チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 3/24 見どころ 【Logic、アルバム&シングルで好成績! / 2大ラジオ系統を抑えたヒット】

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今週のハイライト

 今週際立ったのはLogic。アルバム&シングルで好成績を収めました。写真は渋谷で撮影された”Overnight"のビデオの一部です。ほか、ポップ&カントリーの2大ラジオ系統で浮上するヒット、人気のファンビデオ・ソングライトの分業制など。

 

・忙しい人向けのHot 100まとめ

・アルバム1位のLogic、Hot 100には10曲がエントリー。一つのアルバムから10曲以上がHot 100にエントリーするのは歴代17回目の事例

・アルバム2位のLil Yachtyは3曲がHot 100に

・テイラーの新シングル "Delicate"が84位で新登場

・ストリーミング好調の”Plug Walk"がトップ40

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Zedd, Maren Morris & Grey – The Middle

今週最もダウンロードが上昇した曲 Maroon 5 - Wait

今週最もストリーミングが伸びた曲 Logic & Marshmello – Everyday

最も高い順位で新登場した曲          Bad Wolves - Zombie

 

曲の個別解説

 

84 [New] Taylor Swift – Delicate

 テイラーの新シングル “Delicate”が84位で登場。3/11にリリースされたビデオと、ラジオでの浮上の効果によるHot 100エントリーと思います。今週ポップ系ラジオ32位など、少しずつラジオで支持を得ています。

 今までのシングルは不調に終わっていますが、この“Delicate”は現在Spotify44位など浮上の兆しが出てきました。ここに来てようやくシングルヒットに恵まれるでしょうか……いずれのシングルもピークはそこそこだった一方、すぐに落ちたことで「不調感」が出たので、できるだけ長く上位にとどまり、その印象を払拭したいところですね。

 

63 [New] Lil Yachty feat. NBA Youngboy – NBA Youngboat

 アルバム2位のLil Yachtyの”Lil Boat 2”からは3曲がHot 100に。Ugly Godと  の”Boom” が88位、Trippie Reddとの“66”が73位、NBA Youngboyとの”NBA Youngboat” が63位にエントリー。NBA Youngboyは今週”No Smoke”と“Outside Today”でHot 100にエントリーしているYoungBoy Never Broke Againと同一人物。なぜかそれぞれで別名義になっています。

 ほか101位以下相当の曲を扱うBubbling Underには5曲が登場。Lil Baby, Offsetとの"Micky"が125位、2 Chainz, K$puremeとの"Oops"が120位、Lil Pump, Offsetとの"Baby Daddy"が119位、Quavoとの"Talk To Me Nice"が115位、PnB Rockとの"She Ready"が112位でした。(正式な順位ではなく、相当する順位)

 “Lil Boat 2”の純セールスはわずか7000でしたが、ストリーミングで大きく数字を稼ぎアルバム2位に。セールスやストリーミングを合算した指数もアルバムチャートの順位も前作を上回っています。(前作”Teenage Emotions”はアルバム5位でした)

 

 ほかアルバムチャートでは元Talking HeadsDavid Byrneが注目を集めているのはチケット付きCDなどでセールスを伸ばし、自身最高のアルバムチャート3位に食い込みました。ちなみにTalking Heads名義でも、アルバムチャートでの最高位は15位だったので、それも上回ったことになります。

 

58 [ ↑ ] Khalid & Normani – Love Lies

 「それぞれのソロ活動に専念」として活動休止を発表したFifth Harmony。その「ソロ活動」に該当するNormaniの”Love Lies”が順位を上げて今週58位。

 時折Spotifyのトップ10に食い込むなど、ストリーミングでは好調ですが。ラジオでまだ伸びていないため、中位に留まっています。ラジオのサポートがあれば上位に食い込める予感がします。

