38 MAX feat. gnash – Lights Down Low [↑]

 MAXのLights Down Lowが38位とトップ40に突入。自身初のトップ40に。客演のgnashは2016年にトップ10入りしたi hate u, i love uに引き続き2曲目のトップ40です。

ポップ系ラジオ10位で、ラジオ総合12位などラジオの強さが特徴的な1曲。アダルト○○系統のラジオでも人気です。リリースは2016年の10月でしたが、ラジオでじわじわポイントを稼いで今週トップ40入りと日の目を見ました。今週ポップ系ラジオチャートに入っている曲の中では最も長い27週目を迎えています。*4

 

 ちなみにそのポップ系ラジオでは今週Dua LipaのNew Rulesが1位に。またTroye SivanのMy My My!、KeshaのWomanなどがポップ系ラジオチャートに今週登場しています。

 

1 Drake – God’s Plan [New]

DrakeのGod’s Planが1位で登場。ダウンロードとストリーミングを制して初登場1位を達成しています。初登場からいきなり1位デビューするのは史上29曲目で、ラップとしてはI’ll Be Missing You、Doo-Wop (That Thing)、I’m the Oneに次いで4曲目の偉業。また、DrakeはDiplomatic Immunityも今週7位で登場しており、トップ10に2曲以上を「初登場」で送り込んだ3つ目の事例に(Ed SheeranのShape of You / Castle on the Hill・DrakeのPassionfruit / Portland に次いで)

ラジオの成績はまだまだ上がりきっていませんが、それでも1位になったのは圧倒的なストリーミング成績のおかげです。Spotifyでは世界合算 / アメリカで1日の再生数の記録を打ち破っています。ちなみにそれまで記録を持っているたのは、世界合算のほうがLook What You Mede Me Do、アメリカの方がDAMNリリース時のHUMBLE. ちなみにLook~は「リリース初日のアメリカのSpotify再生数トップ」という記録も持っていました。しかしこれらの記録は全てDrakeのGod’s Planによって塗り替えられました。ちなみにApple Musicでも再生数の記録を更新しています。

 リリース時期も良く、年間チャート1位候補の一つと言えそうです。ライバルになりそうなのはBruno MarsのFinessseですが、God’s Planがこのレースを制するにはラジオの成績が肝と言えそうです。

 Bruno Marsはラジオを得意としており、ポップ系だけでなく近年はR&B系ラジオでも人気です。そのラジオでの人気ぶりから、彼の曲はロングヒットになる傾向があります。ラジオと比べるとストリーミングでの人気はやや控えめですが、今回のFinesseはストリーミングでも奮闘しています。一方Drakeだけでなくラップ曲全般に言えることなのですが、ストリーミングで無類の強さを誇る一方、ラジオではそこまでポイントを稼がない傾向にあります。ラジオはポップス系ラジオの規模が大きく、ラジオを制する=ポップ系で人気とも言え、Hip-HopやR&B系の局をいくら制してもラジオのポイントは上がりきらないケースが多いです。Hip-Hop系統の局で現在大人気のGod’s Planですが、ポップ系ラジオでも人気を得ることができれば、年間1位レースで有利に立つことが出来るでしょう。Drakeは過去にOne Dance(ポップ系ラジオ1位)、Hotline Bling(ポップ系ラジオ2位)など実績もあるので、期待は持てそうです。

 

 ちなみにこの2曲ではDrakeはトップ10が通算22曲に。Taylor Swiftと並んで歴代で13番目に多い曲数です。また、1つのDecade (10年ごとの区切り)に20以上のトップ10を獲得した3番目のアーティストに(Best I Ever HadとForeverは2000年代、それ以外は2010年代) ↓ソースは以下


 個人的にこのニュースで驚きなのは、Drakeの打ち立てた記録よりもこの情報ソースが海外のチャートマニアアカウント @Chartdataであるということ。このFaderの記事では@Chartdataのツイートがソースとされています。単なるチャートマニアのTwitterアカウントがメディアを動かすというのは、なんだか少し憧れますね。

