チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 8/25 見どころ 【Nicki Minaj、好成績を残すも…… / ロングヒットの達人たち】

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 今週のチャートの主役、といえるのはNicki Minaj!しかしアルバムチャート首位争いでは、2週目のTravis Scottに敗れ、惜しくも2位に。そのNicki Minajを中心に今週のHot 100を解説していきます。ほかラップ30週連続支配、ロングヒットの達人Jason MrazやEd Sheeranなど。

↑のNicki Minajは”No Frauds"のビデオの1シーン。

 

☆今週Hot 100のショートハイライト

・Nicki Minajの新作がアルバム2位。“Barbie Dreams”(18位)など、収録曲のうち7曲がHot 100入り

・Trippie Reddの新作がアルバム4位。“Taking A Walk”がHot 100の46位に登場

・“In My Feelings”が首位をキープ。30週連続でラップ曲がHot 100首位を支配

 

・今週のトップ10

ー1 Drake – In My Feelings

ー2 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

ー3 Cardi B, J Balvin & Bad Bunny – I Like It 

△4 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz – FEFE

△5 Post Malone – Better Now 

△6 Juice WRLD – Lucid Dreams 

▽7 Travis Scott – Sicko Mode

△8 Tyga feat. Offset – Taste 

△9 Ella Mai – Boo’d Up

△10 DJ Khaled feat. Justin Bieber, Chance the Rapper & Quavo – No Brainer 

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

☆91 Bryce Vine – Drew Barrymore

 ラッパー / シンガーの“Bryce Vine”の“Drew Barrymore”が91位で登場。彼にとって のHot 100入りに。この曲は主にポップ系、リズミック系などのラジオで人気です。

 

☆90 Jason Mraz – Have It All

 Jason Mrazが6枚目のアルバム“Know.”をリリースし、アルバムチャートの9位で登場。同時に、収録曲の”Have It All”がシングル90位に登場しています。この曲はアダルトポップ系ラジオで主に人気です。

 Jason Mrazのキャリア最大のヒットは“I’m Yours”。この曲はビルボードが先日発表した「歴代Hot 100ヒット・トップ600」の451位にも入っています。このリストに入っている曲の中では週間のピーク順位が最も低い(6位)です。

(そのかわり、歴代で3番目に長い76週もの間、チャートに入っていたロングヒットなので、リストに入った)

 

 

☆87 J. Cole – Album of the Year (Freestyle)

 J. Coleが突如リリースしたシングル、“Album of the Year (Freestyle)”が87位で登場。

 Nasの”Oochie Wally”の音に乗せてフリースタイルした曲です。この曲はJ. Coleが今年リリースするかもしれないミックステープ、“The Off-Season”の収録曲と考えられているようです。

 

☆72 Quavo – W O R K I N M E

 Migosのメンバー、Quavoのソロシングル“W O R K I N M E”が72位で登場しています。主にストリーミングで好調。

 この曲のタイトルは全て大文字で、かつ文字と文字の間にスペースが入っています。

 

☆46 Trippie Redd – Taking A Walk

 独特の歌声を持つ19歳のラッパー、Trippie Reddがデビューアルバムをリリース。アルバムチャートでは4位を記録しています。

 その収録曲のうち、“Taking A Walk”がHot 100入り。46位に登場しています。この曲はApple Music・Spotifyの両方でトップ10入りを果たすなど、ストリーミングで好調でした。

 今週Hot 100に入ったのはこの1曲のみでしたが、101~125位相当を扱うBubbling Underチャートには5曲が登場。118位に“Bang”、117位に”Shake It Up”、113位に”Forever Ever” 104位に“Wish” 102位に”Missing My Idols”が入っています。

 また、”Dark Knight Dummo”も以前Hot 100に入ったことがありました。

 

◇44 Nicki Minaj – Chun-Li

 Nicki Minajがアルバム“Queen”をリリース。アルバムチャートでは2位に。収録曲のうち7曲がHot 100入り。4曲が新たに登場したほか、”Chun-Li”、“Rich Sex”の2曲がチャートに舞い戻りました。(あと一つは既存の”Bed”)

 アルバムリリースによるチャート再登場で、この効果がいつまで続くかは分かりませんが、この再登場によって年間チャートトップ100に手が届くかも。

 

▽33 Marshmello & Anne-Marie – FRIENDS

 先週40位~20位あたりに多く存在したTravis Scottのアルバム曲が、今週順位を落としたため、代わりにこの付近の順位にいた曲は今週順位を上げています。

 しかし、MarshmelloとAnne-Marieの“FRIENDS”はラジオの再生数がかなり減ってきたため、Hot 100の順位を32位→33位と落としています。そろそろ次のシングルへとバトンタッチでしょうか。

 Marshmelloは先週Bastilleとの“Happier”をリリース。この曲の「バトン先」として期待がかかります。この曲はBastilleの効果もあってオルタナティブ系ラジオでもかかっているようです。