 ストリーミングで好調ながらも、ラジオに恵まれずそこまでHot 100で順位を上げられなかったKhalidとMarshmelloの”Silence”パターンになるのか、または非シングルから出発しながらもストリーミングで人気を得て、最終的にはラジオでも人気を得てHot 100の首位まで獲得した”Havana”パターンになるのか?注目のシングルです。この曲が成功を収めれば、他のFifth Harmonyメンバーの活力にもなりそうです。

 他のメンバーがHot 100に入ったのは、Lauren Jaureguiのみ。Halseyの客演を務めた”Strangers"が100位に1週間だけエントリーしていました。  

 

56 [New] Logic feat. Wiz Khalifa – Indica Badu

 Logicのミックステープ”Bobby Tarantino Ⅱ”からは8曲が新登場!“Indica Badu”の56位が最高位です。これに既存の”44 More” (46位)、”Everyday” (29位)を合わせて 10曲がHot 100に!

 一つのアルバムから10曲がHot 100に入る記録を達成 (歴代17回目) ↓参考

 

 今週のアルバムチャート1位。今回はミックステープという立ち位置のためか、純セールスは前作”Everyday”の 六分の一程度ですが、ストリーミングでは前作を上回っています。(両方とも初週の数字)*1

 

(参考) このミックステープのサンプリング集です。

 

 “Wassup”は”Mercy”のサンプリングかと思っていたのですが、正確には“Mercy”と同じサンプリングを使用している、なんですね。

 

54 [New] Bad Wolves – Zombie

 ハードロックバンド、Bad WolvesによるThe Cranberriesの”Zombie”カバーが54位で登場。バンド初のHot 100エントリー。今週ダウンロード2位で、ポイントのほとんどをダウンロードから得ています。ハードロック系ラジオでは11位に入っています。

 ハードロックバンドによるカバー曲で、かつポイントの多くをダウンロードから得ているという点で、Disturbedの”Sound of the Silence”を彷彿とさせます。

 

36 [ ↑ ] Kane Brown – Heaven

 カントリー歌手Kane Brownの”Heaven”が36位に浮上。これで2シングル連続トップ40を達成しています。カントリー界期待の若手です。

 カントリー系ラジオ12位のほか、カントリーシンガーとしてはストリーミングでそこそこ強いのが武器です。(Spotify 100位くらい、Apple Music 80位くらい)

 この曲では、本人がソングライトクレジットに載っておらず、ソングライトを他人に任せた「分業制」の1曲。現在このような曲は減少傾向ですが、(昨年のUSシングル年間チャートにはこのような曲が2つ*2しかなかった)、カントリーでは現在でもよく行われているようです。

 

29 [ ↑ ] Marshmello & Logic – Everyday

 Logicのミックステープ、”Bobby Tarantino 2”収録曲のうち一番人気があったのはMarshmelloとの”Everyday”。29位とトップ40に浮上しています。Logicにとっては4曲目、Marshmelloにとっては3曲目のトップ40です。両者とも、ここ1年ぐらいで急上昇しています。

 MarshmelloはAnne-Marieとの”FRIENDS”が今週41位で、トップ40間近になっています。この“FRIENDS”はイギリス4位、ドイツ1位、さらにアメリカとチャートの動きが似ているカナダでも8位と、絶好調。アメリカでもいずれはトップ10まで到達できるか?

 

25 [ ↑ ] Rich the Kid – Plug Walk

 Rich the Kidの”Plug Walk”が25位に浮上。キャリア初のトップ40を達成。Spotify7位 / Apple Music 13位と絶好調のストリーミングが浮上の要因です。現在ラジオで人気を得ているKendrick Lamarとの”New Freezer”も今週43位とトップ40に接近中です。

 2013年ごろからミックステープのリリースを続け、そこそこキャリアのある彼ですが、今年その才能が注目を集めそうです。*3

 

16 [ ↑ ] Camila Cabello – Never Be the Same

 Camila Cabelloの”Never Be the Same”が16位と少し順位を上げました。3/8に公開された「公式ビデオ」の効果が反映された週なのですが、そこまで大きな効果はありませんでした。ただしラジオを筆頭に好調をキープしているのでトップ10はまだ狙えそうです。