 この@Chartdataはビルボードのスタッフからも注目?されているようですね

 

 

× Taylor Swift - ...Ready For It? [↓]

 最初は4位で登場したものの、どんどん順位を落としていったTaylor Swiftの ...Ready For It? Look~と同じく尻すぼみに終わってしまいました。最後の週の順位は96位に。危うく完走(チャートに20週以上入ること)を逃すところでした。Taylor Swiftの最近のシングルはチャートを下降するスピードが早く、それを埋め合わせるかのように矢継ぎ早にシングルカットやビデオリリースをしていますが、どのシングルもうまく行きませんね……(期待のEnd Gameも今週18位→30位)また、Havanaと同じようにストリーミングで人気を集めた非シングルをシングルカットする手法を取り、Justin Bieber関連曲のプロデューサーとして台頭したBloodPopのリミックスをリリースするなど、色々やってみていますが、あまりうまく行きませんでした。ダウンロードでのポイントが安定していて、序盤のチャート成績は昔から良かったのですが、ここまで露骨に尻すぼみが続くと、少しこれからの雲行きが怪しくなりますね……

 

× Marshmello feat. Khalid – Silence [↓]

 2015年初頭にサウンドクラウドで頭角を表し、2016年にはAloneで初のHot 100入り、さらに2017年にはトップ40ヒットかつグローバルヒットを飛ばすなど、破竹の勢いでキャリアアップしているMarshmelloのSilenceが今週チャートから外れました。

 イギリス、ドイツ、オーストラリアなどの主要国でトップ10入りを果たしたSilence。しかし二人の本拠地アメリカではトップ10からは程遠い30位ピークでチャートを後に。二人とも初のHot 100エントリー、AloneやLocationの時はいずれもアメリカでのチャート成績が他国よりも相対的に高く、アメリカで人気のあるアーティストと言えますが、「チャートトリック」によってこの曲のチャート成績は伸びませんでした。*5

 この曲はストリーミングで主に人気だった曲で、多くの国でSpotifyのトップ10入り。上記のイギリス、ドイツ、オーストラリアだけでなくアメリカでも同じくSpotifyのトップ10に入っていました。しかし、集計方法の違いによってピーク順位が大きく変わったのです。

 イギリスなど、多くの国のチャートはダウンロード+ストリーミングで構成されています。(多くは150ストリーミング=1ダウンロード)近年のストリーミング拡大で、イギリスなど多くの国のチャートはストリーミングを基軸にしたチャートとなりつつあります。つまり、多くの国のチャートではSpotifyでのヒットがダイレクトにシングルチャートに反映されやすいのです。

 しかしアメリカ*6は集計方法が異なります。アメリカではダウンロード+ストリーミングに加えてラジオも集計し、比率もダウンロード35-45%、ラジオ30%-40%、ストリーミング 20-30%と定められています。このようにストリーミングの比率が低く、さらにアメリカのApple MusicにはSpotifyとヒットする曲が違うという特徴があるので、Spotifyのヒットがダイレクトにシングルチャートには反映されづらいのです。

 さらに、ラジオの動き出しが遅いという点も理由に挙がります。有名アーティストのリリースならば、すぐにラジオでかかり始めてストリーミングと同時にラジオが上昇していきますが、Marshmelloのような全国区で知られていないアーティストだと、ラジオでのかかり始めが遅くなり、ストリーミングでピークに達したくらいの時期にようやくラジオでかかり始めます。その結果、ストリーミングとラジオのピークがズレてしまい、チャートでのピークが低くなってしまうのです。(そのズレの結果、ラジオでも思うような成績にならない場合が多い。この曲もポップ系ラジオ31位がピーク)

 


 

× SZA – The Weekend [↓]

 グラミーで無冠に終わったSZA。The Weekendが今週チャートから外れました。チャートでも今週無念。とはいっても、デビュー作から2曲もトップ40シングルが出るのは大躍進と思います。このThe Weekendは前シングルLove Galore (ピーク30位)を超える26位まで到達しました。Calvin Harrisによるリミックスも多少はヒットに寄与したと思います。(リミックスがリリースされた週にピークを迎えています)

 Kendrick LamarとのAll the Stars(今週54位)、次シングルのBroken Clocksなど、2018年もヒットを飛ばすことを期待したいですね!