 Anne-Marieにとっての次シングルは”2002”。この曲は他国では既に大ヒット済ですが、アメリカではまだまだ。今週ようやくポップ系ラジオのチャート下位に登場しました。

 

△21 Drake – Nonstop

 Drakeがアルバム“Scorpion”から新たに”Nonstop”をシングルカット。リズミック~アーバンなど、ラップに馴染み深い系統のラジオで大きくポイントを伸ばし、Hot 100の順位を上げています。

 シングル化=ラジオの効果でストリーミングも再び数字を伸ばしそうです。(※Drakeのアルバム“Scorpion”リリース直後は”In My Feelings”よりもこの“Nonstop”のほうが人気だった)

 

△20 Ed Sheeran – Perfect

 「ロングヒットの鬼」、Ed SheeranがHot 100の密かな見どころになりそうです。彼の“Perfect”は現在チャート入り51週目ながらも、20位と高い順位をキープ。

 現在のHot 100では、チャート滞在が1年(=53週)を超えた曲は26位以下に落ちると、チャートから外す、という厳しいルールがあるのですが、この“Perfect”はこのルールを乗り越え、53週目以降も25位以上をキープする予感があります。

 どこまでこの曲がHot 100に粘るか?しばらくHot 100の密かな見どころになりそうです。

 

☆18 Nicki Minaj – Barbie Dreams

 Nicki Minajが自身4枚目のアルバム、“Queen”をリリース。アルバムチャートでは2週目のTravis Scottに破れ、惜しくも1位獲得ならず。

 18.5万枚(相当)と悪くないセールスを記録していましたが、ライバルが強かったせいで「アンラッキー」なアルバム2位に。

 今年の35週のアルバムチャートのうち、1位のセールスが18.5万枚を超えていたのは14週と半分以下でした。(参考:アルバムチャートは純粋なセールス以外で勝負する時代? 【USアルバムチャートのここ4年の変化】 - チャート・マニア・ラボ (CML)

 

 Nicki Minajはアルバム1位を獲得できなかったのが悔しいのか、TwitterTravis Scottなど様々な要素にクレームをつけています。

 

 収録曲のうち、7曲がHot 100入り。そのうち“Barbie Dreams”が最も高い18位を記録しています。この曲はNotorious B.I.G.をサンプリングしたことや、多くの具体的な人名を挙げたことも話題となりました。

 ほかEminem・Labrinthとの“Majesty”が58位、”Ganja Burns”が60位、The Weekndとの“Thought I Knew You”が98位で登場しています。

 また、この“Queen”は女性のアルバムとしてはCardi Bの“Invasion of Privacy”に次いで2番目に高いストリーミング数を記録しています。(アメリカでの記録)

 

・最も多くストリーミングされた女性アルバム (1週間の成績)

1位 Cardi B / Invasion of Privacy (12曲) :2億260万再生 (13万5000枚相当)

2位 Nicki Minaj / Queen (20曲) :1億2870万再生 (9万7000枚相当)

3位 Beyoncé / Lemonade (12曲) :1億1520万再生 (7万7000枚相当)

4位 Camila Cabello / Camila (11曲) :約5700万再生 (3万8000枚相当)

5位 Taylor Swift / reputation (15曲) :約5100万再生 (3万4000枚相当)

6位 SZA / Ctrl (14曲) :4952万再生 (3万3000枚相当)

※ Beyoncé + Jay-Zのジョイント作“EVERYTHING IS LOVE”は約7350万再生 (4万9000枚相当)

 

※「枚相当」というのは、アルバムチャートでストリーミングがセールス何枚分と換算されているのか、を表しています。

※再生数に約がついている作品は、ビルボードの記事では具体的な再生数が明示されていないものの、「枚相当」からストリーミング数が分かるものです。

 

△17 5 Seconds of Summer – Youngblood

 現在ポップ系ラジオで好調、5 Seconds of Summerの“Youngblood”が少しずつ順位を伸ばしています。彼らのキャリアピーク”Amnesia”(16位)を超えそうです。

 ほか現在ラジオで好調なのはSelena Gomezの“Back To You”やKhalid & Normaniの”Love Lies”など。特に後者は現在Hot 100の11位につけており、近いうちのトップ10入りが有望です。

 

―1 Drake – In My Feelings

 今週も首位をキープ。Drakeの“In My Feelings”が6週目の1位を記録しています。ただし、DL・ストリーミング*1はピーク時と比べるとやや落ち着いてきていて、ラジオの伸びも鈍くなってきました。

 これでDrakeは2018年の間に通算25週も1位に滞在したことになり、歴代の記録に迫っています。同じ年に最も長い間1位に滞在していたのは、2004年のUsherで28週。それに次ぐのは2009年のThe Black Eyed Peas(26週)

