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2/9 リリース新曲/新作の初動を観察 【サントラ対決! Black Panther vs. Fifty Shades Freed】

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 今週は"Black Panther"、"Fifty Shades Freed"と豪華メンバーが揃う映画サントラがリリースされました。両方ともアルバム1位の候補ですが、果たしてどちらがこのレースを制するでしょうか。写真は"Black Panther"のサントラに参加するJorja Smith。サマソニに出演予定です。

 

Spotify デイリーのアメリカトップ10 (金曜日)

1 Drake  God's Plan
2 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
3 The Weeknd & Kendrick Lamar Pray For Me
4 Migos Stir Fry
5 ScHoolboy Q, 2 Chainz & Saudi X
6 Bazzi Mine
7 Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake King's Dead
8 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
9 Khalid & Swae Lee The Ways
10 BlocBoy JB feat. Drake Look Alive

 

 今週も多くSpotifyトップ10に変化がありました。トップ10に"All The Stars"、"Pray For Me"、"X"、"King's Dead"、"The Ways"と"Black Panther"から5曲がエントリーしています。既発の"All the Stars"と"Pray For Me"が特に人気で、ScoolBoy Q / 2 Chainz / Futureなど人気ラッパーを据えた"X"、"King's Dead"・そして昨年世界的に飛躍を遂げたKhalid & Swae Leeの"The Ways"が続いています。アルバムには様々な面々が参加していますが、ゲストが豪華な曲が順当に上位に入っている印象があります。

 そしてもう一つトップ10に新たに入った曲が。Drakeが客演に入ったBlocBoy JBの"Look Alive"がSpotify10位に登場。この曲リリースまでは知名度が高くなかった彼ですが、Drakeが客演に入ったことにより一躍大注目を受けています。メンフィス出身の彼は"One Dance"の時の客演Kylaと似たようなシンデレラストーリーを歩んでいるように思います。

 ストリーミングで上位に入るだけでも偉業ですが、それに加えてダウンロードでも上位に入っています。客演によってから無名の新人をスターダムに導くことに成功したDrakeのカリスマ性には脱帽です。先週からエントリーをしているBazziも含めて、Saudi、Blacboy JBと新人が多くSpotify上位に入っているなかなか刺激的なランキングです。

※ ↓HypebeastによるBlocboy JBについての解説記事です。


 

② 新曲/新アルバムからのシングル アメリカSpotifyデイリー順位 (金曜日)

 

・Various Artists - Black Panther: The Album 圏内14/14曲

11 Kendrick Lamar Black Panther
17 Kendrick Lamar & Travis Scott Big Shot
20 SOB x RBE Paramedic!
25 Vince Staples & Yungen Blakrok Opps
34 Jorja Smith I Am
40 Ab-Soul, Anderson .Paal & James Blake Bloody Waters
59 Zacari & Babes Wodumo Redemption
61 Zacari Redemption Interlude
70 Mozzy, Sjava & Reason Seasons

 "Black Panther"の収録曲はトップ10の5曲を含む 全14曲がSpotifyデイリーの100位圏内にエントリーしています。Kendrick Lamarプロデュース作とだけあって、ストリーミングでがっちりと人気を獲得しています。このアルバムについて少し掘り下げてみようと思います。

 個人的に比較対象として浮かぶのはDrakeの昨年の「プレイリスト」、"More Life"です。Drakeはプレイリストで多様なゲストを幅広い分野から呼び寄せ、お気に入りの面々を紹介しましたが、この"Black Panther"でKendrick Lamarは同じようなことを行っているように思います。 Saudi、Yugen Blakrok、SOB X RBE、Babes Wodumo、Sjava、"DAMN."でも起用されたZacariなどフレッシュな面々を起用しています。

 "More Life"と比べると、"Black Panther"ではKendrick Lamar名義ではない曲も多く、少し曲ごとに人気 度が分かれています。"More Life"は全曲がHot 100に入りましたが、"Black Panther"はそこまで行かないとは思います。今後のストリーミング数の動き方次第ですが、"Big Shot" "Black Panther"辺りまではHot 100入り有力、"Paramedic!" "Opps" "I Am"辺りが当落線上といったところでしょうか。ただし、Kendrick Lamarはクレジットされていない曲でもパートを担当している場合が多く、*1 サントラながらもアルバムとしてのまとまりはあると思うので、アルバムが長くはないこと (49分)と合わせて、最終的にはアルバム全体的な再生数は高水準になるかもしれません。*2