 ほかトップ10に今後入りそうなのはBazzi”Mine” (17位)でしょうか。NFの”Let You Down”(今週13位)はラジオの伸びが止まってきたので少し厳しいかもしれません。

 また、XXXTENTACIONの”Sad!”も来週アルバムリリースがチャートに反映されるので、トップ10に手が届くかもしれないです。

 

 少し前に公開されていたファンビデオ?も実は好調。正式ビデオがちょっと前衛的だったので、こちらのほうが人気は出ていたかも?(個人的にはファンビデオのほうが好きですかね、ちょっとベタではあるのですが)

 


(正式ビデオは これ ) 

 

4 [ ↑ ] Bebe Rexha & Florida Georgia Line – Meant to Be

 Bebe RexhaとFlorida Georgia Lineの”Meant to Be”がさらに順位を伸ばして4位に到達。Florida Georgia Lineのキャリアピークの”Cruise”と同じ順位にまで到達しました。Bebe Rexhaはキャリアピークを更新中です。

 ポップス+カントリーという2大ラジオ系統で人気を得ているのでラジオではかなり強いです。さらにダウンロードも高い水準をキープ、ポップとカントリーの両方が苦手としがちなストリーミングもそこそこの成績を記録していて(特にYouTubeで人気)、隙がありません。

 現在ラジオでの上昇が加速しているということもあって、まだまだHot 100の順位が伸びるかも?今週1位の”God’s Plan”はストリーミング低下中、今週2位の”Perfect”もラジオが息切れしてきるということもあり、1位取りのチャンスもあるかも?

 

 昨年ポップス+カントリーの2大ラジオ系統で人気だった”Body Like A Back Road”も年間8位と大成功を収めたので、ポップスとカントリーの融合はアメリカで密かなトレンドになるかもしれないですね?(今年のJustin TimberlakeとChris Stapletonの”Say Something”もそうですね) このポップスとカントリーの融合はラジオの2大系統を抑えられるメリットが大きいです。仮にストリーミングで人気が出ずとも、この2系統のラジオポイントだけでもかなり数字を稼げます。

 

× [ ↓ ] Post Malone – Candy Paint

 Post Maloneの”Candy Paint”がチャートから姿を消しました。ピークは50位、チャート滞在は20週で「完走」を果たしました*4

 ”rockstar”のヒットに引っ張られる形で、”Go Flex”、”I Fall Apart”などと共にストリーミングで人気を得てHot 100に登場。

 

× [ ↓ ] Carrie Underwood feat. Ludacris – The Champion

 ビデオのリリース、割引などで何回かチャートに再登場したアメリカでのオリンピックのテーマ曲”The Champion”ですが、パラリンピックも終わり追加プロモーションが無さそうなことから、これでラストかもしれないです。一応アダルトポップ系ラジオで少しかかっていたみたいですが、そこまでインパクトは無し。ごく一部の期間に「お祭り」的にHot 100にエントリーする様は、少しだけクリスマス曲と似ています。

 

 次の世界的なスポーツイベントといえば、FIFAワールドカップですが、その主題歌は……Jason Deruloが担当。“Colors”という曲なのですが、開催が先ということもあるのか、まだヒットとはなっていません。

 この曲はアメリカで「三重苦」を受ける気がします。世界的にサッカーは大人気スポーツと言われますが、アメリカでは他のスポーツが盛んなことから、相対的サッカーの人気が無いです。このことから、そもそもワールドカップに興味のないアメリカ国民が多いと推測されるのですが、今回のロシア大会にはアメリカが出れなかった!ので、さらにその興味が低下すると思われます。

 さらにJason Deruloはアメリカ人歌手ながらも、直近の”Tip Toe”がHot 100に入らないながらもアメリカで意外と最近奮わないのです。(イギリスではトップ10入り)