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Bruno Mars & Cardi B – Finesse

今週最もダウンロードが上昇した曲 LANCO – The Greatest Love Story

今週最もストリーミングが伸びた曲 6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie wit da Hoodie - KEKE

最も高い順位で新登場した曲          Drake – God’s Plan

 

 

今週Hot 100から外れた曲 (8曲)

98 Enrique Iglesias feat. Bad Bunny – El Baño (🗻98位 /⏰1週)

96 Taylor Swift - ...Ready For It? (🗻4位 /20週)

95 Farruko, Nicki Minaj, Bad Bunny, 21 Savage & Rvssian – Krippy Kush (🗻75位 /⏰6週)

84 Dan + Shay – Tequila (🗻84位 /⏰1週)

80 Troye Sivan – My My My! (🗻80位 /⏰1週)

50 Marshmello feat. Khalid – Silence (🗻30位 /23週)

47 Carrie Underwood feat. Ludacris – The Champion (🗻47位 /⏰1週)

46 SZA – The Weekend (🗻29位 /25週)

 

 

来週以降にHot 100に入るポテンシャルを持った曲をピックアップしました

 

Zedd, Maren Morris & Grey – The Middle

リリース時はそこまで数字が伸びておらず、先週時点ではあまりロケットスタートにはならないと予想していましたが、グラミーの放送途中のCMでビデオが公開されてからは急上昇。iTunesSpotifyでかなりの伸びを見せています。Sick Boyの項目で述べたようにラジオでも好調。

 もしかしたらグラミーの恩恵を一番受けた曲かもしれません。(他のグラミー効果でのシングル登場/再登場のは少なそうです。既にリカレントされている、ダウンロードが微妙に足りないなどの理由で。また後述の大量エントリーも理由の一つです)

 

Migos feat. Drake – Walk It Talk It

Migos feat. 21 Savage – BBO (Bad Bitchers Only)

Migos – Narcos

 Migosの新譜の曲がストリーミングで絶好調。来週のHot 100に大量エントリーすると思います。昨年のCultureでは7曲がHot 100に登場しましたが、今回のCulture Ⅱでは収録曲数が多いこともあって、より多くの曲がHot 100に登場するかと思います。

 さすがに収録曲全部 (24曲)がHot 100に登場するのは難しいと思いますが、10曲以上は登場すると思います。個人的には16曲前後と考えています。上記の3曲は人気曲の一例です。この3曲は確実にHot 100に入ってくると思います。

 

半年前の記事


1年前の記事


 

 ↓プレイリスト

 

 

*1:彼らの趣味?少しTwenty One PilotsのHeathensと似ている?

*2:歌詞分析サイトGeniusにiTunesで1位を取ったと記載されていますが、違います!今後もしかしたらiTunesで上昇して実現するかもしれませんが

*3:ビルボードのHip-Hop/R&B Airplayチャートやリズミック系ラジオチャートに登場はしていないものの、有志によるサイトKworbの下位に登場している

*4:ポップ系ラジオチャートなど、ジャンル別ラジオチャートにも古い曲を外すリカレントルールが存在するようなので、Shape of Youは実際まだまだポップ系ラジオで多くかかっているとは思います。

*5:一応このようなエレポップ系の曲がアメリカよりもやや他国で人気という面もありますが

*6:カナダも