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Hot 100 4/21 見どころ 【女性ラッパーの活躍が際立つ週 / ジャパン&サムライのラップが人気】

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 今週はCardi Bのアルバム1位をはじめとして、女性ラッパーの活躍が際立ちました。Nicki Minajは集計1日でHot 100入り。イギリスの女性ラッパーStefflon DonはHalseyの”Alone"の客演で初のHot 100入りを達成。

 写真はイギリスのMOBO AwardでエンカウントしたCardi BとStefflon Don。

 

 

今週のハイライト

~今週のHot 100ハイライト~

・Drakeの“Nice For What”が1位デビュー!2連続1位デビューなど、珍しい記録を多く達成

・Cardi Bのアルバムが1位+既にチャートから外れた“Bodak Yellow”を除きアルバム全曲がHot 100に。”I Like It”は8位デビュー

・ジャパンとサムライ。Famous Dexの“Japan”が29位へ上昇。YoungBoy Never Broke Againの”Diamond Teeth Samurai”が59位に登場

 

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲           Camila Cabello – Never Be the Same

今週最もダウンロードが上昇した曲 Cardi B feat. 21 Savage – Bartier Cardi

今週最もストリーミングが伸びた曲 Famous Dex - Japan

最も高い順位で新登場した曲           Drake – Nice For What

 

 

曲の個別解説

[New] 100 Halsey feat. Big Sean & Stefflon Don – Alone

 Halseyのアルバム3曲目のシングル、“Alone”が100位で登場。主にラジオで人気。ポップ系ラジオでは26位。セカンドアルバム以降、Halseyはポップ系ラジオの人気者になった印象があります。

 シングルリリースとともに客演に追加された、イギリス人女性ラッパーStefflon Donは初のHot 100入りを達成しました。今後の活躍に期待です。*1

 Halseyが客演をつとめたThirty Seconds to Marsの“Love Is Madness”がダウンロード30位だったものの、Hot 100入りはならず。曲のリリース時からいきなりiTunesで0.69$に割引されていました。ダウンロードを伸ばすために時折採用される戦略です。

 

[New] 85 Kenny Chesney – Get Along

 カントリーの大御所、Kenny Chesneyの“Get Along”が85位で登場。今週ダウンロード8位を記録。カントリー系ラジオでもかなり伸びており、来週以降のジャンプアップも期待できます。

 彼とDavid Lee Murphyと組んだEverything’s Gonna Be Alrightもカントリー系ラジオで好調。現在101位相当まで順位を上げています。

 

[New] 83 Nicki Minaj – Barbie Tingz

 Nicki Minajのシングル2曲が登場。“Barbie Tingz”が83位、”Chun-Li”が92位で登場。“Chun-Li”はストリートファイターのキャラクター名。

 木曜リリースで集計が1日未満*2ながらも、その期間に多くのダウンロードを集めてHot 100に登場しました。

 ダウンロードやストリーミングが7日分フルで集計される来週は2曲とも順位を大きく上げる見込み。ラジオでは“Chun-Li”のほうが人気で、来週はこちらの順位が上になるかもしれないです。

 

[New] 65 A$AP Rocky feat. Moby – A$AP Forever

 A$AP Rockyの“A$AP Forever”が65位で登場。Mobyの”Porcelain”をサンプリングした壮大な展開が特徴の1曲。ストリーミングで人気。

 Mobyは2曲目のHot 100入り。2001年、Gwen Stefaniとの“South Side”が14位まで到達しています。

 

[New] 62 Calvin Harris & Dua Lipa – One Kiss

 Calvin HarrisとDua Lipaの“One Kiss”が62位で登場。Dua Lipaにとって5曲目のHot 100。この曲では、Funk Wav Bounces Vol.1のアルバム最後の曲(Hard to Love)に参加したJessie Reyezがソングライターとして参加しています!

 今週ダウンロード14位のほか、ポップ系ラジオでも支持を拡大中。またストリーミングも伸びてきています。(Spotify17位など) 母国イギリスでは現在iTunesSpotifyの両方で1位に立っており、今週のシングルチャートで1位を獲得する見込みです。

 

[New] 59 YoungBoy Never Broke Again – Diamond Teeth Samurai

 YoungBoy Neve Broke Againの“Diamond Teeth Samurai”が59位で登場。彼にとって6曲目のHot 100入りに。着実にキャリアを歩んでいます。ストリーミングで人気。

 ストリーミングの中でもYouTube(今週12位)とSoundcloud(今週7位)で人気。ただSpotifyだと200位圏外でサービスごとに違いがあります。(Apple Musicでは70位くらい)

 また彼は“Through The Storm”も人気(YouTube今週10位、SoundCloud今週3位)ですが、この曲125位相当にも入っていません。Apple Musicで200位圏外だからでしょうか?