 「そもそもサッカーに興味ない」「アメリカが出ない」「Jason Derulo奮わない」の3点でアメリカでのヒットがあまり期待できなさそうです。

 

× [ ↓ ] Macklemore feat. Kesha – Good Old Days

 ”Good Old Days”がチャートから姿を消しました。ピークは48位、チャート滞在20週と「安定飛行」でした。中位にいた期間が長かったです。MacklemoreはRyan Lewisと組んでいた以前からヒップホップ系ラジオよりもポップ系ラジオでの人気が高く、この曲もその系統を受け継いでいます。この曲もポップ系ラジオでは11位まで到達する一方。Hip-Hop/R&B系ラジオでは圏外でした。

 前シングルの”Glorious"のピークを一つだけ上回りました。

 

 

 

今週チャートから外れた曲 (13曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 SZA – Broken Clocks (🗻100位 /⏰1週)

98 Jhené Aiko feat. Rae Sremmurd – Sativa (🗻98位 /⏰1週)

97 Maluma & Nego do Borel - Corazon (🗻87位 /⏰9週)

96 Chris Brown – Tempo (🗻96位 /⏰1週)

95 Daniel Caesar feat. Kali Uchis – Get You (🗻93位 /⏰3週)

92 SOB X RBE – Paramedic! (🗻65位 /⏰4週)

91 Joyner Lucas & Chris Brown – Stranger Things (🗻91位 /⏰1週)

90 6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie Wit da Hoodie – Keke (🗻43位 /⏰8週)

87 YBN Nahmir – Rubbin Off The Paint  (🗻46位 /⏰16週)

83 Ozuna & Cardi B – La Modelo (🗻52位 /⏰11週)

82 Post Malone – Candy Paint (🗻50位 /20週)

70 Carrie Underwood feat. Ludacris – The Champion (🗻47位 /⏰3週)

50 Macklemore feat. Kesha – Good Old Days (🗻48位 /20週)

 

 

来週以降の動向 / 過去チャートの振り返り・プレイリスト

 

Shawn Mendes – In My Blood

Ben Platt & Lin-Manuel Miranda – Found / Tonight

 

 週の途中にリリースされた2曲がiTunesの1位&2位を支配。来週のHot 100に滑り込みそうです。ちなみに現在のiTunes3位は“Meant To Be”

 

XXXTENTACION – Moonlight

XXXTENTACION – the remedy for a broken heart

 

 来週アルバム1位見込みのXXXTENTACIONのアルバムから数曲がHot 100に登場しそうです。リリース日以降ストリーミングで調子をキープしていることから、わりと多めの曲数が登場するかも?また、既にHot 100に入っている“Sad!”はApple Musicで首位に立っていて、今後伸びてきそうです。

 

その他の新規リリースは以下の記事を参考にしてください!


 

✫半年前のHot 100

 個人的にXXL Freshmanに入れたら面白いと思うBhad Bhabieが登場

 

✫1年前のHot 100

 Lordeの"Green Light"が19位まで浮上した週

 

 

 

 

*1:そもそもミックステープとはなんぞや?という方にはこの記事がオススメです 

ミックステープとアルバムの違い?Nipsey Hussleが今までアルバムではなくミックステープをリリースし続けた理由を語る。 | Playatuner

*2:Zayn & Taylor Swiftの”I Don’t Wanna Live Forever”と、Dustin Lynchの”Small Town Boy”の2曲。前者でソングライトに書いていないのはZaynのみで、テイラーはソングライトクレジットに載っっている

*3:今年のXXL Freshmanの候補に挙がっているらしいですが、「新人」ではないという意見もあるらしいです

*4:21週目以降の曲が51位以下に落ちる、過去のヒット曲を制限するルールがあり、20週チャートに残った曲はそのルールによってチャートから姿を消した曲に該当することから「完走」と呼ばれることがある