 またJorja Smith、2 Chainz、Travis Scottの3人は"More Life"と"Black Panther"の両方に登場しており人気度が伺えます。Frank Dukesもプロデューサーとして両作品に参加しています。この中で特にJorja Smithはイギリスのシンガーながらも北米の面々に熱心に誘われる辺り、期待度の大きさが伺えます。(ヘッダーにした理由です)UKだけではなく、USでも今後注目を集めそうです。

 2 Chainz、Travis Scottの2人は「大物ラッパーのコンピレーション」という点で共通点のある2012年のKanye West "Curel Summer"でも起用されていました。

 スティーヴン・ウィットのノンフィクション、『誰が音楽をタダにした?』*3では

大ヒットを出したあかつきには、それを利用して自分自身がスカウトマンとして新人を発掘していった。売れっ子ラッパーを獲得すると、連鎖反応が起きてさらに多くの売れっ子を獲得できた。モリス*4のアーティストの中で今いちばん売れているラッパーたちも、もとをたどれば何年も前に獲得したアーティストがきっかけだった。

 とし、ラッパーが続々と芋づる式に新人を発掘してレーベルに寄与していく様子が描かれていますが、このような"More Life"や"Black Panther"のようなアルバムによってその「発掘」をレーベル単位ではなく、一人のラッパーを追っていれば出来るようになったので、リスナーも素早く「発掘」をできるようになったように思います。今後も「発掘」と相性の良いプレイリスト的、コンピレーションの文化がストリーミングと共に進んでいくのか要注目です。

 

※ ↓この記事を参考にしています。TDEの面々がKendrick Lamarの作品に参加することは案外珍しいこと、南アフリカに注目!などの内容がかかれています。


 

・Fifty Shades Freed 圏内 4/19曲

100 Hailee Steinfeld & BloodPop  Capital Letters
125 Liam Payne & Rita Ora For You
128 Julia Michaels Heaven
186 Whethan & Dua Lipa High

 一方、"Fifty Shades Freed"からは4曲がエントリー。既発の"Capital Letters"、"For You"、"Heaven"に加えて、Dua Lipaが参加する新曲"High"が登場しています。しかしどれもストリーミング下位なので、Hot 100での躍進は望み薄でしょうか。サントラ対決、ストリーミングは"Black Panther"が制しています。

 

・その他シングル

46 Marshmello & Anne-Marie Friends
73 Calvin Harris feat. PARTYNEXTDOOR Nuh Ready Nuh Ready
76 Rae Sremmurd T'd Up
85 2 Chainz fet. YG & Offset Proud
91 Rich the Kid Plug Walk
107 James Bay Wild Love
197 R3hab & Lia Marie Johnson The Wave

 Anne-Marieを迎えたMarshmelloの"Friends"が46位、PARTYNEXTDOORを迎えたCalvin Harrisの"Nuh Ready Nuh Ready"が73位に登場しています。Calvin Harrisを上回るとは、近年のMarshmelloの勢いを実感します。ちなみにCalvin Harrisの本拠イギリスでもSpotifyでは Marshmello > Calvin Harrisでした。 ("Friends"は17位、"Nuh Ready Nuh Ready"は39位) DJでいうと、R3habの新曲も下位に登場しています。

 "Friends" アコースティックサウンドで幕を開けるポップス調の1曲、"Nuh Ready Nuh Ready"はディープハウスとダンスホールをかけ合わせたような1曲です。PARTYNEXTDOORは昨年のCalvin Harrisのアルバム"Funk Wav Bounces Vol.1"にも参加していましたが、今回のシングルはその時と作風が少し変えてきています。昨年は"Slide"を始めとしてCalvin Harrisの Funk Wav路線が注目を集めていましたが、今年はモデルチェンジですかね。本人はこう説明しています ↓

 

 

 ほか週の途中にリリースされた、Metro BoominプロデュースのRae Sremmurdの"T'd Up"が76位で登場・緊急EPをリリースした2 Chainzの"Proud"が85位で登場・Rich the Kidの"Plug Walk"が95位で登場・James Bayの"Wild Love"が107位で登場しています。