 “Diamond Teeth Samurai”、”Outside Today”などを収録した彼のデビューアルバム、“Until Death Call My Name”は4/27リリース予定です。

 

[↑] 29 Famous Dex – Japan

 サムライの次はジャパン。Famous Dexの“Japan”が29位に上昇。Famous Dexにとっては初のトップ40に。今週アルバムチャートで12位だった”Dex Meets Dextor”のリリース効果による浮上。

 ストリーミング13位で、最も人気が際立つのはSoundcloud(2位)。ほかのサービスでも人気。(SpotifyApple Musicも10位付近にいる)

 

 今週のアルバム1位Cardi Bでしたが、それ以外にもアルバムチャート(Billboard 200)は見どころが多かったです。

・まず、Halseyの項目で触れたThirty Seconds to Marsの“AMERICA”はアルバム2位。

・Lil Xanはアルバム10位。純セールスは8位。ラッパーとしては珍しくセールス順位>総合アルバム順位になっています。(多くのラッパーはストリーミングを得意とし、総合アルバム順位が、セールス順位よりも高くなるケースが多い)

・今週はラテン系の面々も登場。コロンビア出身R&Bシンガー、Kali Uchisのアルバムは32位。昨年はLittle Mixともコラボしたラテン系アイドル、CNCOのアルバムは33位。

・“Mine”でブレイクを遂げたBazziのアルバムが今週35位で登場。木曜リリースで集計がまだ1日分なので、フルで集計される来週は順位を上げそうです。

・また、イギリスとオーストラリアで1位だったKylie Minogueのアルバムは64位 イギリスでは通算6枚のアルバムで1位を記録するなど人気ですが、アメリカでは1位アルバムは無くて、“Fever”の3位が最高位。

・Lordeの“Melodrama”がヴァイナルリリースで大きく上昇(159位→68位)

 

[↓] 20 The Weeknd – Call Out My Name

 The Weekndの“Call Out My Name”が4位 → 20位にダウン。先週はEPの6曲全部がHot 100に入りましたが、今週は3曲に減りました。

 ストリーミングが10位と少し落ちたほか、ダウンロードが先週の4位 → 50位圏外と大きく減りました。また、現状ではラジオのサポートが少ないため、ストリーミングでの盛況ぶりの割にHot 100では尻すぼみになるかもしれません。

 昨年のDrakeの“More Life”からのシングルはそんな感じでした。

 

[New] 8 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It

 今週見事アルバム1位を獲得したCardi B。既にチャートから外れている“Bodak Yellow”を除いたアルバム全曲がHot 100に登場しました!

 Bruno Marsとの“Finesse”と合わせてCardi Bの曲が計13曲Hot 100に入り、女性としては歴代最多の曲数を同時にHot 100に送り込んだことに。(これまでの最多記録は、”Lemonade”の時のBeyoncé)

 その中でJ Balvin、Bad Bunnyとの“I Like It”が一番人気で8位に登場。ストリーミング(今週9位)だけでなく、ダウンロードも多くされていることから、高い順位での登場となりました。現状ではまだシングルではない曲がアルバムの中で一番人気になるという点が興味深いです。リリース後もストリーミングでの調子が上がっているので、いずれシングル化されると思います。

※ 他にもCardi Bのアルバムの曲について個別に語りたいことが多い気がするので、近いうちにチャートマニア “Invasion of Privacy”を語るみたいな記事を作ろうと思っています。

 

[New] 1 Drake – Nice For What

 Drakeの“Nice For What”がいきなり1位デビュー。Drakeが止まりません。この快挙により何個か珍しい記録を達成しました。

・同一人物の曲によるHot 100首位交代:史上13人め

・同時にトップ5に3曲以上:The Beatles、50Cent、Justin Bieberに次いで史上4人目

・Hot 100の1位・2位を独占した:史上18人目

Mariah Careyに次いで2人目の2シングル連続1位デビュー。(Mariah Careyは“Fantasy”→”One Sweet Day”で達成。 他の人に1位を取られず、間髪入れずに2連続1位デビューするのは今回が初)

 

 「トップ10に同時に4曲」は、今週“Walk It Talk It”が12位に落ちてしまい、達成ならず。

 ダウンロード1位・ストリーミング1位のほか、ラジオでも既に今週34位まで到達しており、今後の1位独占へ隙が無いです。

 今年のDrakeの無双ぶりを見ているとストリーミングの強さがそのままHot 100の順位に直結する時代になっているなと感じます。Hot 100では集計の比率がダウンロード>ラジオ>ストリーミングになっています。ダウンロードは上下動が激しい「水物」なので、この3つのうち従来ではラジオがHot 100のベースになっていることが多かったのですが、近年は傾向が変わってきましたね。(2016年ぐらいまでストリーミングでもラジオでの人気がそのまま再生される傾向があったが、昨年あたりから離別するようになってきた)

 Hot 100はラジオベースで、年間チャートでもラジオの強い曲が上位へ入る傾向があったので、その旧来のロジックから“Finesse”を年間1位に予想していた時期もありましたが、どうやらその考えを改める必要があるのかもしれません。

 ちなみに、アメリカ・カナダ以外の国のチャートではあまりラジオが集計されないため、シングルチャートはほぼストリーミングのチャートになっているケースもあります。

 