 また、今週ラップ曲によるHot 100首位連続支配がこれで30週目に。“God’s Plan”が”Havana”を打ち破って以降、“Nice For What”、This Is America”、“Psycho”、“SAD!”、”I Like It”、“In My Feelings”とラップがHot 100を制し続けています。

 ラップ曲がこれほど長くHot 100を支配し続けるのは史上はじめて。これまで一番長かったラップによるHot 100支配は2003年の16週でした。(50 CentSean Paulによる、”In Da Club”~”Get Busy”~”21 Questions”)

 

 “In My Feelings”を破り、これらの記録をストップする曲の候補は主に2つあると思います。まずは現在Hot 100で2位、Maroon 5の”Girls Like You”。この曲は現在ラジオ1位で、その点で“In My Feelings”有利を取っています。ほかDLでは互角、ストリーミングでは負けていますが、仮にラジオとDLのポイントを合わせてストリーミングの不利分をひっくり返せれば、“In My Feelings”を打ち破れるのではないでしょうか。

 DLが伸びるタイミング、つまりiTunes割引を実行した瞬間がチャンスではないでしょうか。

 もう一つの候補は現在Hot 100で5位、Post Maloneの“Better Now”。この曲は現在、ラジオ・DL・ストリーミングの全てで”In My Feelings”よりも数字が低いですが、伸びしろがあります。一つはラジオでの好調。この曲はラップ曲ですが、“In My Feelings”よりもラジオの中で最も規模が大きいポップ系で多くかかっており、そのうちラジオで”In My Feelings”を抜きそうです。

 もう一つはビデオがまだリリースされていないという点。仮にビデオが話題となれば、ストリーミングが伸びるかもしれません。ほかiTunes割引という手段も残っています。しかし、こちらが首位を取った場合、ラップ連続支配のほうの記録はストップしませんね。

 あとは一応、Ariana Grandeの曲も候補でしょうか。

 

▽× Travis Scott – NC-17

 今週もアルバム首位を防衛したTravis Scott。ただし先週と比べるとストリーミング数は落ち着いてきていて、Hot 100にエントリーする曲も減少。

 先週は収録17曲全てがHot 100に入っていましたが、今週はうち7曲がHot 100から外れました。先週トップ40に入っていた曲が全てHot 100に残り、41位以下だった曲が全てHot 100から外れました。

 

 

今週チャートから外れた曲 (13曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Childish Gambino – Summertime Magic (🗻44位 /⏰4週)

98 YG feat. A$AP Rocky – Handgun (🗻98位 /⏰2週)

96 Keith Urban feat. Julia Michaels – Coming Home (🗻50位 /⏰7週)

91 Jake Owen – I Was Jack (🗻43位 /⏰11週)

88 Morgan Wallen feat. Florida Georgia Line – Up Down (🗻49位 /20週)

76 H.E.R. feat. Bryson Tiller – Could’ve Been (🗻76位 /⏰1週)

68 Travis Scott – Coffee Bean (🗻68位 /⏰1週)

53 Travis Scott – Houstonfornication (🗻53位 /⏰1週)

50 Travis Scott – Butterfly Effect (🗻50位 /⏰23週)

48 Travis Scott – Astrothunder (🗻48位 /⏰1週)

47 Travis Scott (feat. The Weeknd & Pharrell) – Skeltons (🗻47位 /⏰1週)

43 Travis Scott (feat. Quavo & Takeoff) – Who? What! (🗻43位 /⏰1週)

41 Travis Scott (feat. 21 Savage) – NC-17 (🗻41位 /⏰1週)

 

アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品です

2 Nicki Minaj – Queen

4 Trippie Redd – Life’s A Trip

9 Jason Mraz – Know.

22 Elvis Presley – Where No One Stands Alone

97 With Confidence – Love And Loathing

124 Dave Grohl – Play (EP)

146 Young Nudy – Slimeball 3

152 Erra – Neon

198 As It Is – The Great Depression

 

 来週以降の動向・プレイリストなど

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Calvin Harris & Sam Smith – Promises

・Marshmello & Bastille – Happier

 今年シングルをヒットさせたプロデューサー2人の次シングル。いずれもiTunesのDLやSpotifyで好調。Hot 100に入りそうです。

 

・Ariana Grande – breathin

 Ariana Grandeのアルバムが来週1位見込み。そこからいくつかの曲がHot 100に登場しそうです。そのうち”breathin”はトップ10入りの可能性がありそうです。既存の“God is a woman”もトップ10に浮上するかも。

 

Body Luxury feat. Brado – Body

 Spotify内で人気を伸ばし、グローバルヒットとなりつつある“Body”がHot 100に接近中。現在116位相当です。

 

 

・プレイリスト

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

*1:Apple Music・SpotifyYouTubeの全てで既に首位ではなくなっている