 

③  iTunesアメリカップ10+新曲の順位 (金曜日)

・1-10位 ($は値引き)

1 Drake  God's Plan
2$ Bebe Rexha & Florida Georgia Line Meant to Be
3 Jon Langston When It Comes to Loving You
4 BlocBoy JB feat. Drake Look Alive
5 Zedd, Maren Morris & Grey The Middle
6 Ed Sheeran Perfect
7 Justin Timberlake feat. Chris Stapleton Say Something
8 The Weeknd, Kendrick Lamar Pray For Me
9 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse (Remix)
10 Camila Cabello feat. Young Thug Havana

 Drake客演の"Look Alive"がiTunes4位とダウンロードでも好調です。また、カントリー界の新人Jon Langstonの"When It Comes to Loving You"がiTunes上位につけています。日曜日には一時期iTunes1位に浮上しました。カントリーアーティストはダウンロード で強い傾向があるのですが、それは知名度のあるアーティストの場合なので新人がここまでダウンロードで好調とは珍しい現象です。今年のブレイク候補?

 

・新曲群

16$ Kendrick Lamar & SZA All The Stars
19$ Liam Payne & Rita Ora For You
33 Marshmello & Anne-Marie Friends
34 Rich the Kid Plug Walk
37 ScHoolboy Q, 2 Chainz & Saudi X
49 Kendrick Lamar & Travis Scott Big Shot
51 Bishop Briggs Never Tear Us Apart
56 James Bay Wild Love
57$ Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake King's Dead
59 Julia Michaels Heaven
75 Eminem feat. Sia Guts Over Fear
76 Khalid & Swae Lee The Ways
78 Hailee Steinfeld & BloodPop Capital Letters
93 Whethan & Dua Lipa High
95 Rae Sremmurd T'd Up
99 King Combs feat. Chris Brown Love You Better
100 Jamie Dornan  Maybe I'm Amazed

 両サントラの各曲がそれなりにダウンロードを記録しています。様々なアーティストが登場しているので、「特定アーティストのファンだけど、アルバムにはそこまで興味のない層」がダウンロードしているのでしょうか。

 また、75位の"Guts Over Fear"は冬季オリンピックに参加している選手が自らを鼓舞するために使用していると明かしたことから、少しダウンロードが伸びたようです。

 

④  iTunes アルバム順位 (アメリカ)

1 Kendrick Lamar, SZA, The Weeknd Black Panther The Album
2 Various Artists Fifty Sahdes Freed
3 Various Artists The Greatest Showman
4 Justin Timberlake Man of the Wood
5 Wade Bowen Solid Ground
6 Brian Fallon Sleepwalkers
7 Elevation Collective Evidence
8 Dashboard Confessional Crooked Shadows
9 MGMT Little Dark Age
10 2 Chainz The Play Don't Care Who Makes It (EP)

 ダウンロードでも"Black Panther"に軍配が上がっています。iTunesとストリーミングを制しているので、アルバムチャート1位が濃厚です。ほかMGMTの?年のアルバムが9位に、2 Chainzの4曲入りEPが10位に入っています。

 

⑤ 現在ラジオで上り調子の10曲

32 The Weeknd & Kendrick Lamar Pray For Me
4 Bruno Mars & Cardi B Finesse
105 Justin Timberlake feat. Chris Stapleton Say Something
26 Drake God's Plan
67 Zedd, Maren Morris & Grey The Middle
11 G-Eazy & Halsey Him & I
14 Selena Gomez & Marshmello Wolves
17 Old Dominion Written in the Sand
6 Charlie Puth How Long
15 Bebe Rexha feat. Florida Georgia Line Meant To Be

 複数系統でかかっている"Pray For Me"がかなりのハイペースで上昇中。ただし、"I'm the One"のように落ちるのも早い可能性も。

 

⑥各ラジオ局で今週かかりはじめた曲

✫ポップ系

23 The Weeknd & Kendrick Lamar Pray For Me
35 Justin Timberlake feat. Chris Stapleton Say Something
48 Hayley Kiyoko Curious