[↓] × P!nk – Beautiful Trauma

 P!nkの“Beautiful Trauma”がチャートから外れました。ピーク78位、滞在15週と低空飛行でした。

 ストリーミングが苦手(Spotifyで週間最高200位圏外など)なのはポップ系アクトの宿命として割り切るとしても、ラジオでそこまでポイントを稼げなかった点が痛かったです。

 ポップ系ラジオでは26位止まりに。一方。アダルトポップ系ラジオでは最高4位と人気がありました。

 

[↓] × Luis Fonsi & Demi Lovato – Échame La Culpa

 ラテン界隈で大ヒットだった“Echame La Culpa”が今週チャートから外れました。ピーク47位でチャート滞在は20週でした。

 大ヒットの“Despacito”の後だと微妙な数字だと感じるかもしれませんが、ラテン曲としては上場の成績を記録していると思います。

 この曲のビデオのYouTubeでの再生数が12億を突破。現時点で2018年に最も再生されている音楽ビデオです。(ビデオのリリースは昨年の11月) Demi Lovatoの曲の中では最もYouTube再生数が多い曲です。(次に多い“Let It Go”にダブルスコアをつけている)

 また、ラテン系ラジオでは1位まで到達。このようにラテン界隈では大人気だったこの曲ですが、それ以外のリスナーにはそこまで届かなかったのがピーク47位にとどまった理由です。

 ラテン界隈で大ヒットしても、他ジャンルへの飛び火が無いとHot 100ではトップ40手前ぐらいまでしか届かない印象があります。“Despacito”もJustin Bieberリミックスが来るまでは、トップ40に届いていなかったです。

 一方、 “Mi Gente”はポップ系ラジオで早い段階から人気を得ていたため、Beyoncéのリミックスが来る前でもHot 100で20位ぐらいまで到達していました。

 現在、Nicky JamとJ Balvinの“X”も似たような現象に遭遇しています。(YouTubeで人気、ラテン界隈で人気、しかしHot 100ではトップ40には届かない……)

 

[↓] × N*E*R*D & Rihanna – Lemon

 N*E*R*DとRihannaの“Lemon”がチャートから外れました。ピーク36位、滞在22週とまあまあな成績でした。

 少し前にリリースされたDrakeのリミックスによってわずかに浮上。その効果2週間程度チャートに「延命」できました。この「延命」によってギリギリ年間チャートに入れる可能性も?(ピークは低めですが、中位にいた期間が長いためチャンスはありそう)

 

今週チャートから外れた曲 (18曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 H.E.R. - Focus (🗻100位 /⏰1週)

99 Daniel Caesar feat. Kali Uchis – Get You (🗻93位 /⏰5週)

98 Lil Yachty feat. YoungBoy Neve Broke Again – NBA Youngboat (🗻63位 /⏰4週)

97 P!nk – Beautiful Trauma (🗻78位 /⏰15週)

95 Ozuna & Cardi B – La Modelo (🗻52位 /⏰14週)

94 Dierks Bentley – Woman, Amen (🗻94位 /⏰1週)

93 Old Dominion – Written in the Sand (🗻51位 /20週)

92 Chris Lane feat. Tori Kelly – Take Back Home Girl (🗻92位 /⏰1週)

91 Luis Fonsi & Demi Lovato – Echame La Culpa (🗻47位 /20週)

89 Tyler, the Creator – OKRA (🗻89位 /⏰1週)

88 Chris Brown – Tempo (🗻88位 /⏰4週)

87 YoungBoy Never Broke Again – No Smoke (🗻61位 /⏰18週)

86 Panic! At the Disco – Say Amen (🗻60位 /⏰2週)

85 Lil Skies feat. London Cube – Nowadays (🗻55位 /⏰13週)

52 The Weeknd – Privliege (🗻52位 /⏰1週)

48 N*E*R*D & Rihanna – Lemon (🗻36位 /22週)

43 The Weeknd feat. Gesaffelstein – Hurt You (🗻43位 /⏰1週)

35 The Weeknd feat. Gesaffelstein – I Was Never There (🗻35位 /⏰1週)

 

 

来週以降の動向 /プレイリスト

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲を特集

 

・Kyle feat. Kehlani – Playinwitme

・Dennis Lloyd – Nevermind

 今週取り上げたYoungBoy Never Broke Aginの“Diamond Teeth Samurai”の逆の現象を起こしている曲。この2曲はSpotifyでは上位に入っている一方、ほかのストリーミングでは圏外になっています。

 ストリーミングサービスによって人気曲がここまで違うのはアメリカ独特の現象のように思います。“Nevermind”はSpotify内で大流行中の1曲。

 

・その他の新曲情報はこちらを参照してください!

 

 ・プレイリスト

「Hot 100 4/21 見どころ」をApple Musicで

 

 

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↑Cardi Bの事例を追加しました。

 

*1:イギリス人女性ラッパーM.I.A.は3曲でHot 100入り。“Paper Planes”と”Give Me All Your Luvin’はトップ10入りも果たしている

*2:Twitterの大手アカウントPop Craveに毎週Hot 100の順位予想を提供しているドイツのSimon Falkさんは約12時間と言っている