 "Pray For Me"、"Say Something"ともに急上昇中です。ほか日本人の血を引くHayley Kiyokoが登場。

 

✫アダルトポップ系

42 Zedd, Maren Morris & Grey The Middle
45 Kelly Clarkson I Don't Think About You
47 U2 Get Out Of Your Own Way
49 G-Eazy & Halsey Him & I
50 Milck Quiet

 "The Middle"、"Him & I"がポップ系に遅れて登場したほか、U2Kelly Clarksonとアダルトポップ系で優先的に登場する曲も。

 

✫リズミック系

18 The Weeknd & Kendrick Lamar Pray For Me
46 Bazzi Mine
47 Kent Jones Merengue
48 Nav feat. Lil Uzi Vert Wanted You

 広く人気の"Pray For Me"が最も人気な系統。大ブレイクの予感がするBazziも登場。ほか、2016年に"Don't Mind"でブレイクしたKent Jonesの新シングル、リリース時からストリーミングで人気のあったNavとLil Uzi Vertの"Wanted You"など

 

✫アーバン系

35 The Weeknd & Kendrick Lamar Pray For Me
48 Devvon Terrell Temperature
49 Bobby V feat. Snoop Dogg Lil Bit
50 Tigo B Wherer You Come From

 2005年にHot 100で8位まで到達したBobby VがSnoop Doggと組んでいます。 

 

⑦ その他のストリーミングのトップ10

Apple Music

1 Drake  God's Plan
2 Migos feat. Drake Walk It Talk It
3 Migos feat. 21 Savage BBO
4 Migos  Stir Fry
5 Migos Narcos
6 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
7 Cardi B feat. 21 Savage Bartier Cardi
8 Migos feat. Post Malone Notice Me
9 Bazzi  Mine
10 Offset & Metro Boomin Ric Flair Drip

 数曲"Culture Ⅱ"からのシングルがトップ10に残っています。Apple Musicのトップ10に現時点で残っている曲はシングルでなくとも、ある程度の期間Hot 100に残るかも。※集計が少し遅いため、"Black Panther"の反映はまだです。

 

・パンドラ

1 Drake God's Plan
2 Ed Sheeran & Beyoncé Perfect Duet
3 NF Let You Down
4 Bebe Rexha feat. Florida Georgia Line Meant to Be
5 Migos, Cardi B & Nicki Minaj MotorSport
6 G-Eazy & Halsey Him & I
7 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B No Limit
8 Eminem feat. Ed Sheeran River
9 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
10 Post Malone I Fall Apart

 "God's Plan"がパンドラでも早々に一位を獲得しています。

 

・サウンドクラウド

1 6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie wit da Hoodie KEKE
2 Lil Skies feat. Landon Cube Nowadays
3 Lil Skies feat. Landon Cube Red Roses
4 XXXTentacion feat. Trippie Redd Fuck Love
5 6ix9ine GUMMO
6 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
7 Bazzi Mine
8 Kodak Black feat. XXXTentacion Roll in Peace
9 Migos  Stir Fry
10 YBN Nahmir Rubbin Off The Paint

 今週は上昇中の新曲が無いです。

 

・Genius

1 Drake God's Plan
2 Kendrick Lamar & Travis Scott Big Shot
3 ScHoolboy Q, 2 Chainz & Saudi X
4 Ex Battalion Hayaan Mo Sila
5 CNCO Quisera
6 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
7 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
8 Zac Efron Rewrite the Stars
9 BlocBoy JB feat. Drake Look Alive
10 The Weeknd & Kendrick Lamar Pray For Me

 "Black Panther"の曲がGeniusで注目を集めています。ほか、フィリピンのミーム曲?"Hayaan Mo Sila"が上昇。英訳も付けられています。フィリピンの曲が上位に入るということは、このランキングは全地域対応でしょうか?

 

 

✫半年前の新リリース

Keshaのアルバム、AviciiのEPなど。

*1:Pigeons & Planesはこれを「アルバムの糊」と表現しています

*2:アルバム単位で聞くとなると、極端に再生数が少ない曲が減るのでは?という推測です

*3:2016年・早川書房・訳:関美和

*4:ダグ・モリス キャリアの終盤にはVevoを作り、YouTubeから収益を得るシステムを確立した。